)” の例文
概して、彫刻家は、余技画をかくらしい。文壇人の余技画では、梅の絵を見ない。陳腐をむのかもしれない。が、梅は年々新しい。
梅ちらほら (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こころ合はでもいなまむよしなきに、日々にあひ見てむこころくまでつのりたる時、これに添はするならいさりとてはことわりなの世や。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
... こうしなぞは焼け過ぎた方が良いので生焼なまやけを非常にみます」猟天狗「むずかしいものですね。小鳥の中では何が一番美味おいしいでしょう」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わざと江戸っ子を使った叔父は、そういう種類の言葉を、いっさい家庭に入れてはならないもののごとくにきらう叔母の方を見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たとえば中国・九州で一般にシイラ、それで農民の好んで食う「しいら」という魚の名をんで、この方をマンビキと呼びかえている。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むろん二人の間に恋の遺恨なぞ言うようなまわしい事実があったかどうか、思い当るふしもありませんので唯、驚いているばかりです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
例えば、今から二十年ほどまえまでは池上の店で店長の食事のまかないには、店の守神にみあるを嫌って、獣肉を一切使わせなかった。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今時、木で作られる漏斗は珍らしいのでありますが、この方が酒や醤油しょうゆの味を変えません。それ故正直な酒屋は金物かなものみます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それから双生児はかたきの生まれかわりだといって町の人達は極度にみきらった。ところが庄屋のうちにまた双生児が生まれた。
抱茗荷の説 (新字新仮名) / 山本禾太郎(著)
早速亭主に談判して品子の方へ引き渡させるつもりでゐたのに、あんないたづらをされてみると、素直に註文を聴いてやるのがま/\しい。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分はこの沈黙の一座の中に明かに恐るべくむべく悲しむべき一種の暗潮の極めて急速に走りつゝあるのを感じたのである。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
佐保子さほこ昨日きのふまでに変つての兄弟からまれて孤独になつた象徴しるしであるらしいと台所で女中に云つて聞かせたりもおつやさんはなさいました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あるいはそれが原因と成ッて……貴嬢にはどうかはしらんが……私のめにはもっとむべき尤もかなしき結果が生じはしないかと危ぶまれるから
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
御行水ごぎょうずいも遊ばされず、且つ女人にょにんの肌に触れられての御誦経ごずきょうでござれば、諸々もろもろの仏神も不浄をんで、このあたりへはげんぜられぬげに見え申した。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その上に他と一しょになって物を言うのをひどくむのである。詩社を結ぶなんぞということは、てんでかれの頭にない。
こは思ひも寄らぬ御言葉を承はり候ものかな、御世は盛りとこそ思はれつるに、などまはしき事を仰せらるゝにや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
もし封建の語をまば封建の美点を去りてその悪弊をのみ保存せし劣等なる平民時代といはんこそ更に妥当なるべけれ。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
自分じぶんはじめたが、いてるうち、かれま/\しいとおもつたこゝろまつたえてしまひ、かへつかれ可愛かあいくなつてた。そのうちにをはつたので
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、戸口をまたいだとき、滝人は生暖かい裾風を感じて、思わず飛び退すさった。それは、いつもとわしい、死産の記憶をよみがえらせるからであった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
このさむらいは、鼠一匹を相手に、追いつ追われつ興がっているが、やはり、うつわむの心で手裏剣は切って放さない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「シャーター一人は法王と共に彼を信任して居るが、他の者は皆み嫌って居ります」というと総理大臣の隣に座って居る下席大臣かせきだいじんらしいお方は
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
目の藥となすか知ねどにあらず目には忌可いむべき物とうありとある醫者どのに聞たりしに中にも風にあたるをみ又白き物を見るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私も飲みたくてたまらぬけれども、金がないからただ宮島を見たばかりで、船にかえって来てむしゃ/\船のめしくってるから、船頭せんどうもこんな客はやだろう
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は何か? 心のいたみと道義の爲めのくるほしい努力の中にあつて私は自分をみ嫌つた。私は自讃から、否自尊の心からさへ何の慰めも得なかつた。
ちょうど雷雨季らいうきがやって来た。彼等は雷鳴を最もおそれる。それは、天なる一眼の巨人きょじんいかれるのろいの声である。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
また神魂たまは骸と分かりては、なお清くきよかるいわれありとみえて、火の汚穢けがれをいみじくみ、その祭祠まつりをなすにも、けがれのありては、そのまつりを受けざるなり
