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香
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かお
ふりがな文庫
“
香
(
かお
)” の例文
「いい
香
(
かお
)
りがする。あれは、すずらんの
花
(
はな
)
の
匂
(
にお
)
いだよ。」と、お
父
(
とう
)
さんはほど
近
(
ちか
)
くに、
白
(
しろ
)
い
咲
(
さ
)
いている
花
(
はな
)
を
見
(
み
)
つけて
教
(
おし
)
えられました。
さまざまな生い立ち
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼女の中でしばらく過して来たのではあったが、その神秘な滞在からは、故人のごくかすかな
香
(
かお
)
りをようやく得てきてるのみだった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
花下
(
かか
)
にある五
萼片
(
がくへん
)
は
宿存
(
しゅくそん
)
して
花後
(
かご
)
に残り、八
片
(
へん
)
ないし多片の
花弁
(
かべん
)
ははじめ
内
(
うち
)
へ
抱
(
かか
)
え込み、まもなく開き、
香
(
かお
)
りを放って花後に
散落
(
さんらく
)
する。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
金砂のように陽の踊る庭に、
苔
(
こけ
)
をかぶった
石燈籠
(
いしどうろう
)
が明るい影を投げて、今まで手入れをしていた鉢植えの
菊
(
きく
)
が
澄明
(
ちょうみょう
)
な大気に
香
(
かお
)
っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
雛鶏
(
ひなどり
)
と
家鴨
(
あひる
)
と羊肉の
団子
(
だんご
)
とを
串
(
さ
)
した
炙
(
や
)
き
串
(
ぐし
)
三本がしきりに
返
(
かや
)
されていて、のどかに燃ゆる
火鉢
(
ひばち
)
からは、
炙
(
あぶ
)
り肉のうまそうな
香
(
かお
)
り
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
▼ もっと見る
ヘリオトロープらしい
香
(
かお
)
りがぷんとする。香が高いので、小春日に照りつけられた
袷羽織
(
あわせばおり
)
の
背中
(
せなか
)
からしみ込んだような気がした。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
空からは、静かな冷気が下りてきて、野菜ばたけからは、
茴香
(
ういきょう
)
の
香
(
かお
)
りが漂ってきた。わたしは、何本かの
並木道
(
なみきみち
)
をすっかり歩いてしまった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
この実を塩漬けにすると
香
(
かお
)
りのよい箸休めになる、と云っていたが、妻の生きているうちには一つか二つしかならなかった。
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これはきっとこの雑草の中に何か特別な
香
(
かお
)
りを発するものがあって、それが彼の記憶を
刺戟
(
しげき
)
するのかも知れないぞと思った。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして黙ったまま葉子の髪や着物から
花
(
か
)
べんのようにこぼれ落ちるなまめかしい
香
(
かお
)
りを夢
心地
(
ごこち
)
でかいでいるようだったが、やがて物たるげに
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
因縁ぶかい徳川家の匂いが、この増上寺には、いたるところに
香
(
かお
)
っている。彼はその中に坐って何か心がなごむのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
野に立てば温度や花の香などで野の心持ちもわかり、ひとりで湖に舟を
漕
(
こ
)
いでは、
藻
(
も
)
の
香
(
かお
)
りや風のあたりぐあいなどで、舟の方角を定めました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
白いものが、夫の手から飛んで来て、あたしの
鼻孔
(
びこう
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ。——きつい
香
(
かお
)
りだ。と、その
儘
(
まま
)
、あたしは気が遠くなった。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
Kはほとんど
呆然
(
ぼうぜん
)
として女の顔を見上げていたが、女がこうまで身近に来ると、
胡椒
(
こしょう
)
のような、苦い、刺激的な
香
(
かお
)
りが女から発散するのだった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
新しい青い
部屋
(
へや
)
の畳は、
鶯
(
うぐいす
)
でもなき出すかと思われるような
温暖
(
あたたか
)
い空気に
香
(
かお
)
って、夜遊び一つしたことのない半蔵の心を
逆上
(
のぼ
)
せるばかりにした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
畑では麦が日に/\照って、
周囲
(
あたり
)
の
黯
(
くら
)
い緑に
競
(
きそ
)
う。
春蝉
(
はるぜみ
)
が
鳴
(
な
)
く。
剖葦
(
よしきり
)
が鳴く。
蛙
(
かわず
)
が鳴く。青い風が吹く。夕方は
月見草
(
つきみそう
)
が庭一ぱいに咲いて
香
(
かお
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
おまえはみずからを売り、妻を売り、子供を売らねばならない。だが、長く苦しむことはない!
