立去たちさ)” の例文
令嬢達が僕などに注意を向ける筈が有り得るものではないのですから、と言って、彼は一人で喋って、そそくさと立去たちさってしまった。
青い絨毯 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
本國ほんごく日本につぽん立去たちさつたひと其人そのひといまかる孤島はなれじまうへにて會合くわいごうするとは、意外いぐわいも、意外いぐわいも、わたくし暫時しばし五里霧中ごりむちう彷徨はうくわうしたのである。
更に父と知らずして父をきずつけた。お葉が形見の山椿の枝を抱えて、一旦はその場から姿を隠したが、流石さすがに遠くは立去たちさらなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さし無念ははらしたれど今は此地に住居はならじと直樣すぐさま此處を立去たちさり是よりは名を嘉傳次かでんじあらため大坂へ出夫より九州へ赴き所々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あいちやんは其扇子そのせんす手套てぶくろとを取上とりあげ、まさ其處そこ立去たちさらうとして、姿見鏡すがたみそばにあつたちひさなびんまりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「やあ!」といったまま、春田君のさし出した手を握ろうともせず、さっさと自分の椅子いすの方へ立去たちさっていった。
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
蝙蝠傘かうもりがさつゑにして、わたしがひよろ/\として立去たちさときぬまくらうございました。そしてなまぬるいあめ降出ふりだした……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとはなしひと猶更なほさらなからんをなにつとか馬鹿ばからしさよと他目よそめにはゆるゐものからまだ立去たちさりもせず前後ぜんごくばるは人待ひとまこゝろえぬなるべし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この書面しょめんあさはや親御樣おやごさまわたしてくれいとまうされ、すみやかに此處こゝ立去たちさらずばころしてしまふぞとおどされました。
かみさんはおかみさんで、どもたちきつれて御亭主ごていしゆ立去たちさつたあとへ、ちがひにやつてました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そして、老人ろうじんんだのをとどけてから、自分じぶんさかずきのウィスキイをびんにもどし、かつ指紋しもんをぬぐいとつておいて、悠々ゆうゆうと……もしくはいそいで、この立去たちさつたのである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
なんゆえに一にんえきなきものをころして多人數たにんずえきすることしきことなしといふ立派りつぱなる理論りろんをもちながら流用りうようすること覺束おぼつかなき裝飾品そうしよくひん數個すこうばひしのみにして立去たちさるにいたりしか
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
客等きやくら立去たちさつてからも、かれ一人ひとり少時しばらく惡體あくたいいてゐる。しか段々だん/\落着おちつくにしたがつて、有繋さすがにミハイル、アウエリヤヌヰチにたいしてはどくで、さだめし恥入はぢいつてゐることだらうとおもへば。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
心靜かにこゝを去れ、立去たちさりながら、わが無情をゆるせかし
そこで、外國人ぐわいこくじん吾等われら立去たちさつたあとで、このしま上陸じやうりくして、此處こゝ自分じぶんが、第一だいいち發見はつけんしたしまだなんかと、くだひたつて無益だめもうすのだ。
重太郎はおそら何処いずこへか立去たちさったのであろう。それから塚田巡査に発見されるまでは、重蔵も夢心地で何にも知らなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と云いながら、くるりときびすをかえして立去たちさっていった。——敬吉と文吾はただ不快な気持でそれを見送っていたが、その青年の姿が見えなくなるとすぐ
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『それッ!』とひさまグリフォンは、あいちやんのつていそ立去たちさりました、うたをはるをたずして。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ふねみなときけるまでねんごろ説聞とききかして、この殺身爲仁さつしんゐじん高僧かうそうは、飄然へうぜんとしてそのげず立去たちさりにけり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さりとて立去たちさるでもしにたゞうぢ/\とむねとゞろかすは平常つね美登利みどりのさまにてはかりき。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
客等きゃくら立去たちさってからも、かれ一人ひとりでまだしばらく悪体あくたいいている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
バルタ はい/\、立去たちさりまする、お妨碍さまたげつかまつりませぬ。
日出雄少年ひでをせうねんたゞ一人ひとりさだめてさびしく、待兼まちかねことだらうと、おもつたので、わたくし大佐たいさわかれげて、此處こゝ立去たちさことけつした。
お前ならば山女郎やまじょろうの方がかろうと云おうとしたが、からかっていると長くなる。市郎は黙って首肯うなずいて、早々に立去たちさった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恰度ちやうど立去たちさるべきときました、いけにはそろ/\其中そのなかんだ澤山たくさんとり動物どうぶつ群集ぐんじゆうしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其夜そのよかり立去たちさらず、にかはれた飼鳥かひどりのやう、よくなつき、けて民子たみこしたつて、ぜんかたはらはねやすめるやうになると、はじめに生命いのちがけおそろしくおもひしだけ、可愛かはいさは一入ひとしほなり。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
少年はそういうと、黒い封筒の書面を倉持教師にわたして、さっさと立去たちさった。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうして室内しつないなにこうゆらすようにとニキタにめいじて立去たちさった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
京城けいじょうに一人の兇賊が徘徊した。かれは人家で賊を働いて、その立去たちさるときには必ず白粉はくふんを以て我来也の三字を門や壁に大きく書いてゆく。官でも厳重に捜索するが容易に捕われない。
自来也の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
京太郎が立去たちさると、——平野氏は自分の椅子へ戻って葉巻に火を点けながら
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
みな此花このはなよりうまでて、立去たちさりあへず、ひありく、ひとてふともひつべう。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さうして室内しつないなにかうゆらすやうにとニキタにめいじて立去たちさつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれはアンドレイ、エヒミチをここに一人ひとりのこして立去たちさった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれはアンドレイ、エヒミチをこゝ一人ひとりのこして立去たちさつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)