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ふりがな文庫
“
隈
(
くま
)” の例文
早速八五郎を出してやつて、心當りを
隈
(
くま
)
なく搜させましたが、伊勢屋新兵衞は何處へ行つたか、日が暮れるまで到頭見付かりません。
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さびしい風が裏の森を鳴らして、空の色は深く
碧
(
あお
)
く、日の光は
透通
(
すきとお
)
った空気に
射渡
(
さしわた
)
って、夕の影が濃くあたりを
隈
(
くま
)
どるようになった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
ために、彼の形相は、たださえ恐ろしくなっているところへ、魔王の
隈
(
くま
)
を描いたように、世にもあるまじき物凄さに見えるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょっとしたつけひげ、目立たない目の
隈
(
くま
)
、脣のどす黒い色、その顔からは宮城圭助を思い出させるものが、すっかり消えうせていた。
薔薇夫人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
菊村の店でも無論手分けをして、ゆうべから
今朝
(
けさ
)
まで心当りを
隈
(
くま
)
なく詮索しているが、ちっとも手がかりがないと清次郎は云った。
半七捕物帳:02 石灯籠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
翌日二人は、
八幡様
(
はちまんさま
)
の小さな森に出かけて、狸の巣を
隈
(
くま
)
なく探し廻りました。しかしどこにもそれらしいのは見当りませんでした。
狸のお祭り
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
此
(
こ
)
の
樹
(
き
)
の
蔭
(
かげ
)
から、すらりと
向
(
むか
)
うへ、
隈
(
くま
)
なき
白銀
(
しろがね
)
の
夜
(
よ
)
に、
雪
(
ゆき
)
のやうな
橋
(
はし
)
が、
瑠璃色
(
るりいろ
)
の
流
(
ながれ
)
の
上
(
うへ
)
を、
恰
(
あたか
)
も
月
(
つき
)
を
投掛
(
なげか
)
けた
長
(
なが
)
き
玉章
(
たまづさ
)
の
風情
(
ふぜい
)
に
架
(
かゝ
)
る。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「それでは、変化の
隈
(
くま
)
どりと、扮装の後見をしたのは誰であろう。その人達が、第一に嫌疑をうけねばならないのではあるまいか」
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
しかしぐっと
胆力
(
たんりょく
)
をすえて、本堂の中へ入ってみた。そして中の様子を
隈
(
くま
)
なく
調
(
しら
)
べた。それから
廊下
(
ろうか
)
つづきの
庫裡
(
くり
)
の方へ入って行った。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
中流より石級の方を望めば理髪所の
燈火
(
あかり
)
赤く
四囲
(
あたり
)
の
闇
(
やみ
)
を
隈
(
くま
)
どり、そが前を
少女
(
おとめ
)
の群れゆきつ返りつして
守唄
(
もりうた
)
の
節
(
ふし
)
合わするが聞こゆ。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
清らかな
額
(
ひたい
)
、ときどき黒い
隈
(
くま
)
で縁取られる、ずるそうな率直な娘らしい眼、大きな口、その
唇
(
くちびる
)
は乳飲み子のようにふくれ上がって
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「いくら探しても無駄さ。あのとおり、八ツの眼で、下界を
隈
(
くま
)
なく探したが、見つからなかったのだから、もうあきらめた方がいいぜ」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
げにや
隈
(
くま
)
なく御稜威は光被する。鵬翼萬里、北を
被
(
おほ
)
ひ、大陸を
裏
(
つつ
)
み、南へ更に南へ
伸
(
の
)
びる。曠古未曾有の東亞共榮圈、ああ、盟主日本。
新頌
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ただ、時々出会う光の
隈
(
くま
)
がますます薄くなってゆくので、日光はもう往来にささず日暮れに間もないことが、わかるばかりだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
憑
(
たの
)
みつる君は、此の国にては
一一六
由縁
(
ゆゑ
)
ある御方なりしが、人の
讒
(
さかしら
)
にあひて
領
(
しる
)
所をも失ひ、今は此の野の
隈
(
くま
)
に
侘
(
わび
)
しくて住ませ給ふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
わたしは
寝衣
(
ねまき
)
の
袖
(
そで
)
に手燭の火をかばいながら廊下のすみずみ座敷々々の押入まで残る
隈
(
くま
)
なく見廻ったが雨の漏る様子はなかった。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして
縦繁
(
たてしげ
)
の障子の桟の一とコマ毎に出来ている
隈
(
くま
)
が、あたかも塵が溜まったように、永久に紙に沁み着いて動かないのかと
訝
(
あや
)
しまれる。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しまいには私は
