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斑
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まだら
ふりがな文庫
“
斑
(
まだら
)” の例文
そして遥か彼方には、明るい家々が
深緑
(
ふかみどり
)
の山肌を、その頂から
麓
(
ふもと
)
のあたりまで、はだれ雪のように、
斑
(
まだら
)
に
点綴
(
てんてい
)
しているのが望まれた。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
それは
斑
(
まだら
)
に赤や青の着色があって、その表面には
小豆
(
あずき
)
を二つに割った位の小さな木の実みたいなものが一面に貼り着けてあるんです。
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
空家
(
あきや
)
へ残して来た、黒と灰色との
斑
(
まだら
)
の毛並が、
老人
(
としより
)
のゴマシオ頭のように
小汚
(
こぎた
)
ならしくなってしまっていた、
老猫
(
おいねこ
)
のことがうかんだ。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何にも無い、畳の
摺剥
(
すりむ
)
けたのがじめじめと、蒸れ湿ったその
斑
(
まだら
)
が、陰と明るみに、黄色に鼠に、雑多の
虫螻
(
むしけら
)
の
湧
(
わ
)
いて出た形に見える。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして気絶でもしたような母と姉をしり眼に、
颯爽
(
さっそう
)
と、——だが涙で白粉のすっかり
斑
(
まだら
)
になった顔のまま——その部屋から出ていった。
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
国境の山の線を、
呪
(
のろ
)
いにみちた
眸
(
ひとみ
)
がじっと振り仰いだ、もうその辺りの中国山脈の
脊柱
(
せきちゅう
)
は灰色の夕雲に、
斑
(
まだら
)
になって黒ずんでいた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
チョット
電燈
(
でんき
)
を消すから、その窓から
向家
(
むこう
)
の屋根を
覗
(
のぞ
)
いて御覧なさい……ホラ、あんなに雪が
斑
(
まだら
)
になって凍り付いているでしょ。
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
細君は
燥
(
はしゃ
)
いだ唇に、ヒステレックな淋しい
笑
(
え
)
みを浮べた。筋の通った鼻などの上に、
斑
(
まだら
)
になった白粉の
痕
(
あと
)
が、浅井の目に物悲しく映った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
元の様に石蓋を
斑
(
まだら
)
に置いて、根太を並べて畳を敷いて、さアこれで
宜
(
い
)
いと坊主もお経を上げずに、四人もずうっと出かけました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
折柄
(
おりから
)
四時頃の事とて日影も大分
傾
(
かたぶ
)
いた塩梅、
立駢
(
たちなら
)
んだ樹立の影は
古廟
(
こびょう
)
の
築墻
(
ついじ
)
を
斑
(
まだら
)
に染めて、
不忍
(
しのばず
)
の池水は大魚の
鱗
(
うろこ
)
かなぞのように
燦
(
きら
)
めく。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其
(
その
)
大
(
おほ
)
きな
體躯
(
からだ
)
は
少
(
すこ
)
し
柹
(
かき
)
の
木
(
き
)
に
倚
(
よ
)
り
掛
(
かゝ
)
りながら、
胸
(
むね
)
から
脚部
(
きやくぶ
)
へ
斑
(
まだら
)
に
雪
(
ゆき
)
を
浴
(
あ
)
びて
居
(
ゐ
)
た。
荒繩
(
あらなは
)
が
彼
(
かれ
)
の
手
(
て
)
を
轉
(
こ
)
けて
横
(
よこ
)
に
體躯
(
からだ
)
を
超
(
こ
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
地は隈無く箒目の波を描きて、
斑
(
まだら
)
に
葩
(
はなびら
)
の白く散れる上に
林樾
(
こずえ
)
を洩るゝ日影濃く淡く
文
(
あや
)
をなしたる、
幾
(
ほとん
)
ど友禅模様の巧みを尽して
巣鴨菊
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
「多分これは、どこかの
社
(
やしろ
)
の奉納額から引き剥して持つて來たものでせう。
矢柄
(
やがら
)
に二箇所
斑
(
まだら
)
になつてゐるところがございます」
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつしか夏も
夕影
(
ゆふかげ
)
の、葉風すゞしき
庭面
(
にはおも
)
にかろく、浮きたるそのすがた。
黒地
(
くろぢ
)
に
斑
(
まだら
)
しろかねの、
雙葉
(
もろは
)
を風にうちまかせ花ある
方
(
かた
)
をたづね顏。
北村透谷詩集
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
四月にいたれば
田圃
(
たはた
)
の雪も
斑
(
まだら
)
にきえて、去年秋の
彼岸
(
ひがん
)
に
蒔
(
まき
)
たる
野菜
(
やさい
)
のるゐ雪の下に
萌
(
もえ
)
いで、梅は盛をすぐし桃桜は夏を春とす。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
冬
(
ふゆ
)
は
何事
(
なにごと
)
もなく
北風
(
きたかぜ
)
を
寒
(
さむ
)
い
國
(
くに
)
へ
吹
(
ふ
)
き
遣
(
や
)
つた。
