とも)” の例文
蒙古の豪族とも思われる五人のともを連れた老人は、卵型をした美貌を持った妙齢の支那美人を側へ引き寄せ仲よく菓子を食べている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だから、折入っておともが願いたいんだ、亭主と一緒には行けねえところへ、相合傘あいあいがさで乗り込もうという寸法が、面白いじゃねえか」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それからも彼は二三度お詣りのおともをして、ある時は段々をあがって、香煙の立ち昇っている御堂近くまで行ってみたこともあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
多分、御縁談の都合もおありになつたんだと存じます。それで、そのお国までのおともを、わたくし、させていたゞきましたんです。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そののち二月ばかりった。その間僕は毎日のように今井の叔父さんの家に遊びに行って、叔父さんの鳥打ちにはきっとおともをした。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
晩年大河内子爵のおともをして俗に柘植黙つげもくで通ってる千家せんけの茶人と、同気相求める三人の変物ぞろいで東海道を膝栗毛ひざくりげの気散じな旅をした。
必ず漂着の分子をとものうていたことは、陸上の道とても変りはないが、そういう中でも海には予想せられる危険が色々とあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かかる艱苦かんく旅路たびじうちにありて、ひめこころささうるなによりのほこりは、御自分ごじぶん一人ひとりがいつもみことのおともきまってることのようでした。
けれどもやがておわかりでございましょう。それでは夜の明けないうちに竜巻におともいたさせます。これ、これ。支度したくはいいか。
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それにしても、轎夫かごかきもいなければともの者もいない。まるで投げててでもあるように置いてあるのが不思議でならなかった。
棄轎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それには、だれかひとをやって、よくその皇子おうじうえさぐってもらうにしくはないとかんがえられましたから、おともひとをそのくににやられました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一九〇〇年後、私はまったく自由な身となり、自分自身と自分の夢想と自分の魂の軍隊とだけをともとして、荒波の上に決然と突進していった。
その後に居すくまつて、さつきから小声の称名しようみやうを絶たないのは、今度伊賀からともに立つて来た、老僕の治郎兵衛に違ひない。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
近くは徒歩で、平地は小車こぐるまで、山は騾馬らば椅子鞍いすくらで行った。二人の老婦人が彼のともをした。道が彼女らに困難な時には、司教は一人で行った。
たしかにあります、一昨日おとといも私が行って見て来たんだ。そこへこれからおともをしよう、連れて行って上げましょう、すぐに、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はその三番目のお孃樣のおともをして、御親類のところへ參りましたが、行方不明になつたと言つて、今更『福屋』へ歸る面目めんぼくも御座いません。
「そりゃアおもしろいでしょう、な、わたくしも後学こうがくのためにおともいたしましょう」そうは軽い気持ちで答えたけれども
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
姥竹は姉娘の生まれたときからりをしてくれた女中で、身寄りのないものゆえ、遠い、覚束ない旅のともをすることになったと話したのである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「今晩は、お殿様が都へおいでになるのじゃ。お前もおともをさせてやる。」と言いました。しばらくすると、いよいよ出発ということになりました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「あたし、きょう、快遊船ヨットを降りるのよ。あなた、あたしのおともなんだから、あなたも、まごまごしないで支度をなさい」
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
このうたは、持統天皇じとうてんのうのおともをして、いかづちをか——また、神岳かみをかともいふ——へ行幸ぎようこうなされたときに、人麿ひとまろたてまつつたものなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
もつとも、いにしへ和名わめい漢字かんじ充當じうたうしたのが、漢音かんおんかた變化へんくわともなうて、和名わめい改變かいへんせられたれいは、古代こだいから澤山たくさんある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
彼女のともとしてはちょうど初春があった。新生の夢が、よどんだなま温かい空気の中にかもされていた。若緑が銀灰色の橄欖樹オリーヴと交じり合っていた。
「ただ、惜しいのは、わしがおともいたして、長らく明国みんこくに渡っておいでなされた松坂の伊藤五郎大夫様のお作なのじゃ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「聞く人のかがみにせむを、あたらしき清きその名ぞ、おほろかに心思ひて、虚言むなことおやの名つな、大伴のうぢと名にへる、健男ますらをとも
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「今度お墓参はかまいりにいらっしゃる時におともをしてもござんすか。私は先生といっしょにあすこいらが散歩してみたい」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
