夥間なかま)” の例文
……たかだかは人間同士、夥間なかまうちで、白いやわらか膩身あぶらみを、炎の燃立つ絹に包んで蒸しながら売り渡すのが、峠の関所かと心得ます。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、女紅場の沐浴もくよくに、美しきはだを衆にき、解き揃えた黒髪は、夥間なかまの丈をおさえたけれども、一人かれは、住吉の式につらなる事をしなかった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若様にはお覚違おぼえちがいでござります。彼等夥間なかまに結納と申すは、親々が縁を結び、媒妁人なこうどの手をもち、婚約の祝儀、目録を贈りますでござります。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其が夥間なかまの一人だつたのが分つたから、声を掛けると、黒人くろんぼ突倒つきたおして、船は其のまゝ朱色しゅいろの海へ、ぶく/\と出たんだとさ……可哀相ねえ。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それ夥間なかま一人ひとりだつたのがわかつたから、こゑけると、黒人くろんぼ突倒つきたふして、ふねのまゝ朱色しゆいろうみへ、ぶく/\とたんだとさ……可哀相かはいさうねえ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
多くの草刈夥間なかま驟雨ゆうだち狼狽ろうばいして、蟻のごとく走り去りしに、かれ一人老体の疲労はげしく、足蹌踉よろぼいて避け得ざりしなり。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ちよツ、馬鹿親仁ばかおやぢ。」と年紀としわかい、娑婆氣しやばツけらしい夥間なかま車夫わかいしゆが、後歩行うしろあるきをしながら、わたしはうへずつとつて
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人 ええ、武士さむらいたちの夥間なかまならば、貴方のお生命を取りましょう。私と一所には、いつまでもお活きなさいまし。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
釣の道でも(岡)とがつくとかろんぜられる。銑吉のも、しかもその岡惚れである。その癖、夥間なかまで評判である。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をんなは、とると、それは、夥間なかまはなしくらしく、しやがんだなりに、くるりと此方こつち向直むきなほつた、おびひざも、くな/\とたゝまれさうなが、咽喉のどのあたりはしろかつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
的等てきらにも聞かせたい。)と宗山が言われます、とちょろりと饒舌しゃべった。わっし夥間なかまを——(的等。)と言う。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
突掛つッかかるように刎附はねつける、同じ腕白夥間なかまに大勢馴染なじみが出来たから、新仕込のだんべいか何かで、色も真黒まっくろになった。母様かあさんがまたこれを大層喜んでいたもんです。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
⦅あゝ、奥様おくさまわたくしけだものになりたうございます。あいら、みんな畜生ちくしやうで、このさるめが夥間なかまでござりましやう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夥間なかまの友だちが話しました事を、——その大木戸向うで、蝋燭のにおいを、ぷん酔爛よいただれた、ここへ、その脳へ差込まれましたために、ふと好事ものずきな心が、火取虫といった形で
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とまくし立てて、ひるむところへ単刀直入、「しばらく足を洗ったために、乞食夥間なかまはぶかれた。面桶めんつう持って稼がれねえ。今この家を出るが最後、人間の干物になります。 ...
