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まぎ
ふりがな文庫
“
紛
(
まぎ
)” の例文
自分が悪口を云われる
口惜
(
くや
)
し
紛
(
まぎ
)
れに他人の悪口を云うように取られては、悪口の
功力
(
くりき
)
がないと心得て今日まで謹慎の意を表していた。
田山花袋君に答う
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうでなければ、郡司の息子が、ときどき自分の怖ろしさを
紛
(
まぎ
)
らせようとでもするのか、あちこちと草の中を歩きまわっていた。……
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
紛
(
まぎ
)
れもない、昨夜平次が枕元から盜られた短刀。曲者はこれで植惣を
害
(
あや
)
めた後、三つ葉葵を散らした鞘だけは持つて歸つたのでせう。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
扨
(
さて
)
はと思って近寄って見ますと、これが
紛
(
まぎ
)
れもない白銀の鏡で、今まで美留女姫と思ったのは自分の姿が向うに映っているのでした。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
だが、よく見ると、その門に書いてあるのは、甚だ宝蔵院と
紛
(
まぎ
)
らわしい名で「奥蔵院」としてあるのである。
頭字
(
かしらじ
)
が一つ違っている。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ありゃア酔った
紛
(
まぎ
)
れにツイ
摘食
(
つまみぐ
)
いをしたので、己がわるかったから堪忍してくれろ、もう二度と
彼処
(
あすこ
)
へ
往
(
ゆ
)
きさえしなければ
宜
(
い
)
いだろう
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
遺恨
(
ゐこん
)
に存じ私し方へは不通に仕つり其上惣内夫婦を
付狙
(
つけねら
)
ひ候事と相見え金谷村へ惣内夫婦罷越候歸りを
跡
(
あと
)
より
尾
(
つけ
)
來り夜に
紛
(
まぎ
)
れて兩人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
つまり表通りや新道路の繁華な
刺戟
(
しげき
)
に疲れた人々が、時々、刺戟を
外
(
は
)
ずして気分を転換する為めに
紛
(
まぎ
)
れ込むようなちょっとした街筋——
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ところが五月に這入つてから頭の工合が相変らず善くないといふ位で毎日諸氏のかはるがはるの
介抱
(
かいほう
)
に多少の苦しみは
紛
(
まぎ
)
らしとつたが
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
学士は答を笑いに
紛
(
まぎ
)
らせながら、冷い水で顔を洗った。井戸端から外を見ると、今日も連山には一点の雲も懸っていない好天気だった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
肉身の弟が予の召使と通謀して予の供に
紛
(
まぎ
)
れ込み、ビョルゲ邸に入り込んで大悪を企図していることを知るものは、予ただ一人である。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「お祇園さんじゃけ、子供といっしょになって、ワイワイ騒いだら、気分も
紛
(
まぎ
)
れやせんかと思うてな、東京に、手紙を出しといた」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
が、もの
音
(
おと
)
、
人聲
(
ひとごゑ
)
さへ
定
(
さだ
)
かには
聞取
(
きゝと
)
れず、たまに
駈
(
かけ
)
る
自動車
(
じどうしや
)
の
響
(
ひゞき
)
も、
燃
(
も
)
え
熾
(
さか
)
る
火
(
ひ
)
の
音
(
おと
)
に
紛
(
まぎ
)
れつゝ、
日
(
ひ
)
も
雲
(
くも
)
も
次第々々
(
しだい/\
)
に
黄昏
(
たそが
)
れた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たくみな陰をえらんだ縫い方は、人であるよりも、なにか、
暗
(
やみ
)
のくずれが
澱
(
よど
)
んでながれているように、
紛
(
まぎ
)
れやすいものであった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
泣いても笑っても一人である。淋しさを
紛
(
まぎ
)
らせようと布団の下にある子供たちの手紙をとりだしては泣き、八重の写真を眺めては泣いた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
併
(
しか
)
し私の
手蹟
(
て
)
じゃ
不味
(
まず
)
いから長州の
松岡勇記
(
まつおかゆうき
)
と云う男が
御家流
(
おいえりゅう
)
で女の手に
紛
(
まぎ
)
らわしく書いて、ソレカラ玄関の
取次
(
とりつぎ
)
をする書生に
云含
(
いいふく
)
めて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
何ぞ気イ
紛
(
まぎ
)
れるようなことはと思いまして、——先生は御存知でしょうか、——あのう、
天王寺
(
てんのうじ
)
の方に女子技芸
学校
(
がっこ
)
いうのんありますねん。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
