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抱
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いだ
ふりがな文庫
“
抱
(
いだ
)” の例文
然
(
しか
)
れども
別
(
べつ
)
に
社界
(
しやかい
)
の
大弊根
(
たいへいこん
)
の
長
(
なが
)
く
存
(
そん
)
するありて、
壯年有爲
(
そうねんゆうい
)
の
士
(
し
)
をして
徃々
(
おう/\
)
にして
熱火
(
ねつくわ
)
を
踏
(
ふ
)
み
焔柱
(
ゑんちう
)
を
抱
(
いだ
)
くの
苦慘
(
くさん
)
を
快
(
こゝろよし
)
とせしむる
事
(
こと
)
あり。
罪と罰(内田不知庵訳)
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
……だんだん、ぼくはかれが傷つけられてはいないこと、あるいはそう振舞ってくれていることに、ある
安堵
(
あんど
)
と信頼を
抱
(
いだ
)
きはじめた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
大王にしては少々言葉が
卑
(
いや
)
しいと思ったが何しろその声の底に犬をも
挫
(
ひ
)
しぐべき力が
籠
(
こも
)
っているので吾輩は少なからず恐れを
抱
(
いだ
)
いた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
センティメンタリズム、リアリズム、ロマンティシズム——この三つのイズムは、その
何
(
いず
)
れかを
抱
(
いだ
)
く人の資質によって決定せられる。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
いいえ、心持と言うよりも、美人を膝に
抱
(
いだ
)
いたなり、次第々々に化石でもしそうな、身動きのならんその形がそうだったんです。……
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
ある夜彼がまた洞穴の奥に、泣き顔を両手へ
埋
(
うず
)
めていると、突然誰かが忍びよって、両手に彼を
抱
(
いだ
)
きながら
艶
(
なま
)
めかしい言葉を
囁
(
ささや
)
いた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
抱
(
いだ
)
いていたかも知れず
一概
(
いちがい
)
に利太郎であるとは断定し難いまた必ずしも
痴情
(
ちじょう
)
の
沙汰
(
さた
)
ではなかったかも知れない金銭上の問題にしても
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
男の
方
(
かた
)
に自由選択の権利ある現在の状態では夫婦になって始めてその妻に不満を
抱
(
いだ
)
きこれを虐待するなどという事は、
取
(
とり
)
も直さず自分を
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
家人
(
かじん
)
のようすにいくばくか
不快
(
ふかい
)
を
抱
(
いだ
)
いた使いの人らも、お政の
苦衷
(
くちゅう
)
には
同情
(
どうじょう
)
したものか、こころよく
飲食
(
いんしょく
)
して早そうに
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
った。
告げ人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
自分の
抱
(
いだ
)
いていた思想は全く無力なものになり終り、現実の重圧にただ押しつぶされそうな哀れな自己をのみ感じてくるのである。
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
しかし一方彼はまたそこに他の疑念をも
抱
(
いだ
)
かざるを得なかった。なぜあれほどまでの残虐を忍んでも宗門を
転
(
ころ
)
んではならないのか。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
その男がよくいうのは、“青年は理想を
抱
(
いだ
)
いておる処に本領があるべきだ。その青年が
諦観
(
ていかん
)
に住する俳句を
弄
(
もてあそ
)
ぶことは意外である。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
紋三は殆ど夫人を
抱
(
いだ
)
き上げる様にして、堤を北へ北へと走った。行くに従って人家がまばらになり、夕暗は一層色濃く迫って来た。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
釣
(
つ
)
れると
釣
(
つ
)
れぬは
生死
(
せいし
)
の
分
(
わか
)
れ
目
(
め
)
、
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
は
眼
(
め
)
をまんまるにして、
此
(
この
)
凄
(
すさ
)
まじき
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて
居
(
を
)
つたが、
可憐
(
かれん
)
の
姿
(
すがた
)
は
後
(
うしろ
)
から
私
(
わたくし
)
を
抱
(
いだ
)
き
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
薩長
(
さっちょう
)
人士の中には慶喜を殺せとの意見を
抱
(
いだ
)
くものも少なくないので、このことはいろいろな意味で当時の人の心に深い刺激をあたえた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこで米友は第二段として、当然、わが道庵先生の身代りに立たせられたような不幸の人を、見舞うの心を
抱
(
いだ
)
き起させられました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
