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挽
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ひ
ふりがな文庫
“
挽
(
ひ
)” の例文
「すると、門前の豆腐屋がきっと起きて、雨戸を明ける。ぎっぎっと豆を
臼
(
うす
)
で
挽
(
ひ
)
く音がする。ざあざあと豆腐の水を
易
(
か
)
える音がする」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある日、中庭へ数台の荷馬車を
挽
(
ひ
)
き込んで、それに家財道具や衣裳類を山のように積んであるのを見て、ガブリエルはびっくりした。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
帰り着いてみるとお
神
(
かみ
)
さんは、又も西日がテラテラし出した裏口で、石の
手臼
(
てうす
)
をまわしながら、居ねむり片手に
黄
(
き
)
な
粉
(
こ
)
を
挽
(
ひ
)
いていた。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
周三は、
燥
(
いら
)
つき氣味で、「じや、何うです。
狆
(
ちん
)
ころになツて馬車に乗るのと、人間になツて
車力
(
しやりき
)
を
挽
(
ひ
)
くのと何方が可いと思います。」
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
今
仰
(
おっ
)
しゃった事がほんとうなら
飛立
(
とびた
)
つ程嬉しいが、只今も申す通り、
私
(
わし
)
は今じゃア
零落
(
おちぶ
)
れて
裏家住
(
うらやずま
)
いして、人力を
挽
(
ひ
)
く
賤
(
いや
)
しい身の上
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
幾頭の
獅子
(
しし
)
の
挽
(
ひ
)
ける車の上に、
勢
(
いきおい
)
よく突立ちたる、
女神
(
にょしん
)
バワリアの像は、先王ルウドヰヒ第一世がこの
凱旋門
(
がいせんもん
)
に
据
(
す
)
ゑさせしなりといふ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
なるほどそれは好都合であると喜んでいると、三、四日の後、町の
挽
(
ひ
)
き
地物
(
じもの
)
屋
(
や
)
へ買物に立寄った時、偶然にあることを聞き出した。
温泉雑記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
農家が各自の穀粉を
挽
(
ひ
)
くようになって、一旦起こりかけた
粉屋
(
こなや
)
という専門業が早く衰えてしまい、
名残
(
なごり
)
を粉屋の娘の民謡に
留
(
とど
)
めている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼少女は粗暴なる少年に車を
挽
(
ひ
)
かれて、
且
(
かつ
)
は
懼
(
おそ
)
れ且は喜びたりき。彼少女は
面紗
(
めんさ
)
を
緊
(
きび
)
しく引締めて、身をば車の片隅に寄せ居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
昨日荷車を
挽
(
ひ
)
いた諸君が、今日も来て井戸を
浚
(
さら
)
えてくれた。家主の彼は、半紙二帖、
貰物
(
もらいもの
)
の干物少々持って、近所四五軒に挨拶に
廻
(
まわ
)
った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「そう
目前
(
めさき
)
が利かないから、お茶を
挽
(
ひ
)
くのよ。当節は女学生でも、今頃は内には居ない。ちっと日比谷へでも出かけるが
可
(
い
)
い。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薬研
(
やげん
)
を
挽
(
ひ
)
く音がしていたが、それがやむと、たちまち召使の影と影がかさなって出迎えに溢れ出てくる。——そして老公のすがたをかこみ
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
六頭の馬に
挽
(
ひ
)
かれた砲車の列が丁度その町を通った。一砲車
毎
(
ごと
)
に弾薬の
函
(
はこ
)
を載せた車が八頭の馬に挽かれてその後から続いた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
素鼠縮緬
(
すねずみちりめん
)
の
頭巾被
(
づきんかぶ
)
れる婦人は
樺色無地
(
かばいろむじ
)
の
絹臘虎
(
きぬらつこ
)
の
膝掛
(
ひざかけ
)
を
推除
(
おしの
)
けて、
駐
(
と
)
めよ、返せと
悶
(
もだ
)
ゆるを、
猶
(
なほ
)
聴かで
曳々
(
えいえい
)
と
挽
(
ひ
)
き行く
後
(
うしろ
)
より
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
これは狸肉を細かく
挽
(
ひ
)
いてだんごに丸め、
胡椒
(
こしょう
)
と調味料を入れて軽く焼いたのであるそうだ。なかなかいける。臭みがない。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
食い物もろくに食わずに、土間に立詰めだ。
指頭
(
ゆびさき
)
の
千断
(
ちぎ
)
れるような寒中、炭を
挽
(
ひ
)
かされる時なんざ、
真実
(
ほんと
)
に泣いっちまうぜ。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして、労働者は、生きたまま、何万馬力の電動機によって運転されている「
挽
(
ひ
)
