“隈:くま” の例文
“隈:くま”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂34
吉川英治23
泉鏡花22
中里介山13
北原白秋12
“隈:くま”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語5.3%
文学 > 日本文学 > 詩歌2.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)1.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
今宵こよひつきあきらかなれば、さしもにひろきネープルスわん眼界がんかいいたらぬくまはなく
遠い昔の日のみ子さまのおしの、いいと、みを作る御料の水を、大和国中残るくまなく捜しもとめました。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この日ごろのお悩みは龍顔りゅうがんのうえにもうすぐろいくまとなって、さしもお身の細りすらうかがわれる後醍醐だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次はそういった見当で、橋の下、石垣、川の中、近所の物置、床下など、くまなく捜しましたが、何としても見つかりません。
事件の際ではあり、何となく気になるふしがあったので、老人は召使一同にも命じて、部屋部屋をくまなく探し廻って見た。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いまぼうこく軍艦ぐんかんからの探海燈たんかいとう其邊そのへんくまなくてらしてるので
平治へいぢの二度のいくさを都の名殘に、脆くも武門の哀れを東海の隅に留めしより、六十餘州に到らぬくまなき平家の權勢
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
どんな微細な症状もここではくまなく照らし出されるのだが、そのかわり細胞の隅々すみずみまで完膚なきまで治療されてゆく。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
雑木ある処だんだらにくまをなして、山の腰遠く瓦屋根かわらやねの上にて隠れ、二町ふたまち越えて、ながれの音もす。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
松の姿の丈高きが、一抱ひとかかえの幹に月を隠して、途上六尺、くま暗く、枝しげき間より、長き橋の欄干低く眺めらる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ジャヴェルは徐々に進んで行った。あたかも盗人のポケットを一々探るように、その街路のすみずみをくまなく探りながら進んだ。
そこで禿鷹はげたかは、ある高い山の上に飛び上がって、そのいただきの岩の影から、四方をくまなくうかがい始めました。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
僕は出来るだけいっぱいカーテンを引いて、細心の注意を払ってくまなくその中をあらためると、寝床はまったく乾いていた。
しかし、お訊ねにかかわる羅針盤の文身いれずみは、くまなく捜したのでしたが、ついに発見することなく終ってしまいました。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
平次はさういつた見當で、橋の下、石垣、川の中、近所の物置、床下など、くまなく搜しましたが、何として見付かりません。
さう言ふ右の手には、かもじを冠せた、すさまじい鬼女の面が、青い地、赤いくまに、金色の眼を光らせて居ります。
月のくまの中から、長い/\影法師かげぼふしいて現れたのは、錢形平次の子分、ガラツ八の八五郎の忠實な姿でした。
そう言う右の手には、かもじを冠せた、凄まじい鬼女の面が、青い地、赤いくまに、金色こんじきの眼を光らせております。
ただ、時々出会う光のくまがますます薄くなってゆくので、日光はもう往来にささず日暮れに間もないことが、わかるばかりだった。
「それでは、変化のくまどりと、扮装の後見をしたのは誰であろう。その人達が、第一に嫌疑をうけねばならないのではあるまいか」
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
「阿呆らしい事おいてくれ!」紋十郎は益〻機嫌悪く、「えい、誰か早く出て行って、館中やかたじゅうくまなく探がすがよい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
闇黒に染む濡れた光りの中央に、あごから上を照されてあやしくくま取った佐平次の顔が、赤く小さく浮かび出た。
ここへ身を寄せる前にも、すでに十兵衛光秀は、京畿けいきのあいだから、山陰、山陽の地方など、くまなく旅して来た。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城中、くまなく歩いたところで、方六町しかない小城である。結果は、三九郎貞昌に、より以上、絶対的な覚悟を与えただけである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、はだが透く、心が映る、美しいひとの身の震う影がくまなくきぬ柳条しまからんで揺れた。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ために、彼の形相は、たださえ恐ろしくなっているところへ、魔王のくまを描いたように、世にもあるまじき物凄さに見えるのだった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐渡はつぶやいて、室内のくまにまで眼をやった。——あるじの幸村とは、土塀の門をくぐる時もう会っている。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早速八五郎を出してやつて、心當りをくまなく搜させましたが、伊勢屋新兵衞は何處へ行つたか、日が暮れるまで到頭見付かりません。
からかったり、ふざけたり、叱ったりするうちにも、子分の八五郎を思う真情が、行き渡らぬくまなき心持だったのです。
停車場ステエション前の夜のくまに、四五台朦朧もうろうと寂しく並んだ車の中から、車夫が一人、腕組みをして、のっそり出る。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すすき尾花の中に西を向いている、たったひとりの人影に、ちょうど、天心に到る十六日の月がくまなく照しています。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いくら探しても無駄さ。あのとおり、八ツの眼で、下界をくまなく探したが、見つからなかったのだから、もうあきらめた方がいいぜ」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
顔面がんめんくろうるしして、くま鼻頭はなづら透通すきとほ紫陽花あぢさゐあゐなが
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