香
(
かお
)
り高い広い葉かげに、死の
女神
(
めがみ
)
がすわっている。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そんな
遠
(
とお
)
くにいたんじゃ、
本当
(
ほんとう
)
の
香
(
かお
)
りは
判
(
わか
)
らねえから、もっと
薬罐
(
やかん
)
の
傍
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
って、
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
をおッぴろげて
嗅
(
か
)
いで
見
(
み
)
ねえ
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
今日は二百十日なのだ。そうと気がつくと、なんとなくあらしをふくんだ風が、じゃけんに
頬
(
ほお
)
をなぐり、
潮
(
しお
)
っぽい
香
(
かお
)
りをぞんぶんにただよわせている。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
めし屋ののれんの中からは、
味噌汁
(
みそしる
)
やご
飯
(
はん
)
の
香
(
かお
)
りがうえきった清造の
鼻先
(
はなさき
)
に、しみつくようににおってきました。
清造と沼
(新字新仮名)
/
宮島資夫
(著)
鹿の背をかりて、しばらくたどってくると、
小文治
(
こぶんじ
)
は
馥郁
(
ふくいく
)
たる
香
(
かお
)
りに、
仙境
(
せんきょう
)
へでもきたような心地がした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中からはぷんといい
香
(
かお
)
りがたって、
羽衣
(
はごろも
)
はそっくり
元
(
もと
)
のままで、きれいにたたんで
入
(
い
)
れてありました。
白い鳥
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
一つ一つの短い物語の底に流れる、絵を絶した
浪漫的
(
ローマンてき
)
香
(
かお
)
りも高い詩情こそその生命なのである。
絵のない絵本:02 解説
(新字新仮名)
/
矢崎源九郎
(著)
香
(
かお
)
りのする花の咲き軟らかな草の
滋
(
しげ
)
って居る
広野
(
ひろの
)
を
愉快
(
たのし
)
げに
遊行
(
ゆぎょう
)
したところ、水は大分に夏の初めゆえ
涸
(
か
)
れたれどなお清らかに流れて岸を洗うて居る大きな川に出で逢うた
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
よい匂いがする。ほんとうにいい
香
(
かお
)
りだな、というのはことごとく「鼻」に属するものです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
まだ三月二十日になったばかりですが、少年の住んでいる村は、
南部
(
なんぶ
)
スコーネのずっと南の、西ヴェンメンヘーイにありました。そこにはもう春の
香
(
かお
)
りがみちみちていたのです。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
そして、開いてあるまどからも、何ともいえぬいい
香
(
かお
)
りが、におってきていました。
アラビヤンナイト:04 四、船乗シンドバッド
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そしてしだいに、その修道院のような沈黙と、その花のような
香
(
かお
)
りと、その庭のような平和と、その婦人らのような単純さと、その子供らのような喜悦とで、彼の心は作らるるに至った。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ぷーんと新しい木の
香
(
かお
)
りがする丸や四角の材木を、
丈夫
(
じょうぶ
)
な
荷馬車
(
にばしゃ
)
に積み上げ、首のまわりに鈴をつけた黒馬にひかして、しゃんしゃんぱっかぱっか……と、朝早くから五里の
街道
(
かいどう
)
を出かけて
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
結構の奇、事状の異、談話の妙、所謂三拍子揃い、柳の
条
(
えだ
)
に桜の花を
開
(
さ
)
かせ、梅の
香
(
かお
)
りを
有
(
も
)
たせ、
毫
(
ごう
)
も間然する所なきものにて、
曩
(
さき
)
に世に行われし牡丹灯籠、多助一代記等に
勝
(
まさ
)
る事万々なり。
松の操美人の生埋:01 序
(新字新仮名)
/
宇田川文海
(著)
仄暗い廊下のようなところに突然、目がくらむような隙間があった。その隙間から
薄荷
(
はっか
)
の
香
(
かお
)
りのような微風が吹いてわたしの頬にあたった。見ると、向うには真青な空と赤い
煉瓦
(
れんが
)
の
塀
(
へい
)
があった。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
日向にキリスト教を植えつけその
香
(
かお
)
りがローマにまで達するということ、この新しい国をキリシタンやポルトガル人の法律によって治めるということ、それが彼には今にも出来そうに思えていた。
鎖国:日本の悲劇
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
ひとつでも堪えられないくらい
芳烈
(
ほうれつ
)
な
香
(
かお
)
りを放っていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
なんともいえない、なつかしいいい
香
(
かお
)
りが
夜
(
よる
)
の
空気
(
くうき
)
にしみ
渡
(
わた
)
っているのにつけて、
小太郎
(
こたろう
)
はほんとうのお
母
(
かあ
)
さんを
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
しました。
けしの圃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
幸福というものは、魂の
香
(
かお
)
りであり、歌う心の
諧調
(
かいちょう
)
