)” の例文
法律に対する完解、人間の好悪感にいての意見、わけても最後の庄司弁護士の心持などには鋭い深い氏の物の見方が窺われました。
作風は、やはり仏師育ちですが、私にいてから、置き物風のものをも研究しましたが、仏様に関した方のものがやはり得意でした。
その当日は数十けんの「筋目の者」たちは十六のきくのご紋章もんしょうの附いたかみしもを着ることを許され、知事代理や郡長等の上席にくのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
喜んで死にくから、是非、心臓を切り出して、僕の血液をとおし、出来た曲線を記念として君の許に送ってくれといってやまない。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そして、そのことを老妓はとくに知っている癖に、それにいては一言も云わないだけに、いよいよパトロンの目的が疑われて来た。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
人は受け得る位置に置かれてはいるでしょうが、与える位にいてはいないのです。与うる者は常に見えざる無上な力のみなのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
庄太郎が女にさらわれてから七日目の晩にふらりと帰って来て、急に熱が出てどっと、床にいていると云ってけんさんが知らせに来た。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われ等の遠き前途にきては、われ等は何事も語るまい。何となれば、われ等もまたそれにきて、何等知るところがないからである。
だから、この深夜に移動する一隊にいてはお互いに疑惑の目を凝らすのである。それが人間であるから神経はいよいよたかぶるのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
こと浮沈室ふちんしつ機關室きくわんしつとはこのていもつと主要しゆえうなる部分ぶゞんではあるが、此事このこといては殘念ざんねんながらわたくしちかひたいして一言いちごん明言めいげんすること出來できぬ。
今日の軍人政治家が未亡人の恋愛にいて執筆を禁じた如く、いにしえの武人は武士道によって自らの又部下達の弱点を抑える必要があった。
堕落論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
戯曲作法にいては、ほとんど知るところが無い。これは、わば LESEDRAMA ふうの、小説だと思っていただきたい。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
〔譯〕一歴史れきし、皆形迹けいせきつたへて、情實じやうじつ或は傳らず。史を讀む者は、須らく形迹にいて以て情實をたづね出だすことを要すべし。
「これにきましては、いろいろ申しあげたいことがございますが、かく、御子息の死骸をお眼にかけたうえで、申しあげます」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
先生は頭を枕にぴったりとけて横になっていられる、母堂や令妹が枕許に坐していて、投稿の紙を一枚一枚先生の顔の前へ出す
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その晩もお三輪は旅人のような思いで、お力の敷いてくれた床にいた。浦和の方でよく耳についた蟋蟀こおろぎが、そこでもしきりに鳴いた。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いては今日わたくしの机の抽斗に百円入れて置きましたそれが、貴女のお帰りになると同時に紛失したので御座いますが、如何いかがでしょう
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
もっともこれは地上ちじょうははいて申上もうしあげることで、肉体にくたいててしまってからのはは霊魂たましいとは、むろん自由自在じゆうじざいつうじたのでございます。
伯父さんも義理で孝助を出すに違いないが、いちゃア明日あした伯父さんと一緒に帰って来ては困るが、孝助がひとりで先へ帰る訳には出来まいか
のあるいは世をなげき、時をののしり、危言きげん激語げきごして死にく者の如き、壮は則ち壮なりといえども、なおこれ一点狂激の行あるを免れず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
改造社の古木鉄太郎こきてつたらう君の言ふには、「短歌は将来の文芸からとり残されるかどうか?」にき、僕にも何か言へとのことである。
又一説? (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さく三十七ねん十二ぐわつ某夜ばうやことなりき、れいごと灌水くわんすゐへてじよくねむりきしもなく、何者なにものきたりて七福しちふくあたふとげたりとゆめむ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
県の取締方針にいてお伺ひしたいと考へたのだつたが、それで何うしても諒解りやうかいを得られないのなら自分等としての立場はない。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
彼はついひと月前から職にいたのだ。——昔馴染むかしなじみの周囲のなかで、彼は病後の疲れに似た、何かの安らかな休息を感じてゐた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
私が悪いことと知りながらした罪にいて、またなり大きい後悔をしないでは居られませんでした。お歌ちやんにあやまりますと