燐寸
(
マッチ
)
まで
擦
(
す
)
って
隈
(
くま
)
なく調べて見たが、それでも花も線香も何にも上ってはいないのであった。しかもそればかりではない。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一枚ぐらいはドコかに
貼
(
は
)
ってありそうなもんだと、お堂の
壁張
(
かべばり
)
を残る
隈
(
くま
)
なく
引剥
(
ひきは
)
がして見たが、とうとう一枚も発見されなかったそうだ。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
あの古き大津絵が
隈
(
くま
)
なく美しいのは、救いが果されている
証
(
しるし
)
ではないか。美しい大津絵の凡ては、自然の力の恵みを受けているのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
薄月夜
(
うすづきよ
)
である。はっきりとも見えぬ水の
隈
(
くま
)
に、何やらざぶんという物音がする。獺が鮭でも取るのであろう、という句意らしい。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
一首は、
豊腴
(
ほうゆ
)
にして荘潔、
些
(
いささか
)
の渋滞なくその歌調を
完
(
まっと
)
うして、日本古語の優秀な特色が
隈
(
くま
)
なくこの一首に出ているとおもわれるほどである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
大江山課長は
真先
(
まっさき
)
に向うの汽艇へ飛び移った。つづいて部下もバラバラと飛び乗った。狭い汽艇だから、艇内は直ぐに
残
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
なく探された。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小笠原はその持前の物静かな足取りで
黄昏
(
たそがれ
)
に
浸
(
ひた
)
り乍ら歩いていたが、やがて、伊豆の心に起った全ての心理を
隈
(
くま
)
なく想像することが出来た。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私にはあのひとの
白魚
(
しらうお
)
のようにかぼそい美しい手が
眼
(
ま
)
のあたりに見えるようだ。あのひとの月のように澄みきった心が
隈
(
くま
)
なく読めるようだ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
然し、月はもうその光りを見せる
隈
(
くま
)
がないほど、そらは一面にかき曇つて、風がおほひらの雪をぽたり/\と二人の顏に投げ打つのである。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
中臣・藤原の遠つ祖あめの
押雲根命
(
おしくもね
)
。遠い昔の日のみ子さまのお
喰
(
め
)
しの、
飯
(
いい
)
と、み
酒
(
き
)
を作る御料の水を、大和国中残る
隈
(
くま
)
なく捜し
覓
(
もと
)
めました。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
それから五
人
(
にん
)
、
手分
(
てわけ
)
をして、
窟内
(
くつない
)
を
隈
(
くま
)
なく
調査
(
てうさ
)
して
見
(
み
)
ると、
遺骨
(
ゐこつ
)
、
遺物
(
ゐぶつ
)
、
續々
(
ぞく/″\
)
として
發見
(
はつけん
)
される。それを
過
(
あや
)
まつて
踏
(
ふ
)
みさうに
爲
(
す
)
る。
大騷
(
おほさは
)
ぎだ。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
仏陀(宇宙大生命の人格化、覚者の義)の手は行き亘らぬ
隈
(
くま
)
もなく、どんな狭い隙からも霧のように漉き入り、身をも心をも柔かく包みます。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
田山白雲は、茂太郎には無言で、ランタンをそこらあたりに振り照らして、狼藉の行われたらしいマストの下あたりを
隈
(
くま
)
なく照らして見たが
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところへ主人の寛治氏が帰って来たので、鎌子夫人及び運転手のおらぬ事を告げ、邸内を
隈
(
くま
)
なく探したがとんとわからぬ。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
これは家相が悪いようだと言って、家中
隈
(
くま
)
なく見て廻り、どこにこんな物がある、どこに入口があり、家族は何人と悉皆探偵が出来て仕舞った。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
隈
(
くま
)
なく晴れ上つた
紺青
(
こんじやう
)
の冬の空の下に、雪にぬれた家々の
甍
(
いらか
)
から
陽炎
(
かげろふ
)
のやうに水蒸気がゆらゆらと
長閑
(
のどか
)
に立ち上つてゐた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
この
時
(
とき
)
空は雲晴れて、十日ばかりの月の影、
隈
(
くま
)
なく
冴
(
さ
)
えて清らかなれば、野も林も
一面
(
ひとつら
)
に、
白昼
(
まひる
)
の如く見え渡りて、得も言はれざる
眺望
(
ながめ
)
なるに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
然
(
しか
)
るに
天
(
てん
)
へ
上
(
のぼ
)
った
姫
(
ひめ
)
の
眼
(
め
)
は、
大空中
