)” の例文
路のまん中に一寸顔を出してゐる円いあばたの石ころさへも、嘉ッコはちゃんと知ってゐるのでした。きる位知ってゐるのでした。
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
が、かれ年月としつきつとともに、此事業このじげふ單調たんてうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがつて、段々だん/\きてた。かれおもふたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
少しき気味になると父上にうたいをうたえの話をせよのとねだっているうちに日が西に傾く。しかし今度は朝のような工合に行かぬ。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
婆さんは人が聞こうが聞くまいが口上だけは必ず述べますという風で別段きた景色けしきもなくおこたる様子もなく何年何月何日をやっている。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕は最中にも食いきて、本を見ていると、梯子はしご忍足しのびあしで上って来るものがある。猟銃の音を聞き慣れた鳥は、猟人かりゅうどを近くは寄せない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もう小説は面白くなく、読む内にきて来て、就中なかんずく作中の人物が栄華をしたり、色々に活動するのを見ると、しゃくに障って来るのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
いや寧ろ、その悪夢のように繰りひろげられた、醜悪な写真が眼にはいると、足早に近寄り、かず沁々しみじみと見詰めるのであった。
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
その後二回、三回、重ねて日本を訪問するに従ってジンバリストが昔の魅力を失ったのは、日本人のきやすいためばかりとは言えない。
……明白あからさまに云うと、この上降続いちゃ、秋風は立って来たし、さぞき厭きして、もう引上げやしまいか、と何だかそれが寂しかったよ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
保雄夫婦の心では九年間の郊外生活にいたので、市内に住んで家が新しく成つたら心持も新しく成つてかはつた創作も出来やうと思ふのと
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
毛利先生はその頁を、しきりに指でつき立てながら、いつまでも説明にきる容子ようすがない。この点もまた先生は、依然として昔の通りであった。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は何も打ち忘れているのだ。無心な帰依きえから信仰が出てくるように、おのずからうつわには美がいてくるのだ。私はかずその皿を眺め眺める。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
私は遊離した状態に在る過去を現在と対立させて、その比較の上に個性の座位を造ろうとするうつろな企てにはき果てたのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
とも二人ふたりでブラリといへた。もとより何處どこかうといふ、あてもないのだが、はなしにもきがたので、所在なさに散歩さんぽ出掛でかけたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
一体無頓着むとんちゃくなのに、橘屋たちばなやときたら、そのころはしどい借金だったのですからね。きもあかれもしやあしないでしょうが、母親が承知しない。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
故に共同の敵なる畠山持国をしりぞけるや、く迄現実的なる宗全は、昨日の味方であり掩護者であった勝元に敢然対立した。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
されど我が未だ語りかぬ間に、かれ等は早く聽きみき。われは聽衆を失はじの心より、自ら新しき説教一段を作りき。
彼はこのしょうを自分ながら不審に思った。そうして、恐らく自分の持って生れた臆病な性質が、その原因になって居るだろうと考えるのであった。
死の接吻 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
うするには話題はなしへるサ』とあくびをしながら三月兎ぐわつうさぎつて、『もう、此麽こんなことにはきてた。若夫人わかふじんなにひとはなしてもらはうぢやないか』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
育ててくれた剽軽な伯母さんの真にせまつた身ぶりにのこつていつまでもかれることのない笑ひぐさとなつた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
渇する者は飲を為し易く、飢へある者は食を為し易し、近来の傾向は歴史的也故に又回顧的也常感的也。マコレーに行きてく者はヱメルソンにかへる也。
凡神的唯心的傾向に就て (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
讀んでいた時には見なさるがいい。なかなかええもんだぜえ。厭いたら何時でもほかのものと代へてしんぜる。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
その次の土曜ならよかろうと思います。もっとも小生近来は文章を読む事がきたようだから自分に構わず開いて頂戴。「猫」は出来れば此方から上げます。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
徳川氏の兇徳、人みなき果て候よう天朝へ申上げ候者もこれ有るべく候えども、これは阿諛あゆと嫉妬とに出で候事に付き、深く御評議遊ばされずては、大事を
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
り性、き性、ムラ気、お日和ひより機嫌、胴忘どうわすれ、神経質、何々道楽、何々キチガイ、何々中毒、男あさり、女たらし、変態心理なぞの数を尽して百人が百人
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