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そこで長いあいださまざまの偉大な苦行を積んだ結果、ついに認められて信仰のための拷問ごうもんを受け、殉教者として死にくこととなった。
平次は假借かしやくしません。八五郎に手傳はせて押込むやうにそれ/″\の部署にかせると、家の中は暫く、死の寂寞せきばくが領しました。
一知夫婦をいじめたかにいてですね……出来るだけ秘密に……そうしてモット具体的に確かめられるだけ確かめておいて下さい。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
婦女子のこびを売るものにいて見るも、また団結を以て安全となすものと、孤影悄然しょうぜんとして猶且つ悲しまざるが如きものもある。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なにかミハイル、アウエリヤヌヰチがふたのでるが、すぐみな掻消かききえてしまつた。くてアンドレイ、エヒミチは永刧えいごふめぬねむりにはいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしが榎本君に対して不平らしい口吻こうふんを洩らしたのは、要するに演劇しばいの事情というものにいて私の盲目を証拠立てているのであった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長兄のところへ舞戻って来てからもう一カ月以上になるのに、彼は何の職にくでもなし、ただ朝寝と夜更よふかしをつづけていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
思い出す男の別れ方によって涙の出て来るような人もあった。きんは一人一人の男にいては、出逢いの時のみを考えるのが好きであった。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
此度このたび勇戦隊が編成せられるにいては、是非共其一員に加はりたいので、早速志願したが、一里正の子だと云ふかどで御採用にならなかつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
卒業後私は職業にもかず、ぶらぶらしていた。家のものも強いて私を促がすでもなく、また進んで私のために図ってくれるでもなかった。
前途なお (新字新仮名) / 小山清(著)
たくさんの帷子は皆当て字であることは、さして推測に困難ではないが、なお十分に地図にき実地に立証してみたいと思う。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
朝飯後、天幕の諸君に別れて帰路にく。成程なるほどニオトマムは山静に水清く、関翁が斗満とまむを去って此処に住みたく思うて居らるゝも尤である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
勘次かんじわざ卯平うへいせつけるやうとやいたときとりかごせて、戸口とぐち庭葢にはぶたうへに三も四いたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
要するに新旧いずれにくも、実行的人生の理想の神聖とか崇高とかいう感じは消え去って、一面灰色の天地が果てしもなく眼前に横たわる。
ちょうど病気に倒れる直前には、その宗教団体の選挙があって、彼は猛然なる運動の結果、その弱年にもかかわらず、非常に重要な地位にいた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「夷語音釈」の次に「夷字音釈」があって、後者の末には、劉孔当という名で昔年閩に遊んで琉球の通事にいて知ったことを附記してある。
近来種々感ずるところあり、如何いかにしてもこの国に永住の事に決心せしにいては、来春早々、此較的人種に区別をおかぬ東部へ出向く考に候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
いて想い出すはベロアル・ド・ヴェルヴィルの『上達方ル・モヤン・ド・パーヴニル』三十九章にアルサスのある地の婦女威儀を重んずる余り七日に一度しか小便せず
南軍と北軍と、軍情おのずから異なることかくの如し。一は人えきくをくるしみ、一は人ようすをたのしむ。彼此ひしの差、勝敗に影響せずんばあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そして、こうして当番にく者も少いほどの危険な状態に皆を残して出て来たことに対して、私はまた烈しく自分を責めた。
われ等は歸途にきたり。此時身邊なる熔岩の流に、爆然聲ありて、陷穽かんせいを生じ炎焔ほのほを吐くを見き。されどわれはをのゝふるふことなかりき。
岩魚いわな、ヤマメ、鮎に行つた場合にいて。鳥、魚、昆虫にも、各自の生層を通じて、自在に会話の出来る瞬間といふものが、有るのではないか。
つぎ硯友社けんいうしやるにいて、第二の動機だうきとなつたのは、思案外史しあんがいし予備門よびもん同時どうじ入学生にふがくせい相識あいしつたのです、其頃そのころ石橋雨香いしばしうかうつてました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「余が自らにいて最も気掛りになつてゐるのは、余が美しく、すなわち気長に騒がずに、悠揚として死にたいと云ふことだ」
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
こうして、彼は、大きな寝台の中で、再び眠りにくのである——母親と並んで奥のほうに寝る、その大きな寝台の中で。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)