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嘸
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さぞ
ふりがな文庫
“
嘸
(
さぞ
)” の例文
他人
(
ひと
)
のを見てもわかりそうなものだが、自分のは見えないから立派にしているつもりらしい。冬なぞは
嘸
(
さぞ
)
寒いだろうと同情に堪えぬ。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
新「本当にあんな事を云われると
厭
(
いや
)
なものでね、私は男だから構いませんが、お前さんは
嘸
(
さぞ
)
腹が立ったろうが、お
母
(
っか
)
さんには黙って」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「あなたのお宅の御主人は、面白い
画
(
え
)
をお
描
(
か
)
きになりますね。
嘸
(
さぞ
)
おうちのなかも、いつもおにぎやかで面白くいらっしゃいましょう。」
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
遅刻が祟って、僕は
嘸
(
さぞ
)
や面白かろうと思う刑務所見学の仲間から外れ、ただ一人、面白くもない、市庁の見学に赴くこととなった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けれども又淋しい
顔
(
かほ
)
をして、
責
(
せ
)
めて小供でも生きてゐて呉れたら
嘸
(
さぞ
)
可
(
よ
)
かつたらうと、つく/″\考へた事もありましたと自白した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
承まはり何にも知ぬ私しさへ
悔
(
くや
)
しく
存
(
ぞん
)
ずる程なれば
嘸
(
さぞ
)
御無念
(
ごむねん
)
にも思し召んが他所から出來た事ではなし
矢張
(
やつぱり
)
お身から
求
(
もと
)
めた事故人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
本当
(
ほんと
)
に
嘸
(
さぞ
)
御不自由でございましょうねえ、
皆
(
みんな
)
気の附かない者ばかりの
寄合
(
よりあい
)
なんですから。どうぞ何なりと御遠慮なく
仰有
(
おっしゃ
)
って下さいまし。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
口
(
くち
)
に
出
(
だ
)
して
私
(
わたし
)
が
我子
(
わがこ
)
が
可愛
(
かあい
)
いといふ
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
したら、
嘸
(
さぞ
)
皆樣
(
みなさま
)
は
大笑
(
おほわら
)
ひを
遊
(
あそ
)
ばしましやう、それは
何方
(
どなた
)
だからとて
我子
(
わがこ
)
の
憎
(
にく
)
いはありませぬもの
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
世に珍しい美女にお生れになりながら、
選
(
よ
)
りに選って
祖父
(
おゝじ
)
か
曾祖父
(
ひいおゝじ
)
のような夫をお持ちなされたのでは、
嘸
(
さぞ
)
御不満なことがおありであろう。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そういう関係のある草だから花が咲いたら
嘸
(
さぞ
)
ゆかしい花だろうと誰でも想像するけれども、花が咲くと意外で、まるで雑草の花のようです。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
定めし、文平は
婦人
(
をんな
)
子供
(
こども
)
と見て思ひ
侮
(
あなど
)
つて、自分独りが男ででも有るかのやうに、
可厭
(
いや
)
に
容子
(
ようす
)
を売つて居ることであらう。
嘸
(
さぞ
)
。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
マダして
宜
(
い
)
いこともあるだろう、
為
(
し
)
なくて
宜
(
い
)
いこともあるだろう、傍観者から
之
(
これ
)
を見たらば
嘸
(
さぞ
)
堪
(
た
)
え
難
(
がた
)
いことに思うでありましょうけれども
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
若し此所と決めれば赤シヤツも野だも両人の腕白の手に小付かれて
嘸
(
さぞ
)
この欅の幹の石のやうな瘤に頭を打付けて痛がつた事ならんと痛快に思ふ。
坊つちやん「遺蹟めぐり」
(新字旧仮名)
/
岡本一平
(著)
知らぬ同志では
嘸
(
さぞ
)
困ったことだろうと思われますが、そこはよくしたもので、其道順は一定していて、昼食は何処、泊りは何処と、
度
(
たび
)
重なって
登山談義
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「然し夫婦連れですからな。それに、御覧の通り気の廻らん奴ですから、
嘸
(
さぞ
)
、お気に合はぬ事もありませうと思つてな。」
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
然
(
しか
)
るに
天
(
てん
)
へ
上
(
のぼ
)
った
姫
(
ひめ
)
の
眼
(
め
)
は、
大空中
(
おほぞらぢゅう
)
を
殘
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
もなう
照
(
て
)
らさうによって、
鳥
(
とり
)
どもが
晝
(
ひる
)
かと
思
(
おも
)
うて、
嘸
(
さぞ
)
啼立
(
なきた
)
つることであらう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
其間に親戚故旧の間に種々の変化もあつた様だから、
久振
(
ひさしぶり
)