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
を
明
(
あき
)
らかにした
斑
(
まだら
)
な
雪
(
ゆき
)
が
次第
(
しだい
)
に
落
(
お
)
ちて、
後
(
あと
)
から
青
(
あを
)
い
色
(
いろ
)
が
一度
(
いちど
)
に
芽
(
め
)
を
吹
(
ふ
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
海は襦子の感觸を以て銀の色を擴げ、中にところどころ天鵞絨の柔かみを以て紺青の圓い大きな
斑
(
まだら
)
を見せて居ました。何と云ふ好い
凪
(
なぎ
)
でせう。
初島紀行
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
中年の商人風の男の中に交じった一人の若い女の紫色に
膨
(
ふく
)
れ上がった顔に
白粉
(
おしろい
)
の
斑
(
まだら
)
になっているのが秋の日にすさまじく照らし出されていた。
異質触媒作用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
おお、何んと汚い、悲しい、そして不思議に
斑
(
まだら
)
な人々を見せられているのだろう。ゴーリキイはそれに疲れた自分を感じた。
マクシム・ゴーリキイの伝記:幼年時代・少年時代・青年時代
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
熊鷹に抉り抜かれた——というあの一言が、鹿子色をした頸先のほうに、一つの
孔
(
あな
)
のような
斑
(
まだら
)
を作ってしまったのでしたね。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
水はどんどん
退
(
ひ
)
き、オリザの株は見る見る根もとまで出て来ました。すっかり赤い
斑
(
まだら
)
ができて焼けたようになっています。
グスコーブドリの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
未
(
ま
)
だ土の上には
斑
(
まだら
)
に日影が残つて居て午後六時頃かと自分は一人で思はれるのであつた。
杜鵑
(
とけん
)
亭の食堂の一つの卓を自分等は選んで席に着いた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ところが、春の雪が
斑
(
まだら
)
に消えた跡へ物を育む麗かな
遅日
(
ちじつ
)
が
遍
(
あまね
)
くなると、灰色の滑らかな根雪の膚からポタポタと真珠のような露の玉が滴り落ちる。
早春の山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
お神さんの傍には
斑
(
まだら
)
の猫の太つたのがゐる。その尻つぽには子供がいたづらに金めつきの懐中時計を括り付けたので、猫はそれを引き摩つてゐる。
十三時
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それは、ネルでしたが、地の桃色が褪せてしまって、ところどころに白い
斑
(
まだら
)
ができて、それが灰色に汚れているのです。
島原心中
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
咄嗟
(
とっさ
)
の間に、ちらりと見ただけで、何であったかわからなかった。ただ
斑
(
まだら
)
に色のついた、かたまりのようなものだった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しようろの形はほかのきのこ類とは違つて、大きな丸いからだをして、皺が寄つて、白い
斑
(
まだら
)
の入つた黒い肉をしてゐる。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
硝子
(
ガラス
)
ごしに青葉がうつろい、天井に陽の
斑
(
まだら
)
がおどって、解剖台を思わせる大きな机のうえに、たった一つ、あまりに周囲とかけ離れた物が置いてある。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
あるいは、まれに
斑
(
まだら
)
なるものもありと聞けども、予いまだこれを見ず。あるとき、親四子をつれあそぶを見しに、子はみな鼠色より黒色こくして黄色なし。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
白く
斑
(
まだら
)
に
剥
(
は
)
げたプラタアヌの太い幹の下あたりには、しきりと落葉を集め廻って遊んでいる子供の群も見えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
灰色の面には雲のように白い
斑
(
まだら
)
が出来ていて乾性の皮膚病のようにいかにも
痒
(
かゆ
)
そうだ。人の影がぞろぞろつながって映って行く。加奈子にぶつかる男もある。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一隅には一匹の黒白の
斑
(
まだら
)
の牛が新らしい藁をタツプリと敷いて静かに口を動かし乍ら心地よげに臥してゐた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
何しろそれは安物の紙風船が雨にぬれて色が浸み出したやうなぼんやりした
斑
(
まだら
)
に染め上げられ、触るたびにばさばさと大げさな音をたて、折目はぴんと立ち
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
皆美術品などいふべき限のものにはあらず、木もて彫り
斑
(
まだら
)
にいろどりたるまでなり。されど信仰の温き情は影を此拙作の上に留めて、おのづから美を現ぜり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
鎺元
(
はばきもと
)
から
鋩子
(
ぼうし
)
さきまで
斑
(
まだら
)
なく真紅に焼いた刀身を、しずかに水のなかへ入れるのだが、ここが
魂
(
たましい
)
の
込
(
こ
)