僕たちは、もう、大人の自己弁解には聞ききてるんだ。誰もかれも、おっかなびっくりじゃないか。一も二も無く、僕たちを叱りとばせば、それでいいんだ。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたしはその間に掃除そうじまし、居残りの巡査と話してるのにもきて、そろそろ風呂の湯加減でも見ておこうかと、鍵を持って廊下を渡って行ったんですが……。
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
貴嬢きみはわれもはやこの一通にてき足りぬと思いたもうや。あらず、あらず、時は必ず来たるべし——
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私の愚論では少しき易いことを繰返すということが意思の練磨になると思うので、一年一回する事より毎月一度、毎月一度より日に三度やることがよかろうと思う。
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まあ、その物を食いきると云うことのなさそうな歯を剥き出して、己に向いてしゃべるなよ。そうせられると、己は胸が悪くなる。○ああ。大いなる、美しき精霊。
「病気ですか、病気なんかもうき厭きしましたから、去年の暮にすっかり暇をやりましたヨ。今朝起きて見たら手や足が急に肥えて何でも十五貫位はありましょうよ。」
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
(四四)七十(四五)仲尼ちうぢひと顏淵がんえん(四六)すすめ、がくこのむとす。しかれども(四七)くわい屡〻しばしばむなしく、糟糠さうかうにだもかず、しかうしてつひ(四八)蚤夭さうえうせり。
万事そうした気風で有てみれば、お勢の文三に感染かぶれたも、またいたも、その間にからまる事情を棄てて、単にその心状をのみたずねてみたら、恐らくはその様な事で有ろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼は走り読みしていた何かの小説にきて、ぶらぶらと遊戯室へはいって来たのだった。
これが再現を期すべく発奮した翁の愛美心と勇猛心と時流をきたらずとする努力には、さすが前山翁であると、私もその企図的精神に感歎かんたんし、賞賛あたわざる一人ではあるが
痴川は今度は伊豆を笑わせまいとして一途いちずに頬っぺたをひねったりしていたが、漸く手を離して立ち上って、尚き足らずに数回蹴飛ばしてから、自分の家へ戻らずに往来おうらいの方へ出て
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
差当さしあたっては坊主だ。俺は東福で育って管領に成り損ねて相国に逆戻りした男だ。五山の仏法はよい加減きの来るほど眺めて来た。そこで俺の見たものは何か。驚くべき頽廃たいはい堕落だ。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
私は今年八十五歳になるのだが、我が専門の植物研究に毎日毎夜従事していて敢てく事を知らない。つまり植物学への貢献を等閑に附していないのだから、何方どなたにも御安心を願いたい。
水際みずぎわを歩いてみたり、ぬくみの残っているすなの上に腰をおろしてみたり、我がままいっぱいに体をふるまって俳句などを考えていたが、それもいて来たので旅館へ帰りかけたところで
草藪の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
亭主は村役場の小使に雇われたり、近隣の醤油問屋の帳付ちょうづけなどに雇われたりしたが三月みつきと同じところに勤めたことがない。これは、一つはこういう男の癖としてしょうであったからである。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
坊ちやんは二階の梯子段を上つたり下りたりして動き廻つてゐられたが、一人でき/\して何かくれろとお言ひになる。おくみは鼠入らずを開けて、いろんな鑵や蓋物なぞを開けて見た。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
あにさん何してるのだと舟大工ふなだいくの子の声をそろによればその時の小生せうせいあにさんにそろ如斯かくのごときもの幾年いくねんきしともなく綾瀬あやせとほざかりそろのち浅草公園あさくさこうえん共同きようどう腰掛こしかけもたれての前を行交ゆきか男女なんによ年配ねんぱい
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
しかし、もう同じような遊びを小半時も続けていたので、少しきが来たところだった。厭きが来ると、次郎はいつもお兼だけをのけ者にしてお鶴と二人きりで遊びたい気持になるのであった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
『年寄には珍らしい』と、老婆の大食が笑ひ話に、母屋の方の人達の間で口にのぼるやうになった頃は最早老婆もこの家の人達にきられはじめてゐた。つまりそれ丈役立たぬ体となったのである。
(新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
時には朝より夕までおりつづけて勇蔵の伝記をべたり、しかしてその逸事のすでに尽くるころは、阿園の耳も勇蔵にき、今は佐太郎いねば留守を守る心地し、佐太郎もまた阿園の顔を離れては
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
毘婆舎那びばしゃな三行さんぎょう寂静じゃくじょう慧剣えけんぎ、四種の悉檀しったんに済度の法音を響かせられたる七十有余の老和尚、骨は俗界の葷羶くんせんを避くるによってつるのごとくにせ、まなこ人世じんせい紛紜ふんうんきて半ばねむれるがごとく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お前も得心の上で田舎の此の浦賀くだりへ呼寄せながら、今更きた、うちへ帰すに手がないとって、まア云わば相対間男あいたいまおとこして罪をせて、女郎に横須賀へ売るなぞと、其の様な事を云われた義理かい
きました。そこでおさらばと云うわけでございますからね。
最終の午後 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
跳梁跋扈てうりやうばつこらぬ。 かの歐洲をうしう聯合艦隊れんがふかんたい
「八つ裂きにしてもき足らぬわい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)