捧げた刀は月光をまとって、さばの腹のように蒼白く光り、柄の頭が額にかかって、その影が顔をくまどっている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
万吉も小手こてをかざしていた。その間にも、二人の影をくまどって、稲光りの閃光せんこうがしきりに明滅した。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
シューラの身体からだはぐるぐるまわされたり、さぐりちらかされたりして、くまなく検査けんさされた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
「とにかく、念のために、二階や、そのの所もくまなく探してみようじゃねえか。おい、だれか、そこに行燈あんどんがあるな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
阿部一族は討手の向う日をその前日に聞き知って、まず邸内をくまなく掃除し、見苦しい物はことごとく焼きすてた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
せて青黒いくまの多い長身の肉体は内部から慾求するものをみたし得ない悩みにいつもあえいでいた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
尤も南をうけた崖下がけしたの暖かいくまなぞには、ドウやらするとすみれの一輪、紫に笑んで居ることもあるが、二月は中々寒い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
菊村の店でも無論手分けをして、ゆうべから今朝けさまで心当りをくまなく詮索しているが、ちっとも手がかりがないと清次郎は云った。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
月夜つきよかげ銀河ぎんが絶間たえま暗夜やみにもくまある要害えうがいで、途々みち/\
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝の光がキラキラと輝き秋草の乱れた庵室の庭を残るくまなくてらしていて四辺あたり森然しんと静かである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うす暗い職人町の露路を、彼の眼がせわしなく光って、くまなく歩き廻っていたが、どうしても、姿が見あたらない。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
好い加減に積った雪は、狭い庭を念入りに埋めて、その上に薄月うすづきが射しているのですから、その辺には、物のくまもありません。
まどかなる望月ながら生蒼なまあをくまする月の飛び雲の叢雲むらくもあひ、ふと洩れて時をり急に明るかと思ふ時なり。
彼は、電子望遠鏡の前に立って、その操縦桿をいろいろと操りながら、天涯てんがいくまなく捜査していった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
然し、月はもうその光りを見せるくまがないほど、そらは一面にかき曇つて、風がおほひらの雪をぽたり/\と二人の顏に投げ打つのである。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
そうするうちに侍共も駈けつけて、廣い庭の隅々をくまなく捜したが、曲者はいかにして身を隠したのか、とう/\発見されないでしまった。
わたし、ム・ハ・トが、歌舞伎のくまに大して関心を示さなかったのに、メイエルホリドが熱心だったっていうの
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
田山白雲は、茂太郎には無言で、ランタンをそこらあたりに振り照らして、狼藉の行われたらしいマストの下あたりをくまなく照らして見たが、
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仏陀(宇宙大生命の人格化、覚者の義)の手は行き亘らぬくまもなく、どんな狭い隙からも霧のように漉き入り、身をも心をも柔かく包みます。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
角の酒屋と薬屋の店についている電燈が、通る人の顔も見分けられるほどくまなく狭い横町をてらしている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼女が、姿を見せたのは、たった今のことだという。五郎大夫は、子を宿の者に頼んで下僕の捨次郎と共に、城内の街をくまなく探しあるいた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄月夜うすづきよである。はっきりとも見えぬ水のくまに、何やらざぶんという物音がする。獺が鮭でも取るのであろう、という句意らしい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
此のごろ雨気あまけに水増して急におとす河水の音高く、月は皎々こう/\くまなくえて流へ映る、誠にい景色だが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
数百すひゃく燈火ともしび織目おりめから抜出ぬけだしたような薄茫乎うすぼんやりとして灰色のくま暗夜やみただよ
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真上から電灯の直射をうけてせた麻川氏の両頬りょうほおへ一筋ずつ河のように太いくまが現われた。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「方々ですよ。天下くまなく、どこまでだって、こうなりゃ、意地とヤケクソで、水の中でも、くぐりまさア」
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これは家相が悪いようだと言って、家中くまなく見て廻り、どこにこんな物がある、どこに入口があり、家族は何人と悉皆探偵が出来て仕舞った。
それにも、人の往来ゆききまばらなのが知れて、くまなき日当りが寂寞ひっそりして、薄甘く暖い。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おそら何処どこにか隠れ家があろうと、四辺あたりくまなくてらると、穴の奥には更に小さい間道ぬけみちが有った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くまなくさがまはつたが見當みあたらず、餘儀よぎなくはそれから一ぽんゆびいてゐました、が
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
紋三は押入なども一々開けて見て、くまなく家中を探したけれど、老婆のいった通りねこの子一匹いなかった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わたしは寝衣ねまきそでに手燭の火をかばいながら廊下のすみずみ座敷々々の押入まで残るくまなく見廻ったが雨の漏る様子はなかった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌日も書斎のなかで前日同様、自分の世界の中心に立つて、左右前後を一応くまなく見渡したあと
