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牙
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きば
ふりがな文庫
“
牙
(
きば
)” の例文
刑部が
牙
(
きば
)
をかみ鳴らした声と共に、初めてそこに、血の犠牲を見、同心のからだは、宙へ、かかとを上げて、庭さきへころげ落ちた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「よく
剣ヶ峰
(
けんがみね
)
が
拝
(
おが
)
まれる。」と、じいさんは、かすかはるかに、千
古
(
こ
)
の
雪
(
ゆき
)
をいただく、
鋭
(
するど
)
い
牙
(
きば
)
のような
山
(
やま
)
に
向
(
む
)
かって
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
わせました。
手風琴
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「へんな傷だね。大きな動物が、
牙
(
きば
)
でかみついたというような傷だね。それに、傷のまっ白なところを見ると、ごく新しい傷だ。」
虎の牙
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
殊にもう髪の白い、
牙
(
きば
)
の
脱
(
ぬ
)
けた鬼の母はいつも孫の
守
(
も
)
りをしながら、我々人間の恐ろしさを話して聞かせなどしていたものである。——
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
匕首
(
あひくち
)
でも脇差でも出刄庖丁でもなく、
狼
(
おほかみ
)
の
牙
(
きば
)
でないとすれば、その武器は佐太郎には想像も出來なかつた種類のものらしいのです。
銭形平次捕物控:198 狼の牙
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
「貴様は大事の/\
私
(
わし
)
の坊やを、其の石で
圧
(
おさ
)
へ殺したんだな。今に
敵
(
かたき
)
を
討
(
うつ
)
てやるぞ!」と、叫びながら、鋭い
牙
(
きば
)
を剥き出しました。
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
牙
(
きば
)
をむかんばかりにしてほえたてている伝六の横から、名人は射すくめるような目をむいて、じっとお駒の顔をにらみすえました。
右門捕物帖:38 やまがら美人影絵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
火の中に尾はふたまたなる
稀有
(
けう
)
の大
猫
(
ねこ
)
牙
(
きば
)
をならし
鼻
(
はな
)
をふき
棺
(
くわん
)
を目がけてとらんとす。人々これを見て棺を
捨
(
すて
)
、こけつまろびつ
逃
(
にげ
)
まどふ。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
猛狒
(
ゴリラ
)
の
類
(
るい
)
は
此
(
この
)
穴
(
あな
)
の
周圍
(
しうゐ
)
に
牙
(
きば
)
を
鳴
(
なら
)
し、
爪
(
つめ
)
を
磨
(
みが
)
いて
居
(
を
)
るのだから、
一寸
(
ちよつと
)
でも
鐵檻車
(
てつおりくるま
)
の
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
たら
最後
(
さいご
)
、
直
(
たゞ
)
ちに
無殘
(
むざん
)
の
死
(
し
)
を
遂
(
と
)
げてしまうのだ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかもそれは時代の潮流に適合するため、変装された
女性化主義
(
フェミニズム
)
の仮面の下で、いつも本能獣の
牙
(
きば
)
を
研
(
と
)
ぎ光らしているのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そんなはずはない——あらしの中で
牙
(
きば
)
をむいた海は、一瞬の間に、船も、船長ものみこんで、もう次の犠牲におどりかかっているのだった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
天の与えと喜んで、旅人は急ぎそれを伝って、井戸の中へ入ってゆきました。狂象はおそろしい
牙
(
きば
)
をむいて
覗
(
のぞ
)
きこんでいます。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
同時に、毛だらけの泥まみれの大きな顔が、歯というよりも
牙
(
きば
)
を出してすごい笑いを浮かべながら、
扉
(
とびら
)
の所からのぞき込んだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
抱いている赤児にも別条はなかった。しかし半七をおどろかしたのは、その赤児が二本の鋭い
牙
(
きば
)
をもっていることであった。
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
角
(
つの
)
あれば
牙
(
きば
)
なく、
鱗
(
うろこ
)
あれば髪がないというように、必ず一方の手段である目的を達しえられる程度までに進んでいるだけで
自然界の虚偽
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
立
(
た
)
てる
絶壁
(
ぜつぺき
)
の
下
(
した
)
には、
御占場
(
おうらなひば
)
の
崖
(
がけ
)
に
添
(
そ
)
つて
業平岩
(
なりひらいは
)
、
小町岩
(
こまちいは
)
、
千鶴
(
ちづる
)
ヶ
崎
(
さき
)
、
蝋燭岩
(
らふそくいは
)
、
鼓
(
つゞみ
)
ヶ
浦
(
うら
)
と
詠続
(
よみつゞ
)
いて
中山崎
(
なかやまさき
)
の
尖端
(
とつさき
)
が
