)” の例文
ほんとうにげんげをみにて、ひとがありませうか。きつねにでもつまゝれなければ、さういふことをするはずがありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
下るべき水は眼の前にまだゆるく流れて碧油へきゆうおもむきをなす。岸は開いて、里の子の土筆つくしも生える。舟子ふなこは舟をなぎさに寄せて客を待つ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
草餅くさもちが出来た。よもぎは昨日鶴子が夏やと田圃たんぼに往ってんだのである。東京の草餅は、染料せんりょうを使うから、色は美しいが、肝腎かんじんの香がうすい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私たちにとって、朝倉先生を我校から失うことは、私たちの学徒としての生命の芽をみきられるにも等しい重大事であります。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかして手かごいっぱいに花をみ入れました。聖ヨハネ祭の夜宮には人形のリザが、その花の中でいいゆめを見てねむるんです。
野呂はその二十坪余りの畠にさまざまな野菜を栽培しましたが、素人しろうと菜園にしてはかなり上成績で、彼は毎日それをんでは食べている。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
一度なぞはおれと一しょに、磯山いそやま槖吾つわみに行ったら、ああ、わたしはどうすればいのか、ここには加茂川かもがわの流れもないと云うた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おかしな事は、その時んで来たごんごんごまは、いつどうしたか定かには覚えないのに、秋雨あきさめの草に生えて、塀を伝っていたのである。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
毎年するように、花御堂はなみどうの花をんできて、灌仏会かんぶつえのお支度をしなければならないし、晩には、甘茶も煮ておかなければいけないでしょう
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それであいちやんは、なぐさみに雛菊ひなぎく花環はなわつくつてやうとしましたが、面倒めんだうおもひをしてそれをさがしたりんだりして勘定かんぢやうふだらうかと
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
例年のきく端午の菖蒲しょうぶまず、ましてや初幟はつのぼりの祝をする子のある家も、その子の生まれたことを忘れたようにして、静まり返っている。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
重陽の節に山に登り、菊の花または茱萸ぐみの実をんで詩をつくることは、唐詩を学んだ日本の文人が、江戸時代から好んでなした所である。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
木の芽はいくらんでも摘んでも生える。正義はどんなことがあってもやり通す。爆弾事件なぞが幾度いくたびあったって志士の決心はくじかれない。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
近衞家このゑけ京武士みやこぶしは、綺麗きれいあふぎで、のツぺりしたかほおほひつゝ、片手かたてなはまんで、三げんはなれたところから、鼻聲はなごゑした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もとは若稲のまだよく固まらぬ穂をんで、これを火でって扁米ひらいごめというのをこしらえ、神と祖霊に供え、家の者も相伴した。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そつと三本ばかり一緒にまんで中途まで引き上げてから目早くそれを見わけて赤でないやつを上手に手ばなすことにした。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「いいえ、もうすっかりいいの」と彼女は答えて、小さなあかいバラを一輪み取った。——「すこしつかれているけれど、これもじきに直るわ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
そしてまれたは、おおきなかごにめられておくられるのですが、かれはそれをリヤカーにせて、いくたびとなく、停車場ていしゃじょうはこんだのであります。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひゆの種類でもあろうか。その草をんで籠の中のとんぼにやったりする。果してとんぼがその草の葉を食べるものか、それはどうでも好かった。
母は滅多に外出しなかったので、たまに前の山に千振せんぶりみなどに行く時、私らはそれを大変な珍しいことのようにして、そのあとについて行った。
私の母 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
彼らじしん、船の入港するのを山の上から見て、そこで早速そこらに成っていたのをんで売りに来たものに相違ない。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「読めるともさ。」トルストイは鼻をままれたやうに顔をくしやくしやさせた。「何だつてそんな事を訊くんだい。」
平次は植木の新芽などをんで、腹ごなしに狭い庭の世話をしていると、不意に八五郎の大変が飛び込んで来ました。
「冗談じゃない、本当なのですよ、大江山さん」と、帆村は彼の癖で長くもないあごの先を指でまみながらいった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時には、学校の女生徒を、二三人つれて、林の中で花をませて花束を作らせたりなんかしていることなどもある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
わしも、いまおもへば、そもじとおなほど年齡としごろ嫁入よめいって、そもじをまうけました。まんでへば、うぢゃ、あのパリス殿どのがそもじを内室うちかたにしたいといの。
この句は根芹をもうとして水の中に手を入れると、其処にいた泥鰌が、驚いて逃げたというのを、自分がどうかせられるのかと思って逃げやぁがった
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いつのまにまつったのか、み花のマユミの葉が茶碗に青くもりあがっていた。兵隊墓は丘のてっぺんにあった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ふきみに来たおばあさんは、寒竹かんちくやぶの中に、小犬を埋めたしるしの石を見て呆然ぼうぜんとしてしまったのだった。
えびらといふは如何なる物か知らねども、この歌にては桑の葉をみ入れるかたみの類かと見ゆるが不審に存候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その横では、不足な酒を作るがために、兵士たちは森からみとってきた黒松葉を圧搾あっさくして汁を作っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
でも、人間にんげんは、この枝振えだぶりがらないなどとって、時々ときどきはさみでチョンチョンえだむことがあるでしょう。そんなときにあなたがた矢張やははらちますか?