に其等の人々に遇つて色々と話合つたら
嘸
(
さぞ
)
楽しい
床
(
ゆか
)
しいことであらうと思つたからである。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「それは気の毒ですな。旅先でお逝去りになったのでは、お嬢さんは
嘸
(
さぞ
)
お困りでしょう。」ギルは傍から口をいれた。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
はや
其
(
そ
)
の
谷川
(
たにかは
)
の
音
(
おと
)
を
聞
(
き
)
くと
我身
(
わがみ
)
で
持余
(
もてあま
)
す
蛭
(
ひる
)
の
吸殻
(
すひがら
)
を
真逆
(
まツさかさま
)
に
投込
(
なげこ
)
んで、
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
したら
嘸
(
さぞ
)
可
(
いゝ
)
心地
(
こゝち
)
であらうと思ふ
位
(
くらゐ
)
、
何
(
なん
)
の
渡
(
わた
)
りかけて
壊
(
こは
)
れたら
夫
(
それ
)
なりけり。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二十五日、二十八日、
晦日
(
みそか
)
、大晦日、都の年の瀬は日一日と
断崖
(
だんがい
)
に近づいて行く。三里東の東京には、二百万の人の海、
嘸
(
さぞ
)
さま/″\の波も立とう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
藻にも菱にも霊が有って、執念深く
仇
(
あだ
)
をするものとしか取れなかった。裸体でさえ
是
(
これ
)
だから、衣類を着ている小虎は、
嘸
(
さぞ
)
泳ぎ難いだろうと思い
遣
(
や
)
った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
家じゅう大騒ぎして私が旅立ったら、妻は
嘸
(
さぞ
)
歎き悲しむことだろう、というので、代匠記以来、
防人
(
さきもり
)
などに出立の時の歌ででもあろうかといっている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
例の場所にて釣りたらば、水は浪立ずして、
熨
(
の
)
したる如く、船も竿も静にて、毛ほどの
中
(
あた
)
りも能く見え、殊に愛日を背負ひて釣る心地は、
嘸
(
さぞ
)
好かるべし。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
先生の東洋史の講義は上級生へのもので私は聞くことが出来なかったが、
嘸
(
さぞ
)
独特なものであったろうと思われる。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
家
(
うち
)
の昌作叔父さんと来たらマア
怎
(
ど
)
うでせう! 町の人達も
嘸
(
さぞ
)
小川の
剰
(
あまさ
)
れ者だつて笑つてるだらうと思ひましてね。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
十月には伊勢殿の御勘気も解けて、
上洛
(
じょうらく
)
御免のお
沙汰
(
さた
)
がありましたとやら、またそのうち
嘸
(
さぞ
)
かし色々と怪しげな物ごとが
出来
(
しゅったい
)
いたすことでございませう。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
と言ふので、一生懸命に歩いたが、村が見えなくなつた時は
流石
(
さすが
)
に胸が少し迫つて、親達は
嘸
(
さぞ
)
驚く事であらう。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
私が春のインバネスを羽織つてゐたことを修一から別れた妻が聞いたら、「おや/\、そないなお
洒落
(
しやれ
)
をしとつたの、イヨウ/\」と、
嘸
(
さぞ
)
かし笑ふであらう。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「静子、許して呉れ。わしは云いようのない大悪人だったのだ。お前は
嘸
(
さぞ
)
かしわしを恨んでいるだろう。わしのようなものを夫に持って後悔しているだろうね」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
十七八年全く会わないのだから不意打ちを食わせたら
嘸
(
さぞ
)
驚くだろうと頻りに肝胆を砕いていたが、今朝京都へ立つ前に愈〻その神算鬼謀を実行することになった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
又
(
また
)
諸所
(
しよしよ
)
の
修道院
(
しうだうゐん
)
を
訪
(
ともら
)
つて、もはや
此世
(
このよ
)
に
居
(
ゐ
)
ない
会友
(
くわいいう
)
の
為
(
ため
)
に
祈
(
いのり
)
を
上
(
あ
)
げ、
其名
(
そのな
)
を
巻物
(
まきもの
)
に
書
(
か
)
きとめて、
寺
(
てら
)
から
寺
(
てら
)
へと
其過去帳
(
そのくわこちやう
)
を
持回
(
もちまは
)
つたなら、
皆
(
みんな
)
も
嘸
(
さぞ
)
悦
(
よろこ
)
ぶ
事
(
こと
)
であらうが、
第
(
だい
)
一
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
冬の日の
木曾路
(
きそじ
)
嘸
(
さぞ
)
や
御疲
(
おつかれ
)
に御座りましょうが御覧下され
是
(
これ
)
は当所の名誉
花漬
(
はなづけ
)
今年の夏のあつさをも越して今降る雪の
真最中
(
まっさいちゅう
)
、色もあせずに
居
(
お
)
りまする梅桃桜のあだくらべ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
永い間雪に包まれた人たちにとつては
嘸
(
さぞ
)
かしこの見榮えのせぬさびしい花に心を惹かるゝことであらう。東京の植物園にも甘藷先生の碑のあたりに一本だかあつたとおもふ。
