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履
>
は
ふりがな文庫
“
履
(
は
)” の例文
大手町で電車を降り、停留場前のバラック仮建築の内務省の門衛に訊き、砂利を踏んで
這入
(
はひ
)
つて、玄関で竹草履に
履
(
は
)
きかへてゐると
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その人が玄関からはいったら、そのあとに行って見ると
履
(
は
)
き
物
(
もの
)
は一つ残らずそろえてあって、
傘
(
かさ
)
は傘で
一隅
(
いちぐう
)
にちゃんと集めてあった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
迦羅奢の
声音
(
こわね
)
は、次第に強いものに変って来た。忠興は、自分の愛が、彼女に
履
(
は
)
きちがえられたかと、残念そうに唇をふるわせた。
日本名婦伝:細川ガラシヤ夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何
(
ど
)
うかすると自分の
履
(
は
)
いてゐる草履がペツタ/\いふのに、飛上るやうに
吃驚
(
びつくり
)
して
冷汗
(
ひやあせ
)
を出しながら、足の續く限り早足に
歩
(
ある
)
いた。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
藤次郎はお店の
袢纒
(
はんてん
)
を着て、新しい麻裏を
履
(
は
)
き、紺の匂ひをプンプンさせて居りました。お
悔
(
くや
)
みかた/″\手傳ひに來たのでせう。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
野狐禅
(
やこぜん
)
的に悟り顔をすることで、自ら得意としているのだからたまらない、
畢竟
(
ひっきょう
)
彼等は、自然主義の精神を
履
(
は
)
きちがえているのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
それに、小川を
渉
(
わた
)
ったり、草原を歩いたりすることは、何よりも好きなので、今日の遠足にも、ちゃんと牛の皮の深靴を
履
(
は
)
いて来ていた。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
黒縮緬
(
くろちりめん
)
の
羽織
(
はおり
)
、
唐繻子
(
たうじゆす
)
の
帯
(
おび
)
を
〆
(
し
)
め、小さい
絹張
(
きぬばり
)
の
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
を
傍
(
そば
)
に置き、
後丸
(
あとまる
)
ののめりに
本天
(
ほんてん
)
の
鼻緒
(
はなを
)
のすがつた
駒下駄
(
こまげた
)
を
履
(
は
)
いた
小粋
(
こいき
)
な
婦人
(
ふじん
)
が、女
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身体より大きい
豹
(
ひょう
)
の生皮をかついで来る
玀々
(
ロロ
)
族にも——
纒足
(
てんそく
)
した女の
履
(
は
)
く、小さな桃色の可愛らしい靴を売っている男にも——
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
そして外へ出る時庭に
見馴
(
みな
)
れない綺麗な下駄を一足見付けた。彼は畳のような下駄だと思って
履
(
は
)
こうとすると、母は「これ。」と顎を引いた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
髪
(
かみ
)
を長くしてみたり、赤い着物で外出したり、一本歯の下駄を
履
(
は
)
いたりすることは、馬鹿でもやり得ることで、心の独立を
崇
(
あが
)
める値いはない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
後向
(
うしろむ
)
きに
成
(
な
)
りて
猶
(
なほ
)
も
鼻緒
(
はなを
)
に
心
(
こゝろ
)
を
盡
(
つく
)
すと
見
(
み
)
せながら、
半
(
なかば
)
は
夢中
(
むちう
)
に
此下駄
(
このげた
)
いつまで
懸
(
かゝ
)
りても
履
(
は
)
ける
樣
(
やう
)
には
成
(
な
)
らんともせざりき。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
最後にあの
乳母車
(
うばぐるま
)
! あれはつい四五日
前
(
まへ
)
から、
格子戸
(
かうしど
)
の中にあるやうになつた。見給へ、男女の
履
(
は
)
き物の間におしやぶりも一つ落ちてゐるのを。
わが散文詩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
粗末
(
そまつ
)
な
布
(
きれ
)
の
下衣
(
したぎ
)
しか
着
(
き
)
てゐないで、
足
(
あし
)
には
何
(
なに
)
も
履
(
は
)
かず、
眼
(
め
)
は
落着
(
おちつ
)
いてゐて、
別
(
べつ
)
に
驚
(
おどろ
)
いた
風
(
ふう
)
も
無
(
な
)
く、こちらを
見上
(
みあ
)
げた。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
裏口の戸をガタピシとあけて、そこへ現われたのは、
狩衣
(
かりぎぬ
)
をつけて、
藁
(
わら
)
はばき、藁靴を
履
(
は
)
いた、五十ばかりの
神主体
(
かんぬしてい
)
の男。金剛杖を柱に立てかけて
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
踵
(
かかと
)
のまがった靴を
履
(
は
)
いて、紫色の
袴
(
はかま
)
を引きずって、髪を
算盤珠
(
そろばんだま
)
のようにふくらまして勝手口から案内も
乞
(
こ
)
わずに
上
(
あが
)
って来た。これは主人の
姪
(
めい
)