父よ、皇帝チェーザレまたは詩人のほまれのためにまるゝことのいとまれなれば(人の思ひの罪と恥なり) 二八—三〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ついでに御参考までもと存じまして、方丈の跡らしい処に咲いておりましたこの花をんで参いりましたんで……何しろ珍らしい、お話の種と思いましたから……ヘエ
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とうさんがひとりでそこいらをあそまは時分じぶんにはおひなれられてよくよもぎみにつたこともあります。あたゝかいあたつた田圃たんぼそばで、よもぎむのはたのしみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ドクダミと呼ぶ宿根草しゅっこんそうがあって、たいていどこでも見られる。人家じんかのまわりの地にも多く生じており、むといやな一種の臭気しゅうきを感ずるので、よく人が知っている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
看護婦の体もひまで、彼女の部屋はだだっぴろい家族の住居すまいから離れたところにあり、銀子が買ってくケーキなどをまんで本の話や身のうえ話をするのだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
植木屋のせがれが松の緑をみに来た。一昨年おととしまではその父が来たのであるが、去年の春に父が死んだので、その後は忰が代りに来る。忰はまだ若い、十八、九であろう。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
みんな人間がんで食べてしまうからです。それでも足りないでかつえ死ぬ人が多くありまして、わしらが見ても、街道筋にゴロゴロ行倒れが毎日のように倒れました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
葡萄の紫水晶むらさきすいしょうのようになり、落ちて地にくさったのが、あまいかおりを風に送るようになりますと、村のむすめたちがたくさん出て来てかごにそれをみ集めます。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
花をみ、木栂きいちごをとりなどして、小半日もあちこちと遊び歩き升ていもと草臥くたびれたとて泣出し升たから、日影の草原へ腰かけてやすんで居升と、間近に見える草屋根のうちから
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
いかゞでございます。見物の中から選び出した三人の子供は、この通り訳なくねむってしまいました。この子供たちは、今、私の自由になったのです。鼻をまゝれても耳を
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
江戸の小咄こばなしにも、あるではないか。朝、垣根越しにとなりの庭をのぞき見していたら、寝巻姿のご新造が出て来て、庭の草花を眺め、つと腕をのばし朝顔の花一輪をみ取った。
女人創造 (新字新仮名) / 太宰治(著)
アグレイアの四度目の誕生日が過ぎて、一週間ばかりつた或る日のこと、彼女が突然見えなくなつた。彼女は家の前の道傍で、草花をんでゐたのだが、それから分らない。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
『国栖等の、春菜わかなまんとしめの野の云々』の、『国栖等』の三字の如きも、仙覚点の通り『クニスラ』とむべきもので、『クスドモ』と訓むのは、古意でないかもしれない。
国栖の名義 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
植物園や円山まるやま公園や大学構内は美しい。エルムやいろいろのかしわやいたやなどの大木は内地で見たことのないものである。芝生の緑が柔らかで鮮やかでめば汁の実になりそうである。
札幌まで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
庭のコスモス咲き出で候はば、私帰るまであまりおみなされずにお残し下されたく、軒の朝顔かれ/″\の見ぐるしきも、何卒なにとぞ帰る日までりとらせずにお置きねがひあげ候。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「僕が子供と遊んでいるのを見たら、人よ、せめて陰口をきいてくれ。子供は何も知らないからと。僕が花をんだら、さげすみの眼で見てくれ。僕が花で僕の部屋を飾るのを。」
わが師への書 (新字新仮名) / 小山清(著)
しかし芽もえぬうちにんで捨てた。自分のたつきの苦しいなかで人に貢いだ。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
鹿どもは毎日雨戸をあけるのを待ちかねては御飯をねだりに揃ってやってきた。若草山でんだわらびや谷間で採ったふきやが、若い細君の手でおひたしやおつけの実にされて、食事を楽しませた。
遊動円木 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)