トロツコの車輪を蹴つて見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、——そんな事に気もちを
紛
(
まぎ
)
らせてゐた。
トロツコ
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「姉えさんの言う通りです。いつでも二人で今のような、出来ないことばかし言って、父母の恋しいのを
紛
(
まぎ
)
らしているのです」
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうした時の寂しさとやるせなさを
紛
(
まぎ
)
らすために、詩人はわざと煙草の火を消し、ボオボオという寂しい貝を吹いたのである。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
この時、下界のこの混乱の中へ、どこをどうして
紛
(
まぎ
)
れ込んだか一挺の
駕籠
(
かご
)
がかつぎ込まれたのは、奇観ともなんとも言いようがありません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼れ其実は全く嗅煙草を嫌えるも
唯
(
た
)
だ
空
(
から
)
の箱を
携
(
たずさ
)
え
居
(
お
)
り、喜びにも悲みにも其心の動く
度
(
たび
)
我
(
わが
)
顔色を悟られまじとて煙草を
嚊
(
か
)
ぐに
紛
(
まぎ
)
らせるなり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
二人
(
ふたり
)
は、ぐるぐると
横道
(
よこみち
)
をまがって、
紛
(
まぎ
)
らそうとしました。しかし、やはりだめでした。
追
(
お
)
いかけてきた
女
(
おんな
)
は、すぐうしろへ
迫
(
せま
)
っていました。
子供どうし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
圧制
(
あっせい
)
、
偽善
(
ぎぜん
)
、
醜行
(
しゅうこう
)
を
逞
(
たくましゅ
)
うして、
以
(
も
)
ってこれを
紛
(
まぎ
)
らしている。ここにおいてか
奸物共
(
かんぶつども
)
は
衣食
(
いしょく
)
に
飽
(
あ
)
き、
正義
(
せいぎ
)
の
人
(
ひと
)
は
衣食
(
いしょく
)
に
窮
(
きゅう
)
する。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「どこか
服
(
ふく
)
の下にでも
紛
(
まぎ
)
れこんではおらんかな、え? ひょっとしたら、
長靴
(
ながぐつ
)
の中にナイフが
落
(
お
)
ちてるかも知れんぞ、え?」
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
無論長吉は何とでも
容易
(
たやす
)
くいい
紛
(
まぎ
)
らすことは出来ると思うものの、それだけの
嘘
(
うそ
)
をつく良心の苦痛に
逢
(
あ
)
うのが
厭
(
いや
)
でならない。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山鳴り谷答えて、いずくにか
潜
(
ひそ
)
んでいる
悪魔
(
あくま
)
でも唱い返したように、「我は官軍我敵は」という歌の声は、笛吹川の水音にも
紛
(
まぎ
)
れずに聞えた。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「しかし
余
(
あんま
)
り同情も出来ませんよ。苦し
紛
(
まぎ
)
れですから、うっかりしていると
他
(
ひと
)
の答案を見ます。一人答案の掏り替えをやった奴がありました」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
例えば
稚
(
わか
)
くして山に
紛
(
まぎ
)
れ入った姉弟が、そのころの
紋様
(
もんよう
)
ある
四
(
よ
)
つ
身
(
み
)
の衣を着て、ふと親の家に還ってきたようなものである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
芋掘
(
いもほり
)
も
忌
(
いや
)
だが、
鉱掘
(
かねほり
)
も忌だねえ。どうせ楽は
能
(
で
)
きないのさ。こんな商売になっちゃア仕様がないよ。
好
(
すき
)
なお酒でも飲んで
紛
(
まぎ
)
らしているのさ。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女は、到頭部屋の中に、じっと
坐
(
すわ
)
っていられないようになって、広い庭へ降りて行った。気を
紛
(
まぎ
)
らすために、庭の中を歩いて見たい
為
(
ため
)
だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さくらに十日ほどおくれて、若い下僕の吾平が
行方
(
ゆくえ
)
を
昏
(
くら
)
ましたので、密通のうえかけおちということに
紛
(
まぎ
)
れはなかった。
醜聞
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は唯、学問に没頭することによって、僅かに
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
ない失恋の悲しみを
紛
(
まぎ
)
らそうとした。北川氏はそれらの事情を知り過ぎる程よく知っていた。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其れを
紛
(
まぎ
)
らす
為
(
ため
)
に目を開いて何か唱歌でも歌はうと試みたが、
喉
(
のど
)
が
硬張
(
こはゞ
)