牙
(
きば
)
である。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
大きな猪は、なにか傷をうけ、
猛
(
たけ
)
りくるつて、すさまじい勢ひでかけて来ます。頭をさげ、
牙
(
きば
)
をむき出し、目を光らして、突進して来るのです。
木曽の一平
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
死の
牙
(
きば
)
から辛うじて救われた、哀れなる人間よ。ローマ人はお前がここに留まることを欲しない。お前は人生に疲労と嫌悪とを吹き込むものだ。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
やがて
主人
(
しゅじん
)
に
呼
(
よ
)
ばれて出てきたしっぺい
太郎
(
たろう
)
を
見
(
み
)
ますと、
小牛
(
こうし
)
ほどもある
犬
(
いぬ
)
で、みるからするどそうな
牙
(
きば
)
をしていました。
しっぺい太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
それよりは今霎時、
牙
(
きば
)
を
磨
(
みが
)
き爪を鍛へ、まづ彼の聴水めを噛み殺し、その上時節の
到
(
いた
)
るを
待
(
まっ
)
て、彼の金眸を打ち取るべし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
狼
(
おおかみ
)
の
顎
(
あご
)
や
猪
(
いのしし
)
の
牙
(
きば
)
が、石弓や
戦斧
(
せんぷ
)
のあいだにおそろしく歯をむきだし、巨大な一対の
鹿
(
しか
)
の角が、その若い花婿の頭のすぐ上におおいかぶさっていた。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
ぶる/\と其の
巨
(
おほ
)
きい頭を振つて
牙
(
きば
)
を
咬
(
か
)
んで怒り、せめては伊豆一国の主になつて此恨を晴らさうと奮ひ立つたとある。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼奴だと分ると
嫉妬
(
しつと
)
の蛇の
牙
(
きば
)
は即坐に折れてしまひましたよ。と云ふのはそれと一緒にセリイヌに對する私の戀も蝋燭消しの下に消えたからです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
五十六歳と云う女の年齢が胸の中で
牙
(
きば
)
をむいているけれども、きんは女の年なんか、長年の修業でどうにでもごまかしてみせると云ったきびしさで
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
それが、生存する環境の悪条件に左右される自己防衛の
牙
(
きば
)
であることは、著者そのひとが脱出の夜良人に向っていった言葉であきらかにされている。
ことの真実
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
中にはマムシ取りの名人がいて、棒のさきで首根っこをぎゅっとおさえ、たちまち口をあかせて
牙
(
きば
)
をぬき、口からさいてきれいに皮をはいでしまう。
山の秋
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
みんなが
牙
(
きば
)
をむき
爪
(
つめ
)
を立ててかみ合いかき合いしているので、ウイリイたちはそこをとおることができませんでした。
黄金鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
小文吾が
曳手
(
ひくて
)
・
単節
(
ひとよ
)
を送って途中で二人を乗せた馬に駈け出されて見失ってしまったり、
荒野猪
(
あれいのしし
)
を踏み殺して
牙
(
きば
)
に掛けられた猟師を助けたはイイが
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこに
竝
(
なら
)
べてあるような
骨製
(
こつせい
)
の
先
(
さき
)
の
尖
(
とが
)
つたものや、
種々
(
しゆ/″\
)
のものがありまして、
中
(
なか
)
には
牙
(
きば
)
や
骨
(
ほね
)
の
上
(
うへ
)
に
動物
(
どうぶつ
)
の
形
(
かたち
)
や
人間
(
にんげん
)
の
形
(
かたち
)
を
彫刻
(
ちようこく
)
したものなどがあります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
なんとなれば万邦・万人、みな
涎
(
よだれ
)
を流し、
牙
(
きば
)
を磨し、みなその
呑噬
(
どんぜい
)
の機会をまつをもって少しく我に乗ずべき隙あらばたちまちその国体を
亡
(
うしな
)
うに至らん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
狛犬は後脚を折曲げて
行儀
(
ぎょうぎ
)
好く居ずくまり、前の片足を上げて何やら人を招くような形をしていながら、
吠
(
ほ
)
えでもするように角張った口を開いて
牙
(
きば
)
を現し
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
空間が小刻みに
顫
(
ふる
)
えて、頭の
芯
(
しん
)
が
茫
(
ぼう
)
として来る。このような時——人間は何を考えるのか——このような時、人間は人間の……人間の白い
牙
(
きば
)
がさっと現れた。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
壮
(
わか
)
い漁師は、赤い
手柄
(
てがら
)
をかけた女房を引っ抱えるようにして裏口に出たが、白い
牙
(
きば
)
を
剥
(
む
)
き出して飛びかかって来た
怒濤
(
どとう
)
に
捲
(
ま
)
き込まれて、今度気が
注
(
つ
)
いた時には
月光の下
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
