じょ)” の例文
糟谷かすや次男じなん芳輔よしすけじょれい親子おやこ四人の家族かぞくであるが、その四人の生活が、いまの糟谷かすやはたらきでは、なかなかほねがおれるのであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かのじょは、かおがぼうっとしたが、だんだん、おちつくと、ひとりひとりの、うつくしいかおたのでありました。そして、こころひそかに
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまけに嫁までれて来たし、その高い評判によって、彼の妹のかねじょも、中野中老の息子大八郎と、めでたく婚姻のはこびになった。
ひとごろし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其の一刹那せつな、己が彼女から真先に受けた印象は、じょの体中に星の如く附着してピカピカと光って居る、無数の宝石類ほうせきるいであった。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが、かのじょえかけた自分の体を、その薬でやそうとする希望より強く、今の話が胸の底にいろいろな想像のうずを起こしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後家さんが時々来る旨を迂濶うっかり、お客に話したのを、例の通り顔剃りに来た芸妓が耳にするや憤然として理髪店を出て行ったが、じょ
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そしてかのじょとともに野菜作りの楽しみやお互の子供教育のことを語り合ったために、子供に読めそうな雑誌を二三冊もらった。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
つかれた足をひきずって二、三げん歩きだすとそこでひとりの女の子にあった。それは光一の妹の文子ふみこであった。かのじょ尋常じんじょうの五年であった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
後に聞けば、藤堂家の夫人だそうであった。藤堂家の下屋敷は両国橋詰にあって、当時の主人は高猷たかゆき、夫人は一族高崧たかたけじょであったはずである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
つまるところ、本書ほんしょ小櫻姫こざくらひめ通信者つうしんしゃ、Tじょ受信者じゅしんしゃ、そしてわたくし筆録者ひつろくしゃ総計そうけいにんがかりで出来できあがった、一しゅ特異とくい作品さくひん所謂いわゆる霊界れいかい通信つうしんなのであります。
かのじょ羽織はおりや帯の色が、美しい雲のように、うずを巻いて、眼のまえに浮動ふどうするのが感じられただけだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
猿之助の父は段四郎で踊りで名の知れた人、母のことじょ花柳はなやぎ初代の名取なとりで、厳しくしこまれた踊りの上手じょうず。この二人が息子のために舞台前に頑張がんばっている。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
実際そうでないと、わずか廊下を七八間離れたばかりで、一篇悲劇のじょ主人公、ことに光栄ある関係者の一にんで居ながら、何にも知らないで退院する処でした。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後周趙王こうしゅうちょうおうじょ玉姨ぎょくいの墓、平生王氏の外甥がいせいを憐重す、外甥先だって歿す、後、外甥と同じに葬らしむ」
崔書生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
十一月、駙馬都尉ふばとい梅殷ばいいんをして淮安わいあん鎮守ちんしゅせしむ。殷は太祖のじょ寧国ねいこく公主こうしゅしょうす。太祖の崩ぜんとするや、其のかたえに侍して顧命を受けたる者は、実に帝と殷となり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その頃、じょの若い悲しい眼のうちには、何という深い光が宿っていたであろう。おとこ光沢つやあるくちびるから出る声の底には、何という強い反抗の力が潜んでいたであろう。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それとは少し違う話だが、仙台藩の只野あやじょ、後に真葛尼まくずにといった人の著述で奥州咄おうしゅうばなしという随筆風の物がある。そのなかにこういう話が書いてあったように記憶している。
離魂病 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
自分は今度はじょに恥じて、けっしてそばに手伝っている嫂の顔をあえて見なかった。それでも彼女の若くてさむしいくちびるには冷かな笑の影が、自分の眼をかすめるように過ぎた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唐の国でもこの種類の寵姫ちょうき楊家ようかじょの出現によって乱がかもされたなどとかげではいわれる。今やこの女性が一天下のわざわいだとされるに至った。馬嵬ばかいの駅がいつ再現されるかもしれぬ。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ジェミイ・フリールはおじょうさんをとってしまったけど、いいことはないよ。私は、おじょうさんをつんぼのおしにしてやる!」そういってかのじょは何かをおじょうさんにふりかけた。
ジェミイの冐険 (新字新仮名) / 片山広子(著)
明治めいじ十六(一八八三)ねん諭吉ゆきちは五十さいになっていましたが、このとしなつ、四なん大四郎だいしろうまれたので、諭吉ゆきちは四なんじょ、あわせて九にんという、おおぜいのだからにめぐまれました。
春雨の足もと細しみそさゝい りんじょ
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
姉か妹かは不明だがとにかく——河内国玉櫛たまくしノ庄たちばなの入道正遠ノじょ——と明記があり、それは信憑に足るものと、発表されているのである。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまごろ、むすこは工場こうじょうで、はたらいているだろう。」と、とおくの煙突えんとつから、しろけむりのぼるのをて、かのじょおもいました。
かざぐるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いまいるのですね」なおじょは吾八の饒舌じょうぜつさえぎっていった、「……その隠居所というのは、どちらからいったらいいのですか」
