)” の例文
何ぞかん、俗に混じて、しかもみづから俗ならざるには。まがきに菊有り。ことげん無し。南山なんざんきたれば常に悠々。寿陵余子じゆりようよし文を陋屋ろうをくに売る。
いま廿日はつかつきおもかげかすんで、さしのぼには木立こだちおぼろおぼろとくらく、たりや孤徽殿こきでん細殿口ほそどのぐちさとしためにはくものもなきときぞかし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一たびこれに触れると、たちまち縲紲るいせつはずかしめを受けねばならない。さわらぬ神にたたりなきことわざのある事を思えば、選挙権はこれを棄てるにくはない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
物の低きに過ぐるはもとよりよろしからずといえども、これを高くして高きに過ぐるに至るが如きは、むしろ初めのままに捨て置くにかず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三階の天に登り、永遠の慈悲に接せんと欲せば、下界の交際より遮断さるるにかず、国人は余をて余は霊界に受けられたり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ラーポとビンドいかにフィオレンツァに多しとも、年毎としごとにこゝかしこにて教壇より叫ばるゝかゝる浮説の多きにはかず 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
君が、佐治を相手にして火遊びをする女だとは思わないけれど、用心にくはなし、敢てこの第一の理由を、あけすけにいって置く次第だ。
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
われは此兒をカムパニアにやりて、百姓にせんこと惜しければ、この羅馬市中にて、然るべき人を見立て、これにあづくるにかずといふ。
大事な宝は生命 だが先方にとっては人の生命いのちはなんにもならぬ。こりゃ何もかもすっかり遣ってしまうにくはないと覚悟してしまった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
戀にはもろき我れ人の心、など御邊一人の罪にてあるべき。言うて還らぬ事は言はざらんにはかず、何事も過ぎし昔は恨みもなく喜びもなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
尤も外に同志が三四人はゐるから、大丈夫だが、一人ひとりでも味方は多い方が便利だから、三四郎も成るべく嘵舌しやべるにくはないとの意見である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
子貢しこう曰く、貧にしてへつらうことなく、富みておごることなくんば如何と。子曰く、可なり、未だ貧にして楽み、富みて礼を好む者にかざるなりと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかるに壮年の人よりこの涙を誘うもののうちにても、天外にそびゆる高峰たかねの雪の淡々あわあわしく恋の夢路をおもかげに写したらんごときにくものあらじ。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あそびにははやみたり、姉ぎみと共にいづくへかきたまひし、」と問へば、「見晴らしよき岩角わたりまでゆきしが、この尖塔ピラミッドにはかず、 ...
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかしじつとが相伴あいともなわねば、とかく誤りをきたしやすいから、名はできうるだけ明らかにしておくにくはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
夕景ようやく六日町に着しますと、松屋仙次郎まつやせんじろうという商人宿がございます、尋ね物をするにはういう宿にくはないと考えて、宿の表に立ちかゝりますと
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
削らざればすなわち朝廷の紀綱立たず。之を削ればしんしたしむの恩をやぶる。賈誼かぎ曰く、天下の治安をほっするは、おおく諸侯を建てゝその力をすくなくするにくは無しと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
百聞一見にかずという言葉は東京郊外の生活に能く当てはまる。荻窪だの玉川だの調布だのという肥汲みの番地を聴いた丈けでは、一向実感が起らない。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
終生の失望と遺恨とはみだり断膓だんちようをのふるひて、死苦のかざる絶痛を与ふるを思ひては、彼はよし天に人に憤るところあるも、おそるべき無しとるならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
沈黙を守るにかず、無用の言を吐くとも舌に及ばずで、たちまち不測の害をかもすことになる、注意すべきは言葉であるという道徳の箴言しんげんに類した句である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
むしろかんや、みずか平生へいぜいの学問浅薄せんぱくなるを言い、以てその限りなき懊悔おうかいを包むに限り無き慰安を以てす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
遠近の丹波と相くのは、摂津富松庄である。富松は河辺郡と武庫郡とに分れて、東西富松の二つある。
えらい商売を始めたものやと思っているうちに、酒屋への支払いなどもとどこおり勝ちになり、結局、やめるにかずと、その旨柳吉に言うと、柳吉は即座そくざに同意した。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
凡夫の妄執を晴らすは念仏にくは無し 南無阿弥陀なむあみだ 南無阿弥陀仏なむあみだぶつ 南無阿弥陀 南無阿弥陀仏/\
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
驚倒きょうとうす暗中銃丸跳るを、野田城上笛声てきせい寒し、誰か知らん七十二の疑塚ぎちょうかず一棺湖底の安きに
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そうか、用心にくはなしだな、なあに、覚悟さえすれば、拙者一人で大丈夫だが——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
