みなもと)” の例文
然うだ、其だから僕等の生涯は永久えいきゆうに暗黒だと云ふのだ!家庭かてい人生じんせい活動くわつどうみなもとである、と、人にツてはこんなことを云ふものもある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
雪水せつすゐ江河かうがみなもとやしなふなど、此外つまびらかにいはゞなほあるべし。是をおもへば天地の万物すつべきものはあるべからず、たゞすつべきは人悪じんあくのみ。
せい元來ぐわんらい身分みぶん分類ぶんるゐで、たとへばおみむらじ宿禰すくね朝臣あそんなどのるゐであり、うぢ家系かけい分類ぶんるゐで、たとへば藤原ふじはらみなもとたひら菅原すがはらなどのるゐである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
青眼鏡は物を云う時、殆ど唇を動かさぬものだから、声のみなもとがハッキリせず、殊に斯様かような薄暗がりでは、ゾッとする程物凄く聞えるのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それらは皆インドのガンジス川の一番みなもとの水である。この水は真の霊水であるといってチベット人及びインド人の中にも伝えられて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「では、あなた方は、三人とも、私の從兄姉いとこでゐらつしやるのですね。私たちお互の血の半分は、一つのみなもとから流れて來てるのですね?」
けれども同時にそのみなもとが神秘なものでも荘厳なものでもなくなって、第一義真理の魅力を失い、崇拝にも憧憬にも当たらなくなってしまう。
あの大川おほかはは、いく銀山ぎんざんみなもとに、八千八谷はつせんやたにりにつてながれるので、みづたぐひなくやはらかになめらかだ、とまた按摩あんまどのが今度こんどこゑしづめてはなした。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人民の間にも行なわれて、毒を流すこともっともはなはだしきものなれば、政治のみを改革するもそのみなもとを除くべきにあらず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これ確かに富のみなもとでありますが、しかし経済上収支相償うことすくなきがゆえに、かつてはこれを米国に売却せんとの計画もあったくらいであります。
(大違いだ。——魚は河にんでいるけれど、河の大きなすがたは見えないのだ。悠久な、大河のみなもとと、果てとを見極めるには、魚の眼ではいけない)
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昨夜ゆうべ彼の睡眠を悩ました細工のみなもとを、苦笑しながら明らさまに見た時、彼の聯想れんそうはすぐこの水音以上に何倍か彼を苦しめた清子の方へし移った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人が分けても物足りなく感じたのは、浮世に住んで居る人間の一種で、総べての禍のみなもととされている女人にょにんと云う生物いきものを見たことのない事であった。
二人の稚児 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わが命のみなもとは、と、おどろきを新たにいたします、アダムのあばらから生れたなんて、西洋人も想像力が足りないことね。
けれども生命の流れは曠劫こうごうよりきたってみなもとを知ることあたわず、未来際みらいざいに流れてその尽頭じんとうを知ることができないのですよ。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
急にそんな風に義雄の眼が見えなく成って来た病のみなもといては、眼科を専門にする博士ですらいまだハッキリしたことは言えないとのことであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
本店の内幕うちまくを知れば支店の事はすぐわかる道理。大正現代の文学はそのみなもと一から十までことごとく西洋近世の文学にあり。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかるに、大佐たいさ言葉ことばと、その顏色かほいろとでさつすると、その心痛しんつうみなもとんでも其處そこおこつたらしい、わたくしいそげんをつゞけた。
是即ち評價のみなもとなり、是が善惡二の愛をあつめ且つるの如何によりて汝等の價値かち定まるにいたる 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さればその証拠だに見落さず、これを辿たどりて、正しきみなもときわむるなれば、やわかミチミを取戻し得ざらん——
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と直訳すると、邦文ほうぶんの「頓首とんしゅ」、「再拝さいはい」よりひどく聞こゆれども、この句のみなもとはさほど卑屈ひくつの意ではなく
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
クリストはこの神の為に——詩的正義の為に戦ひつづけた。あらゆる彼の逆説はそこにみなもとを発してゐる。後代の神学はそれ等の逆説を最も詩の外に解釈しようとした。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ユリの諸種はみな宿根草しゅっこんそうである。地下に鱗茎りんけい(俗にいう球根)があって、これが生命のみなもととなっている。すなわち茎葉けいようれても、この部はいつまでも生きていて死なない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
日本の国民はなにを望んだか、みなもとにあらずんばたいらであった、ナポレオンを島流しにしたのは国民であったが、かれを帝王にしたのも国民であったことをわすれてはならない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
又更に物質上の整理、経済上の種種しゆ/″\の用意、幸福と歓喜とのみなもとである家政を好く按排あんばいする等の為に熟達した機敏をつて居る事も、この階級を除いて何処いづくに発見せられるでせうか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