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
定に代って渋江の家に来た抽斎の二人目の妻威能は、よよ要職におる比良野氏の当主文蔵を父に持っていた。貧家のじょに懲りて迎えた子婦よめであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
勿論、お嬢さんの持って居る肉体の美は、れから二三十年も過ぎて、じょれて来ると同時に、何処いずこともなく消えうせてしまうには違いない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
じょうした能力のうりょくはじめておこったのは、じつ大正たいしょうねんはることで、かぞえてればモー二十ねんむかしになります。
蠅営狗苟ようえいくこう羊狠狼貪ようこんろうたんはやきこと飄風ひょうぷうの如く、はげしきこと猛火の如し。喬家きょうか生きてお悟らず、死すとも何ぞうれえん。符氏ふしじょ死してなお貪婬たんいんなり、生ける時知るべし。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
僕を商売人と見たので、また厭気がしたが、他日わが国を風靡ふうびする大文学者だなどといばったところで、かのじょの分ろうはずもないから、茶化すつもりでわざと顔をしかめ
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
その時裁縫女学校へ通ったという事はかのじょの生涯にとって無益むだなものではなかった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
深窓のじょも意中を打明ける場合には芸者も及ばぬなまめかしい様子になることがある。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大臣の未亡人の願いをおれになり、故太政大臣のじょは新尚侍に任命された。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかも御衣勝おんぞがち着痩きやせはしたが、玉のはだえ豊かにして、汗はくれないの露となろう、むべなるかな楊家ようかじょ、牛込南町における河野家の学問所、桐楊とうよう塾の楊の字は、菅子あって、えらばれたものかも知れぬ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふたりは思い思いの憂欝ゆううつをいだいて家へ帰った、母は戸口に立ちどまって深いいきをついた、かのじょ伯母おばのおせんをおそれているのである、伯父は親切だが伯母はなにかにつけて邪慳じゃけんである
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
大唐だいとう翰林学士かんりんがくし芳九連ほうきゅうれんじょふん しるす
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あわれなかのじょには、まだ台所だいどころでたくさん仕事しごとっていました。それをかかえると、かのじょは、そと井戸端いどばたへいきました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かのじょが、何か叫んだ声を割って、サッと白い風がきた。上へと思ったが逃げきれず、後ろへかわしたはずみにズズ——ッと七、八尺すべり落ちる。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老母なほじょともいちど会っているが、からだつきの小がらなしっとりとした婦人で、たえず眼もとにしずかな微笑をうかべているという風だった。
日本婦道記:藪の蔭 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
十二月四日に、備後国福山の城主阿部伊予守正寧まさやすの医官岡西栄玄おかにしえいげんじょ徳が抽斎に嫁した。この年八月十五日に、抽斎の父允成は隠居料三人扶持を賜わった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
面白おもしろいのは、Tじょちちが、海軍将校かいぐんしょうこうであっために、はしなくも彼女かのじょ出生地しゅっしょうちがその守護霊しゅごれい関係かんけいふか三浦半島みうらはんとうの一かく横須賀よこすかであったことであります。
とにかく、自分の女房にはさっそく今夜の小説の話をして、つくづく芸人の悲哀をそこに覚えたとおりかのじょにも味わしめようと決心しながら、彼は自分の家の戸ぐちへ近づいた。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
じょは活発な足どりで、つかつかと舞台の前面に歩み出で、しなやかな襟頸えりくびから肩の筋肉を、へびけようとする人間のように、妙にくるくると波打たせながら、怪しい嬌態しなを作って
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たとえば、その家はこぼたれ、その樹はられ、その海は干され、その山は崩され、その民はほふられ、そのじょかんせられた亡国の公主にして、復讎の企図をいだいて、薪胆しんたんの苦を嘗め尽したのが、はりも忘れ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かのじょの死は当然のことである。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
手相てそうてくれるのは、まだ若者わかものだったが、若者わかものは、一目ひとめで、かのじょ田舎いなかからて、まだのないものだとりました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かのじょは初めて好奇の眼を見ひらいて、竹縁から庭下駄をはいた。そして、元の窓へ返ってきてよく見ると、西判にしばん生紙きがみに美女の顔が描いてある。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう云いながら振り返った娘は、そこにいるのがげんじょでないのを知って息をひいた、「まあ、……まあ弥之さん」
蜆谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
新藤五のつかを固く右の手に、片手で草の根をつかみながら、上へ上へ、洞窟の口へと、かのじょは汗と涙の力をつづけた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうおもうと、なんとなく、さびしいがして、かのじょは、おもちゃのあるへいそいだのでした。
かざぐるま (新字新仮名) / 小川未明(著)