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でふ
此冬になつて、
晝のうち
炬燵を
拵らえたのは、
其日が
始めてゞあつた。
夜は
疾うから
用ひてゐたが、
何時も六
疊に
置く
丈であつた。
ト
其の
色も……
薄いながら、
判然と
煤の
中に、
塵を
拂つてくつきりと
鮮麗な
姿が、
二人が
机に
向つた
横手、
疊數二
疊ばかり
隔てた
處に、
寒き
夜なれば
與へ
干殺さんとこそ
巧みけれ
然ば
無慚なるかな藤五郎は其身
不行跡とは云ながら
僅か三
疊の
座敷牢に
押籠られ
炎暑の甚はだしきをも
凌ぎかね
些々たる
庇間の風を
周三が
梯子を上りきる時分に、お房は花を
箪笥の上に置いて三
疊へ入ツた。
御米は
特別の
挨拶もしなかつた。
小六は
其儘起つて六
疊へ
這入つたが、やがて
火が
消えたと
云つて、
火鉢を
抱えて
又出て
來た。
手を
緊めて、
差窺ふ、
母屋の、
遠く
幽なやうな
帳場から、
明の
末が
茫と
屆く。
池に
面した
大廣間、
中は四五十
疊と
思はるゝ、
薄暗い
障子の
數の
眞中あたり。
拂ひ
目覺しくも又
勇々敷ぞ見えたりける
斯て玄關に到れば取次の
役人兩人
下座敷まで
出迎へ案内して
廣書院へ通せしを見るに上段には
簾を
下し中には二
疊臺の上に
錦の
褥を敷て座を
「
小六はゐるのかい」と
聞いた。
小六は
固より
居た
筈である。けれども六
疊はひつそりして
人のゐる
樣にも
思はれなかつた。
板戸一つが
直ぐ
町の、
店の八
疊、
古疊の
眞中に
机を
置いて
對向ひに、
洋燈に
額を
突合はせた、
友達と
二人で、
其の
國の
地誌略と
云ふ、
學校の
教科書を
讀んで
居た。
此時上段の
簾の前には
赤川大膳藤井左京の兩人
繼上下にて左右に居並び常樂院
天忠和尚が
披露につれ大膳が簾を
卷ば
雲間縁の
疊の上に
錦の
褥を
敷天一坊安座し身には
法衣を着し
中啓を
些との
風もがなで、
明放した
背後の
肱掛窓を
振向いて、
袖で
其のブーンと
鳴くのを
拂ひながら、
此の
二階住の
主人唯吉が、六
疊やがて
半ばに
蔓る、
自分の
影法師越しに
透かして
視る
此の
廂はづれに、
階下の
住居の八
疊の
縁前、
二坪に
足らぬ
明取りの
小庭の
竹垣を
一ツ
隔てたばかり、
裏に
附着いた一
軒、
二階家の
二階の
同じ
肱掛窓が、
南を
受けて、
此方とは
向を
異へて
其のまゝ、六
疊の
眞中の
卓子臺の
前に、
摚と
坐ると、
早や
目前にちらつく、
濃き
薄き、
染色の
葉に
醉へるが
如く、
額を
壓へて、ぐつたりと
成つて、二
度目に
火鉢を
持つて
來たのを、
誰とも
知らず
隣屋は
此邊に
棟を
並ぶる
木屋の
大家で、
軒、
廂、
屋根の
上まで、
犇と
木材を
積揃へた、
眞中を
分けて、
空高い
長方形の
透間から
凡そ三十
疊も
敷けようといふ
店の
片端が
見える、
其の
木材の
蔭になつて