である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なんでも、警察の方のお調べによると、旦那様のところへやって来た恐ろしいものは、明らかに、一人で、庭下駄を
履
(
は
)
いて来たというのでございます。
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
けれども、私の傍には厳然と、いささかも威儀を崩さず小坂氏が
控
(
ひか
)
えているのだ。五分、十分、私は足袋と悪戦苦闘を続けた。やっと両方
履
(
は
)
き
了
(
お
)
えた。
佳日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
下には
泥溝
(
どぶ
)
板が敷いてあった。私の下駄はその泥溝板に触れる度にがたがたと音がしたが、女は空気
草履
(
ぞうり
)
でも
履
(
は
)
いているのか、なんの音もしなかった。
妖影
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
……と見えたが、驚くことはない、実は金博士が右脚に
履
(
は
)
いていた肉色の
超長靴
(
ちょうながぐつ
)
が、すぽんと抜けて、ゴンゴラ将軍の手に残っただけのことであった。
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
おそらくこの種の形を持つものは起原が古く、よく絵にある
藤原鎌足
(
ふじわらのかまたり
)
公の
履
(
は
)
かれている
沓
(
くつ
)
の形そのままであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
いつのことだったか、雨が降りそうな日に、私と私の細君とが公設市場の近くまで来た時、理髪屋の前で細君が
転
(
ころ
)
んだ、高い歯の
下駄
(
げた
)
を
履
(
は
)
いていたのだ。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
もっとも新しい下駄でさえ
履
(
は
)
きづらいものであるから、新しい物理器械がそう簡単に働いてくれるはずはない。
原子爆弾雑話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ねえ支倉君、これ以上論ずる問題はないと思うが、ただただ
憐憫
(
れんびん
)
を覚えるのは、伸子に操られて
鞠沓
(
まりぐつ
)
を
履
(
は
)
かせられ、具足まで着せられた暗愚な易介なんだよ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
肩が
凝
(
こ
)
って、坐り続けた両腿がだるく張った感じだった。道子は立上って廊下を歩き出した。そのまま玄関で下駄を
履
(
は
)
くと、冬晴れの午後の戸外へ出てみた。
快走
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
翌朝久し振りで足駄を買って
履
(
は
)
いてみると、これがまた妙にぎごちないものであった。そして春田のような
泥濘
(
ぬかるみ
)
の町を骨を折って歩かなければならなかった。
電車と風呂
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それに
引
(
ひ
)
き
換
(
か
)
えあたしゃそこらに
履
(
は
)
き
捨
(
す
)
てた、
切
(
き
)
れた
草鞋
(
わらじ
)
もおんなじような、
水茶屋
(
みずぢゃや
)
の
茶汲
(
ちゃく
)
み
娘
(
むすめ
)
。
百夜
(
ももよ
)
の
路
(
みち
)
を
通
(
かよ
)
ったとて、お
前
(
まえ
)
に
逢
(
あ
)
って、
昔話
(
むかしばなし
)
もかなうまい。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
小さい時からお
乳母日傘
(
んばひがらかさ
)
で大きくなったのは申すまでもありません、祖母の小さい時の、記憶の一つだと云う事ですが、お正月か何かの宮参りに
履
(
は
)
いた
木履
(
ぽっくり
)
は
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
素足
(
すあし
)
も、野暮な
足袋
(
たび
)
ほしき、寒さもつらや」といいながら、江戸芸者は冬も素足を
習
(
ならい
)
とした。
粋者
(
すいしゃ
)
の間にはそれを
真似
(
まね
)
て足袋を
履
(
は
)
かない者も多かったという。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
「わたくしは、まだ、わが手で、自分の
履
(
は
)
きものを、揃えたことがありませぬ。かご屋、はき物を——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
栄養栄養と、この流行に災いされ、栄養薬を食って栄養食の生活なりと、
履
(
は
)
き違えをしているらしい。
味覚馬鹿
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その日、彼は、お芳にもらった靴をわざわざ
履
(
は
)
いて行くことにしたが、靴はまだ十分に新しかった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
一人
(
いちにん
)
は黒の中折帽の
鐔
(
つば
)
を
目深
(
まぶか
)
に
引下
(
ひきおろ
)
し、
鼠色
(
ねずみいろ
)
の毛糸の
衿巻
(
えりまき
)
に半面を
裹
(
つつ
)
み、黒キャリコの紋付の羽織の下に紀州ネルの
下穿
(
したばき
)
高々と
尻褰
(
しりからげ
)
して、
黒足袋
(
くろたび
)
に木裏の
雪踏
(
せつた
)
を
履
(
は
)
き
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
山裾の小川沿いに、正面の街道から、田の
畝
(
あぜ
)
づたいに、敵が近づいてきた。だん袋を
履
(
は
)
いて、陣笠をかむり、
兵児帯
(
へこおび
)
に、刀を差して、肩から白い包を背負った兵であった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
まず彼女は、
白繻子