き肉器」の中へと、スクルーコンベーヤで運び込まれるのだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
木挽の治平が角材を枠にかけ、
挽
(
ひ
)
き目に時々
栓
(
せん
)
を打ち込んでは、膝を立て腰をあげさげして、鋸をズイズイと入れている。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
いかに言ふとも一向に聞き入れず、死なねば済まずとのみ言ひ募りて、捕へし袖を
挽
(
ひ
)
きて、吾を彼の山中に連れ行んとす。
鬼心非鬼心:(実聞)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
伝兵衛、梯子でのぼって行って象の左の脇腹からすこし上った辺を逆目鋸で
挽
(
ひ
)
きはじめたが、骨組さえ挽切れば、後は胡粉と
膠
(
にかわ
)
で固めた日本紙。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
三十六の瓢箪をいちいち横真二つに
挽
(
ひ
)
き割らせ、それを自分で合せて、
紐
(
ひも
)
で縛って埋めましたよ——と言いながら、何か変な顔をしていましたよ
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
土を練る者、
轆轤
(
ろくろ
)
を
挽
(
ひ
)
く者、削る者、
絵附
(
えつけ
)
をする者、または
象嵌
(
ぞうがん
)
をする者、
白絵
(
しろえ
)
を引く者、
釉掛
(
くすりが
)
けをする者、または焼く者、
悉
(
ことごと
)
くが分業である。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
お仙は外に背中を向けて豆を
挽
(
ひ
)
いている。野袴をつけた若者が二人、畠の道具を門口へ転がしたまま、
黒燻
(
くろくすぶ
)
りの
竈
(
かまど
)
の前に
踞
(
しゃが
)
んで煙草を
喫
(
の
)
んでいる。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
これを
省
(
はぶ
)
くとも鉄道運河の大体の設計にはなんらの支障を生ずる事なかるべし。これに反して荷車を
挽
(
ひ
)
く労働者には道路の小凹凸は無意味にあらず。
自然現象の予報
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「王様がお通りになったら、これはみんなカラバ
侯爵
(
こうしゃく
)
の畠でございますというのだ。そういわないと、おまえたちみんな、
挽
(
ひ
)
き肉にしてしまうぞ。」
猫吉親方:またの名 長ぐつをはいた猫
(新字新仮名)
/
シャルル・ペロー
(著)
荷車は二頭の牛に
挽
(
ひ
)
かせる物と
定
(
きま
)
つて居るらしいが、
牝
(
め
)
牛はヒンヅ教でシ
ヷ神
(
しん
)
の
権化
(
ごんげ
)
である所から絶対に使役しない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その計画はズット前から
企
(
たくら
)
まれていて、両室共に牢の格子が鋭利なる
鋸
(
のこぎり
)
の類で
挽
(
ひ
)
き切られていたのを、飯粒で塗りつぶして隠しておいたということ。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
えゝ、おつうこと
連
(
つ
)
れてつて、
南
(
みなみ
)
で
挽
(
ひ
)
くなあ
挽
(
ひ
)
いたやうだが、
桶
(
をけ
)
さ
入
(
せ
)
えた
儘
(
まゝ
)
で
蓋
(
ふた
)
したつ
切
(
きり
)
藏
(
しま
)
つて
置
(
お
)
くから、わしやどのつ
位
(
くれえ
)
あるもんだか
見
(
み
)
もしねえが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
されど一歩進んで考えると、車夫が生理学を学び、ちょっと人の脈でも取れるようになれば、やはり車を
挽
(
ひ
)
いているだろうか、恐らく挽いてはいまい。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
萬世橋
(
よろづよばし
)
へ
參
(
まゐ
)
りましたがお
宅
(
たく
)
は
何方
(
どちら
)
と
軾
(
かぢ
)
を
控
(
ひか
)
へて
佇
(
たゝず
)
む
車夫
(
しやふ
)
、
車上
(
しやじやう
)
の
人
(
ひと
)
は
聲
(
こゑ
)
ひくゝ
鍋町
(
なべちやう
)
までと
只
(
たゞ
)
一言
(
ひとこと
)
、
車夫
(
しやふ
)
は
聞
(
き
)
きも
敢
(
あ
)
へず
力
(
ちから
)
を
籠
(
こ
)
めて
今
(
いま
)
一勢
(
いつせい
)
と
挽
(
ひ
)
き
出
(
いだ
)
しぬ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
いまだかつて木を
挽
(
ひ
)
き水を汲むなどその開進に必要な何らの役目を務めず、ただ時々飼われて娯楽の具に備わるのみ、それすら本性不実で悪戯を好み
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その海の音は、離れた台所で
石臼
(
いしうす
)
を
挽
(
ひ
)
くように、
微
(
かす
)
かではあるが重苦しく、力強く、
殷々
(
いんいん
)
と
轟
(
とどろ
)
いて居るのである。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
忽ち車の
軋
(
きし
)
る音して、一匹の
大牛
(
おおうし
)
大
(
おおい
)
なる荷車を
挽
(
ひ
)
き、これに一人の牛飼つきて、
罵立
(
ののしりた
)
てつつ
此方
(
こなた
)
をさして来れり。聴水は身を潜めて
件
(
くだん
)