(
おほぞらぢゅう
)
を
殘
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
もなう
照
(
て
)
らさうによって、
鳥
(
とり
)
どもが
晝
(
ひる
)
かと
思
(
おも
)
うて、
嘸
(
さぞ
)
啼立
(
なきた
)
つることであらう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
立て
籠
(
こ
)
められた湯気は、
床
(
ゆか
)
から天井を
隈
(
くま
)
なく
埋
(
うず
)
めて、
隙間
(
すきま
)
さえあれば、
節穴
(
ふしあな
)
の細きを
厭
(
いと
)
わず
洩
(
も
)
れ
出
(
い
)
でんとする
景色
(
けしき
)
である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この船中であなたの同室の人を知っているのはあの給仕だけなので、彼は
隈
(
くま
)
なく船中を捜しましたが、どうしてもその行くえが分からないのです。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
爪先
(
つまさき
)
で
立上
(
たちあが
)
り、
菌
(
きのこ
)
の
縁
(
ふち
)
を
殘
(
のこ
)
る
隈
(
くま
)
なく
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る
中
(
うち
)
、
端
(
はし
)
なくも
其
(
その
)
眼
(
め
)
は
直
(
たゞ
)
ちに
大
(
おほ
)
きな
青
(
あを
)
い
芋蟲
(
いもむし
)
の
眼
(
め
)
と
出合
(
であ
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
斯うなっては幸三郎も母に明さん訳には参りませんから、母にも明し、是から番頭を呼んで来まして、
隈
(
くま
)
なく取調べた上、
訴書
(
うったえしょ
)
を
認
(
したゝ
)
めさせました。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
重苦しい、
隈
(
くま
)
のできた眼と、謎のように微笑する唇とをもって、裸形で、美しく。そしていかなる祈りも、それを追いやることはできないのだった。
神の剣
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
所謂
(
いわゆる
)
女らしさへの又ひとつの
隈
(
くま
)
として、しなとして、知性というような言葉も今日の会話の飾りとしてさしはさまれ
知性の開眼
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし、お訊ねにかかわる羅針盤の
文身
(
いれずみ
)
は、
隈
(
くま
)
なく捜したのでしたが、ついに発見することなく終ってしまいました。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
やがて此浅き谷は低き山の
隈
(
くま
)
に尽きて、
其処
(
そこ
)
に大なる無花果、ポプラル、葡萄、
石榴
(
ざくろ
)
など
一族
(
いちぞく
)
の緑眼もさむるばかり鮮かなる小村あり。ドタンと云ふ。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「雞」の行方に関してはその後私は知らなかったが、地主の一党は私に依ってそれの緒口をつかもうとして私の
在所
(
ありか
)
を
隈
(
くま
)
なく諸方に
索
(
もと
)
めているそうだ。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
目の四方に青い
隈
(
くま
)
を
注
(
さ
)
したり、一方の
頬
(
ほ
)
に黒い
頬黒
(
ほくろ
)
を
拵
(
こしら
)
へたりする女であつた。おれは又この女どもを人の
情婦
(
いろをんな
)
になつて囲はれて居るのかとも思つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
林の中は日の光りが到らぬ
隈
(
くま
)
もなく、うれしそうに騒ぐ木の葉を漏れて、はなやかに晴れた蒼空がまるで火花でも散らしたように、鮮かに見わたされた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
阿部一族は討手の向う日をその前日に聞き知って、まず邸内を
隈
(
くま
)
なく掃除し、見苦しい物はことごとく焼きすてた。それから
老若
(
ろうにゃく
)
打ち寄って酒宴をした。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
隈
(
くま
)
なく心の中を天眼鏡で見透されたような気がした。何てよく分ってくれる人なんだろう、私の心の中のことが。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
次の日、下男をつれてそのあたりを
隈
(
くま
)
なく
捜
(
さが
)
したけれども、其処には何ものもなかつた。それは彼には、奇怪に思へる自然現象の最初の現はれであつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼はこの西欧派的な開かれた
眼
(
め
)
をもって、ロシアの現実の
蒙昧
(
もうまい
)
と
暗愚
(
あんぐ
)
と暴圧とを、残る
隈
(
くま
)
なく見きわめ見通し
「はつ恋」解説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
隈
漢検準1級
部首:⾩
12画
“隈”を含む語句
大隈
隈々
界隈
隈取
青隈
眼隈
藍隈
阿武隈川
河隈
千隈川
目隈
隈囘
水隈
花隈
阿武隈
紅隈
大隈重信
隈本
谷隈
武隈
...