生花いけばな、裁縫、諸礼、一式を教えられ、なお男子の如く挙動ふるまいし妾を女子らしからしむるには、音楽もて心をやわらぐるにかずとて、八雲琴やくもごと、月琴などさえ日課の中に据えられぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
(十五) 子貢曰く、貧しくしてへつらうことなく、富みておごることなきは何如いかん。子曰く、可なり、(しかれども)未だ貧しくして道を楽しみ、富みて礼を好むものにはかざるなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
きみへいいて大梁たいりやうおもむき・(三九)其街路そのがいろり・其方そのまさきよなるをくにかず。かれかならてうててみづかすくはん。われきよしててうかこみをきて、(四〇)へいをさむるなり
敵の休右衛門は、七十を越した極老ごくろうの者である。二人の音信たよりを待つうちに、いつ病死するかもしれない。二人には、不義であろうとも、一日も早く多年の本懐を達するにくはないと。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
千言万句の祈祷は一たび基督を仰ぎ見るの徳にかず、仰ぎ見るは心を以て仰ぎ見るべし、祈祷の教会をかしましうするは、尤も好ましからぬことなれ、我は凡ての教会の黙了せん時に
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
よりて思うに、この論文はあえて世人に示すをはばかるべきものにあらず、ことにすでに世間に伝わりて転々てんてん伝写でんしゃの間には多少字句のあやまりなきを期せざればむしろその本文を公にするにかざるべしとて
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
書く人は一人にして見る人は千万人なり。書く事の便利なるは見る事の便利なるにかず。新字を製せんとすれば最もこの点に注意せざるべからず。〔『日本附録週報』明治32・4・24 五〕
病牀譫語 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
アイトーロイの族の中、我にく者あらざりき。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
発句ほつくは十七音を原則としてゐる。十七音以外のものを発句と呼ぶのは、——或は新傾向の句と呼ぶのは短詩と呼ぶののまされるにかない。
発句私見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ソレ書生タルモノ平時互ニ相誇ルニアルイハ博覧考証ヲ以テシアルイハ詩若シクハ文章ヲ以テシ皆自ラいえラク天下おのれクモノハシト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
御母さんは女の事だから理解出来んかも知れんが、余が見ればこうだろうくらいの見当はつくわけだ。これは催促さいそくして日記を見るにくはない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何か話のついでには拝借地の有名無実なるをき、等しく官地を使用せしむるならば之を私有地にして銘々めいめいに地所保存のはかりごとさしむるにかずと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「あそびにははやみたり、姉ぎみとともにいずくへか往きたまいし」と問えば、「見晴らしよき岩角わたりまでゆきしが、このピラミイドにはかず、 ...
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いきおいいよ/\せまる。群臣あるいは帝に勧むるにせつこうするを以てするあり、あるい湖湘こしょうに幸するにかずとするあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おほよそ地上の美なるもの海にくはなかるべし、むべなり海はアフロヂテの母にしてと云ひさし、少し笑ひて、又ヱネチア歴代の大統領の未亡人なりといへり。
世の人心を瞞着まんちゃくすること、これにくものはない。何故か? 曰く、全快写真はほとんど八百長である。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
しからば祈る何の要かある、神は祈祷に応じて雨を賜わず、また聖者の祈祷に反して種々の難苦をくだせり、祈らずして神命に従うにかず、祈祷の要は何処いずこにあるや。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
その阿耨達池の傍に在る天然の曼陀羅まんだらなるマウント・カイラスは仏教の霊跡でありますから、その霊跡に参詣さんけいするという口実を設けて行くにくはないと考えました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かへしなをかふれどそでなみだれんともせずもすればわれともにと決死けつし素振そぶり油斷ゆだんならずなにはしかれいのちありてのものだねなりむすめこゝろ落附おちつかすにくはなしとしては婚儀こんぎ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この争を絶つためには席順に上下の区別をなくするにくはない。しかして上下の区別なからしめるためには円形の卓子テーブルとするがよい。さすれば上もなければ下もない。
「子を見ること親にかず。君のファザーは君の性格を知っているから食える丈け分けてくれるのさ。君はあって勤まらないと思うなら、あっても、ない積りでかゝればい」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
當時フィレンツェはその華美なるにおいてローマにかざりしが後これを凌ぐにいたれり、されど今華美においてローマにまさる如く、この後廢頽の度においてもまたこれにまさるべし
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
此ののちどのようなる悪事を仕出来しでかすかも知れぬ、さぞ町人方が難渋するであろうと思いますと、矢もたてたまらず、彼等の命を絶って世間の難儀を救うにかずと決心いたし、さんぬる十五日の
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
到底五十年の事を経綸せざるにかざるなり、明日あるを知らずして今日の事を計るは、到底真に今日の事を計るものにあらざるなり、五十年の人生の為に五十年の計を為すは、如何いかに其計の大に
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)