花二三
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
不思議な御縁によってあなたの許に嫁ぎ、新婚の一夜を過して、その翌日、実家へ戻って、そのまま、御そばに伺わぬ私の行いを、あなたは
嘸
(
さぞ
)
かしお怒りで御座いましょう。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「ふうむ。あの大根切りなぞは
嘸
(
さぞ
)
練習が入るだらうね。あれをするのに何年位かゝつたい。」
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
然しここの生活だけは乳金、
代赭
(
たいしや
)
、
群青
(
ぐんじやう
)
の外にエメロオド、ロオズマツダア等を納れ得るのである。あの布を干す二三人の群を目の粗いカンヷスに取つたら
嘸
(
さぞ
)
愉快の事だらう。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
「なるほど。それぢや、
嘸
(
さぞ
)
お力落しでしたらう。」と云つてから、信一郎は少し躊躇してゐたが、「つかぬ事を、承はるやうですが、今
貴君
(
あなた
)
方と話してゐた婦人の方ですね。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
買
度
(
た
)
き心の起らぬものとては
一個
(
ひとつ
)
も無し、藻西太郎の妻倉子は此上も無き
衣服
(
なり
)
蕩楽とか聞きたり
斯
(
かゝ
)
る町に貧く暮しては
嘸
(
さぞ
)
かし欲き者のみ多かる可く
爾
(
さ
)
すれば
夫等
(
それら
)
の慾に
誘
(
いざな
)
われ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
天国とはどんな
善
(
よ
)
い所か知らないが、宮川氏にしても
全
(
まる
)
で
顔昵懇
(
かほなじみ
)
のない、
加之
(
おまけ
)
に言葉に不自由な西洋の人達と一緒では
嘸
(
さぞ
)
困り物だらうといふと、広岡女史は
牝牛
(
めうし
)
のやうな声で
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
次第によつたならば、少々位の狐肉は送つてくれるかも知れないと、気がついたからすぐ浅間山麓へ手紙をだし、千円の皮を残す銀狐は
嘸
(
さぞ
)
かし肉もおいしからうとたよりしたのであつた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
嘸
(
さぞ
)
大切に持っていることだろうから、気にするほどのこともあるまい……。
仙人掌の花
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
『
嘸
(
さぞ
)
冷ッこかッたでしょう。死人の唇——、あのぶよぶよした男の——』
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「さうか、——お氣の毒な事だね。一人殘されちや
嘸
(
さぞ
)
困
(
こま
)
るだらう」
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
恁ういふことが出來たら、其は
嘸
(
さぞ
)
樂しいことだらう。併しこんなことが
果
(
はた
)
して僕等に出來るだらうか、少くとも僕等はそんなことを
爲
(
な
)
し
得
(
う
)
る
素質
(
そしつ
)
を
有
(
いう
)
してゐるだらうか。
何
(
ど
)
うして思ひもよらぬことだ。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「君のやうなおませは、学校の先生も
嘸
(
さぞ
)
手甲摺
(
てこず
)
つたことだらう。」
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
のんきな役者かたぎにも
嘸
(
さぞ
)
何とか感じたであらう。
役者の一生
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
尊
(
たふと
)
いあすこの
水盤
(
すゐばん
)
へ
乘
(
の
)
つてみたなら
嘸
(
さぞ
)
よからう。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
提
(
さ
)
げなば定めて村人の驚き羨まんにと思ふ
氣色
(
けしき
)
なりまた
頓
(
やが
)
て我に近づき先ほど見上げましたが珍しい
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
彈
(
はぢ
)
きがなしでよく左樣に
開閉
(
ひろげすぼめ
)
が出來ます
嘸
(
さぞ
)
高い品でござりませうと是も亦片手に握りて見たき顏の色に我はヱヘンとして
斯樣
(
かやう
)
な物は東京に住む者が
流行
(
はやり
)
に逐はれて馬鹿の看板に致すなり地方の人は鰐皮の
革提
(
かばん
)
の代りに布袋を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
彦「御隠居さま、長らく御不快で
嘸
(
さぞ
)
お困りでしょう、今お
飯
(
まんま
)
を炊いた処が、
焦
(
こげ
)
が出来たから
塩握飯
(
しおむすび
)
にして来ましたからお
食
(
あが
)
んなさい」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
聞給
(
きゝたま
)
はゞ
嘸
(
さぞ
)
な
歡
(
よろこ
)
び給ふべし
暫
(
しば
)
し
涙
(
なみだ
)
に
昏
(
くれ
)
けるが否々年も行ぬ
其方們
(
そなたたち
)
先々
(
まづ/\
)
見合
(
みあはせ
)
呉
(
くれ
)
と云を兄弟は聞ず
敵討
(
かたきうち
)
に出ると云にも非ず父樣の樣子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
嘸
漢検1級
部首:⼝
15画