れん)” の例文
馬「旦那御覧ごろうじろ今の三人づれは顔附でも知れるがみんな助平れんで、此家ここの娘を見たばっかりでもう煙草入を忘れてきましたぜ」
今夜の観客くわんかくには学者、芸術家、政治家が多数を占め、中にはその若盛わかざかりの日からユウゴオの讃美者であつたらしい白髪の貴婦人れんも交つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
少年しょうねんは、うみをながめていました。青黒あおぐろ水平線すいへいせんは、うねりうねっていました。それはちょうど、一れんとお山脈さんみゃくるようにおもわれたのです。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夏中上総のみなと海岸で廿名ばかりの子供れんを遊ばせてゐる少年臨海団といふ一つの団体がある。団長は例の裸頭跣足主義で名高い高木兼寛氏である。
湯から上って婦人れんと入代った時、へやには西日がいっぱいして、海の上は溶けた鉄のように熱く輝いた。二人は日を避けて次の室に這入った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最初、船頭をすかして、夜中ひそかに黒船に乗り込もうとしたけれども、いざその場合になると、船頭れんは皆しりごみした。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ましてや私の如きただの応援隊、文壇のドウスルれんというようなものは最高文学に対する理解があるはずがなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
楽屋へ抱え込まれると同時に、死んだものと思って騒いでいた粂吉が、ひょっこり大部屋かくの娘れんをつれて出たので
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして彼が、若い野人の傲慢ごうまんさをもって、原詩の中の元の場所から平気で引き抜き、自分の歌曲リードの結末としている、壮大なる軽侮の一れんはやって来た。
もしかすると岡焼きれんの中傷かも知れないと思いましたから、今の今までチットも信じていなかったのですが……
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長男可次よしつぐ森甚平もりじんぺいの士籍、また次男蕃徳は文一郎の士籍を譲り受けた。長女おれんさんは蕃寛ののちを継いで、現に弘前の下白銀町しもしろかねちょうに矢川写真館を開いている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ねえ、ふみ子さん。ブルジョアれんは結婚をすると新婚旅行というのをやるそうですね。で、僕らも一つ、同棲記念に秘密出版でもしようじゃありませんか」
それに見たこともない空の模様もようではありませんか、いったいあの十三れんなる青い星はどこにあったのでしょう、こんな星は見たことも聞いたこともありませんね
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
幸いに、ここは町並を少し離れたところでしたから、わいわいれんがあまりたからなかったものの、それでも陣屋のあたりが、ようやく物さわがしくなってきました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あとで教員れんは村長や学務委員といっしょに広い講堂にテーブルを集めて、役場から持って来た白の晒布さらしをその上に敷いて、人数だけの椅子をそのまわりに寄せた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして夫れから彼にっては「運命の家」とも云うき所のもう一れんの草屋へ這入はいったのであった。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今日のいわゆるアルプスれんなどは、どういう風にしているか知らぬが、猟師・木挽らのごとくたびたび山奥に野宿せねばならぬ人々は、久しい経験から地形に由って
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
文化の進むにつれて近頃はだんだんこの豪傑気取りれんが減って来たようであり、また今後もますます減るであろう。ことに洋服でも着るようになれば、減らざるを得ない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
殊に田原は調子に乘つて女れんに盃をさし、醉はせる積りが、かへつて自分が醉つてしまつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
それに、井関さんの細君さいくんというのが又、非常な交際家で、私の家内のみならず、会員達の細君れんと大変親しくしていまして、おたがいに訪問をし合うような間柄あいだがらになっていたのです。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
熊の穴居こもりたる所をみつくれ目幟めじるしをのこして小屋にかへり、一れんの力をあはせてこれをる。その道具だうぐの長さ四尺斗りの手槍てやりあるひ山刀やまがたな薙刀なぎなたのごとくに作りたるもの、銕炮てつはう山刀をのるゐ也。
どうしてこの明るい家の中に、こんなくらさがあるのだらうとかんがへた。北側きたがはに一れんかべがあるこれだ。——しかし、私は間もなく周囲しうゐの庭にみだれてゐるとりどりのはないろまよひ出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
夜どおし魚を取っている爺さんれんは船を停めてこちらを眺めて思わず喝采した。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
相応に金をつかうので女給れんは寄ってたかって下にも置かないようにしている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