め場所で、この時水ぐあい手かげん一つで刃味も品格も
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
また
斑
(
まだら
)
唐津、朝鮮唐津という乳白色の釉の掛かった物にもすてきなのがあります。茶人の方では如才なく、それらの良いものや石はぜなどを採り入れてますね。
古器観道楽
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「これはコルシカのポピノの家にいたナポレオンよ。ほら、額んとこの王冠の形をした
斑
(
まだら
)
をごらんなさい」
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
涙で白粉を
斑
(
まだら
)
にした夫人は、その裾のところに半分膝を乘せて、すつかり取亂した姿だつた。看護婦は蒲團の外に滑り出て、
寢衣
(
ねまき
)
に細帶できちんと坐つてゐた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
斑
(
まだら
)
の
牝牛
(
めうし
)
が牧場の草を食べていて、そのゆるやかな鳴き声は、うつらうつらしてる田舎の静けさを満たしていた。鋭い声の
雄鶏
(
おんどり
)
が農家から農家へ答え合っていた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
大ていの牛は毛が
斑
(
まだら
)
であった。そして角が変にくねっていたり、左右の調和がとれていなかったりした。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
森羅萬象
(
ものといふもの
)
を全く眞ツ白に引ツ包むで了ツてこそ美觀もあるけれども、これが山脈や屋根に
斑
(
まだら
)
になツてゐたり、物の陰や家の
背後
(
うしろ
)
に
繃帶
(
ほうたい
)
をしたやうに殘ツてゐては
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
午餐
(
ごさん
)
の案内に鶴子が来た。室を出て見ると、雪はぽつり/\まだ降って居るが、
四辺
(
あたり
)
は雪ならぬ光を含んで明るく、
母屋
(
おもや
)
前
(
まえ
)
の芝生は樫の
雫
(
しずく
)
で已に
斑
(
まだら
)
に消えて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「今日はどんな顔をしているか。この間、昼、日の照っているところへ連れ出したら顔の
蒼白
(
あおじろ
)
いところへ
白粉
(
おしろい
)
の
斑
(
まだら
)
に
剥
(
は
)
げているのが眼について
汚
(
きたな
)
くってたまらなかった」
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
鶴見はその喇叭をかれこれ十年も使っているので、表にかけた
黒漆
(
くろうるし
)
も
剥
(
は
)
げてところ
斑
(
まだら
)
に
地金
(
じがね
)
の真鍮が顔を出している。その器具を耳にあてがってみても、実は不充分である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それから例のごとく摩擦をして空を見ると夜前降った雪の後の空にまだ恐ろしい黒雲が
斑
(
まだら
)
に飛んで居りまして、その雲間に太陽が折々光って居るという
凄
(
すさま
)
じい空模様である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
天日
(
てんぴ
)
のさしこんだ所で見ると、わきの下や首のつけ根に、ちょうど腐った
杏
(
あんず
)
のような、どす黒い
斑
(
まだら
)
があって、そこからなんとも言いようのない、異様な臭気が、もれるらしい。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それも道より下の
麓
(
ふもと
)
の方にところどころ群がっているきりで、あとは三尺に足りない雑木や小松が、山の肌を覆い切れない程度で、ところ
斑
(
まだら
)
に山にしがみついているのである。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
北海道
(
ほつかいどう
)
の
熊
(
くま
)
は、みんな
羆
(
あかぐま
)
の
種類
(
しゆるい
)
で
内地
(
ないち
)
に
棲
(
す
)
んでゐる
熊
(
くま
)
とは
異
(
ちが
)
ひます。からだ
全體
(
ぜんたい
)
が
黒
(
くろ
)
く
顏
(
かほ
)
だけが
茶色
(
ちやいろ
)
のや、
肩
(
かた
)
から
胸
(
むね
)
に
白
(
しろ
)
い
斑
(
まだら
)
のあるのもゐます。
木登
(
きのぼ
)
りも
水泳
(
みづおよ
)
ぎも
非常
(
ひじよう
)
に
上手
(
じようず
)
です。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
すなわち背の
円
(
まる
)
いことと
斑
(
まだら
)
の色どりとが、牛を思わせるような貝だったからで、もしも野路を遠く行く牛の列を、その頸飾りにたとえたのだったら、是は神口とも思われぬほどの
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その壁には白い
卓子
(
テーブル
)
懸けのような雪が、幾反も垂れている、若緑の樺の木は、岩壁の麓から胸まで、擦り切れるようになった枝を張りつめて、その間から白雪が、細い
斑
(
まだら
)
を引いている
槍ヶ岳第三回登山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
“斑”の解説
斑(はん)は、皮膚疾患などでみられる皮疹の一つ。皮膚の表面は盛り上がっておらず平坦で、かつ限局した病的な変化である。
(出典:Wikipedia)
斑
常用漢字
中学
部首:⽂
12画
“斑”を含む語句
斑々
斑紋
斑猫
白斑
斑馬
斑点
虎斑
斑鳩
斑點
黒斑
斑雪
石斑魚
斑犬
紫斑
赤斑
斑痕
斑入
一斑
斑牛
斑白
...