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訴
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うった
ふりがな文庫
“
訴
(
うった
)” の例文
「さびしいか?」といって、わずかに
月
(
つき
)
は、
声
(
こえ
)
をかけてやりましたが、あざらしは、
悲
(
かな
)
しい
胸
(
むね
)
のうちを、
空
(
そら
)
を
仰
(
あお
)
いで
訴
(
うった
)
えたのでした。
月とあざらし
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
僕が怒ろうと思ってふり向くと、その娘さんは玄関に
膝
(
ひざ
)
を突いたなりあたかも自分の孤独を
訴
(
うった
)
えるように、その黒い眸を僕に向けた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これは統計の明らかに示す所である。文字に親しむようになってから、女を
抱
(
だ
)
いても一向楽しゅうなくなったという
訴
(
うった
)
えもあった。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こうしたことはみんな、太鼓に合せて踊っている
最中
(
さいちゅう
)
に行われるのです。
訴
(
うった
)
えられたほうの者も、同じようにずる
賢
(
がしこ
)
くそれに答えます。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし、その
訴
(
うった
)
えに答えてくれるものもなければ、クロの
幻影
(
げんえい
)
さえも見えてこない。かれはまたぼんやりと加茂の流れをみつめていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ふたりは、ひっしと花前の両手を
片手
(
かたて
)
ずつとらえて
離
(
はな
)
さない。ふたりはとうとう花前を主人のまえに引きすえて
訴
(
うった
)
える。
兼吉
(
かねきち
)
は
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
シューラは
泣
(
な
)
いてみたり、また
笑
(
わら
)
い
出
(
だ
)
したりした。
家
(
うち
)
へ
帰
(
かえ
)
っても、また泣いたり
笑
(
わら
)
ったりした。ママに
様子
(
ようす
)
を
話
(
はな
)
して、
訴
(
うった
)
えた。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
むしろわれわれの精神をよく理解した修了生たちに事情を
訴
(
うった
)
えて、各地でこれまで以上に友愛運動を展開してもらいたいと思っているんだ。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
その後、帰安の一県は大いに治まって、獄を断じ、
訴
(
うった
)
えを
捌
(
さば
)
くこと、あたかも
神
(
しん
)
のごとくであるといって、県民はしきりに知県の功績を賞讃した。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
リスは
部屋
(
へや
)
のすみっこにすわりこんで、
悲
(
かな
)
しそうに、しょげきって、ときどき
訴
(
うった
)
えるような、
鋭
(
するど
)
い
悲
(
かな
)
しみの声をはりあげているではありませんか。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
世のいろいろの宗教はいろいろの道をたどりてこれを
世人
(
せじん
)
に
説
(
と
)
いているが、それを私はあえて
理窟
(
りくつ
)
を言わずにただ感情に
訴
(
うった
)
えて、これを草木で
養
(
やしな
)
いたい
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「もう、てだてがありませんよ。ただひとつ
残
(
のこ
)
っているてだては、
村役人
(
むらやくにん
)
のところへ
訴
(
うった
)
えることだが、かしらもまさかあそこへは
行
(
い
)
きたくないでしょう。」
花のき村と盗人たち
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
と、不意に、(意見せられて、さし
俯向
(
うつむ
)
いて——)という、おけさの一節が、頭に
浮
(
うか
)
びました。(泣いていながら
主
(
ぬし
)
のこと)なにか
訴
(
うった
)
えるものが欲しかった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
日本ではこれに感情をただちに入れるから、ことが
縺
(
もつ
)
れてくる。ゆえに前に述べた約束の時期に、品物ができなければ、感情に
訴
(
うった
)
えて申し訳をすることを計る。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
奥様はお
姫様
(
ひいさま
)
たちが女親に似てみんな
才媛
(
さいえん
)
だのに、若様たちはどういうものか不成績で
困
(
こま
)
ると
訴
(
うった
)
えた後
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼女
(
かのじょ
)
はたちまち手形の話をやり出して、
溜息
(
ためいき
)
をついたり、自分の
貧乏
(
びんぼう
)
を
訴
(
うった
)
えたり、『おねだり』を始めたりするのだったが、
礼儀
(
れいぎ
)
も作法もさっぱりお構いなしで
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
ああ云う場面が母を知らない少年の胸に
訴
(
うった
)
える力は、その
境遇
(
きょうぐう
)
の人でなければ
恐
(
おそ
)
らく想像も
及
(
およ
)
ぶまい。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、雪子は姿もおぼろとなり、悲痛な声をはなって泣いて
訴
(
うった
)