(
しろじゅす
)
の訪問服の上から
木鼠
(
きねずみ
)
の毛皮外套を着て、そして、スキイを
履
(
は
)
いた。帽子には、驚くべきアネモネの
縫
(
ぬい
)
とりがあった。
耳環
(
みみわ
)
は
真珠の母
(
マザア・オヴ・パアル
)
の心臓形だった。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
尤
(
もっと
)
もこれを
履
(
は
)
き違えるようなら庶務課長は勤まらない。三味線が
紛
(
まぎ
)
れのない註釈を加えている。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
小袖からは
淋
(
さび
)
しい山道を一里ばかりも離れていたが、冬になると雪がひどいので、男の子も女の子も竹の皮で
拵
(
こしら
)
えた靴見たいな物を
履
(
は
)
いて、
手拭
(
てぬぐい
)
ですっぽりと
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
大きいと言えばすぐに長さ三尺の四尺のと書かなければ承知せぬが、かりにこれに相応するような大足の持主があるにしても、そんな物を
履
(
は
)
いて山の中があるけたものでない。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
今しも
石垣
(
いしがき
)
の岸から二人の潜水夫が異様な
甲冑
(
かつちう
)
を頭にすつぽり冠つて、だぶ/\の潜水服を着て、便器のやうな形の大きい靴を
履
(
は
)
きながら船渠の底へもぐらうとしてゐる所だつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
謙虚についても
履
(
は
)
きちがいはありませんから御安心下さい。自らを大切にし尊ぶことから生じる自重のみが謙虚への本道です。相対的に世俗的にへりくだることではないのだから。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
が乗客はまだいずれも雪国らしいぎょうさんな
風姿
(
なり
)
をしている。
藁沓
(
わらぐつ
)
を
履
(
は
)
いて、綿ネルの布切で首から頭から包んだり、綿の厚くはいった紺の
雪袴
(
もんぺ
)
を
穿
(
は
)
いたり——女も——していた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
御存じでせう、其穢多は今でも町はづれに
一団
(
ひとかたまり
)
に成つて居て、皆さんの
履
(
は
)
く
麻裏
(
あさうら
)
を
造
(
つく
)
つたり、靴や太鼓や三味線等を
製
(
こしら
)
へたり、あるものは又お百姓して
生活
(
くらし
)
を立てゝ居るといふことを。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
午食を使って間もなく、踏みぬいた
草鞋
(
わらじ
)
を
履
(
は
)
きかえた。次第に
狭
(
せ
)
ばまり細くなる流れを逆にさかのぼっていた。この尾根を越えてしまえば目ざしている土地に出ることが出来るであろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
これも
平生
(
へいぜい
)
は
木
(
き
)
の
下駄
(
げた
)
をはいたものでありませうが、この
時分
(
じぶん
)
の
人
(
ひと
)
は
多
(
おほ
)
くは
草履
(
ぞうり
)
や
草鞋
(
わらぢ
)
のほかに
皮
(
かは
)
で
作
(
つく
)
つた
靴
(
くつ
)
を
履
(
は
)
き、またこんな
形
(
かたち
)
の
下駄
(
げた
)
を
雨
(
あめ
)
ふりなどには
履
(
は
)
いてゐたことがわかります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
そして長靴を軍靴に
履
(
は
)
き換えた。網扉を押すとき、彼は部屋の様子を記憶に刻み込むようにも一度しげしげと振り返った。脱ぎ捨てられた長靴は、ひとつは立ちひとつは床にたおれていた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
赤靴を
履
(
は
)
き頭髪を分けをり年頃二十六、七歳位運転手風の好男子なり、男の黒つぽき
外套
(
がいとう
)
のかくしと女のお召コートの
袂
(
たもと
)
には各々遺書一通あり、
尚
(
なお
)
女のコートの袂には
白鞘
(
しろさや
)
の短刀を
蔵
(
かく
)
しあり。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「ええ、星田さんの
履
(
は
)
いてらっしゃるのと、同じ型の靴です。恐ろしい男はその靴を履いて、京子さんの死体を鎌倉の二階家に運んだのです。ですから、星田さんと同じ靴跡がついていた——」
殺人迷路:10 (連作探偵小説第十回)
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
この靴を逆さまに
履
(
は
)
いて追う者の眼をごまかし無難に逃げ
果
(
おお
)
せるという事よくあるやつで、『義経記』五の六章に、義経吉野を落る時、弁慶誰も命惜しくば靴を
倒
(
さか
)
しまに履きて落ちたまえと勧め
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「草履は此處にございます、血が附いて居りますが、新らしい草履で、若旦那はこれを
履
(
は
)
いて逃出す氣だつたに違ひありません」
銭形平次捕物控:298 匕首の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『パーシウス、
履
(
は
)
いてごらん、』とクイックシルヴァが言いました。『これから先の道中、君はいくらでも望み通り足が軽くなるだろう。』
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
履
常用漢字
中学
部首:⼫
15画
“履”を含む語句
木履
草履
上履
上草履
草履取
麻裏草履
草履穿
藁草履
履行
履歴
敝履
履脱
板草履
空気草履
破草履
珠履
長刀草履
草履袋
藁履
冠履顛倒
...