さず)” の例文
「ああマージ様、どんな物をも煙にしてしまうというマージ様は、あなたでございましょう。どうか私にその術をおさずけ下さいませ」
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
まるで、天からさずかり物のような今夜の使の話なのである。有卦うけに入るというのはこんなことだろうと独りで悦に入っていたのだ。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じいさま、うぞわたくしひとつの御神鏡ごしんきょうさずけていただぞんじます。わたくしはそれを御神体ごしんたいとしてそのまえ精神せいしん統一とういつ修行しゅぎょういたそうとおもいます。
ただちに特別捜査隊を編成して、それに秘策ひさくさずけて出発させた。そして彼はゆうして、単身、青竜王の探偵事務所を訪ねた。——
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実際私は下谷浅草本所深川あたりの古寺の多い溝際どぶぎわの町を通る度々、見るもの聞くものから幾多の教訓と感慨とをさずけられるか知れない。
それでは自然が人間にさずけてくれたこの両手が、今日本でどんな働きをなしつつあるのでしょうか。それを見届けたく思います。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その一つは、男と同じ学問をさずけようとするもの、今一つは私などのように、どうかしてやや分業のみちでしめようとするものである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いままでってももどってこないところをみると、おそらくそのとしぬしはもどってこないだろう。そのおかねは、おまえさんにさずかったのだ。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
パリからヴァルセに来るとちゅう、わたしはマチアに読書と、初歩しょほ楽典がくてんさずけ始めた。この課業かぎょうを今度もつづけてした。
小児は牛乳を以て養う可しと言い、財産家は乳母を雇うこと易しとて、母に乳あるもわざと之をさずけずしてあたかも我子の生立を傍観する者なきにあらず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そこで、ついおとなり和泉国いずみのくに信田しのだもり明神みょうじんのおやしろ月詣つきまいりをして、どうぞりっぱな子供こども一人ひとりさずくださいましと、熱心ねっしんにおいのりをしていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「私は小さい時に、不思議な術をさずかって、気を吐いて長生することができるのですから、結婚はのぞまないです。」
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
話は横道にはいるようであるが、折々、我が国においても実業家に位階いかいさずけらるるとか、あるいは叙勲じょくんせらるべしという議論がさかんに行われる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
猿の方では、神様から人真似の本能をさずけられている悲しさに、旅人の仕草しぐさを一々真似始めたのです、そして、とうとう、自殺をしてしまったのです。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おおせに従わない悪者どもをき従えてまいれとおおせになって、ひいらぎのほこをおさずけになり、御鉏友耳建日子みすきともみみたけひこという者をおつけえになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
十歳のとき父を失ったヨハン・セバスティアンは、オールドルフのオルガン奏者なる兄クリストフのもとに引き取られて、クラヴィーアの稽古けいこさずけられた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
が、自分は衆の知識として、おのおのの迷いを破り、道をさずけんがために、住持人となっている。そのために呵嘖し打擲ちょうちゃくする。自分はこの行を恐ろしく思う。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
愛宕山あたごやま太郎坊たろうぼう、夜な夜なわがもとに忍んで極意秘術をさずけるといい広め、そこで名づけたのがこの微塵流みじんりゅう
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其信心は何時から始まったか知らぬが、其夫が激烈げきれつ脚気かっけにかゝって已に衝心しょうしんした時、彼女は身命しんめいなげうって祈ったれば、神のお告に九年余命よめいさずくるとあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
またその上に植物には紅白紫黄こうはくしおう、色とりどりの花が咲き、吾人ごじんの眼を楽しませることひととおりではない。だれもこの天からさずかった花を愛せぬものはあるまい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
何とか報恩の道もがなと、千々ちぢに心をくだきしのち、同女の次女を養い取りていささか学芸をさずけやりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
今宵こよいこの者に、旧師が、秘伝奥義の、伝授云々のことあり、拙者へも伝授なきものを、河原者風情に、さずけられては、面目立ち難く、当方より、師弟の縁を切り、直ちに
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
武家へ生れても孤児の宗右衛門は何のしつけ薫育くんいくさずからず、その部落の同情でかろうじて八九歳までの寿命を延ばしたに過ぎない。そして江戸の或る御用商人の小僧にやられた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
むろんこっちでも恩をあだで返す了簡りょうけんなんか毛頭無いんだが……とにもかくにも吾輩の博士製造業……往来の犬生かし事業は、こうして天狗猿の鬼目博士からさずかったものなんだ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