えるのだった。ああなぜ雪子学士は、四次元世界などに踏みこんで漂流するような身の上になったのか。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
女はすでに
斧
(
おの
)
を
執
(
と
)
って、三度彼に手向おうとしていた。が、彼が剣を折ったのを見ると、すぐに斧を投げ捨てて、彼の
憐
(
あわれみ
)
に
訴
(
うった
)
うべく、床の上にひれ伏してしまった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
疼痛
(
とうつう
)
とは
疼痛
(
とうつう
)
の
活
(
い
)
きた
思想
(
しそう
)
である、この
思想
(
しそう
)
を
変
(
へん
)
ぜしむるが
為
(
ため
)
には
意旨
(
いし
)
の
力
(
ちから
)
を
奮
(
ふる
)
い、しかしてこれを
棄
(
す
)
てて
以
(
もっ
)
て、
訴
(
うった
)
うることを
止
(
や
)
めよ、しからば
疼痛
(
とうつう
)
は
消滅
(
しょうめつ
)
すべし。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
墓地向うの
家
(
うち
)
の久さんの
子女
(
こども
)
が久さんを馬鹿にするのを見かねて、
余
(
あんま
)
りでございますねと
訴
(
うった
)
えた。唖の子の
巳代吉
(
みよきち
)
とは
殊
(
こと
)
に懇意になって、
手真似
(
てまね
)
で
始終
(
しじゅう
)
話して居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
僧たちの
訴
(
うった
)
えを静かに
瞑目
(
めいもく
)
して聴いていた住持三要は、いちいちうなずいていましたが最後に
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は、私の胸のあたりから何かを
訴
(
うった
)
えでもしたいような眼つきで私をじっと見上げている、その小さな茂みの上に、最初二つ三つばかりの白い小さな花を認めたきりだった。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
こんな下手クソな見えすいた口実をつけるぐらいなら始めからアッサリ武力に
訴
(
うった
)
えて然るべきであろうに、それが出来ずにこういう泥くさい不手際でかすめとったというのは
家康
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もし千本集まらなかったらすぐ警察へ
訴
(
うった
)
えるぞ。貴様らはみんな
死刑
(
しけい
)
になるぞ。その太い首をスポンと切られるぞ。首が太いからスポンとはいかない、シュッポォンと切られるぞ。
カイロ団長
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
とお
聞
(
き
)
きになりました。そこで
蛇
(
へび
)
は、おなかがへって、どうにも
早
(
はや
)
く
歩
(
ある
)
けなかったこと、
途中
(
とちゅう
)
で
蛙
(
かえる
)
があとから
追
(
お
)
いついて
来
(
き
)
て、おしりでもしゃぶれといったことを
残
(
のこ
)
らず
訴
(
うった
)
えました。
物のいわれ
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
されば各国公使等の
挙動
(
きょどう
)
を
窺
(
うかが
)
えば、国際の
礼儀
(
れいぎ
)
法式
(
ほうしき
)
のごとき
固
(
もと
)
より
眼中
(
がんちゅう
)
に
置
(
お
)
かず、
動
(
やや
)
もすれば
脅嚇手段
(
きょうかくしゅだん
)
を用い
些細
(
ささい
)
のことにも声を
大
(
だい
)
にして兵力を
訴
(
うった
)
えて
目的
(
もくてき
)
を達すべしと公言するなど
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
ところが、一代は退院後二月ばかりたつとこんどは下腹の
激痛
(
げきつう
)
を
訴
(
うった
)
え出した。寺田は夜通し
撫
(
な
)
ぜてやったが、痛みは消えず、しまいには
油汗
(
あぶらあせ
)
をタラタラ流して、痛い痛いと転げ廻った。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
わいわいなきながらじじいは学校へ
訴
(
うった
)
えた。たい焼きを食ったものはわらって
喝采
(
かっさい
)
した、食わないものは阪井の乱暴を非難した。だがそれはどういう風に始末をつけたかは
何人
(
なんぴと
)
も知らなかった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
すなわち
我輩
(
わがはい
)
の
所望
(
しょもう
)
なれども、今その
然
(
しか
)
らずして
恰
(
あたか
)
も国家の功臣を
以
(
もっ
)
て
傲然
(
ごうぜん
)
自
(
みず
)
から
居
(
お
)
るがごとき、必ずしも
窮屈
(
きゅうくつ
)
なる
三河武士
(
みかわぶし
)
の筆法を以て
弾劾
(
だんがい
)
するを
須
(
ま
)
たず、世界
立国
(
りっこく
)
の
常情
(
じょうじょう
)
に
訴
(
うった
)
えて
愧
(
はず
)
るなきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
成経 わしは同じ弓矢をとる
武人
(
ぶじん
)
としてあなたの
義気
(
ぎき
)
に
訴
(
うった
)
えたい。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「このまま引ったてて、当家の御重役に
訴
(
うった
)
えでるまでじゃ」
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「
親方
(
おやかた
)
」と、おせんは
訴
(
うった
)
えるように
声
(
こえ
)
をかけた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「おばあさん、どうしたら、
私
(
わたし
)
