“鰯:いわし” の例文
“鰯:いわし”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花15
野村胡堂8
宮沢賢治5
正岡子規4
中里介山4
“鰯:いわし”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.8%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行1.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
城趾しろあとのあたり中空なかぞらとびが鳴く、とちょうど今がしゅんいわしを焼くにおいがする。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
土浦つちうらまち勘次かんじいわし一包ひとつゝつて手拭てねぐひくゝつてぶらさげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くじらを見ろ、しこいわしだ、なぞと大口を利いて元気でしたが、やがて酒はおつもりになる、夜が更けたんです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに、もし胃腸がうけつけたら鉄とカルシューム補給のため、バタといわしさけの類、カン油なども是非あがった方がよい。
永らく阪地にあった私には、久し振りに故郷へ帰ってその時同君の宅で食べた秋刀魚やいわしがどれほどなつかしく美味しかったろう。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
野天商人のでんあきんどもみな休みで、ここの名物になっているいわしの天麩羅やにしんの蒲焼の匂いもかぐことはできなかった。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
案内者をあわせて十人の人間は、くじらに呑まれるいわしの群れのように、石門の大きな口へだんだんに吸い込まれてしまいました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
真亀といふ部落は、海水浴場としても知られてゐるいわしの漁場千葉県山武郡片貝村の南方一里足らずの浜辺に沿つた淋しい漁村である。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「えい。えさだけとって行きやがった。ずるいねずみだな。しかしとにかく中にはいったというのは感心だ。そら、きょうはいわしだぞ。」
ツェねずみ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
杉、柾木まさきまきなどを植えつらねた生垣つづきの小道を、夏の朝早くいわしを売りあるく男の頓狂な声。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
魚類ではさば青刀魚さんまいわしの如き青ざかな、菓子のたぐいでは殊に心太ところてんを嫌って子供には食べさせなかった。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「あゝ、こんなときには、兩國下りやうごくしたいわしはしないかな。」と、にもつかないが
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どこのいわしの頭か知れない男の告白よりは、ぱっとしないが、とにかく新進の小説家、太宰さんの、ざんげ話として広告したいところです。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
町へはいわしを売りに来た、かにを売りに来たと言って、物売りの声がするたびにきき耳を立てるのも佐吉だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
瑞典スウェーデンかぶら大蕪おおかぶら、銀のいわしがちらかれば、さしずめわたしの雲母きらら集。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「毎日シケが続きまして、お魚がとれませんでした。宿屋では困却こんきゃくのあまり、いわしのめざしを大殿様のご食膳にのぼせました」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たらの木にいわしの頭さしたるを戸口々々にはさむが多けれどひいらぎばかりさしたるもなきにあらず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
また、「いわしの頭も信心から」のことわざのごとく、人の方より信仰をもって迎うれば、マジナイにも多少の効験をあらわすことがある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
朝野はまたしても私のことを「たいに食い飽きていわしを食おうとしている男」と言った。そうしつこく言うと、私はほんとにそうなるぞ。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
いわしのしっぽが失くなったといっては、喧嘩。乾しておいた破れ襦袢じゅばんを、いつのまにか着こんでいたというので、山の神同士の大論判。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
時には自分で市場へ行き、安いわしを六匹ほど買うてきて、自分は四匹、あとお君と豹一に一匹ずつ与えた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
いまにも——いわしこう——酒井家さかゐけ裏門うらもんあたりで——眞夜中まよなかには——いわしこう——と三聲みこゑんで
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼女は乾したいわしのようにほそれきって、すこしばかりの粥と青白い乳や、たまには果物などをたべた。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