たった一つの小さな昔話でも、だんだんにみなもとを尋ねて行くと信仰の変化がうかがわれる。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なほこの外に「澱河歌よどがわのうた」三首あり。これらは紀行的韻文とも見るべく、諸体混淆こんこうせる叙情詩とも見るべし。惜いかな、蕪村はこれを一篇の長歌となして新体詩のみなもとを開く能はざりき。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人ありて哲學の一統ジステムを立つるときは、その時の人智の階級にて、及ばむ限のあらゆる事物は、合して一機關をなし、其理の動くところ、こと/″\そのみなもとに顧應せではかなはじ。批評も亦なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
(春彦は出てゆく。楓は門にたちて見送る。修禪寺の僧一人、燈籠を持ちて先に立ち、つゞいてみなもとの頼家卿、廿三歳。あとより下田五郎景安、十七八歳、頼家の太刀たちをさゝげて出づ。)
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしまた彼の言葉も、彼女に取つていかに、みなもとの知れない水であつたらうか。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
何と言ったって、恋愛は人間社会のあらゆる創造のみなもとなんですから、それが正しく評価され、堂々と生かされないかぎり、すぐれた個人も、すぐれた民族も、すぐれた文化も生まれない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
奈良は常子の悪口通り引っ込み思案が勝っていて活動的でない所為せいか、茶の湯がこゝでみなもとを発しました。利休の先生が紹鴎しょうおう、紹鴎の先生が珠光しゅこう、その珠光が当地で茶道さどうを開いたのでございます。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この山津浪やまつなみみなもと根府川ねぶがは溪流けいりゆう西にしさかのぼること六粁ろくきろめーとる海面かいめんからのたかおよ五百米ごひやくめーとるところにあつたが、實際じつさい數箇所すうかしよからの崩壞物ほうかいぶつ一緒いつしよ集合しゆうごうしたものらしく、其分量そのぶんりよう百五十米立方ひやくごじゆうめーとるりつぽう推算すいさんせられた
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その進歩が行きづまって爆薬の出現となったものであるが、爆薬の方は不安定な化合物の爆発的分解によるもので、勢力のみなもとを分子内に求めている。勿論爆薬の方が火薬よりもずっと猛威をたくましゅうする。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
痛足河あなしがわは、大和磯城郡纏向まきむく村にあり、纏向山(巻向山)と三輪山との間にみなもとを発し、西流している川で今は巻向川と云っているが、当時は痛足あなし川とも云っただろう。近くに穴師あなし(痛足)の里がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その機能を営むみなもとであるところの実体を忘れた考え方にすぎない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
中務卿親王なかつかさきょうしんのう上野こうずけ親王しんのう中納言ちゅうなごんみなもと朝臣あそんがおられます」
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
みなもとは遠き苦行くぎやうの山を出で
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そもみなもとをただせむ人
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
みなもとぞ、煩ひと
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ねえ、汚點しみよごれもない追憶といふものは素晴すばらしい寶玉ですね——んでも盡きない清らかな元氣囘復のみなもとですね。さうぢやありませんか。
爾来じらいわが国人の力にて切磋琢磨せっさたくま、もって近世の有様に至り、洋学のごときはそのみなもと遠く宝暦年間にあり〔『蘭学事始』という版本を見るべし〕。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
けだし、スッテンドウジというのは、大江山の酒呑童子しゅてんどうじのことで、それはとうの昔に、みなもと頼光らいこうと、その郎党によって退治されているはずのものです。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
みなもとわたるは、大きな発見でもしたように、くり返していっていた。——さっきから、馬場の埓内らちうちへ、眼もはなたずに。
が、村里一統、飲む水にも困るらしく見受けたに、ここのみなもとまで来ないのは格別、流れを汲取るものもなかったように思う……何ぞ仔細しさいのある事じゃろうか。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
臭気のみなもとは案外近いところにある。もしそれが遠いところにあるものなれば、臭気は十分ひろがっていて、どこで嗅いでも同じ程度の臭気しかしない筈だった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
変であって見ればどうかしなければならん。どうするったって仕方がない、やはり医者の薬でも飲んで肝癪かんしゃくみなもと賄賂わいろでも使って慰撫いぶするよりほかに道はない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しかし、人の心を改めるには、どうしてもそのみなもとから改めてかからんことにはだめだと思いますね。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの和泉町いずみちょう一勇斎国芳いちゆうさいくによしさんが今度の御政事向の事をばそれとなく「みなもと頼光らいこう御寝所ごしんじょの場」にたとえて百鬼夜行ひゃっきやこうの図を描き三枚続きにして出したとかいう事で御座ります。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大台ヶ原山にみなもとを発する吉野川の流れに沿うて下り、それがもう一本の渓流と合するまたと云う辺へ来て二つに分れ、一つは真っすぐに入の波へ、一つは右へ折れて
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)