つて声が出無かつた。と、突然低い静かな声で
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
などと、自分の病気についての事を云い出したい様にして居たけれ共、栄蔵は、種々な話に
紛
(
まぎ
)
らして、一寸の間も、
否
(
いや
)
な話からのがれて居たがった。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ただワイワイと
傍
(
はた
)
のやかましいのに、お光は悲しさも心細さも半ば
紛
(
まぎ
)
らされていたのであるが、寺から
還
(
もど
)
って、舅の新五郎も一まず佃の家へ帰るし
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
出帆
(
しゅっぱん
)
前からの神経異常が、あなたとの
愉
(
たの
)
しい交わりに、
紛
(
まぎ
)
らわされてはいたが、こうした場合一度に出て来て、頭の
芯
(
しん
)
は重だるく、気力もなくなり
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
今通っている山中の笹の葉に風が吹いて、ざわめき
乱
(
みだ
)
れていても、わが心はそれに
紛
(
まぎ
)
れることなくただ
一向
(
ひたすら
)
に、別れて来た妻のことをおもっている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
つづみの与の公、この丹波の命をうけて供の人数へ
紛
(
まぎ
)
れこみ、こけ猿の茶壺をかつぎだしたのです。引出物がなくては、お婿さんの行列は立ち往生。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
苦痛を苦痛で
紛
(
まぎ
)
らすように私はお前に
縋
(
すが
)
るのだが、それも結局、お前と私の造り出す地獄の騒音によって、古沼のような
沈澱
(
ちんでん
)
の底を探りたい念願に他ならぬ
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼
(
かれ
)
はどうしても
斷念
(
だんねん
)
せねばならぬ
心
(
こゝろ
)
の
苦
(
くる
)
しみを
紛
(
まぎ
)
らす
爲
(
ため
)
に
蕗
(
ふき
)
の
葉
(
は
)
や
桑
(
くは
)
の
葉
(
は
)
を
干
(
ほ
)
して
煙管
(
きせる
)
の
火皿
(
ひざら
)
につめて
見
(
み
)
たが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
信吾は、其話が
屹度
(
きつと
)
智恵子の事だと察してゐる。で、
恁
(
か
)
う此女に顔を見られると、擽られる様な、かつがれてる様な気がして、妙に
紛
(
まぎ
)
らかす
機会
(
はづみ
)
がなくなつた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
混雑する旅人の群に
紛
(
まぎ
)
れて、
先方
(
さき
)
の二人も亦た時々盗むやうに
是方
(
こちら
)
の様子を注意するらしい——まあ、
思做
(
おもひなし
)
の
故
(
せゐ
)
かして、すくなくとも丑松には
左様
(
さう
)
酌
(
と
)
れたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
動き廻っているときは気が
紛
(
まぎ
)
れて、現実にはげしく身を触れあっている気にもなるのだが、ひとりになってみて、気持がほとんど揺れ動いていないことに気がつくと
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
だがなかなか質問の仕方も上手で、笑いに
紛
(
まぎ
)
らすとその僧侶はいろいろの点から質問を始めて来る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「気をお
紛
(
まぎ
)
らしになって、病気のことをお思いにならないのがいちばんよろしゅうございますよ」
源氏物語:05 若紫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「いかにも俺は、あの人が好きだよ。好きで好きで、たまらんというような人だ。これだけ言ったら、大将も気が済んだろう」と、なにかを
紛
(
まぎ
)
らすように笑うのである。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
蜘蛛の巣の糸は光りに
紛
(
まぎ
)
れて見えないので、ぢつとしてゐる小さい蜘蛛は、空間に喰つ附けられてゐるやうに動かない。土の上には濃い木の陰がはすかひに写つてゐる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
闇太郎に
紛
(
まぎ
)
れなき由、承わって、御隠居さまへ、
御土産
(
おみやげ
)
として召し連れました次第でござりまする
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
兎
(
と
)
ても亡びんうたかたの身にしあれば、息ある内に、
最愛
(
いと
)
しき者を見もし見られもせんと
辛
(
から
)
くも思ひ
決
(
さだ
)
め、重景一人
伴
(
ともな
)
ひ、夜に
紛
(
まぎ
)
れて屋島を
逃
(
のが
)
れ、數々の
憂
(
う
)
き目を見て
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
紛
常用漢字
中学
部首:⽷
10画
“紛”を含む語句
紛糾
紛紜
紛擾
紛々
紛失
紛雑
紛争
紛失物
紛雜
気紛
腹立紛
紛帨
見紛
氣紛
紛込
云紛
紛堊
天衣紛
大紛亂
雑然紛然
...