濡れた赭土あかつちの盛られたそばで、下水工事の人夫達が路傍に炭をおこしていわしを焼いていた。
これにはいわしもある——糠鰯こぬかいわしおそるべきものに河豚ふぐさへある。這個糠漬このぬかづけ大河豚おほでつぱう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何となれば、いかに疑心といえども、狼狽といえども、いわしを鯨と見るはずはないからであります。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小兒こども時分じぶんにやあ兩國下りやうごくしたいわしがとれたとはなした、わたし地震ぢしん當日たうじつ、ふるへながら
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と言って自分が先に立って軍を引上げて、いわしの干物やなにかで盛んに子分たちに飲ませました。
「織さん、いわしのぬただ、こりゃ御存じの通り、他国にはない味です。これえ、早くしなよ。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その花の下に新しい木の箱を置いて、中にいわしの鱗の青々と光って居るのが眼にとまった。
(新字新仮名) / 岩本素白(著)
「御酒二升、ざしいわし十連、浅畑村若衆わかいしゅより馬持ちの田子衛門へ下さる」
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
秋波のうちかえす鎌倉の海は、房州あたりのいわしくさい漁村の風景と、すこしもちがわない。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いわしのサンドウィッチ 秋付録 パン料理五十種の「第三十三 いわしのサンドイッチ」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
たいていはいわしの頭、髪の毛などを小さな串のさきにはさんで、ごくざっとあぶったもので、これを見ると鬼が辟易へきえきして入って来ぬという。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
バッハの頭をかすめて地上に落ちたのを見ると、うまそうに焼いた一匹のいわしで、その鰯の口には、燦然さんぜんたる一個の金貨がくわえさせてあった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
そのひとは、握り飯を出した。重吉とひろ子は弁当箱をあけ、いわしのやいたのを三人でわけて板テーブルの上で食事をはじめた。まだ湯をわかす設備もなかった。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
こましゃくれた奴だ。彼女は米さえ買って来ると唱歌が上手になる。一坪のくりやは活気をていしていわしを焼く匂いが僕の生唾なまつばさそった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
だから中野より規模が狭かった大久保小屋の消費高でも、犬に喰わせる一日料の米、三百三十石、味噌十樽、いわし十俵、まき五十六そくという記録がある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわしにほひうすけむりとも室内しつない滿ちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
海上暴風雨しけのためにいつもは房州へはいるはずの、仙台米の積船ふねが、いわしのとれるので名高い九十九里くじゅうくり銚子ちょうしの浜へはいった。
電文は、ブレストの一カフェがいわし罐詰かんづめを註文している文章だった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そういっているところへ、スミス中尉が、眼をいわしのように赤くして入ってきた。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しいの葉にもる風流は解しても、いわしのぬたでないばかり、この雲助の懐石には、恐れてげそうな姫ぎみが、何と、おでんの湯気に向って、中腰に膝を寄せた。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紫蘇しその実に糖蝦あみ塩辛しおから、畳みいわしを小皿にならべて菜ッ葉の漬物うずたかく、白々と立つ粥の湯気の中に、真赤まっかな顔をして、熱いのを
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
只、モウレツに美味うまいと云う感覚だけでいわしの焼いたのにかぶりつく。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
口をけていわしを吸うくじらの待ち構えている所まで来るやいなやキーときしる音と共に厚樫あつがしの扉は彼らと浮世の光りとをとこしえにへだてる。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
家の周囲まわりいわしが軒の高さほどにつるして一面にしてある。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ある日、私が朝食のいわしを焼いていたら、庭のねこがものうげに泣いた。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
それは柚味噌がやや一般的ならざる食物だからで、いわし秋刀魚さんまを焼く匂だったら、平俗を免れぬ代りに「爰も」ということについて、格別の問題は起らぬかも知れない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
入口にはいつもの魚屋があつて、塩鮭しほざけのきたない俵だの、くしやくしやになつたいわしのつらだのが台にのり、軒には赤ぐろいゆで章魚だこが、五つつるしてありました。
山男の四月 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
二本差しがこわかった日にあいわしは食えねえんだ。ばかにするねえっ!