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
維新以来の世がわりに、……一時ひとしきり私等の稼業がすたれて、夥間なかまが食うに困ったと思え。弓矢取っては一万石、大名株の芸人が、イヤ楊枝ようじを削る、かるめら焼を露店で売る。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「図々しいじゃあないの、(狐、さあ、夥間なかまづきあいに一つ酌をしてくれ。本来は、ここのこの塚は、白い幽霊の出る処だ。)親仁様おとっさん、まだ驚かすつもりでいるのかしら。」
津や浦のはてから果を一網ひとあみにもせい、人間夥間なかまが、大海原おおうなばらから取入れますものというは、貝にたまったしずくほどにいささかなものでござっての、お腰元衆など思うてもみられまい
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くちばし引傾ひっかたげて、ことん/\と案じて見れば、われらは、これ、余りたち夥間なかまでないな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの人たちに訳を話すと、おなじ境界きょうがいにある夥間なかまだ、よくのみ込むであろうから、爺さんをお前さんの父親、小児こどもを弟に、不意に尋ねて来た分に、治兵衛の方へ構えるがい。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あやし可恐おそろしいものがあらわれようとも、それが、小母さんのお夥間なかまの気がするために、何となく心易こころやすくって、いつの間にか、小児こどもの癖に、場所柄を、さしてはばからないでいたのである。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この街道かいどうの車夫は組合を設けて、建場建場に連絡を通ずるがゆえに、今この車夫が馬車におくれて、あえぎ喘ぎ走るを見るより、そこに客待ちせる夥間なかまの一人は、手につばしておどり出で
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おんなじ産神様氏子うじこ夥間なかまじゃ。承知なれど、わしはこれ、手がこの通り、思うように荷が着けられぬ。御身おみたちあんばいよう直さっしゃい、荷の上へせべい、とじじいどのが云いますとの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その晩、おなじ千羽ヶ淵へ、ずぶずぶの夥間なかまだったのに、なまじ死にはぐれると、今さら気味が悪くなって、町をうろつくにも、山の手の辻へ廻って、箔屋の前は通らなかった。……
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、しかし、こういっても——不思議ともいうべき、めぐり合せで、その時、一つからかさで連立っていた——お冬さんを、おなじ化され夥間なかまだと思われてはなさけない。申訳がないのです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは平吉へいきち……へいさんと言うが早解はやわかり。織次の亡き親父と同じ夥間なかまの職人である。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああ、世も許し、人も許し、何よりも自分も許して、今時も河岸をぞめいているのであったら、ここでぷッつりと数珠を切る処だ!……思えば、むかし、夥間なかまの飲友達の、遊びほうけて
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人長の手をりてしきりに一同をしずむるにぞ、その命なきにさきだちて決して毒手を下さざるべく、かねいましむる処やありけん、地踏韛じだんだみてたけり立つをも、夥間なかま同志が抑制して、こぶしを押へ
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やあ、緑青色の夥間なかまじよ、染殿そめどの御后おんきさい垣間かいま見た、天狗てんぐが通力を失って、羽の折れたとびとなって都大路にふたふたと羽搏はうったごとく……あわただしいげ方して、通用門から、どたりと廻る。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これに吃驚びっくりして、何の事とも知らないで、気の弱い方だから、もう、わびをして欲しそうに、夥間なかまの職人たちを、うろうろとみまわしながら、(な、なんぞ粗忽そそうでも。)お師匠筋へ手をつくと
成程、随分夥間なかまには、此奴こいつに(的等。)扱いにされようというのが少くない。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだその騒ぎの無い内、当地こちらで、本郷のね、春木町の裏長屋を借りて、夥間なかまと自炊をしたことがありましたっけが、その時も前の年火事があったといって、何年にもない、大変な蚊でしたよ。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百人長の手をりてしきりに一同を鎮むるにぞ、その命なきにさきだちて決して毒手を下さざるべく、かねていましむる処やありけん、地踏韜じだんだみてたけり立つをも、夥間なかま同志が抑制して、こぶしを押え
