十日とをか)” の例文
指折ゆびをかゞめて勘定かんじようして、今晩こんばんは、よるまをせば、九晩こゝのばんひるまをせば、十日とをか經過けいかいたしましたことよ。かういふおこたへをしたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
まぶしさうに仰向あをむいた。つきとき川浪かはなみうへ打傾うちかたむき、左右さいう薄雲うすぐもべては、おもふまゝにひかりげ、みづくだいて、十日とをかかげ澄渡すみわたる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ老師らうしこの挨拶あいさつたいして、丁寧ていねいれいべて、また十日とをかまへくゞつた山門さんもんた。いらかあつするすぎいろが、ふゆふうじてくろかれうしろそびえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
九月の中頃に和蘭陀ヲランダから巴里パリイへ帰つて来ると、下宿の細君が十日とをか程前の晩キキイが女のを産んだと云ふ話をした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「だん/\おなかなかおほきくなつてまゐります。もう十日とをかもしたらうまれませう。」と牝牛めうしはいひました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
檢死けんしおこなはれない事情じじやうがあつて、死體したい菰包こもづつみのまゝ十日とをかちかくもころがしてあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
口惜くちをしげに相手あひてにらみしこともありしがそれは無心むしんむかしなり性來せいらい虚弱きよじやくとて假初かりそめ風邪ふうじやにも十日とをか廿日はつか新田につた訪問はうもんおこたれば彼處かしこにもまた一人ひとり病人びやうにん心配しんぱい食事しよくじすゝまず稽古けいこごとにきもせぬとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
温泉うんぜんたけ十日とをかこもれど我がのどのすがすがしからぬを一人ひとりさびしむ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
十日とをかに至りアキリュウス、衆を評議の席に呼ぶ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
この十日とをか良人をつとと多く語らず、我子等わがこらいだかず。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かがなへて夜には九夜ここのよ、日には十日とをか
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つちはひ十日とをかひでりの
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そんな贅澤ぜいたくところくんぢやないよ。禪寺ぜんでらめてもらつて、一週間しうかん十日とをか、たゞしづかにあたまやすめてだけことさ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
常飛脚じやうひきやくなつ三月さんぐわつより九月くぐわつまで)の十日とをか——滿八日まんやうかふゆ十月じふぐわつより二月にぐわつまで)の十二日じふににち——滿十日まんとをかべつとして、はやはう一日いちにち二十五里にじふごり家業かげふだとふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其れで二人減り一人減りして、十日とをか程ののちにはおれとキキイがむかひ合つて不景気な飯を食ふ日が多くなつた。キキイは前月あたりから食事を多く取らない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かくて十日とをか……なほえず
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もしむかしから世俗せぞくとほ安心あんじんとか立命りつめいとかいふ境地きやうちに、坐禪ざぜんちからたつすること出來できるならば、十日とをか二十日はつか役所やくしよやすんでもかまはないからつてたいとおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
コロムボを立つてから数日の間海水はなほ九十度のおんを持つて居た。十日とをか目にアラビヤと亜弗利加アフリカやゝ近く見え初める様に成つて夜間は毛布を重ねて寝る必要があつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ざつ十日とをかばかりおくれてますです。ゆきですからな。かぜによつては今夜こんやにも眞白まつしろりますものな。……もつと出盛でさかりのしゆんだとつても、つきころほどにはないのでしてな。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて十日とをかたり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
はやく、この十日とをかごろにも、連日れんじつ臆病おくびやうづかれで、るともなしにころがつてゐると、「きやうさんはゐるかい。——なには……ゐなさるかい。」と取次とりつぎ……といふほどのおくはない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二日ふつか三日みつかおなじやうな御惱氣ごなうけつゞいたところ三月さんぐわつ十日とをか午後ごごからしよぼ/\とあめになつて、薄暗うすぐら炬燵こたつ周圍しうゐへ、べつして邪氣じやきたゞよなかで、女房にようばう箪笥たんす抽斗ひきだしをがた/\とけたり
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
酒屋さかやにたゞすと、「ときさかさにして、ぐん/\おりなさい、うするとあわちますよ、へい。」とつたものである。十日とをかはらくださなかつたのは僥倖げうかうひたい——いまはひらけた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二百十日にひやくとをかもおなじこと、日記につきしる方々かた/″\は、一寸ちよつとづけを御覽ごらんねがふ、あめはれも、毎年まいねんそんなにをかへないであらうとおもふ。げん今年ことし、この四月しぐわつは、九日こゝぬか十日とをか二日ふつかつゞけて大風おほかぜであつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)