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背
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そむ
ふりがな文庫
“
背
(
そむ
)” の例文
奥平家は、その地方の豪族だが、初め今川に属し、後徳川に附き、更に信玄に服し、今度勝頼に
背
(
そむ
)
いて、徳川に帰順したわけである。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
左
(
と
)
に
右
(
か
)
く紅葉の政治的才幹が硯友社を結束し、美妙が忽ち
背
(
そむ
)
いて孤立したのが二者の成功を著るしく懸隔さした一つの原因であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
お
前
(
まえ
)
とは
長年
(
ながねん
)
いっしょにくらして
来
(
き
)
たが、お
前
(
まえ
)
はただの
一言
(
ひとこと
)
もわたしの
言葉
(
ことば
)
に
背
(
そむ
)
かなかった。わたしたちはしあわせであったと
思
(
おも
)
う。
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
著実の性や堅固な質が、工藝の美を守るのである。不確さや粗悪は慎しまねばならぬ。それは用に逆らうが故に美にも
背
(
そむ
)
くのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
有爲轉變
(
うゐてんぺん
)
の世の中に、只〻最後の
潔
(
いさぎよ
)
きこそ肝要なるに、天に
背
(
そむ
)
き人に離れ、いづれ
遁
(
のが
)
れぬ
終
(
をはり
)
をば、
何處
(
いづこ
)
まで
惜
(
を
)
しまるゝ一門の人々ぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
▼ もっと見る
徒
(
いたず
)
らに恋愛の
泥濘
(
でいねい
)
に
悶踠
(
もが
)
いているにすぎない彼に絶望していたが、下手に
背
(
そむ
)
けば、逗子事件の失敗を繰り返すにすぎないのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と考へて、学士は痙攣状に顔をくしや/\させて、頭を右左にゆさぶつて、窓に顔を
背
(
そむ
)
けて、ぼんやりして部屋の白壁を見詰めてゐた。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
帝
(
みかど
)
は御
伯父
(
おじ
)
のこの宮に深い御愛情をお持ちになって、宮から奏上されることにお
背
(
そむ
)
きになることはおできにならないふうであった。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
小賊
(
せいぞく
)
肯
(
き
)
かずして、
則
(
すなは
)
ち
刀
(
かたな
)
を
執
(
と
)
つて
其
(
そ
)
の
指
(
ゆび
)
を
切
(
き
)
つて
珠
(
たま
)
を
盜
(
ぬす
)
むや、
指
(
ゆび
)
より
紅
(
くれなゐ
)
の
血
(
ち
)
衝
(
つ
)
と
絲
(
いと
)
の
如
(
ごと
)
く
迸
(
ほとばし
)
りぬ。
頭領
(
とうりやう
)
面
(
おもて
)
を
背
(
そむ
)
けて
曰
(
いは
)
く、
於戲痛哉
(
あゝいたましいかな
)
。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今年の暮に機屋一家は破産しそうである。それはお蝶が親の
詞
(
ことば
)
に
背
(
そむ
)
いた為めである。お蝶が死んだら、債権者も過酷な手段は取るまい。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
が、一方ではまた、仇討は仇討だ、君父の仇を討ったものが、たとい公儀の大法に
背
(
そむ
)
けばとて、やみやみ刑死に処せられるはずはない。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
覚めてから覚えている夢も覚えていない夢も、母にはぐれたり、
背
(
そむ
)
いたり、厭われたりするような夢ばかりなことはたしかだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「だからといって他の人を愛する気にはなれない。私には古い貞操観念がこびり着いているので、それに
背
(
そむ
)
くことは生れつきできない」
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
良
(
い
)
い分別といふのは
外
(
ほか
)
でもない、もしか卜新老が約束に
背
(
そむ
)
いたら、持前のお医者の腕を
揮
(
ふる
)
つてみせる事だ。ゲエテが言つたぢやないか。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
かのラオコーンには——ラオコーンなどはどうでも構わない。原理に
背
(
そむ
)
いても、背かなくっても、そう云う心持ちさえ出ればいい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これが傍に坐し、左の者の傍には、恩を忘れ心
恒
(
つね
)
なくかつ
背
(
そむ
)
き
易
(
やす
)
き民マンナに
生命
(
いのち
)
を
支
(
さゝ
)
へし頃かれらを
率
(
ひき
)
ゐし導者坐す 一三〇—一三二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ここに若日下部の王、天皇に
奏
(
まを
)
さしめたまはく、「日に
背
(
そむ
)
きていでますこと、いと恐し。かれおのれ