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こはこの風説早くも聞えて、赤髯奴せきぜんど譎計けっけいに憤激せる草刈夥間なかまが、三郎の吉左右きっそうを待つ間、示威運動を行うなり。大助これを見て地蹈韛じだんだを踏みて狂喜し、欄干に片足懸けて半身を乗出だしつ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和蘭陀オランダのは騒がなかつたが、蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん酋長しゅうちょうは、帯を手繰たぐつて、長剣のつかへ手を掛けました。……此のお夥間なかまです……人の売買うりかいをする連中れんじゅうは……まあね、槍は給仕が、此もあわてて受取つたつて。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
和蘭陀オランダのはさわがなかつたが、蕃蛇剌馬ばんじやらあまん酋長しうちやうは、おび手繰たぐつて、長劍ちやうけんつかけました。……のお夥間なかまです……ひと賣買うりかひをする連中れんぢうは……まあね、やり給仕きふじが、これあわてて受取うけとつたつて。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ああ、奥様、わたくしけだものになりとうございます。あいら、みんな畜生で、この猿めが夥間なかまでござりましょう。それで、手前達の同類にものをくわせながら、人間一ぴきわたくしには目を懸けぬのでござります。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ぜんは、貴方が、西洋からお帰り時分、よく、お夥間なかま御贔屓ごひいきを遊ばして、いらしって下さいました、日本橋の……(うっとりと更に画家の顔を見る)——お忘れでございますか、お料理の
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と続いた、てんぼう蟹は、夥間なかまの穴の上を冷飯草履ひやめしぞうり、両足をしゃちこばらせて、舞鶴の紋の白い、萌黄もえぎの、これも大包おおづつみ。夜具を入れたのを引背負ひっしょったは、民が塗炭とたんくるしんだ、戦国時代の駆落かけおちめく。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孑孑め、女だって友だちだ、頼みある夥間なかまじゃないか。黒髪を腰へさばいた、緋縅ひおどしの若い女が、敵の城へ一番乗で塀際へ着いた処を、孑孑が這上はいあがって、乳の下をくすぐって、同じどぶの中へ引込むんだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二の烏 かぶろうとも、背負しょおうとも。かぶった処で、背負った処で、人間のした事は、人間同士が勝手に夥間なかまうちで帳面づらを合せてく、勘定のり取りする。俺たちが構う事は少しもない。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二の烏 かぶらうとも、背負しょはうとも。かぶつたところで、背負しょつたところで、人間のした事は、人間同士が勝手に夥間なかまうちで帳面づらを合せて行く、勘定のり取りする。俺たちが構ふ事は少しもない。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
作者夥間なかまの、しかも兄哥あにきが、このしみったれじゃあ、あの亭主にさぞ肩身が狭かろう、と三和土たたきへ入ると、根岸の日蔭は、はや薄寒く、見通しの庭にすすきなびいて、秋の雲の白いのが、ちらちらと
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
円くて渋面しぶつら親仁様おとっさんが、団栗目どんぐりめをぎろぎろと遣って、(狐か——俺は天狗だぞ、可恐こわいぞ。)と云うから、(可恐いもんですか。)ってそう云うと、(成程、化もの夥間なかまだ、わはは。)おおきな声なの。
てまいなぞは見物の方で、おやしろ前は、おなじ夥間なかま充満いっぱいでございました。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近頃は作者夥間なかまも、ひとりぎめに偉くなって、割前の宴会のみかいの座敷でなく、我が家の大広間で、脇息きょうそくと名づくる殿様道具のおしまずきって、近う……などと、若い人たちをあごさしまね剽軽者ひょうきんものさえあると聞く。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
就中なかんずく、風呂敷にもたもとにも懐にも盗みあまって、手当てあたり次第に家々から、夥間なかまが大道へ投散らした、あられのごとき衣類調度は、ひた流しにずるずると、山から海へ掃き出して、ここにあらかじめもやった船に
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪左衛門をはじめ夥間なかま一統、すなわちその人間の瞬く間を世界とする——瞬くという一秒時には、日輪の光によって、御身おみ等が顔容かおかたち、衣服の一切すべて睫毛まつげまでも写し取らせて、御身等その生命の終る後
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
己に毒薬をらせたし、ばれかかったお道さんの一件を、穏便にさせるために、大奥方の計らいで、院長に押附おッつけたんだ。己と合棒の万太と云う、幼馴染の掏摸の夥間なかまが、ちゃんと材料たねを上げていら。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ御身達おみたちのやうなものは、けて置かぬが夥間なかまおきてだ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)