野獣のような盗伐者は、思慮分別もなく、
牙
(
きば
)
を
咬
(
か
)
んで躍りかかり、惨殺して後を
晦
(
くら
)
ましてしまうのである。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その相手の武士であると犬殺しであるとに論なく、
牙
(
きば
)
に当る限りは噛み散らし、
顋
(
あご
)
に触るる限りは噛み砕いても、この場を逃れるよりほかはないのであります。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼はあたかもブルドッグがその
牙
(
きば
)
でかみつくように、自分の一念にしがみついていた。「マヌースを殺すんだ、殺すんだ!……」彼はパリーへもどろうとした。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼は母国を肉体として現していることのために受ける危険が、このようにも手近に迫っているこの現象に、突然
牙
(
きば
)
を生やした獣の群れを人の中から感じ出した。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
鼻は
長蛇
(
ちょうだ
)
のごとく
牙
(
きば
)
は
筍
(
たかんな
)
に似たり。牛魔王堪えかねて本相を
顕
(
あら
)
わし、たちまち一匹の大
白牛
(
はくぎゅう
)
たり。頭は
高峯
(
こうほう
)
のごとく眼は電光のごとく双角は両座の鉄塔に似たり。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
頭から尾の
尖
(
さき
)
まで五尺九寸、重さ十三貫目あまり、これまで多年のあいだ領内を荒し廻り、牛馬を喰うこと数知れず、人間も十三人までかれの
牙
(
きば
)
にかかっておる
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
後
(
あと
)
ずさりをして、
羽目板
(
はめいた
)
にぶつかってしまったくまは、のがれ道のないことをさとったものか、すごい
形相
(
ぎょうそう
)
をし、
牙
(
きば
)
をむきだしてとびかかりそうな身がまえをした。
くまと車掌
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
どこから
嗅
(
か
)
ぎつけたのか、『海の殺人鬼』の鮫が、十匹、十五匹と
牙
(
きば
)
を光らせて、しのびよって来る。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
これも土人が弓をひきしぼり、
虎
(
とら
)
が
牙
(
きば
)
をむき出したまゝ、いつまでも同じ姿勢をつゞけてゐました。
のぞき眼鏡
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
追われているのはそれらの幾千倍も幾万倍もあるのに、その多くの労働者の群れには、
牙
(
きば
)
をむいて自分のあとを振り向こうとする、たった一人の仲間さえもないのだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
牙
(
きば
)
をむいて、闘いを求めていた。情緒が彼に闘いを求めているのか、彼が闘いを求めているのか、明らかでなかった。その状況を半年ほど前から、五郎は気付いていた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「うむ、海に
棲
(
す
)
んでる馬だって、あの大きな
牙
(
きば
)
を親方のとこへ
土産
(
みやげ
)
に持って来たあの人だろう」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
デカダンはデカダンと
相食
(
あひは
)
んでゐる。悪と悪とは互にその
牙
(
きば
)
を磨いてゐる。それは皆な我に
着
(
ちやく
)
した処から起つて来る。現に自分すらその
染着
(
せんちやく
)
を捨てることが出来なかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
見る見る老女の
怒
(
いかり
)
は激して、
形相
(
ぎようそう
)
漸くおどろおどろしく、
物怪
(
もののけ
)
などの
凴
(
つ
)
いたるやうに、一挙一動も全くその人ならず、足を踏鳴し踏鳴し、白歯の
疎
(
まばら
)
なるを
牙
(
きば
)
の如く
露
(
あらは
)
して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
色はまっくろで、鍵の切りこんだ
牙
(
きば
)
みたいなところが、まるで西洋のお城の塔のような形をしています。その上
怪
(
あや
)
しいのは、その鍵を
握
(
にぎ
)
るところについている
彫
(
ほ
)
りものです。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ある者は
摧
(
くじ
)
いて
髄
(
ずい
)
を吸い、ある者は砕いて地に
塗
(
まみ
)
る。歯の立たぬ者は横にこいて
牙
(
きば
)
を
磨
(
と
)
ぐ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
獅子をも
斃
(
たお
)
す白光鋭利の
牙
(
きば
)
を持ちながら、
懶惰
(
らんだ
)
無頼
(
ぶらい
)
の腐りはてたいやしい根性をはばからず発揮し、一片の
矜持
(
きょうじ
)
なく、てもなく人間界に屈服し、
隷属
(
れいぞく
)
し、同族互いに敵視して
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
“牙”の解説
牙(きば)は、動物が口に持つ、骨格と同一または近い組織でできた、大型で細長い錐形の器官。口器の一種である。
(出典:Wikipedia)
牙
常用漢字
中学
部首:⽛
4画
“牙”を含む語句
西班牙
葡萄牙
牙彫
象牙紙
西班牙人
猪牙
爪牙
猪牙舟
猪牙船
象牙彫
牙歯
牙山
象牙
牙城
匈牙利
海牙
佶屈聱牙
犬牙
葦牙
葡萄牙人
...