御膳ごぜん)” の例文
がないものだから、ついおそくなりまして御氣おきどくです。すぐ御膳ごぜんいたしませう。しかしこんなところだからげるものがなくつてこまります。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人仕事ひとしごといそがわしい家の、晩飯の支度は遅く、ちょう御膳ごぜん取附とっつきの障子をけると、洋燈ランプあかし朦朧もうろうとするばかり、食物たべものの湯気が立つ。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御膳ごぜん何人前、さら何人前と箱書きのしてある器物の並んだ土蔵のたな背後うしろにして、ござを敷いた座蒲団の上に正香がさびしそうにすわっていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
千悔、万悔、ほぞんでいる胸元を貫くような午砲ごほうひびき。それと同時に「御膳ごぜんで御座いますよ」。けれど、ほいきたと云ッて降りられもしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
それですから、近所でもみんな可愛がりまして、御膳ごぜんの残りやおさかなの余りなどをこの犬にやっておりますし、犬もここを
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伴「旦那様、此の頃は貴方様あなたさまうなさいました、ろく/\御膳ごぜんあがりませんで、今日はお昼食ひるもあがりませんな」
「皆んな其處で御膳ごぜんべてえ——。」と、京子は自分の枕から見えるところに、一同の膳を持ち出さして、可味うまさうに喰べるのを喜ばし氣に見てゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ややもすると合戦でも起しかねまじき語気をしめすと、法王は大いに恐れて小心翼々よくよくとして心配をせられ、御膳ごぜんさえろくに召上めしあがらず日夜心を悩まされたそうですが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「何とでもおっしゃい。どうせあなたにはかないませんよ」と、お梅は立ち上りながら、「御膳ごぜんはお後で、皆さんと御一しょですね。もすこししてからまた参ります」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
くみて後に御膳ごぜんを差上べしといひおもての方へ出行たりあとに寶澤は手早く此夏中このなつちうえんの下へ埋置うづめおき二品ふたしな毒藥どくやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さあおまへさん此子このこをもいれてつてくだされ、なにをぐたりとておいでなさる、あつさにでもさわりはしませぬか、さうでなければ一ぱいあびて、さつぱりにつて御膳ごぜんあがれ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見透みすかしても旦那の前は庇護かぼうてくるるであろう、おお朝飯がまだらしい、三や何でもよいほどに御膳ごぜん其方そちへこしらえよ、湯豆腐に蛤鍋はまなべとは行かぬが新漬に煮豆でも構わぬわのう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
漸く人心地ひとここちに立ちかえりぬ、聞けば予が苦しさの余りに、仙台萩せんだいはぎ殿様とのさま御膳ごぜんを恋しく思いしよりも、なお待ちこがれし八合目の石室せきしつの炉辺にえられ、一行は種々の手段を施こし
「じゃあ御膳ごぜんの時だけ眼がねをお取り。」とおばあさんはいいました。
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「もうお中食ひるだから、久しぶりで御膳ごぜんを食べて……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「晩の御膳ごぜんは、みんなで内でたべたんですかね?」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お客さま、御膳ごぜんのお支度ができました」
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「織屋、御前そうして荷を背負しょって、外へ出て、時分どきになったら、やっぱり御膳ごぜんを食べるんだろうね」と細君が聞いた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いえ、道中筋で盛の可いのは、御家来衆に限りますとさ、殿様は軽くたんと換えて召食めしあがりまし。はい、御膳ごぜん。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お嬢さまは気分が悪いとおっしゃッて、御膳ごぜんろくに召上らずに、モウお休みなさいました、という。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もう御膳ごぜんは出来ておりますのですけれども、先生より先にいただいては済むまいと思いますから、二人ともにまだ夕飯を食べないでお待ち申しているところでございますが
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さて私は昼を過ぎると御膳ごぜんべないのが例でもはや今日は十一時半にもなって居るようですが、昨日も昼飯を喰わず殊に昨夜ゆうべから実に長い路を遠廻りをして来ましたので
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
菓子器をお願いだから……宜しく万事此処へこう置いて……お茶は鞄のうちにあります、茶が変るといきませんから………ハッ/\/\面白いどうも……もう御膳ごぜんが来るよ、早いねえ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
