泥棒どろぼう)” の例文
……そんなわたしだかわたしではないか……(そこで葉子は倉地から離れてきちんとすわり直してたもとで顔をおおうてしまった)泥棒どろぼう
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
おい昨夜ゆうべ枕元まくらもとおほきなおとがしたのはぱりゆめぢやなかつたんだ。泥棒どろぼうだよ。泥棒どろぼう坂井さかゐさんのがけうへからうちにはりたおとだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「やかましいやいッ。てめえがおれたちに金入れを取られたといやあ、おれたちふたりは泥棒どろぼうだ。よくも人に濡衣ぬれぎぬせやがった」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此方こつちから算盤そろばんはじいて、この土地とち人間にんげん根性こんじやうかぞへてやると泥棒どろぼう乞食こじきくはへて、それをふたつにつたやうなものだなう。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
与八はつるべ縄へ掛けた手を休めて見ていると、その人の影は泉水せんすいの池のほとりから奥殿の廊下の方へと進んで行きます。泥棒どろぼうだ、泥棒に違えねえ
私と棟梁が泥棒どろぼうッ! と大声をあげて騒ぎ立てたとたんに、私は、そのお役人がピカリと引っこ抜いたのを見ました。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
が日一日とそびらに迫る餓えは、夢や悔恨で払い退ける由はない。ワグナーにとって、この上の可能なことは、「死ぬか泥棒どろぼうをするか」であったと言われる。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
箆棒べらぼう、おつめんなもんぢやねえ、それだらぜにせよぜに、なあ、ぜにさねえつもりすんのが泥棒どろぼうよりふてえんだな、西にしのおとつゝあ躊躇逡巡しつゝくむつゝくだから、かたで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
口笛くちぶえいて、とりんだことと、火事かじや、泥棒どろぼうとが、なんの関係かんけいがあるのですか? おおぜいで、こんな子供こどもをいじめるなんてまちがってはいませんか。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
泥棒どろぼう監獄かんごくをやぶつてげました。つきひかりをたよりにして、やまやま山奥やまおくの、やつとふか谿間たにまにかくれました。普通なみ大抵たいてい骨折ほねをりではありませんでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
開くに吉三郎にはあらで一人の男拔打ぬきうち切掛きりかけしかばお竹はあなやと驚き奧の方へ迯入にげいりながら泥棒どろぼうと聲を立てるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
儲けて来たなら蚊帳かやを一つ買つて下さい。もう十二年前に丁度万作の生れた年、たつた一枚の蚊帳を泥棒どろぼうに盗まれて今だに蚊帳を買ふ事が出来ないんだから。
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
ひどいわ ひどいわ アーン ぢやピチちやん あんたは泥棒どろぼうつかける夢より見ないんだわ アーン
お寺へ金を納めて後生を願うのでもそうであり、泥棒どろぼうの親分が子分を遊ばせて食わせているのでもそうである。それが善い悪いは別としてこの世の事実なのである。
さるかに合戦と桃太郎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
青砥のせっかくの高潔な志も、お前の無智な小細工で、泥棒どろぼうに追銭みたいなばからしい事になってしまった。人をたぶらかすのは、泥棒よりもなお悪い事だ。恥かしくないか。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「誰か来て下さいよう」とあさ子は泣き声で叫びたてた、「どなたか来て下さいよう、この泥棒どろぼうがあたしの家を毀しますよう、どなたか駐在さんへ知らせにいって下さいよう」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
男でも女でも同じように、うそはいうし、欲は深いし、焼餅やきもちは焼くし、己惚うぬぼれは強いし、仲間同志殺し合うし、火はつけるし、泥棒どろぼうはするし、手のつけようのない毛だものなのだよ……
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ぼくは、車にられているうち、どうも、はじめの運転手にられたんだ、という気がしてきました。(彼奴あいつに一円もやった。泥棒どろぼうに追銭とはこのことだ)と思えば口惜くやしくてならない。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
たび道連みちづれなさけといふが、なさけであらうとからうと別問題べつもんだいとしてたび道連みちづれ難有ありがたい、マサカひとりでは喋舌しやべれないが二人ふたりなら對手あひて泥棒どろぼうであつても喋舌しやべりながらあるくことが出來できる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
泥棒どろぼうのつける心配もない、風が吹こうが雨が降ろうが屋根が漏る心配も壁がこわれる心配もない、飢えては一わんの麦飯に舌鼓をうち、渇しては一杯の泥水どろみずにも甘露の思いをなす、いわゆる
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「ホモイ。気をつけろ。そのはこに手でもかけてみろ。食いころすぞ。泥棒どろぼうめ」