である。そして魂の音楽のうちのもっとも美しいものは、温情にほかならない。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
老人は
首肯
(
うなずき
)
ながら、
朱泥
(
しゅでい
)
の
急須
(
きゅうす
)
から、緑を含む
琥珀色
(
こはくいろ
)
の
玉液
(
ぎょくえき
)
を、二三滴ずつ、茶碗の底へしたたらす。清い
香
(
かお
)
りがかすかに鼻を
襲
(
おそ
)
う気分がした。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうしてその小さな茂みがマイ・ミクスチュアらしい
香
(
かお
)
りを
漂
(
ただよ
)
わせているのに気がついたのもそれと
殆
(
ほと
)
んど同時だった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
氷と雲とにおおわれた
裸
(
はだか
)
の岩山が谷をとりまいていました。ヤナギとコケモモが
咲
(
さ
)
きそろい、よい
香
(
かお
)
りのするセンオウは
甘
(
あま
)
い
匂
(
にお
)
いをひろげていました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ばらりと
解
(
と
)
いたお七の
帯
(
おび
)
には、
夜毎
(
よごと
)
に
焚
(
た
)
きこめた
伽羅
(
きゃら
)
の
香
(
かお
)
りが
悲
(
かな
)
しく
籠
(
こも
)
って、
静
(
しず
)
かに
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
を
流
(
なが
)
れそめた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
血管のなかにはまだ夜来の酒気もそのまま
香
(
かお
)
っているかのような夢中と
現身
(
うつしみ
)
の境に、彼の
脳裡
(
のうり
)
には、南方の島々や
高麗
(
こうらい
)
の沿海や、ゆくてに
大明国
(
だいみんこく
)
をさしている大船列や
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんなさびしい杉森の中の家にも、時々紅葉館のほうから音曲の音がくぐもるように聞こえて来たり、
苔香園
(
たいこうえん
)
から
薔薇
(
ばら
)
の
香
(
かお
)
りが風の具合でほんのりとにおって来たりした。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その時
虚空
(
こくう
)
はるかに
微妙
(
みみょう
)
なる音楽がきこえ始めた。聖衆の群れはそれに合わせて仏様を
讃
(
ほ
)
める歌をうたわれた。すると天から花が降って来て、あたりは
浄
(
きよ
)
い
香
(
かお
)
りに満ちた。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
海岸を歩けば、
帆立貝
(
ほたてがい
)
の
殻
(
から
)
が山の如く積んである。浅虫で食ったものゝ中で、帆立貝の柱の
天麩羅
(
てんぷら
)
はうまいものであった。海浜随処に
玫瑰
(
まいかい
)
の花が紫に咲き乱れて汐風に
香
(
かお
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして
皇子
(
おうじ
)
のお
体
(
からだ
)
からは、それはそれは
不思議
(
ふしぎ
)
なかんばしい
香
(
かお
)
りがぷんぷん
立
(
た
)
ちました。
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
忍冬
(
すいかずら
)
や昼顔の酔うような
香
(
かお
)
りが、快い美妙な毒のように四方から発散していた。枝葉の下に眠りに来る
啄木鳥
(
きつつき
)
や
鶺鴒
(
せきれい
)
の最後の声が聞こえていた。小鳥と樹木との
聖
(
きよ
)
い親交がそこに感じられた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ニールスは、この島がとくに羊のためにつくられているような気がしました。というのは、この山には、スカンポや、羊のすきな
香
(
かお
)
りのいい小さい草のほかは、ほとんど何も
生
(
は
)
えていないのです。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
「わたし、あの、
青
(
あお
)
い
花
(
はな
)
の
香
(
かお
)
りをかいで、お
姉
(
ねえ
)
さんを
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
したの、
背
(
せ
)
のすらりとした、
頭髪
(
かみ
)
のすこしちぢれた
方
(
かた
)
でなくって?」
青い花の香り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
獣のようにほてった熱い大地の巨大な
香
(
かお
)
りが、花や果実や愛欲の肉体などの
匂
(
にお
)
いが、熱狂と愉悦と
痙攣
(
けいれん
)
の中に立ちのぼった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あるときは罪々と叫び、あるときは王妃——ギニヴィア——シャロットという。隠士が心を込むる草の
香
(
かお
)
りも、煮えたる
頭
(
かしら
)
には一点の涼気を吹かず。……
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私の小さいブランコの
吊
(
つる
)
してあった、その無花果の木の或る枝の変にくねった枝ぶりだとか、あるときの庭土の
香
(
かお
)
りだとか、或いはまた
金屑
(
かなくず
)
のにおいだとか
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
“香”の解説
香(こう、en: incense)とは、本来、伽羅、沈香、白檀などの天然香木の香りをさす。そこから線香、焼香、抹香、塗香等の香り、またこれらの総称として用いられる。お香、御香ともいう。
(出典:Wikipedia)
香
常用漢字
小4
部首:⾹
9画
“香”を含む語句
香花
香物
名香
香気
薫香
香油
香料
鬱金香
麝香
芳香
香水
茴香
香炉
沈香
涙香
香煎
香箱
香染
香具
香山
...