をとこらしくおもときあきらめておかねさへ出來できようならおりきはおろか小紫こむらさきでも揚卷あげまきでも別莊べつさうこしらへてかこうたらうござりましよう、うそんなかんがごとめにして機嫌きげんよく御膳ごぜんあがつてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つぎやすむ故亭主八五郎は茶などはこばせて挨拶あいさつなしけるに若き夫婦は御世話ながらお酒を]一がふ御膳ごぜんを二人前出し下されと云ければ亭主は承知なし御肴おさかなは何んぞ見つくろひましよと云つゝ煮染にしめに飯と酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あのう、御膳ごぜんのお支度が出来ました」
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
織屋おりや御前おまへさうして脊負しよつて、そとて、時分じぶんどきになつたら、矢張やつぱ御膳ごぜんべるんだらうね」と細君さいくんいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「はいはい申兼もうしかねましたことなれど、この洗濯賃をあてにして、今日はまだ御膳ごぜん頂戴いただきましねえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつもひだるい腹を抱えて居るところでとうといラマに逢いに行くと、ラマというのは大抵皆金満家ですから昼御膳ごぜんなどはなかなか立派なもので、前には乾肉ほしにくの山が出来て居る位。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
小「何も食べません、何をやっても勿体ない/\と云って何も食べません塩物をやったがそれも食べません、お香物こう/\しゃぶって御膳ごぜんを食べて、一番しまいに香物をガリ/\と食べました」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頼むと言に八五郎はまことめづらしき大酒なりと思ひ先々まづ/\御寛おゆるりと上られよと言つゝコレ/\と彌助を呼び先生樣にもう一升おかんをつけて上よシテまた徐々そろ/\御膳ごぜんのお支度をと云ければ彌助はかしこまり候と又一升を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そっちはあとにして、二階のお嬢様に御膳ごぜんを上げて下さい」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まだ御膳ごぜんを仕舞わないのかえ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
こわくもなく、まるで夢中で、何とも思やしなかったが、実はおじいさんと二人ばかりで、他所よその人の居ない方が、御膳ごぜんを頂く時やなんか、私ゃ気が置けなくてかったわ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
い「誠に申しにくいけれども、どうか御膳ごぜんだけ召上ってください、しおやならばお母様っかさまはお加減が悪くていらっしゃるから、おさかなけて置いて、あのお見舞に上げたいものだねえ」
自分のいる前では、丸くなったり、四角になったりいろいろな芸をして、人を釣ってるが、いなくなれば、すぐに忘れて、平生へいぜいの通り御膳ごぜんをたべて、よく寝る女だから、是非に及ばない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御覧な、誰も世話をしないから、この暑いのに綿の入った衣服きものを着ておいでだよ。私をもとのようにしておくれだったら、甘味おいし御膳ごぜんげようし、衣服も着換えさせますよ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へい/\かしこまりました。これから湯に這入はいる、御膳ごぜんが出る、おしる向附むかうづけみな茗荷尽目めうがづくめ。客「ハアめううちだ。と思ひながら御飯ごぜんましてねどこく。翌朝よくてうになると早々さう/\客人きやくじんは立つてしまつた。 ...
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「手がないものだから、つい遅くなりまして御気の毒です。すぐ御膳ごぜんに致しましょう。しかしこんな所だから上げるものがなくって困ります。その代り明日あしたあたりは御馳走ごちそう風呂ふろでも立てましょう」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その取交とりかはすにはおよばずとも、そばにつきつて、朝夕あさゆふ話対手はなしあひてきのこしる御膳ごぜんべたり、わしほだいて、婦人をんななべをかけて、わしひろつて、婦人をんなかはいて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お父さまが人の足腰を揉んでもわたくしに苦労をさせないように遊ばして下さる其の御膳ごぜんを戴いて食べるのは実に勿体ない事だと思って、あの時は御膳がとげのようにのどへたって戴けませんでした
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二郎それじゃ御膳ごぜんを食べに行こう
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大方そこからもとの借家へ通ずることが出来るのであろうと思うばかり、いうまでもなく、先に世話になった友人夫婦は、くに引越して行方ゆきがた知れず、用もない処、殊に、向合って御膳ごぜんを食べる
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八右衞門が御膳ごぜんを食べて居りますと、足利に猿田やえんだという処があって、其処そこ早川藤助はやかわとうすけという出船宿でふねやどがあります。丁度其の主人が居合せまして、思い掛けないから八右衞門の傍へやって参りまして
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御膳ごぜんを御上がんなさい」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女乞食の掘出しもの、恩に感じて老実まめ々々しく、陰陽かげひなたなく立働き、水もめば、米もぎ、御膳ごぜんも炊けば、お針の手も利き、仲働なかばたらきから勝手の事、拭掃除まで一人で背負しょって、いささかも骨をおしまず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
い「兼や、あの御膳ごぜんを」