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
正九郎しょうくろうと加平はふたりの泥棒どろぼうのようにひそひそと話した。すべての計画がさっさと運んでいった。まるでとんとんびょうしであった。なあに、やあ公をさそい出すくらいわけのないことはない。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
泥棒どろぼうするの罪悪なることは誰でも知っているが、人が見ていないところにものが落ちていると、十に七、八人までは持っていってもよいか知らという気が起きる。ぬすむ気はなくとも欲しい気はある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
自分の子におとうさんがお前は泥棒どろぼうになれと教えるようなものではありませんか。あなたはとても悪者になれる柄ではないのですからね。根が優しいのですからね。それはい性格ではありませんか。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「さうよ。泥棒どろぼうなんかするもんか!」と、また一人叫びました。
掃除当番 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
泥棒どろぼうでございます泥棒でございます!」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
石炭泥棒どろぼう
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
什麽どんなことするつて泥棒どろぼうはしねえぞ、勘次かんじれた目尻めじりに一しゆ凄味すごみつておつたがつたとき卯平うへいはのつそりと戸口とぐちおほきな躯幹からだはこばせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夫婦ふうふ坂井さかゐとは泥棒どろぼう這入はいらないまへより、是丈これだけしたしみのしたやうなものゝ、それ以上いじやう接近せつきんしやうとねんは、宗助そうすけあたまにも御米およねむねにも宿やどらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「ええ、ゆふべ、泥棒どろぼう……なん馬鹿ばかだろ……白瓜しろうりぽん反物たんもの三だん……うつかり秘密話ないしよばなしもできやしない」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「いいや、いいや。一ツや二ツくらいとってかまうもんか。かきなんか、ひとりでに、地べたからえてるものなんだ。これを取ったッて、泥棒どろぼうなんかになりゃしない」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまえだろう、口笛くちぶえいて、夜中よなかに、くろとりんだりするのは? をつけたのも、おまえにちがいない。また、方々ほうぼう泥棒どろぼうにはいったのも、おまえにちがいない。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
僕は 星ピチといひます 地球の犬であります 仕事は 泥棒どろぼうあやしいものをはらふことです
はき是れどうしても泥棒どろぼうと云ふ看板かんばんを掛て居る樣なものだサア此方へ來いと直樣坂本の自身番へ引上しに出役岡村七兵衞馬籠まごめくら十郎の兩人ひかへ居る前へ久兵衞を引きすゑまづ雜物ざふもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
赤ん坊と来ては、てんでお話にならない。泥棒どろぼうとお父さんの区別がつかないのだから。出てゆきがけに泥棒がお愛嬌あいけうに、べろべろべろといつてあやすと、手足をばたばたやつて喜んでゐる始末だ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
泥棒どろぼうのしわざだ!」
仔猫の裁判 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
夫婦ふうふかくもとふので、文庫ぶんこ其所そこいたなり朝飯あさめしぜんいた。しかはしうごかす泥棒どろぼうはなしわすれなかつた。御米およね自分じぶんみゝあたまたしかことをつとほこつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
泥棒どろぼうなんぞするやざあ、わし大嫌だえきれえでがすから、わしはたけ茄子なすもぎつたんだつてちやんとつちやんでがすから、いやまつたくでがす、お内儀かみさんとこ甘藷さつまりあんしたとも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どこへいったのかと思うと馬糧小屋まぐさごやだ。馬糧をぬすみにはいる泥棒どろぼうはないから、そこだけは錠前じょうまえもなく、ギイとくとなんなくかれをむかえいれてくれた。そしてまたソーッとめておく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「誰ぢやな今時分に。泥棒どろぼうさんかのう。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
泥棒どろぼう
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
音を立てないであるくのが自慢じまんになるもんだとは、この時から始めて知った。泥棒どろぼう稽古けいこじゃあるまいし、当り前にするがいい。やがて始業の喇叭らっぱがなった。山嵐はとうとう出て来ない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大抵たいていなら泥棒どろぼうと間違えられるところだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)