むしろ彼は発育の不十分な、病身で内気で、たとい女のほうから言い寄られたにしても、
嫌悪
(
けんお
)
の感を
抱
(
いだ
)
くくらいな少年であった。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
父も家庭に対する
苦
(
くるし
)
み、妻子に対する
苦
(
くるし
)
み、社会に対する
苦
(
くる
)
しみ——
所謂
(
いはゆる
)
中年の
苦痛
(
くるしみ
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
其
(
その
)
時
此
(
こ
)
の狭い汚い町を
通
(
とほ
)
つたに
相違
(
さうゐ
)
ない。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
戦わなければ朝倉先生の
抱
(
いだ
)
いていられる信念や思想も護れないからね。そして戦う以上はストライキぐらいやってもいいように思うんだ。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
面は火のように、眼は
耀
(
かがや
)
くように見えながら涙はぽろりと
膝
(
ひざ
)
に落ちたり。男は
臂
(
ひじ
)
を
伸
(
のば
)
してその
頸
(
くび
)
にかけ、我を忘れたるごとく
抱
(
いだ
)
き
締
(
し
)
めつ
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
品子は妹といっても、腹違いであり、小菊はお篠にとって義理の娘であった。今までに互いに冷たい感じを
抱
(
いだ
)
いたことは一度もなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「うん、お止しよ。」と、やさしく肩に手をかけて、押しのけようとしながら、前川は久しぶりで、夫人を
抱
(
いだ
)
き上げたいような気がした。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今朝
(
けさ
)
抱
(
いだ
)
いている心境が、昨日よりたしかに一日育っていることのほうを、自分でも認め、また、自分へ対しての限りなき欣びとしていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五八も驚き
確
(
しつ
)
かと
抱
(
いだ
)
き
止
(
と
)
め
是
(
こ
)
は若旦那にて
有
(
あり
)
しか私し事は多く
御恩
(
ごおん
)
に
預
(
あづか
)
り何かと
御贔屓下
(
ごひいきくだ
)
されし者なれば
先々
(
まづ/\
)
譯
(
わけ
)
は
後
(
あと
)
の事手前の
宿
(
やど
)
へ御供を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
おつぎはそれから
又
(
また
)
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る
與吉
(
よきち
)
と
死骸
(
しがい
)
の
如
(
ごと
)
く
横
(
よこた
)
はつて
居
(
ゐ
)
る
卯平
(
うへい
)
とを
見
(
み
)
た。おつぎは
萬能
(
まんのう
)
を
置
(
お
)
いて
與吉
(
よきち
)
の
火傷
(
やけど
)
した
頭部
(
とうぶ
)
をそつと
抱
(
いだ
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
もしそれを
見
(
み
)
いだしたなら、いま
自分
(
じぶん
)
の
抱
(
いだ
)
いているような、すべての
野心
(
やしん
)
は
遂
(
と
)
げられるだろうというような
気
(
き
)
がしたのでした。
三つのかぎ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
(娘を
抱
(
いだ
)
く。)己が悪かった。勘忍してくれい。(娘は顔を画家の胸に押付く。画家は
徐
(
しずか
)
に娘の髪を撫づ。娘忽ち
欷歔
(
ききょ
)
す。画家小声にて。)
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
ワツと泣き
洩
(
も
)
る声を無理に制せる梅子は、ヒシとばかり銀子を
抱
(
いだ
)
きつ、燃え立つ二人の花の唇、一つに合して、
暫
(
し
)
ばし人生の
憂
(
う
)
きを逃れぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
大百貨店に於ける一装飾工の惨死! このことに興味を
抱
(
いだ
)
いた君が、これからS百貨店へ行って、六年以上勤続の店員に訊ねることは無駄だ。
扉は語らず:(又は二直線の延長に就て)
(新字新仮名)
/
小舟勝二
(著)
私の思いどおりに昨日の記憶を呼び起して不審な気持を
抱
(
いだ
)
き乍らも何気なく立ち去ったのであるか、一向判りませんでした。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は上品な芸術家に疑惑を
抱
(
いだ
)
き、「うつくしい」芸術家を否定した。田舎者の私には、どうもあんなものは、キザで仕様が無かったのである。
十五年間
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして、ばたばた
近寄
(
ちかよ
)
つて
來
(
き
)
た
夏繪
(
なつゑ
)
と
敏樹
(
としき
)
を
靜
(
しづか
)
にさせながら、
二人
(
ふたり
)
を
兩方
(
りやうはう
)
から
抱
(
いだ
)
きよせたまま
蜂
(
はち
)
の
動作
(
どうさ
)
を
眺
(
なが
)
めつゞけてゐた。
画家とセリセリス
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
これが須磨子を知っている人の
殆
(
ほと
)
んどが
抱
(
いだ
)
