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火影
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ほかげ
ふりがな文庫
“
火影
(
ほかげ
)” の例文
遠くの方へ流れてゆく小さなさびしい
火影
(
ほかげ
)
と三味線の音——小さい者は泣くにもなけない不思議なわびしさに閉じこめられてしまう。
旧聞日本橋:17 牢屋の原
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
すっかり目がさめて、じっと目を据えると、窓越しにすぐ前の壁の上に、燈火のついたどこかの窓の赤い
火影
(
ほかげ
)
がさしてるのを認めた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その夜の十二時に近い時分、遠藤は独り婆さんの家の前にたたずみながら、二階の硝子窓に映る
火影
(
ほかげ
)
を
口惜
(
くや
)
しさうに見つめてゐました。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さっき、隅の小屋から足を洗いに飛び出した若い男の
面
(
つら
)
がまえは、ちらと
火影
(
ほかげ
)
に見ただけであるが、到底、
凡者
(
ただもの
)
の
眼
(
まな
)
ざしではなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、
毎晩
(
まいばん
)
のように、そのお
宮
(
みや
)
にあがったろうそくの
火影
(
ほかげ
)
が、ちらちらと
揺
(
ゆ
)
らめいているのが、
遠
(
とお
)
い
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
から
望
(
のぞ
)
まれたのであります。
赤いろうそくと人魚
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
▼ もっと見る
黄色い薄明りが障子を照して、
火影
(
ほかげ
)
が搖曳してゐる。それは皆が寢てゐる部屋からではなくてその次の間の茶の間からであつた。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
揺れる
火影
(
ほかげ
)
に入乱れる処を、ブンブンと
唸
(
うな
)
って来て、
大路
(
おおじ
)
の電車が風を立てつつ、
颯
(
さっ
)
と
引攫
(
ひっさら
)
って、チリチリと紫に光って消える。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
米友は
苦
(
にが
)
りきって、行燈の
火影
(
ほかげ
)
に薄ぼんやりした室内を見廻した揚句に、ギックリと眼を留めたそれは、床の間の掛軸です。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
わが家に
辿
(
たど
)
りついて、机の上の燈火をつけると、その
火影
(
ほかげ
)
もまた昨夜とは違い、にわかに清く澄んでいるような心持がする。
虫の声
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
苔
(
こけ
)
むしたる古井のもとに立ちて見入るに、
唐紙
(
からかみ
)
すこし明けたる
間
(
ひま
)
より、
一三〇
火影
(
ほかげ
)
吹きあふちて、
一三一
黒棚のきらめきたるもゆかしく覚ゆ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
晩に、たがいに近くランプの
火影
(
ほかげ
)
にすわって、沈黙に陥るような場合に、彼女は彼が今にも言い出しはすまいかとにわかに感ずるのであった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
火影
(
ほかげ
)
を
片頬
(
かたほゝ
)
に
受
(
う
)
けた
妻
(
つま
)
の
顔
(
かほ
)
は、
見恍
(
みと
)
れるばかりに
綺麗
(
きれい
)
である。
頬
(
ほゝ
)
もポーツと
桜色
(
さくらいろ
)
にぼかされて、
髪
(
かみ
)
も
至
(
いた
)
つて
艶
(
つやゝ
)
かである。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
楽しい笑声は座敷の内に
溢
(
あふ
)
れた。お志保は
紅
(
あか
)
くなつた。斯ういふ間にも、独り丑松は
洋燈
(
ランプ
)
の
火影
(
ほかげ
)
に横になつて、何か深く物を考へて居たのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ついあそこまで往って見たい。
火影
(
ほかげ
)
が外へ差しているか。話声が
微
(
かす
)
かにでも聞えているか。それだけでも見て来たい。いやいや、そんな事は出来ない。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
寝しずまった町はひそやかで、両側の家々は
扉
(
とぼそ
)
も
蔀
(
しとみ
)
も、門も窓もとざしてしまって、
火影
(
ほかげ
)
一筋洩らしていなかった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
取出し拔て
行燈
(
あんどう
)
の
火影
(
ほかげ
)
に
佶
(
きつ
)
と鍔元より
切先
(
きつさき
)
掛
(
かけ
)
て打返し見れども見れども
曇
(
くもり
)
なき
流石
(
さすが
)
は
業物
(
わざもの
)
切味と見惚て莞爾と
打笑
(
うちわら
)
ひ
鞘
(
さや
)
に納めて
懷中
(
ふところ
)
へ忍ばせ父の
寢顏
(
ねがほ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
うろ/\方々を見廻す
中
(
うち
)
に、侍が
閃
(
きら
)
つく長いのを持って立って居たのを