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
浜には、栄螺さざえを起す男も見え、いわしを拾うわらべも居る。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——たいに食いあきると、ゲテもののいわしが食いたくなる。だが、他人ひとにはそんな本心を隠して、わしゃ食いたいわけじゃないナンテ言うのを、カマトトというですな」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
主婦しゅふの誕生日だが、赤の飯に豆腐汁で、いわしの一尾も無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
清方はいわしという題の小さいものであるが、一葉の小説の情景です。
ホラ鯨がいわしをおつかけるといふこともおききなすつたでせう。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
第三十三 いわしのサンドイッチ は鑵詰の鰯の骨を抜いておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「親分の、北冥ほくめいの魚でせう。鯉でもふなでも構はないが、此處にさかながありさへすりや、三萬兩と轉げ込むんだが、無住になつた寺方ぢや、いわしの頭もねえ——」
いわしを育てて鯨にするより歯痒はがゆい段の行止ゆきどまり。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわし (本邦産) 七〇・二五 二一・三九 六・七二 一・六四
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あんな腐ったいわしみたいな奴と一緒にいたら、虫が湧くわ。」
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
いわしの焼いたのと、つみ入れの汁物と、乾物とで茶漬を喰べた。
二三日前から泊りこんでいる浪花節なにわぶし語りの夫婦が、二人共黒いしかん巻を首にまいて朝早く出て行くと、煤けた広い台所にはいわしを焼いている母と私と二人きりになってしまう。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
いずくんぞ知らんこの貧乏神、その本体は坂東三津太郎、不良俳優であろうとは。いわしの頭も信心から。さあ拝んだり拝んだりと、大いに景気を添えたところでここに筆を止めることにする。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
菖蒲あやめおいけのきいわし髑髏されこうべ
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いわし天窓あたまも信心から、それでも命数のきぬやからは本復するから、ほか竹庵ちくあん養仙ようせん木斎もくさいの居ない土地、相応に繁盛はんじょうした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
栄螺さざえや、とこぶし、もろあじの開き、うるめいわしの目刺など持ちましては、飲代のみしろにいたしますが、その時はお前様、村のもとの庄屋様、代々長者の鶴谷つるや喜十郎様
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
全体が刷毛はけ一刷ひとはきのようにほとんどひれと尾ばかりに見える褐色の小怪魚、あじに似たもの、いわしに似たもの、更に水底をねずみ色の太い海蛇に至るまで
いわし料理りょうり 秋 第二百五十八 いわし料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「百兩の褒美がそんなに有難きや、お前が行つて搜してやれ。その代り二度とこの路地を入ると、髷節まげぶしむしり取つていわしを尻へ挾んで阿呆拂ひにしてやるから、覺悟しやがれ」
これすなわち「だらし」に取りつかれたるものなるが、里俗には、なにか食物を携えおればこの魔にかからずといえど、実際においては、いわし売りの男が鰯の傍らに昏倒こんとうしたる例あり。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
眼の下にははるかの海がいわしの腹のように輝いた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから本人の気の持ちよう一つでは、仁参にんじんが御三どんの象徴になって瓢箪ひょうたんが文学士の象徴になっても、ことごとく信心がらのいわしの頭と同じような利目ききめがあります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこにぴちぴちねてるのはいわしの散歩隊だろう。
入口にはいつもの魚屋があって、塩鮭しおざけのきたないたわらだの、くしゃくしゃになったいわしのつらだのが台にのり、のきには赤ぐろいゆで章魚だこが、五つつるしてありました。
山男の四月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いわしこい、鰯こいは、威勢の好い小児こどもが呼ぶ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寶山講はそれつきり人氣を失つて、ウヤムヤのうちに潰れ、新しく魅力的な、いわしの頭のやうなお宗旨が又それに代つて繁昌しました。但しそれは、平次も八五郎も、この筆者も知らないことです。
