わけ)” の例文
ところこのアルゼリヤこくうちでブリダアといふ市府まちひとわけても怠惰なまけることがき、道樂だうらくをしておくることが好きといふ次第である。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それも縁なら是非なしと愛にくらんで男の性質もわけぬ長者のえせすい三国一の狼婿おおかみむこ、取って安堵あんどしたと知らぬが仏様に其年そのとしなられし跡は
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
涙は各自てんでわけて泣かうぞと因果を含めてこれも目を拭ふに、阿関はわつと泣いてそれでは離縁をといふたも我ままで御座りました
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『なに窓ですって?』と聞き返しますと、『わしが、こわそうというわけだよ』と言ったかと思うと、持っていた洋傘コウモリで、あの通り破ったのです
お雪は遁帰にげかえ機掛きっかけもなし、声を立てるすうでもなし、理窟をいうわけにもかず、急におなかが痛むでもない。手もつけられねば、ものも言われず。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前借はほんの当座の衣裳代だけで、四分六の稼ぎという話だったが、病気が直ってから、会いに行って見ると大きな違いで、前借はわけで七百円。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うかゞへば女の化粧けしやうする動靜やうすなり何心なくのぞこめば年の頃は十八九の娘の容色きりやうすぐれ美麗うつくしきが服紗ふくさより一ツの金包かねつゝみを取出し中より四五りやうわけて紙に包み跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すべて動物は胎生卵生濕氣生化生の四つにわけられてゐるもので此の四つしかねえだから、そこ迄考へてみれば何の不思議もねえ、わけのねえ事ですわなあ。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
一国の神社仏閣じんじやぶつかく名所旧跡めいしよきうせき山川地理さんせんちり人物じんぶつ国産薬品こくさんやくひんるゐまでも、わけをいだして通暁さとしやすくしたる精撰せいせん也。此しよに右菱山ひしやませつほゞ見えたれど、さのみはとて引ず。
師の君に約し参らせたる茄子なすを持参す。いたく喜びたまひてこれひるの時に食はばやなどの給ふ、春日かすがまんぢうひとつやきてひたまふとて、おのれにもなかばわけて給ふ。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ありがたい事に味噌汁みそしるがついていたんで、こいつを南京米の上から、ざっと掛けて、ざくざくとき込んだんで、今度こんだは壁土の味をわけないで済んだ。すると婆さんが
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
云出したり平生よくわけの分かる感心の拙者も酒といふ狂藥に折々不感心な事を仕出かすアヽ酒は嚴禁すべきものなり聞く英國のチヤーチル卿は國中こくちうの酒屋を皆な廢し醉漢のたまく共を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
西洋せいやうにては一晝夜いつちうやを二十四に分つゆゑ、の一日本につぽんきう半時はんじなり。其半時そのはんじを六十にわかつて、これを一分時ぶんじ(ミニウト)といふ。またこの一分時ぶんじを六十にわけて一「セカンド」とふ。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
はじめあさまだきにうままぐさの一かごるにすぎないけれど、くやうなのもとにはたやうやきまりがついて村落むらすべてがみな草刈くさかりこゝろそゝやうれば、わか同志どうしあひさそうてはとほはやし小徑こみちわけく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鳥屋で昼間からの玉数ぎょくかずも記入された伝票をもらうと、舟遊びはサアビスに附き合ったのだったが、さっそくわけ松の家で衣裳いしょうを着かえ、松の家の前にならんで棺の来るのを待っていたのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
後からわけの分らない三味線の音が聞えてきた。
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
秋風の急に寒しやわけの茶屋
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
なみだ各自てんでわけかうぞと因果いんぐわふくめてこれもぬぐふに、阿關おせきはわつといてれでは離縁りゑんをといふたもわがまゝで御座ござりました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分にも親なんだぜ、余裕があったら勿論貢ぐんだ。無ければ断る。が、人情なら三杯食う飯を一杯ずつわけるんだ。着物は下着から脱いで遣るのよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
洗ふ波の音は狼みの遠吼とほぼえとも物凄ものすごくお里はしきりに氣をもめども九郎兵衞は前後も知らず高鼾たかいびき折から川の向よりザブ/\と水をわけ此方こなたへ來る者ある故お里は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
オックスホード出身しゆつしん紳士しんし年長者ねんちやうじやだけにわけても兒玉こだまところかんじたていで。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「惜しいことをしたねえ、何かお前に頼みごとでもあったんじゃあないか、それでなくってもまた来た時を待っていて、わけを聞けばかったのにね。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まひて今は麹町加賀屋茂兵衞と云る者の方に掛人かゝりびとにぞなりたりける此茂兵衞と云は四郎右衞門に數年すねんつとめし者なりしが資本金もとできんを與へ暖簾のれんわけ加賀屋茂兵衞とて同六丁目にて小切類こぎれるゐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くれないあけぼの、緑の暮、花のたかどの、柳の小家こいえ出入ではいりして、遊里にれていたのであるが、可懐なつかしく尋ね寄り、用あって音信おとずれた、くさきざきは、残らずかかえであり、わけであり
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……手切てぎれかもじも中にめて、芸妓髷げいしゃまげった私、千葉の人とは、きれいにわけをつけ参らせそろ
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よくねえ、」と声を懸けて、逸早いちはやく今欄干に立顕たちあらわれたその女中が出迎えた。帳場のあかりと御神燈の影で、ここに美しく照らし出されたのは、下谷したや数寄屋町大和屋やまとやわけの蝶吉である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
生意気な、文句をいうなら借金を突いてかかるこッた、わけが何だい、はばかンながら大金がかかってますよ。そうさ、また仲之町でお育ち遊ばしたあなただから、分外なお金子かねを貸した訳さ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひとわけけてむため、自動車じどうしやをもう一だいたのむことにして、はゞけんとなふる、規模きぼおほきい、びたまちあたらしい旅館りよくわん玄関前げんくわんまへ広土間ひろどま卓子テーブルむかつて、一やすみして巻莨まきたばこかしながら
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そうかなあ。……何しろ、何が何だかわけわからないんだからな、お互に。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……抱妓かかえが五人とわけが二人、雛妓おしゃくが二人、それと台所とちびの同勢、蜀山しょくざんこつとして阿房宮、富士の霞に日の出のいきおい紅白粉べにおしろいが小溝にあふれて、羽目から友染がはみ出すばかり、芳町よしちょうぜん住居すまい
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)