火影
(
ほかげ
)
に見たから、小僧は驚き提灯を
投
(
ほう
)
り出して向うへ逃げ出したから提灯は燃え上る
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
冬になると雪が
全然
(
すっかり
)
家を埋めて
了
(
しま
)
う、そして夜は
窓硝子
(
まどガラス
)
から赤い
火影
(
ほかげ
)
がチラチラと
洩
(
も
)
れる、折り折り風がゴーッと吹いて来て林の
梢
(
こずえ
)
から雪がばたばたと
墜
(
お
)
ちる
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
守の前に出されると、ほのぐらい
火影
(
ほかげ
)
に背を向けた
儘
(
まま
)
、女は顔に袖を押しつけるようにしてうずくまった。
曠野
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
港の中には
汽船
(
ふね
)
が
二艘
(
にはい
)
、四つ五つの
火影
(
ほかげ
)
がキラリ/\と水に散る。何処ともない波の音が、
絶間
(
たえま
)
もない単調の波動を伝へて、働きの鈍り出した渠の頭に聞えて来た。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
四度目であったか——
火影
(
ほかげ
)
の暗い座敷に、独り机によっていたら、引入れられるように自分のこと、お前のこと、またお宮のことが思われて、
堪
(
こら
)
えられなくなった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
朝の薄い光が窓から斜めに隊長の頭に落ちていたが、近頃めっきり白さの増した頭髪やまた
形相
(
ぎょうそう
)
の衰えが、蝋燭の
火影
(
ほかげ
)
の中で
隈
(
くま
)
をつくり、かえって険悪な表情に見えた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
本館の方から洩れてくる部屋部屋の
火影
(
ほかげ
)
が、植込の間にちらちらと見えるかと思えば、庭の木立の上からは、まっ白いお月さまが、そっと、のぞき込むのでございました。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
硝子張
(
ガラスばり
)
の障子を漏れる
火影
(
ほかげ
)
を受けているところは、
家内
(
やうち
)
を
覘
(
うかが
)
う曲者かと怪まれる……ザワザワと庭の
樹立
(
こだち
)
を
揉
(
も
)
む夜風の余りに顔を吹かれて、文三は
慄然
(
ぶるぶる
)
と身震をして
起揚
(
たちあが
)
り
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
天幕
(
てんまく
)
の中で今日の獲物を
羹
(
あつもの
)
の中にぶちこんでフウフウ吹きながら
啜
(
すす
)
るとき、李陵は
火影
(
ほかげ
)
に顔を
火照
(
ほて
)
らせた若い
蕃王
(
ばんおう
)
の息子に、ふと友情のようなものをさえ感じることがあった。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
加
(
くは
)
ふるに
前檣々頭
(
ぜんしやうしやうとう
)
に
一點
(
いつてん
)
の
白燈
(
はくとう
)
と、
左舷
(
さげん
)
の
紅燈
(
こうとう
)
は
見
(
み
)
えで、
右舷
(
うげん
)
に
毒蛇
(
どくじや
)
の
巨眼
(
まなこ
)
の
如
(
ごと
)
き
緑色
(
りよくしよく
)
の
舷燈
(
げんとう
)
を
現
(
あらは
)
せる
他
(
ほか
)
は、
船橋
(
せんけう
)
にも、
甲板
(
かんぱん
)
にも、
舷窓
(
げんさう
)
からも、
一個
(
いつこ
)
の
火影
(
ほかげ
)
を
見
(
み
)
せぬかの
船
(
ふね
)
は
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
テカテカする
梯子段
(
はしごだん
)
を登り、長いお廊下を通って、
漸
(
ようや
)
く奥様のお
寝間
(
ねま
)
へ
行着
(
ゆきつき
)
ましたが、どこからともなく、ホンノリと来る
香
(
こう
)
は
薫
(
かお
)
り
床
(
ゆか
)
しく、わざと細めてある
行燈
(
あんどう
)
の
火影
(
ほかげ
)
幽
(
かす
)
かに
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
同時にボーッと燃え上る
火影
(
ほかげ
)
が二人でふり返って見ている障子にゆらめいて又消えた。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
炉
(
ろ
)
には
柱
(
はしら
)
にもなるべき木を
惜気
(
をしげ
)
もなく
焼
(
たき
)
たつる
火影
(
ほかげ
)
に
照
(
てら
)
すを見れば、末のむすめは
色黒
(
いろくろ
)
く
肥太
(
こえふと
)
りて
醜
(
みにく
)
し。をり/\
裾
(
すそ
)
をまくりあげて虫をひらふは見ぐるしけれど
恥
(
はぢ
)
らふさまもせず。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
秩父
(
ちゝぶ
)
の雪の
山颪
(
やまおろし
)
、身を切るばかりにして、
戸々
(
こゝ
)
に燃ゆる
夕食
(
ゆふげ
)
の
火影
(
ほかげ
)
のみぞ、慕はるゝ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「泊めてもらうって——宿屋かね。」と車夫は提灯の
火影
(
ほかげ
)
に私の
風体
(
ふうてい
)
を見て
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
惣八郎はと見ると、
篝火
(
かがりび
)
の
火影
(
ほかげ
)
で、
鑷
(
けぬき
)