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
目の四方に青いくましたり、一方のに黒い頬黒ほくろこしらへたりする女であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
眼の下には黒いくまが太くついていて、頬には猿を思わせるような小じわが三四本もアリアリと走っていた。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これより先、開場の前までは、場内をくまなくめぐって気を配っていたお角、開場と共に、楽屋と表方の間に隠れて、始終の気の入れ方を見ている。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
壮麗そうれいな夕焼の空をくまなく見渡すことのできるのは、何といっても屋根裏の天窓ひきまどです。
まどかなる望月ながら、生蒼なまあをくまする月の、傾けばいよよ薄きを、あな寒や揺るる竹あり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
赤井の屋敷に着いて、足尾喜内に案内さして、邸内くまなく探しましたが、今度は千兩箱と違つて、泉水に沈める筈もなし、全く見當が付きません。
円かなる望月ながら、生蒼なまあをくまする月の、傾けばいよよ薄きを、あなさむや揺るる竹あり。
成善は自ら雪を冒して、石川、大鰐おおわに倉立くらだて碇関いかりぜき等をくまなく尋ねた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
境内を残るくまなく見廻って、油を差すべきものには差し終ってから米友は、また茶所へ帰って来ました。
赤井の屋敷に着いて、足尾喜内に案内さして、邸内くまなく探しましたが、今度は千両箱と違って、泉水に沈めるはずもなし、全く見当が付きません。
おとがいを削ったようにいうと、年増は杓子で俯向うつむいて、寂しそうに、それでも、目もとには、まだわらいくまが残って消えずに、
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
駒井の殿様の一行の船はどうだ——もう着いているか知らと、宿も取らぬ先に港へ出てくまなく見渡したけれど、それらしい船はいっこう見当りません。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのままに、僕等は、船内をくまなく探し廻って、ろうや、ゴム類をおびただしく集めて来た。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
ふたりは堤から麻畑をくまなく探してあるいたが、その結果は、いたずらに疲労を増すばかりであった。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おん身が得しは只一つの接吻なりしが、わが得しは千萬にて總て殘るくまなき爲合しあはせなりき。
そのうちに彼は立ち止まって、しばらくそのぼろ着物のすみずみをくまなく手を当ててさがし回った。
ただ漆黒の柔和な眼の下のあたりには、すでにやや疲れた色があって、はっきりとくまができている。
神童 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
暇乞いとまごいして帰ろうとすると、停車場ステーションまで送ろうといって、たった二、三丁であるがくまなくれた月の晩をブラブラ同行した。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そして縦繁たてしげの障子の桟の一とコマ毎に出来ているくまが、あたかも塵が溜まったように、永久に紙に沁み着いて動かないのかとあやしまれる。
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、道中から宿舎まで、くまなく心入れの行き渡っていることを、徳川家の家臣へ、褒めたたえた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夕闇のなかに俯向うつむいて坐つてたお葉が夢から覺めたやうに首を上げた時、くまなく明るくなつた部屋のなかに、美しい青年の瞳が輝いてゐたのである。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
水深一丈もあるところを、沈みきってくまなく探しはしたけれど、なんらの獲物えものがない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
よし一しきり雨がやんで、白い日光がぼんやりと落ちてくることがあっても、それはまた直ぐ水の線に変って、太陽よりもっと平均にくまなくそそぐであろう。
その声は細い声であったというようなこと、それらのことが、ほんの取留めのない参考になるだけで、なお四辺あたりを提灯の光でくまなく探して見たけれど
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
落ちくぼんだ眼のまわりに、青黒くくまどりが浮かんでいるのは、これが死相というのであろう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
遠く河すそをながむれば、月の色のくまなきにつれて、河霧夢のごとく淡く水面に浮かんでいる。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「以前の例もござりますれば、若侍共、くまなく捜しましたが、怪しいところは、ござりませぬ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
と、何とはなく明後日に迫る今度の試合が、いかにくまなく諸国に聞えているかが思いやられた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また熱湯でしぼッた布で体じゅうの皮膚をくまなく拭かせるときでも、子供のように安心して、彼女の手には人に見せたくない所もまかせきッているのだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相憎あいにくの月夜、五六間先へ、一散に逃げて行く源吉の後姿を隠す物のくまもありません。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
次の日、下男をつれてそのあたりをくまなくさがしたけれども、其処には何ものもなかつた。
小笠原はその持前の物静かな足取りで黄昏たそがれひたり乍ら歩いていたが、やがて、伊豆の心に起った全ての心理をくまなく想像することが出来た。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
翌日二人は、八幡様はちまんさまの小さな森に出かけて、狸の巣をくまなく探し廻りました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
八五郎が向柳原に飛出した後、平次は主人の善兵衞と一緒に、家中をくまなく搜し廻りました。