菖蒲しゃうぶり軒のいわし髑髏されかうべ
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
江の浦は遠州灘駿河灣伊豆七島あたりへ出かくる鰹船の餌料を求めに寄るところで、小松の茂つた崎の蔭の深みには幾箇所となく大きな自然の生簀いけすが作られ、其處に無數のいわしが飼はれて居る。
自分の考えでは、もし、あなたが一歩でも、小松寺山から出たと聞いたら、ただちに小牧を発して、鯛網たいあみを曳かせるつもりでおざったが、鯖子さばこいわしではと……さし控え申しておざる
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曲がりくねった小径こみちについて雑木林の丘を越えると、豁然かつぜんひらけた眼下の谷に思いがけない人家があって、テニスコートにでもしたいような広場にいわしを干しているのが見えた。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
いわしを石油鑵からつかみ出して売つてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
本州の北端では津軽領つがるりょう某浦ぼううらに、延宝えんぽう七年(一六七九)の四月、浦人うらびと磯山のいただきに登って海上を見渡し、おびただしくいわしの寄るように見えたので
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
其れから少し離れて、隣家となりもぎツて捨てたいわしの頭が六ツ七ツ、尚だ生々なま/\しくギラ/\光つてゐた。其にぎん蠅がたかツて、何うかするとフイと飛んでは、またたかツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いわし煮た鍋」どうもあの二人はくさい仲だ
昔の言葉と悪口 (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
いわし焼く隣にくしや窓の梅 秀和しゅうわ
俳句の初歩 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いわし五月ごぐわつしゆんとす。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
篁村くわうそん氏といわし7・9(夕)
たたいわしの類、生の若胡瓜わかきゅうり玉葱たまねぎの刻んだものなんぞですがその外に紫蘇しそでも紅生姜べにしょうがでも何でも揃えられるだけの薬味を印度風いんどふうにすると二十四色
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いわしなら一缶がまあざっと七百ぴき分ですねえ、締木にかけた方は魚粕うおかすです、一キログラム六セントです、一キログラムは鰯ならまあ五百疋ですねえ、みなさん海岸へ行ってめまいをしてはいけません。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
越後も中頸城なかくびきの漁村には「いわしの年取り日」という珍しい名があるが、それからやや北へ行くと一般に、もとは「藤の花立て」といって、晴着をして山に行き藤の花を採って来て、仏壇に立てる風があった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「あ、あれはね(按摩あんま)とつてね、矢來やらいぢや(いわしこ)とおんなじに不思議ふしぎなかはひるんだよ」「ふう」などと玄關げんくわん燒芋やきいもだつたものである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どこからともなくいわしを焼くにおいがして物干の上にはさっきから同じ二階のおもて座敷を借りている女が寐衣ねまきすそをかかげてしきりに物を干している影が磨硝子すりガラスの面に動いている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日の光今朝やいわしの頭より
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
まるでいわしの罐詰である。
いわしのヌタに蒲鉾かまぼこさかなだったというが、二人とも長酒で、そんな場合はいつも徹宵てっしょう飲み明かすのが習慣だったので、娘さんは肴に心配をして近所の乾物屋から干鰯を買って準備していたというね。
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
卵の花寿司ずしいわし天麩羅てんぷら海老えび蒲焼かばやき、豆滓まめかすの寿司——などというような飲食店で、四文出せば口にはいろうという、うまくて安い食物ばかりを、選んで出している飲食店なのである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「えツ、言はないかツ、人の命は大事だ。山師坊主に氣取られて、俺はひまを潰して居られないぞ。三つ股の兄哥、この道人を引つくゝつてくれ。寺社のお係りへ渡して、いわしくはへさして四つん這ひに這はしてやる」
いわしくじらの餌食となり、雀が鷹の餌食となり、羊が狼の餌食となる動物の世界から進化して、まだ幾万年しかへていない人間社会にあって、つねに弱肉強食の修羅場を演じ、多数の弱者が直接・間接に生存競争の犠牲となるのは
死刑の前 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)