尊はその時分、神仙からさずかった秘法や禁厭まじないで附近の人びとの病気などをなおしていた。尊の噂が高まってくるとともにその門人もんじんとなる者もできた。太美ふとみ万彦よろずひこもその弟子の一人であった。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「気ちがいのつぎが、捨児すてごか……すこし、さずかりものが多すぎるようだな」
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「なに、これで善い運がさずかるとなれば、私だって、信心をするよ。日参をしたって、参籠さんろうをしたって、そうとすれば、安いものだからね。つまり、神仏を相手に、一商売をするようなものさ。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
アンドレイ、エヒミチはハバトフが自分じぶん散歩さんぽさそって気晴きばらしをさせようとうのか、あるいはまた自分じぶんにそんな仕事しごとさずけようとつもりなのかとかんがえて、とにかくふく着換きかえてともとおりたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「これは好い智恵をさずかった。光子さん、何うだね? ハッハヽヽ」
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この夫婦ふうふ大層たいそうなかかったが、小児こどもがないので、どうかして一人ひとりほしいとおもい、おかみさんは、よるも、ひるも、一しんに、小児こどもさずかりますようにといのっておりましたが、どうしても出来できませんでした。
天漢三年の秋に匈奴きょうどがまたもや雁門がんもんを犯した。これにむくいるとて、翌四年、漢は弐師じし将軍李広利りこうりに騎六万歩七万の大軍をさずけて朔方さくほうを出でしめ、歩卒一万を率いた強弩都尉きょうどとい路博徳ろはくとくにこれをたすけしめた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
言訳いいわけに困って腹を切るのは昔のことだが、どうもお前さんは太い人だねえ、清水の旦那を殺し、又作という奴に悪智あくちさずけて、屍骸しがいを旅荷に造り、佐野の在へ持ってき、始末をつけようとする途中
ところがいよいよ子爵夫人の格式をおさずけになるという間際まぎわ
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
神様が、妹に、立派な恋人をおさずけくださいますように!
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
少年はこの座頭からこうしてその智慧をさずかるのである。
「将監の書中によれば、なお詳しくは使いの者に仔細申しさずけ置く——と相見ゆるが、将監からの伝言、余すところなくそれにて申せ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何卒なにとぞ神様かみさまのおちから子供こども一人ひとりさずくださいませ。それがおとこであろうと、おんなであろうと、けっして勝手かってもうしませぬ……。
しかしそもそも私が巴里の芸術を愛し得たその Passion その Enthousiasme の根本の力を私にさずけてくれたものは
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
町の子供には毎夜六時から八時頃まで、特に日曜の時には午後の二時から六時までという風に算術の稽古をさずけていた。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
もし運よく向こうへ行けて どんな物でも煙にしてしまうという術をさずかったら、それこそ素敵すてきだ。世間せけんの者はどんなにびっくりすることだろう。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
マヨイガに行き当りたる者は、必ずその家の内の什器じゅうき家畜何にてもあれ持ち出でて来べきものなり。その人にさずけんがためにかかる家をば見するなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だんだんわたしはおかげでいろんなことをおぼえた。と同時に親方のさずけてくれた課業かぎょう以上いじょう有益ゆうえきな長い旅行をした。
大臣だいじんつるぎとおうわぎを持って、御殿ごてんのきざはしの上にって、頼政よりまさにそれをさずけようとしました。頼政よりまさはきざはしの下にひざをついてそれをいただこうとしました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
また小食の人も健啖家けんたんかも、にくを注文すれば同じ分量をさずけられる。ほとんど個性を無視しておとこぴき食物しょくもつ何合なんごう、衣類は何尺なんじゃくと、一人前なる分量が定まっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
不思議なことに、神通力でもさずかったように、色々なことが見えたり聞えたりして来るのです。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
妾らここに見るあり曩日さきに女子工芸学校を創立して妙齢の女子を貧窶ひんるうちに救い、これにさずくるに生計の方法を以てし、つねさんを得て恒の心あらしめ、小にしては一身いっしんはかりごとをなし
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ばかなことは、よせ。ここではっきりいって置くぞ。天からさずかった神聖な躯を売却していいと思うか。それも物質的欲望のために売却するなんて、猛烈に汚いことだ。万一君がそんなことを
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たまたもって一旧臣のめに富貴を得せしむるの方便ほうべんとなりたる姿すがたにては、たといその富貴ふうきみずから求めずして天外よりさずけられたるにもせよ、三河武士みかわぶしの末流たる徳川一類の身として考うれば
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして、その院長が次第に社会的に栄達えいたつして、男爵をさずけられた時にも
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そうして祖先たちはよい技術をこの町の人々にさずけてくれたと思います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)