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汚
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きた
ふりがな文庫
“
汚
(
きた
)” の例文
堀割
(
ほりわり
)
は
丁度
(
ちやうど
)
真昼
(
まひる
)
の
引汐
(
ひきしほ
)
で
真黒
(
まつくろ
)
な
汚
(
きた
)
ない
泥土
(
でいど
)
の
底
(
そこ
)
を見せてゐる上に、四月の
暖
(
あたゝか
)
い日光に
照付
(
てりつ
)
けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の
臭気
(
しうき
)
を
盛
(
さかん
)
に発散して
居
(
ゐ
)
る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
それはどうでも好いとして、古屋島氏の顔に、
汚
(
きた
)
ないキシャゴの道十郎めっかちがついているのだった。おまけにそれがばかに大きい。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
画かきはにわかにまじめになって、赤だの白だのぐちゃぐちゃついた
汚
(
きた
)
ない絵の具
箱
(
ばこ
)
をかついで、さっさと林の中にはいりました。
かしわばやしの夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
さう言つて入つて來たのは、二十七八の年増、まだ美しくも若くもあるのを、
自棄
(
やけ
)
に
汚
(
きた
)
な作りにしたやうな、白粉つ氣のない女でした。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝は不思議にどんなみすぼらしい人の姿をも
汚
(
きた
)
なくは見せない。その上、今日の甲野氏はいつもよりずっと身なりもさっぱりして居る。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
けれどもその大部分は支那のクーリーで、一人見ても
汚
(
きた
)
ならしいが、二人寄るとなお見苦しい。こうたくさん
塊
(
かたま
)
るとさらに
不体裁
(
ふていさい
)
である。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
臭
(
くさ
)
いの
汚
(
きた
)
ないのというところは通り越している。すべての光景が文学的頭の矢野には、その
刺激
(
しげき
)
にたえられない思いがする、
寒気
(
さむけ
)
がする。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
これらは
汚
(
きた
)
ないことのお
嫌
(
きら
)
いな水の神を
怒
(
いか
)
らせて、大いに
暴
(
あば
)
れていただくという趣意らしく、もちろん日本に昔からあったまじないではない。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
日の光はここにて淡き黄緑となり、冷くして透明なる水は薄らに顫へ、
汚
(
きた
)
なきココア色の泥のなかに蠢く虫ありて、水草のかげに油すこし浮く。
春の暗示
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「僕達は急に仲が好くなってしまって、もう始終一緒だった。あの頃君は
高輪
(
たかなわ
)
にいたね。
汚
(
きた
)
ない下宿だったじゃないか?」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ほんとに十二銭ぐらいな
汚
(
きた
)
な着物の汚な手拭、汚な扇子ときているから、気の毒みたいに真に迫っていよいよお客はおかしがらずにはいられなかった。
円太郎馬車
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
彼女は三十年前、木之助が始めて松次郎と門附けに来たとき、主人にいいつけられて
御馳走
(
ごちそう
)
のはいった
皿
(
さら
)
を持って来た、あの意地の
汚
(
きた
)
なかった女中である。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
かれはそう思いながら、じとじとになった岸の土をぱっと
呑
(
の
)
みこんでは、くるしそうに吐いていた。
泥
(
どろ
)
にごりした水が乱れた
汚
(
きた
)
ない水脈をつくっては流れた。
寂しき魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
こんなに顔が大きくなると、恋愛など、とても出来るものではありません。
高麗屋
(
こうらいや
)
に似ているそうですね。笑ってはいけません。「
汚
(
きた
)
な作り」の高麗屋です。
小さいアルバム
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
固
(
もと
)
より
些
(
いさゝか
)
も無氣味と思ふ樣子もなければ、
汚
(
きた
)
ないと思ふ樣子も無い。
眞個
(
まツたく
)
驚くべき入神の妙技で、此くしてこそ自然の祕儀が
會得
(
ゑとく
)
せられようといふものである。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
(だから彼らは、故意にかえって現実の鏡を見ないようにし、常に
無精髭
(
ぶしょうひげ
)
を
生
(
は
)
やして
汚
(
きた
)
なくしている。)
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
ほかの者が、心もからだも真白になって、洗礼を受けようという年に、にんじんはまだ
汚
(
きた
)
ないところがあった。ある晩は、いい出せずに
我慢
(
がまん
)
をしすぎたのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
おおぜいが踏んで踏んづけて、