の車の上を見れば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
成程
(
なるほど
)
是
(
こ
)
れは馬の
挽
(
ひ
)
く車だと始めて発明するような訳け。
何
(
いず
)
れも日本人は大小を
挟
(
さ
)
して
穿物
(
はきもの
)
は
麻裏草履
(
あさうらぞうり
)
を
穿
(
はい
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
鉋屑
(
かんなくづ
)
が
溜
(
たま
)
ればそれを
目籠
(
めかご
)
に押し込んで外へ捨てに行つたり、職工達が墨を
曳
(
ひ
)
いた大小の木材を
鋸切
(
のこぎ
)
り
場
(
ば
)
へ持つて行つて、
挽
(
ひ
)
いて貰つたり、昼飯時が来ると
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
道をふさぐ大幹小柯にいたっては、乗り越え、くぐりぬけ、山刀で払い、ついには鋸を用いて
挽
(
ひ
)
くまでになる。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
鋏で切り、鉄の爪で裂き、車でバラ/\に切れ屑にし、そしてそれを臼に入れて
挽
(
ひ
)
く。それから水の中で粉のやうにされて石鹸のやうなものにされて了ふ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
文教を
楯
(
たて
)
として天下を治めんとしたる徳川政府は、早くも文教を
箭
(
や
)
として、
己
(
おのれ
)
に向い弓を
挽
(
ひ
)
くものを見出しぬ。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
そのとき、たちまちにペリティの店の向う側を黒と白の
法被
(
はっぴ
)
を着た四人の
苦力
(
クーリー
)
が、黄いろい鏡板の安っぽい出来合い物の人力車を
挽
(
ひ
)
いて来るのに気がついた。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
根から切り倒されて、雪が降り、雪が積つてゐる道に横たはつてゐる。そして、枝は枝で切り落され、幹は幹で三つばかりに
挽
(
ひ
)
き離されたままになつてゐる。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
肉挽器械
(
にくひききかい
)
で
挽
(
ひ
)
くかあるいは
庖丁
(
ほうちょう
)
で細かく叩いて加えまして肉の色が変るまで掻き混ぜながらよくいためます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
昼過ぎかかって夜まで薪を
挽
(
ひ
)
き、これを割り、たいていこのくらいで旅籠賃に足ると思うくらいまで働きまして、そうして後に泊まったということであります。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
其蔭に小さな小屋がけして、
杣
(
そま
)
が三人停車場改築工事の木材を
挽
(
ひ
)
いて居る。橋の下手には、青石峨々たる
岬角
(
かふかく
)
が、橋の袂から斜に川の方へ十五六間突出て居る。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
フィンランドの産物——
挽
(
ひ
)
かない材木と挽いた材木。ランニング選手、ヌルミとリトラと無数のその幼虫。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
独身漢
(
ひとりもの
)
/\と言つて貰ふめエよ、是でもチヤンと片時離れず着いてやがつて、お前さん苦労でも、どうぞ
東京
(
こつち
)
で車を
挽
(
ひ
)
いててお
呉
(
く
)
れ、其れ程人夫になりたくば
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
經驗と勞苦との臼に
挽
(
ひ
)
かれて有用になつた上等の麥粉のやうなものだといふやうなお説教を
聽
(
き
)
いて來る。
水車のある教会
(旧字旧仮名)
/
オー・ヘンリー
(著)
そこから出るとすぐ居合わす
俥
(
くるま
)
に乗って、川を東に渡り建仁寺の
笹藪
(
ささやぶ
)
の
蔭
(
かげ
)
の
土塀
(
どべい
)
について裏門のところを曲って、だんだん上りの道を東山の方に
挽
(
ひ
)
かれていった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
新助は
仲仕
(
なかし
)
を働き、丹造もまた物心つくといきなり父の
挽
(
ひ
)
く荷車の後押しをさせられたが、新助はある時何思ったか、丹造に、祖先の満右衛門のことを語ってきかせた。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
何か手早に
竈
(
かまど
)
に火を入れる、おれの近くへ
石臼
(
いしうす
)
を持出し話しながら、
白粉
(
しろこ
)
を
挽
(
ひ
)
き始める、手軽気軽で、億劫な風など毛程も見せない、おれも訳なしに話に釣り込まれた。
姪子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
宋代
(
そうだい
)
には
抹茶
(
ひきちゃ
)
が流行するようになって茶の第二の流派を生じた。茶の葉は小さな
臼
(
うす
)
で
挽
(
ひ
)
いて細粉とし、その調製品を湯に入れて割り竹製の精巧な
小箒
(
こぼうき
)
でまぜるのであった。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
挽
漢検準1級
部首:⼿
10画
“挽”を含む語句
挽回
挽歌
挽割
鋸挽
木挽町
木挽
挽割麦
粉挽
挽茶
挽物
車挽
臼挽
荒挽
挽地物
推挽
挽出
挽馬
櫛挽
挽割麥
挽臼
...