善搏虎とともたり、一の野干ジャッカルありて二獣の後を逐い残肉を食い生活せしが、何とか二獣を離間せんとて師子に告ぐらく
あくる日、もとの運転手の松山さんにおともをたのんで、お母さまは、お昼すこし過ぎにおでかけになり、夜の八時頃、松山さんに送られてお帰りになった。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
隠岐おきへおともされた。後村上天皇の御母儀。後皇后に昇られ、正平十四年四月二十九日賀名生あのうで崩御。御年五十九。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
もう一度去年見た村の古い家並みが見てきたいとおっしゃられるので、私たちもそこまでおともをすることにした。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
氣向きむかねばとて、病と稱して小松殿が熊野參寵のともにも立たず、やゝもすれば、己が室に閉籠りて、夜更くるまで寢もやらず、日頃は絶えて用なき机に向ひ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ともなひ判人利兵衞の方へ到り夫より同道して新吉原玉屋山三郎の方へゆき約定やくぢやうとほり金五十兩と引替ひきかへに娘おかうを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蓬々ほうほうとして始まり、号々として怒り、奔騰狂転せる風は、沛然はいぜんとして至り、澎然ほうぜんとしてそそぎ、猛打乱撃するの雨とともなって、乾坤けんこん震撼しんかんし、樹石じゅせき動盪どうとうしぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
我自ら來れるにあらず、ひとりの淑女天より降れり、我そのこひによりともとなりて彼をたすけぬ 五二—五四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
毎日、新聞の続物を読んで聞かせる、稽古の客のために湯茶を運ぶ、ときたま寄席よせ行のともをすることなど。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
「いやだなあ、あんなことを言っている。僕はどんなにか待っていたんですよ。ぜひおともさせてください。それが帆村おじさんを救う近道のように思うんです」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
温泉と云へばかの明治の才人、成島柳北なるしまりうほくも、この円朝門人三代目円生をともなつて、伊香保に遊んでゐる。
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
これはおともかたが直ぐお持ち帰りになろうというのを、本会の光栄を一般奨励のため公衆に見せたいからと御願いしてお許しを受けたのであるということでした。
あれ三ちやんでつたか、さてもところでとともなはれてくに、さかやといもやの奧深おくふかく、溝板どぶいたがた/\とうすくらきうられば、三すけさきけて、とゝさん、かゝさん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三時頃になつて、お八重が先づ一人源助にともなはれて出て行つた。お定は急に淋しくなつて七福神の床の間に腰かけて、小さい胸をひしと抱いた。眼には大きい涙が。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
姉がヴァイオリンをいてともたのしんだある夏の夕暮だったが、いま姉も一緒につれてここをこうして旅したなら、どんなことを姉は云い出すだろうと空想したりした。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
需要の盛大が粗製濫造の弊をともなわないで済むのは、よほど文化の根づきの深い国のことだろう。
翻訳のむずかしさ (新字新仮名) / 神西清(著)
皆同じように学問もない職人の仕業しわざである。時としては若い者も、また老いた者もあったであろう。しばしば家内が下地を、夫が仕上げをと、仕事をともにしたであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
むかしからのつたへによりますと、垂仁天皇すいにんてんのうときに、天皇てんのう御弟倭彦命おんおとうとやまとひこのみこと薨去こうきよになつたさい、そのころ貴人きじんぬと、家臣かしんなどが殉死じゆんしといつて、おとも習慣しゆうかんがありましたので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
そして、看守というとものつかない一から十までの行動もその伸び伸びさが特別な感じであった。
播州平野 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ともにはフョードルが、一言ひとこともわたしに話しかけずに、不服らしい様子で後ろからついてくる。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ある時余は学校の帰りに土肥君と他の二三人を「遊びにらし」と引張って、学校から小一里もある余の家にとものうた。遊んで居る内日が暮れたので、皆泊ることにした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三日前の夜、こちらの沼田先生におともして、百姓共をとり返しに参ったのもこの主水之介よ。そこのその旅姿の女も、身共の妹じゃわい。八万騎一統の名をけが不埓者ふらちものめがッ。
しょうもとより定役なき身の仮令たとい終日しょともとすればとて、えて拒む者はあらざるも、せめては、婦女の職分をも尽して、世間の誤謬ごびゅうかん者と、進んで定役ある女囚と伍し
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
家内の話では、あなたのおともをして今日、町へ出かけるそうですが、ほんとでしょうか?