汚
(
きた
)
ないボロボロになっちまうと、もうゼズスもマルヤもあったもんじゃないわ。何が
画
(
か
)
いてあるか、てんでわかりゃせんのだから。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
ちぇっ、それは
汚
(
きた
)
ねえや、ユダヤ人附になるなんて。ユダヤ人と来たら鼻持ちならないぜ。彼等は戦争を起しておきやがって、
弾丸
(
たま
)
の来るところへは出やがらない。
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのあたりの国じゅうで生きた
獣
(
けもの
)
の皮を
剥
(
は
)
いだり、獣を
逆
(
さか
)
はぎにしたものをはじめとして、田の
畔
(
くろ
)
をこわしたもの、
溝
(
みぞ
)
をうめたもの、
汚
(
きた
)
ないものをひりちらしたもの
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
その手紙は、いかにも無学らしい文章に加えるに
汚
(
きた
)
ならしい
筆跡
(
ひっせき
)
をもって書いてあって、要するに
公爵夫人
(
こうしゃくふじん
)
がわたしの母に
庇護
(
ひご
)
してもらいたい
旨
(
むね
)
を願い出たものだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
世の中の無数な売女や
淫婦
(
いんぷ
)
を越えて、この母ひとりが、
汚
(
きた
)
ならしい女に思えてならないのである。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
されば意地
汚
(
きた
)
なき穴さがし、情人なき
嫌
(
きら
)
われ者らは、
両個
(
ふたり
)
の密事を
看出
(
みいだ
)
して吹聴せんものと、夜々佐太郎が跡をつけ、夜遊びの壮年らも往き
還
(
かえ
)
りにこの家の様子を
窺
(
うかが
)
いぬ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
汚
(
きた
)
ならしい着物の、
埃
(
ほこり
)
まみれの顔の、眼ばかり光る鼻垂らしはてんでに棒切れを持っていた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「
色男
(
れこ
)
のプレゼントだッか? ゴンゾでも、一人前、恋をするのやな。……そか、そか、ほな、かえすわ。……なんや、けったいに臭い
思
(
おも
)
たら、男のにおいやな。あ、
汚
(
きた
)
な」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
で、外へ出るたんび、公園だの、貸自動車屋の車庫だの、しまいには、こわれた自動車たちが、雨や風に吹きさらしになっている、
汚
(
きた
)
ない裏町の
隅々
(
すみずみ
)
までも
探
(
さが
)
しまわりました。
やんちゃオートバイ
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
ついに彼はある横丁で、一階が飲食店になってる
汚
(
きた
)
ない宿屋を見つけた。文明館という名だった。チョッキだけのでっぷりした男が、一つのテーブルでパイプを吹かしていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
薄き衣に妻子の可愛さしみ/″\と身にしみれば、一日半夜やすらけき思ひはなく、身はけがれざる積りにて
汚
(
きた
)
なき人の下に使はれ、僅かの月給に日雇にひとしき働きをして
花ごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
教室の硝子戸は
埃
(
ちり
)
にまみれて灰色に
汚
(
きた
)
なくよごれているが、そこはちょうど日影が
黄
(
き
)
いろくさして、戸外では
雀
(
すずめ
)
が
百囀
(
ももさえずり
)
をしている。通りを荷車のきしる音がガタガタ聞こえた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
皆
(
みな
)
の
夜具
(
やぐ
)
は
只
(
たゞ
)
壁際
(
かべぎは
)
に
端
(
はし
)
を
捲
(
ま
)
くつた
儘
(
まゝ
)
で
突
(
つ
)
きつけてある。
卯平
(
うへい
)
は
其處
(
そこ
)
を
凝然
(
ぢつ
)
と
見
(
み
)
た。
箱枕
(
はこまくら
)
の
括
(
くゝ
)
りは
紙
(
かみ
)
で
包
(
つゝ
)
んでないばかりでなく、
切地
(
きれぢ
)
の
縞目
(
しまめ
)
も
分
(
わか
)
らぬ
程
(
ほど
)
汚
(
きた
)
なく
脂肪
(
あぶら
)
に
染
(
そま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
板屋根をさしかけたほッたて小屋,これは山方の人たちが
俄雨
(
にわかあめ
)
に出遇ッた時、身をかくす
遁
(
のが
)
れ場所で,正面には畳が四五畳、ただしたたというもみのないほどの
汚
(
きた
)
ならしいやつ
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
「
汚
(
きた
)
ならしい、いやな子ですねえ! あんたは、
今朝
(
けさ
)
爪のお掃除をしなかつたでせう。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
達磨
(
だるま
)
に
玉兎
(
たまうさぎ
)
に狸の
糞
(
くそ
)
などという
汚
(
きた
)
ない菓子に塩煎餅がありまするが、田舎のは塩を入れまするから、見た処では色が白くて旨そうだが、
矢張
(
やはり
)
こっくり黒い焼方の方が旨いようです。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
神田川の河岸にあるその居酒屋は、小さくて
汚
(
きた
)
ないうえに、荷揚げ人足や船頭など、川筋で働く人たちがおもな客だから、「指定」の職人などはもちろん、近所の者とかち合う心配はなかった。