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
柿丘の前の血溜ちたまりは、見る見るうちに二倍になり三倍になりしてひろまって行った。それとともに、なんとも云えないやな、だるい気持に襲われてきた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
由来、芝居道では偶数の名題をむ慣習があるので、いろいろに無理な遣り繰りをして、三字、五字、七字にする。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
他日幕府の政權をかへせる、其事實に公の呈書ていしよもとづけり。當時幕府ばくふ既におとろへたりと雖、威權ゐけん未だ地にちず。公抗論かうろんしてまず、獨立の見ありと謂ふべし。
エドガー・アラン・ポオの小説を読むと、他人の眼をんで殺人を行う話がある。けれども鼻を忌んで殺人を行った人間は古往今来こおうこんらい自分一人であると思う。
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
これは逆廻りといって、道者はむのだそうで、案内者をもって自任する荷担ぎの男は、私から右の水引と朱印を取りあげて、遂に返してもらえなかった。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「されば宜しくござりません、昔から申すことで、何しろ湯屋で鐘のを聞くのさえむとしてござります。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一体に、わが国の古典文学には、文学本来の面目として、現実を有りのままに写実することをむ風があった。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なるほど、彼女のおそれ、み、そのことのために心を痛めている、妻という立場は、彼女の経験によつて感じとられた、いわば道徳的な存在にちがいない。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
「人をうたがうことは日本人のもっともむところだ。だが、ぼくはドノバン君の態度たいどを見るに、なにごとかひそかにたくらんでいるように疑えてならないんだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それは何人たれかが此方こっちへ向って呼びかけている声であった。ところで木客だちは、そのおうウイの声をひどみ嫌っているので、何人もそれに応ずる者はなかった。
死んでいた狒狒 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
どんな風にして知吉が鍵屋へ交渉をはじめたか知る由もないが、隠居の直造はそれ以来知吉を三百代言のやうにみ嫌つてゐた。相沢と鍵屋とは絶縁同様だつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
殿とのだになくばこゝろしづかかなるべきか、いな、かゝることおもふまじ、呪咀じゆそことばとなりてむべきものを。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
吾、醜かりし時、ひとわれうとみ、み、嫌ひて避け、見るごとに吾を殺さんとしぬ。吾、美しと云はるゝに到れば、ひとあらそうて吾を招く。吾れの変れる。人のまなこなき乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それとくらべれば文身は世間でいわれているほどまわしい習慣ではない。皮膚だけの深さで彫りつけ、変更することができないという理由だけで野蛮とはいえない。
そうした特異な部落を称して、この辺の人々は「憑き村」と呼び、一切の交際を避けてきらった。「憑き村」の人々は、年に一度、月のない闇夜やみよを選んで祭礼をする。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
勘次かんじ主人しゆじんために一所懸命しよけんめいはたらいた。以前いぜんからもかれたゞとなり主人しゆじんから見棄みすてられないやうとこゝろにはおもつてるのであつた。しか非常ひじやう勞働らうどう傭人やとひにん仲間なかまにはまれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私はそれをおそんでいます。トマスが「なんじ静かなるところに退きて神をエンジョイせよ」
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
実際、気のつくことは、彼が最近私の邪魔をした多くの場合のすべてが、もしそれがほんとに実行されたならむべき害を生じたであろう計画や行為に限られていたのだ。
俺たちがボル派に反対するのは、こうした言い方にも出ている強権主義をみ嫌うからである。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
そのうめ合せにはこれまで秋元の婢共おんなどもは、貞之進の物数を言わぬことを、気心が知れぬと内実んで居たが、その頃から単に温和おとなしい方と言改めて、羽織のえりの返らないのを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
去年老爺おやぢの一人息子がこの客室サロンで風来の労働者の客に勘定の間違まちがひから拳銃ピストルで殺されて以来、気丈な老爺おやぢも「暗殺」と云ふことばんで別名の方ばかりを用ゐようとして居るのだが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
是等の類同なる諸点あるが故に、同性相むところよりして、詩家は遂に綢繆ちうびうを全うする事能はざる者なるか。夫れ或は然らむ、然れども余は別に説あり、請ふ識者に問はむ。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そう言ってお医者さんは、急に部星の隅へ行かれて、畳の上から例のまわしい線香の束を拾いあげると、今度はそいつを持ってツカツカと私の前へやって来られていきなり
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
謂わば未曾有みぞう悪企わるだくみを考えつくに至った一つの重大な動機は、M県の菰田の地方では、一般に火葬というものがなく、殊に菰田家の様な上流階級では、猶更なおさらそれをんで
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)