いた感じではなかったろうか、この偶然の言葉が須磨子の全生涯を批評しているようだといわれた。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
死ぬる事と只消えてゆく事とを、どうか同じものにしたくないと思ふ焦慮の火を自分のうちに
抱
(
いだ
)
いてゐるそのためなのだらうか。それとも……
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
私はまた変な不安の
念
(
おも
)
いを
抱
(
いだ
)
きながら、あまり
執拗
(
しつよう
)
に留めるのも大人げないことだと思って女のいうがままにさしておいた。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
お露は児のために生き、児は
島人
(
しまびと
)
の
何人
(
なんぴと
)
にも
抱
(
いだ
)
かれ、大河はその望むところを達して島の奥、森蔭暗き墓場に眠るを得たり。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お勢は今
甚
(
はなは
)
だしく迷っている、
豕
(
いのこ
)
を
抱
(
いだ
)
いて臭きを知らずとかで、
境界
(
きょうがい
)
の臭みに居ても、おそらくは、その臭味がわかるまい。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一、
賭博
(
とばく
)
のよろしくないことはつくづく親の話によって承知し、いかなる
誘惑
(
ゆうわく
)
があるとも、
賭博
(
とばく
)
などには手を出すまいぞという思想を
抱
(
いだ
)
いた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その
後
(
のち
)
僕は君と
交
(
まじわ
)
っている間、君の
毒気
(
どくき
)
に
中
(
あ
)
てられて死んでいた心を振い起して高い
望
(
のぞみ
)
を
抱
(
いだ
)
いたのだが、そのお蔭で無慙な
刺客
(
しかく
)
の手にかかって
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
月に寄せたるにて木曾の山
月
(
つき
)
を
抱
(
いだ
)
くの語は
彼
(
か
)
の
杜工部
(
とこうぶ
)
が
四更山吐月
(
しかうやまつきをはく
)
と詠じたると異意同調ともいふべきなり其の謠ふ間の拍子取りにはトコセイ。
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
我と彼との愛こそ
淤泥
(
おでい
)
の
中
(
うち
)
に輝く玉の如きものなれ、我はこの一つの穢れざるを
抱
(
いだ
)
きて、この世の
渾
(
すべ
)
て穢れたるを忘れん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
頭
(
かしら
)
を
出
(
いだ
)
せば、ベッドの横側に立てるは、小使いなり。油紙包みを
抱
(
いだ
)
き、
廿文字
(
にじゅうもんじ
)
にからげし重やかなる箱をさげて立ちたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
此事実は小生が帰宅して直ちに妻の臥所の縁に腰を掛け居りし時、妻の物語りし所に候。其時妻は小生の頸に
抱
(
いだ
)
き付き震ひ居り、両眼潤み居り候。
アンドレアス・タアマイエルが遺書
(新字旧仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
農夫は義歯を取り上げようとして、初めてコップの水がなかに歯を
抱
(
いだ
)
いたままで、堅く凍りついているのに気がついた。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
同じ主義を
抱
(
いだ
)
いている故に、表現されたものも同じであると考えるのは
甚
(
はなはだ
)
しい
迷妄
(
めいもう
)
である。芸術にあっては、党派というものは最も拙劣な空想だ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
重太郎はお葉の枝を我が胸に
犇
(
ひし
)
と
押当
(
おしあ
)
てた。お葉は重太郎の枝を我が袖に
抱
(
いだ
)
いた。重太郎の眼には涙が見えた。お葉も何とは無しに悲しくなった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だから、そこに冥路の国がある、死んだ魂があつまる死霊の国がある——とエスキモー土人が盲信を
抱
(
いだ
)
くようになる。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼の精神は、今はただ一つの
包
(
パオ
)
(饅頭)の上に集って、さながら
十世単伝
(
じっせたんでん
)
の
一人子
(
ひとりご
)
を
抱
(
いだ
)
いているようなものであった。
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
まち
子
(
こ
)
は、ふと
昔
(
むかし
)
のことを
考
(
かんが
)
へると、なんとなく
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
が
急
(
きふ
)
にいとしいものゝやうに
思
(
おも
)
はれて、そのいとしいものをかい
抱
(
いだ
)
くやうに
身
(
み
)
をすくめた。
追憶
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
私は今度はなんの希望も
抱
(
いだ
)
かずに、ただ気弱さから、お前の兄たちの招待をことわり切れずに、T村を三たび訪れた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
抱
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“抱”を含む語句
抱擁
引抱
抱合
介抱
一抱
召抱
抱込
辛抱
抱妓
二抱
掻抱
抱上
三抱
相抱
五抱
抱緊
抱占
懐抱
御抱
抱付
...