魔ものだの、変化だのに、挨拶は変だ、と思ったが、あとで気がつくと、女れんは、うわさのある怪しいことに、恐しくおびえていて、陰でも、退治たいじるの、生捉いけどるのとは言いはばかったものらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、賢明はフロンド黨の姫君の如く、優雅いうがはプレシウズれんの女王ともいひつべきひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、うつくしい歌を好む姫君、姫が寢室ねべやとばりの上に、即興そくきよう戀歌こひか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
峻厳さうなる微笑ほゝゑみの、お屋敷町の奥さんれん
「その豆腐屋れんが馬車へ乗ったり、別荘を建てたりして、自分だけの世の中のような顔をしているから駄目だよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
気味の悪い侍を見かけたのがきッかけで、無口になった五人の道者れんは、それから二十丁ほどタッタと下ってきたが、やがて、甲賀路と宇治のわかれ道へきた時
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところがブッおれたと見ると直ぐに、兄イれん舷側ふなばたひきずり出して頭から潮水しおみずのホースを引っかけて、尻ペタを大きなスコップでバチンバチンとブン殴るんだから
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「はてな……時分が時分だから、大抵はこの宿しゅくで納まるのに、あの侍たちは、まだ東へ了簡りょうけんと見える、イヤに急ぎ足で、あわてているが、ははあ、これもお差控さしひかれんだな……」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「井関さんから予めむねを含めてあったとはいえ、女房れん、よくやって来たね。あれが自分の亭主だからいいようなものの、味を占めてほかの男にあの調子でやられちゃ、たまらないね」
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
だが、あきふかくなると、薔薇がつた。きくれた。さうして、枯葉かれはつもつた間から、やうやさびしげな山茶花さざんくわがのぞき出すと、北にらなつた一れんくらかべが、俄然がぜんとして勢力せいりよくをもたげ出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
東京では都会改造の議論が盛んになつてゐて、アメリカのAとかBとかの何号町なんがうまちかにある、独逸人の謂ふ Wolkenkratzerヲルケンクラツツエル のやうな家を建てたいと、ハイカラアれんが云つてゐた。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
熊捕くまとり場数ばかずふみたる剛勇がうゆうの者は一れん猟師れふしを熊のる穴の前にまた
この点もまた決して世の「古池やれん」だけの問題ではないのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
我利々々亡者がりがりもうじゃれんが他の者の事業を妨害ぼうがいしたり、競争者を中傷ちゅうしょうしたり、人身攻撃じんしんこうげきをしたり、捏造説ねつぞうせつをはいたり、その他卑劣ひれつな方法によりて得る利益は、僕のいう最良の利益とはあい反するものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わっしがこの慌て方じゃあ二階に残った女れん気絶ひきつけたかも分らない。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは婦人れんが昨日すでに参詣さんけいしたというのを口実に、我々二人だけが行く事にしたのであるが、その実兄の依頼を聞くために自分が彼から誘い出されたのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
えたいの知れぬ白骨の冬籠ふゆごもれんのうちに、一人や二人、無いとはいえまい。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
帝これを嘉賞かしょうし、故翰林かんりん学士、ほうれんの遺子黛女たいじょを賜う。黛は即ちふんの姉にして互いに双生児ふたごたり。相並んで貴妃きひの侍女となる。時人じじんこれを呼んで花清宮裡かせいきゅうり双蛺そうきょうと称す。時に天宝十四年三月。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
松浦れん
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今の豆腐屋れんはみんな、そう云う気違ばかりだよ。人を圧迫した上に、人に頭を下げさせようとするんだぜ。本来ならむこうが恐れ入るのが人間だろうじゃないか、君」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女軽業のおちゃっぴイれんもかけつけて見ると、女物の下駄に見覚えがある。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三四郎も女れんわかれて下宿へもどらうと思つたが、三人が話しながら、ずる/\べつたりにあるき出したものだから、際立きはだつて、挨拶をする機会がない。二人ふたりは自分を引張つて行く様に見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎も女れんに別れて下宿へもどろうと思ったが、三人が話しながら、ずるずるべったりに歩き出したものだから、きわだった挨拶あいさつをする機会がない。二人は自分を引っ張ってゆくようにみえる。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)