はこの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
で、ただ
一人
(
ひとり
)
の
兄
(
にい
)
さんにめぐりあうことができるでしょうか……。」と、
訴
(
うった
)
えたのです。
生きた人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「ながらく
捕
(
と
)
らえ
得
(
え
)
なかった
武田伊那丸
(
たけだいなまる
)
、またふたりの者まで、一
網
(
もう
)
に
召捕
(
めしと
)
り得たのは、いつにかれの
訴
(
うった
)
えと、そちの
手柄
(
てがら
)
じゃ」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おかあさんの心は、
絶望
(
ぜつぼう
)
のあまり、いまにもはりさけそうです。
両手
(
りょうて
)
をふりしぼりながら、
訴
(
うった
)
えるように、わが子の名まえを大きな声で呼びあるきました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
私は何事についても、そういう考えから出発したいと思っている。暴力に
訴
(
うった
)
える社会革命に私が絶対に賛成できないのも、根本はそういうところにあるんだ。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
おれも「おれも逃げも隠れもしないぞ。堀田と同じ所に待ってるから警察へ
訴
(
うった
)
えたければ、勝手に訴えろ」
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あるいはすでに一定の職業にある者よりしてなお他に
活路
(
かつろ
)
を求めたき希望を
訴
(
うった
)
えられぬ人はなかろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
何か異状か、怪しい人物を見かけたことでも
訴
(
うった
)
えられるつもりでいた執行官はひょうしぬけがした。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それから……それから
別
(
べつ
)
に何ごとがあろう? ママは
生徒監
(
せいとかん
)
のところへ出かけて行った。
生徒監
(
せいとかん
)
を
相手
(
あいて
)
にひと
騒
(
さわ
)
ぎ持ちあげた上、あとで
訴
(
うった
)
えてやるつもりだったのである。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
照彦
(
てるひこ
)
様はお母様が一番こわいのである。悪いことをした後、お母様から呼ばれて応じるはずはない。正三君の無礼を学監の
安斉
(
あんざい
)
先生に
訴
(
うった
)
えるとすぐに姿をかくしてしまった。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
が、何も知らない中学生に向ってさえ、生活難を
訴
(
うった
)
える——あるいは訴えない
心算
(
つもり
)
でも訴えている、先生の心もちなぞと云うものは、元より自分たちに理解されよう筈がない。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
職務
(
しょくむ
)
を
取
(
と
)
るのは
前
(
まえ
)
にもいやであったが、
今
(
いま
)
はなお一
層
(
そう
)
いやで
堪
(
たま
)
らぬ、と
云
(
い
)
うのは、
人
(
ひと
)
が
何時
(
いつ
)
自分
(
じぶん
)
を
欺
(
だま
)
して、
隠
(
かくし
)
にでもそっと
賄賂
(
わいろ
)
を
突込
(
つきこ
)
みはせぬか、それを
訴
(
うった
)
えられでもせぬか
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
出様によっては暴力にも
訴
(
うった
)
えかねまじき気味合なので佐助が割って
這入
(
はい
)
りようようその場を預かって帰した春琴は
真
(
ま
)
っ
青
(
さお
)
になって
慄
(
ふる
)
え上り
沈黙
(
ちんもく
)
してしまったが最後まで謝罪の言葉を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして足音もなく
土間
(
どま
)
へおりて戸をあけた。外ではすぐしずまった。女はいろいろ細い声で
訴
(
うった
)
えるようにしていた。男は
酔
(
よ
)
っていないような声でみじかく何か
訊
(
き
)
きかえしたりしていた。
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そうすればその人の心の状態までが
見透
(
みす
)
かされでもするかのように。その小さな茂みはまだ
硬
(
かた
)
い小さな
莟
(
つぼみ
)
を一ぱいにつけながら、何か私に
訴
(
うった
)
えでもしたいような眼つきで私を見上げた。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
三河屋からは
直
(
す
)
ぐに
訴
(
うった
)
へ
出
(
い
)
でがあつたので、犯人の探索が行はれた。彼等は身持のよくない小旗本の
次三男
(
じさんなん
)
か、
安御家人
(
やすごけにん
)
か、さう云ふたぐひの者に相違ないとは誰でも容易に想像する所であつた。
赤膏薬
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今
(
いま
)
にまた
謀反
(
むほん
)
の
戦
(
いくさ
)
をおこすかもしれませんといって
訴
(
うった
)
えました。
鎮西八郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「それは困ります」と千三は
訴
(
うった
)
えるようにいった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
訴
常用漢字
中学
部首:⾔
12画
“訴”を含む語句
訴訟
強訴
愁訴
告訴
訴訟沙汰
讒訴
訴人
哀訴
直訴
泣訴
嗷訴
公事訴訟
密訴
駈込訴訟
出訴
越訴
訴訟所
駈込訴
自訴
駕籠訴
...