直
(
ただ
)
にまゐ上りて仕へまつらむ」
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
「いや、わしも思わぬことではないが……。如何せん、固く守って攻めるなかれ、という洛陽の勅命じゃ。勅に
背
(
そむ
)
くわけにゆかん」
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それは余も一度見たことがありますが、実に顔を
背
(
そむ
)
けずにはいられなかったです。その毒蛇と今日の毒蛇と、毒性は同じものですかね」
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
事態がこうなってみると、玄竜はその命令に
背
(
そむ
)
く訳には行かなくなったのだ。いよいよこの二日の中に出掛けねばならなかった。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
「この蛇を取ってお捨てなさい」と法然が云えば法蓮房は生来非常の蛇嫌いの人であったけれども師命
背
(
そむ
)
き難く、こわごわその蛇を捕え
法然行伝
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と写真を直視しているのにも堪えやらぬように、顔を
背
(
そむ
)
けながら突っ立っていた亭主が、震え声を出して私の口許を
凝視
(
みつめ
)
ていた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
使いの
内侍
(
ないし
)
が、民人として国王の命にそむくことはできぬと言葉をはげましていうと、「国王の仰せ事を
背
(
そむ
)
かば、はや殺し給ひてよかし」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
何卒
(
どうぞ
)
旦那これだけは
私
(
わたし
)
の云う事を聞いて、今迄貴方のいう事は
背
(
そむ
)
かねえが、
私
(
わし
)
も
最
(
も
)
う五十一になって、貴方より外に力に思う者はないに
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
先方
(
むこう
)
の知らぬを幸いに地底を深く
螺旋形
(
らせんけい
)
に掘り、大富金山に属すべきものを我らが方へ横取りするは、天意に
背
(
そむ
)
いたいわば
盗
(
ぬす
)
み。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一朝手裏剣をとっては
稀代
(
きだい
)
の名手である点、なるほど「
山椒
(
さんしょう
)
は小粒でもピリッとからい」に
背
(
そむ
)
かないとうなずかせるものがある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「それがしは、帝に
背
(
そむ
)
き奉つて、
悪魔
(
ぢやぼ
)
に仕へようずと申したれば、かやうに牢舎致されたのでおぢやる。おう、おう、おう。」
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
曾
(
かつ
)
ての日かう一途に思ひつめて、我が生みの子に対する盲目的な愛の為に、恩義ある育ての親にも
背
(
そむ
)
き去つたお信さんだつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
右のごとく、国民は政府と約束して政令の
権柄
(
けんぺい
)
を政府に任せたる者なれば、かりそめにもこの約束を
違
(
たが
)
えて法に
背
(
そむ
)
くべからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
我々日本人は之には顏を
背
(
そむ
)
ける。私は我々のボーイも同樣に、この河水で炊事をせぬかといふ疑を起したが、主人公の長尾君は中々同意せぬ。
大師の入唐
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
燈火
(
あかり
)
に
背
(
そむ
)
いた其笑顏が、何がなしに艶に見えた。涼しい夜風が遠慮なく髮を
嬲
(
なぶ
)
る。庭には植込の繁みの中に螢が光つた。子供達は其方にゆく。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
改
(
あらた
)
め申けるは此度天一坊樣御身分
調
(
しらべ
)
の儀に付ては越前守申す事は小石川
御屋形
(
おやかた
)
の御言葉と心得よとの儀にて大岡が言葉を
背
(
そむ
)
かるゝは則ち上意を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
戦いに臨む者は勝利を期待することは当然であるが、万一期待に
背
(
そむ
)
く事あるときはかくかくすると
予
(
あらかじ
)
め覚悟なくてはならぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その自由意思をもって神に
背
(
そむ
)
いたのであるから、その責任は人間にあるのであって、造り主たる神の側にあるのではない。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
私はギョッとして、慌てて顔を反対の山の方へ
背
(
そむ
)
けた。漸く、あの森が、丘の下に沼のように見えるあたりまで来ていた。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
女
(
むすめ
)
と壮い男はその火の光に
背
(
そむ
)
いて、北へ北へと逃げました。修験者はその
後
(
あと
)
を激しく追っかけました。
女
(
むすめ
)
と
壮
(
わか
)
い男は手を
執
(
と
)
りあっておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
長門
(
ながと
)
は山陽の
西陬
(
せいすう
)
に
僻在
(
へきざい
)
す、
而
(
しこう
)
して萩城連山の
陰
(
きた
)
を
蔽
(
おお
)
い、
渤海
(
ぼっかい
)
の
衝
(
しょう
)
に当る。その地海に
背
(
そむ
)
き山に面す、
卑湿
(
ひしつ
)
隠暗。城の東郊は則ち吾が松下村なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
隣家
(
となり
)
に
咲
(
さ
)
ける
遲咲
(
おそざき
)
きの
卯
(
う
)
の
花
(
はな
)
、
都
(
みやこ
)
めづらしき
垣根
(
かきね
)
の
雪
(
ゆき
)
の、
凉
(
すゞ
)
しげなりしを
思
(
おも
)
ひ
出
(
いづ
)
ると
共
(
とも
)
に、
月
(
つき
)
に
見合
(
みあ
)
はせし
花
(
はな
)
の
眉
(
まゆ
)
はぢて
背
(
そむ
)
けしえり
足
(
あし
)
の
美
(
うつ
)
くしさ
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
宮の
肩頭
(
かたさき
)
を
捉
(
と
)
りて貫一は
此方
(
こなた
)
に引向けんとすれば、
為
(
な
)
すままに彼は
緩
(
ゆる
)
く身を
廻
(
めぐら
)
したれど、顔のみは
可羞
(
はぢがまし
)
く
背
(
そむ
)
けてゐたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
カピ長 いや、なう、パリスどの、
女
(
むすめ
)
は
敢
(
あへ
)
て
献
(
けん
)
じまする。
彼
(
か
)
れめは
何事
(
なにごと
)
たりとも
吾等
(
われら
)
の
意志
(
こゝろざし
)
には
背
(
そむ
)
くまいでござる、いや、
其儀
(
そのぎ
)
は
聊
(
いさゝか
)
も
疑
(
うたが
)
ひ
申
(
まう
)
さぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
我は詞なくて、卓上の書状を指し、友のこれを讀む間、これに
背
(
そむ
)
きて涙を拂ひつ。友は我肩を撫でゝ、泣くが好し、泣かば心落着くべしと云へり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
まづ
己
(
おのれ
)
からその道に
背
(
そむ
)
きて、君をほろぼし、国を奪へるものにしあれば、みな
虚偽
(
いつわり
)
にて、まことはよき人にあらず、いとも/\
悪
(
あ
)
しき人なりけり。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
実
(
げ
)
にや人倫五常の道に
背
(
そむ
)
きてかへつて世に迎へられ人に敬はるる
卿
(
けい
)
らが
渡世
(
たつき
)
こそ
目出度
(
めでた
)
けれ。かく戯れたまひし人もし深き心ありてのことならんか。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
お母さんの期待に
背
(
そむ
)
いては申訳ないが、生計さえ立てば宜いと仰有るのを力に、僕はそのまま引き退って、先ず観察から修行することに肚を極めた。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と、中老たちに対して、相当の権威を持っている、取締りの老女にささやくと、
寵愛
(
ちょうあい
)
ならびない浪路のいい分に
背
(
そむ
)
いて得はないと知る彼女、すぐに
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
天地
(
てんち
)
の
間
(
あいだ
)
にはそこに
動
(
うご
)
かすことのできぬ
自然
(
しぜん
)
の
法則
(
さだめ
)
があり、
竜神
(
りゅうじん
)
でも、
人間
(
にんげん
)
でも、その
法則
(
さだめ
)
に
背
(
そむ
)
いては
何事
(
なにごと
)
もできぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
子供のかう云ふのを聞いて涙ぐんだので、母は顔を
背
(
そむ
)
けた。娘はもう父の事を忘れてしまつてゴム毬を衝いてゐる。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
わたしの感懐に
背
(
そむ
)
いていよ/\「時代」の潮さきに乗ろうとする古いその町々をはっきりわたしはわたしに感じた。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
つまり天然自然の法則に
背
(
そむ
)
いているからだ。人間に男女がある以上、必ず配偶者を求むべきが当然の道ではないか。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
然るに彼の粋なる者は幾分か是の理に
背
(
そむ
)
きて、白昼の如くなるを旨とするに似たり。盲目ならざるを尊ぶに似たり。
粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
“背”の意味
《名詞》
背(せ、せい)
背中。胴の後ろ側のうち、腰より頭に近(ちか)い部分。胸と腹の反対側。
ものを人や動物(の胴)に見立ときの背中に当たる部分。刃の切(き)れない方の縁。
服や道具の中で、人の背中に接する部分。
身長。
(出典:Wiktionary)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
“背”を含む語句
背負
背後
背丈
背嚢
背高
背向
背景
山背
背中
引背負
背反
背延
背屈
背負梯子
違背
背恰好
中背
背負上
背伸
刀背
...