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、すぐに
紙
(
かみ
)
を
出
(
だ
)
して、
花
(
はな
)
や
草
(
くさ
)
を
描
(
か
)
いてみましたが、やはりすこしもいい
色
(
いろ
)
が
出
(
で
)
なくて、まったく
少年
(
しょうねん
)
の
描
(
か
)
いたのとは
別物
(
べつもの
)
であって、まずく
汚
(
きた
)
なく
自分
(
じぶん
)
ながら
見
(
み
)
られないものでありました。
どこで笛吹く
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
母が
汚
(
きた
)
ないなりしたままで、鼻をグスグス音させながら、酌していた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
かく
二七
賤
(
あや
)
しき所に入らせ給ふぞいと
恐
(
かしこ
)
まりたる事。是敷きて奉らんとて、
二八
円座
(
わらふだ
)
の
汚
(
きた
)
なげなるを
二九
清めてまゐらす。
三〇
霎時
(
しばし
)
息
(
や
)
むるほどは何か
厭
(
いと
)
ふべき。なあわただしくせそとて
休
(
やす
)
らひぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
御行 さあこちらのこの
汚
(
きた
)
ない
恰好
(
かっこう
)
をしたのが、あなたの聟君です。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
『
晃
(
あきら
)
兄
(
にい
)
さん、
中
(
なか
)
は
汚
(
きた
)
なか無くつて。』
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
咲き満ちてこれより椿
汚
(
きた
)
なけれ
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
汚
(
きた
)
ない
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
(青金で
誰
(
だれ
)
か
申
(
もう
)
し上げたのはうちのことですが、
何分
(
なにぶん
)
汚
(
きた
)
ないし、いろいろ
失礼
(
しつれい
)
ばかりあるので。)(いいえ、何もいらないので。)
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「あゝ
奇麗
(
きれい
)
になつた。
何
(
ど
)
うも
食
(
く
)
つた
後
(
あと
)
は
汚
(
きた
)
ないものでね」と
宗助
(
そうすけ
)
は
全
(
まつた
)
く
食卓
(
しよくたく
)
に
未練
(
みれん
)
のない
顏
(
かほ
)
をした。
勝手
(
かつて
)
の
方
(
はう
)
で
清
(
きよ
)
がしきりに
笑
(
わら
)
つてゐる。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
妹のお絹によく似た
細面
(
ほそおもて
)
、化粧崩れを直す
由
(
よし
)
もありませんが、生れ乍らの美しさは、どんな
汚
(
きた
)
な作りをしても、
蔽
(
おほ
)
ふ由もなかつたのでせう。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ただくわつと
逆上
(
のぼせ
)
て云ふべき
臺辭
(
せりふ
)
も忘れ、
極
(
きま
)
り
惡
(
わ
)
るさに
俯向
(
うつむ
)
いて了つた——その前を六騎の
汚
(
きた
)
ない子供らが
鼻汁
(
はな
)
を垂らし、
黒坊
(
くろんぼ
)
のやうな
赭
(
あか
)
つちやけた裸で
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
然し、ぼくは
汚
(
きた
)
ならしい野郎ですから、東京に帰ってどんなに堕ちても、かまいませんが、おふくろが、——たまらんです。と、いって、こっちの空気もたまらんです。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
年寄のいるあわれっぽさや
汚
(
きた
)
ならしさがすこしもなく、おかげで家のなかはすがやかだった、
痩
(
や
)
せてはいたが色白な、背の高い女で、黒じゅすの細い帯を前帯に結んでいた
旧聞日本橋:03 蕎麦屋の利久
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
次が
臺所
(
だいどころ
)
で、
水瓶
(
みづがめ
)
でも
手桶
(
てをけ
)
でも
金盥
(
かなだらい
)
でも何でも好く使込むであツて、板の間にしろ
竈
(
かまど
)
にしろ
釜
(
かま
)
にしろお
飯櫃
(
はち
)
にしろ、都て
拭
(
ふき
)
つやが出てテラ/\光ツてゐた。雖然外は
汚
(
きた
)
ない。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
車やに連れこまれたのは
汚
(
きた
)
ない旅人宿だつた。
麥酒
(
ビール
)
と林檎を持つて直に姨捨に登つた。稻が延びてゐるので田毎の月の趣は無かつたが、蟲の音が滿山をこめて幼稚な詩情を誘つた。
山を想ふ
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
いちばん下の
円野媛
(
まどのひめ
)
は、四人がいっしょにおめしに会って
伺
(
うかが
)
いながら、二人だけは顔が
汚
(
きた
)
ないためにご奉公ができないでかえされたと言えば、近所の村々への聞こえも恥ずかしく
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
汚
常用漢字
中学
部首:⽔
6画
“汚”を含む語句
汚穢
汚涜
汚点
薄汚
汚濁
意地汚
汚物
口汚
汚水
汚塵
汚染
小汚
汚辱
汚名
面汚
汚泥
穢汚
爺々汚
汚穢屋
染汚
...