を使っていた。惣八郎は今日のできごとを誰にも披露しなかったのだ、と思った。が、甚兵衛の心のうちには、それに対する感謝の心は湧かなかった。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふけ行く夜に奧も表も人定まりて、
築山
(
つきやま
)
の
木影
(
こかげ
)
に
鐵燈
(
かねとう
)
の光のみ
侘
(
わび
)
しげなる
御所
(
ごしよ
)
の
裏局
(
うらつぼね
)
、女房曹司の室々も、今を盛りの
寢入花
(
ねいりばな
)
、
對屋
(
たいや
)
を照せる燈の
火影
(
ほかげ
)
に迷うて、妻戸を打つ蟲の音のみ高し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
岸近く飛びかふのは
松明
(
たいまつ
)
である。その赤い焔を風が赤旗のやうにゆるがせてゐる。ちらつく
火影
(
ほかげ
)
にすかして、ドルフが岸を見ると、大勢の人が慌だしげな様子をして岸に立つて何かの合図をしてゐる。
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
音吉はゆらめく
火影
(
ほかげ
)
に、暫くあちこち地面を眺めていたが
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夢はゆらぎぬ、柔かき
火影
(
ほかげ
)
の波に。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
火影
(
ほかげ
)
にそむけ、人知れず。
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
人と
火影
(
ほかげ
)
の美くしい
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その
夜
(
よ
)
の十二時に近い時分、遠藤は独り婆さんの家の前にたたずみながら、二階の硝子窓に映る
火影
(
ほかげ
)
を
口惜
(
くや
)
しそうに見つめていました。
アグニの神
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
火影
(
ほかげ
)
はなお壁の上にさしていた。しかしそれはもうランプか
蝋燭
(
ろうそく
)
かの反映のように薄く穏やかになっていた。窓は相変わらず開かれていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ここへ来ると、行手に遠見の番所の
火影
(
ほかげ
)
がボンヤリと見えている。万一の場合、大きな声を出しさえすれば、誰か番所から駈けつけてくれる。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その夜竜子はいつものように、生れてから十七年、同じように枕を並べて寝た母の
寐顔
(
ねがお
)
を、次の
間
(
ま
)
からさす電燈の
火影
(
ほかげ
)
にしみじみと打眺めた。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
また、その一つの
火影
(
ほかげ
)
の
下
(
した
)
にすわって、こちらの
沖
(
おき
)
を
見
(
み
)
つめているおばあさんの
姿
(
すがた
)
を、ありありと
目
(
め
)
に
描
(
えが
)
いていたのです。
海の踊り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その蝋燭の日中に並び
点
(
とぼ
)
る
火影
(
ほかげ
)
には、黒い着物のまま石段の上にひざまずいて、戦地にある人のために無事を祈ろうとするような年若な女も居た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは
蛇形
(
だぎょう
)
の
陣
(
じん
)
のごとく、うねうねと、
裾野
(
すその
)
のあなたこなたからぬいめぐってくる一
道
(
どう
)
の
火影
(
ほかげ
)
である。多くの
松明
(
たいまつ
)
が
右往左往
(
うおうざおう
)
するさまにそういない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
早瀬はその
水薬
(
すいやく
)
の
残余
(
のこり
)
を
火影
(
ほかげ
)
に透かして、透明な液体の中に、
芥子粒
(
けしつぶ
)
ほどの泡の、風のごとくめぐる
状
(
さま
)
に、
莞爾
(
にっこり
)
して
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
日が暮れるとすぐ寝てしまう
家
(
うち
)
があるかと思うと
夜
(
よ
)
の二時ごろまで店の障子に
火影
(
ほかげ
)
を映している家がある。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
街路
(
みち
)
の両側には、門々に今を盛りと
樺火
(
かばび
)
が焚いてある。其赤い
火影
(
ほかげ
)
が、一筋町の賑ひを楽しく照して、晴着を飾つた
徂来
(
ゆきき
)
の人の顔が何れも/\酔つてる様に見える。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私は此度は幕で
火影
(
ほかげ
)
を包んで置いて、それから腹這いになって、煙草を一本摘んだ。それが尽きると、また立ち上って暗くした。お宮は
軈
(
やが
)
てぐっすり寝入ったらしい。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その
火影
(
ほかげ
)
に照らされて、しょんぼりと立った人影は、他ならぬ三合目
陶器師
(
すえものし
)
であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
火
常用漢字
小1
部首:⽕
4画
影
常用漢字
中学
部首:⼺
15画
“火”で始まる語句
火
火鉢
火傷
火照
火箸
火焔
火桶
火光
火酒
火事