快走かいそう
中の間で道子は弟の準二の正月着物を縫い終って、今度は兄の陸郎の分を縫いかけていた。 「それおやじのかい」 離れから廊下を歩いて来た陸郎は、通りすがりにちらと横目に見て訊いた。 「兄さんのよ。これから兄さんも会社以外はなるべく和服で済ますのよ …