)” の例文
千恵は自分の胸が大きく波を打つてゐるやうな気がしてなりませんでしたが、Hさんは一向気づかない様子で、くぐの外へ出ると
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そのとき奥のくぐをあけて、副園長の西郷が、やや小柄の、うわばみに一呑みにやられてしまいそうな、青白い若紳士を引張ってきた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
守は問題の窓の所へ歩いて行って、すぐその前の板塀についているくぐをガタガタ云わして見たが、内部からのかけがねに異状はなかった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
卯平うへい屹度きつとガラスたて店臺みせだいから自分じぶん菓子くわしをとつてやる。それでも與吉よきち菓子くわしぢりながらそばへはらうともしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と民助に言われて、子供等は何かなしに嬉しそうに床にいた。女中は客の夜具を運んで来て、離座敷はなれくぐを閉めて行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「どれ、うちはいってから。」と、与助よすけはいって、けておどみますと、あわててうしをピーンとめてしまいました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
霜夜しもよふけたるまくらもとにくとかぜつまひまよりりて障子しようじかみのかさこそとおとするもあはれにさびしき旦那樣だんなさま御留守おんるす
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然し男は「ままよ」の安心で、大戸の中のくぐとおぼしいところを女に従って、ただ只管ひたすら足許あしもとを気にしながら入った。女は一寸また締りをした。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やがてくぐいて下女の外へ出る足音が聞こえた。津田は必要の品物が自分の手に入るまで、何もせずに、ただ机の前に坐って煙草たばこを吹かした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、そのくぐをあけるためには、ぜひとも一度、お君の部屋まで行かねばならないのでありました。お君の部屋にその鍵があるのですから。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兩人りやうにんすそところが、とこよこ一間いつけん三尺さんじやくはりだしの半戸はんとだな、した床張ゆかばり、突當つきあたりがガラスはきだしまどで、そこが裏山うらやまむかつたから、ちやうどそのまど
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
阿濃は、これをのすきまから、のぞいていたが、主人を救わなかったのは、全く抱いて寝ている子供に、けがをさすまいと思ったからである。——
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
左には広きひらあり。右にも同じ戸ありて寝間ねまに通じ、このぶんは緑の天鵞絨びろうど垂布たれぎぬにて覆いあり。窓にそいて左のかたに為事机あり。その手前に肱突ひじつき椅子いすあり。
ふと がつくと、はねのそばに、あげがあります。そのをあけてみると、かいだんがついています。
内玄関もあれば、車寄せの大玄関もある幽邃ゆうすいな庭園が紫折しおの向うに、広々と開けている。車が玄関へ滑り込むと、並んでいた大勢の女中が一斉に小腰こごしかがめる。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼れは夢遊病者のように人の間を押分けて歩いて行った。事務所の角まで来ると何という事なしにいきなりみちの小石を二つ三つつかんで入口の硝子ガラスにたたきつけた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
横手のくぐを押すと、鎖の付いた重い分銅が、ガヮラ/\と音を立てて、戸は一文字に開いた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おれは小用をしに立って、くぐさんをはずして表に出る。暗さは暗し、農家のこととてかわやは外に設けてある。ちょうど雨滴落あまだれおちのところで物につまずいて仰向あおむけに倒れたね。
其次そのつぎつた時に、はらが立ちましたからギーツとおもてを開けて、廊下らうかをバタ/″\駈出かけだして、突然いきなり書斎しよさいひらをガチリバタリとけて先生のそばまできました、先生はおどろいて先
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
くぐがあく。ひょいと見ると、百が、おぼえていた元の師匠の屋敷とはちがっていた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
硝子ガラスそとには秋風あきかぜいて、水底みなそこさかなのやうに、さむ/″\とひかつてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
一知は先ず勝手口のの、一枚の板の釘の頭に、手製の電池に残っている硫酸を注意深く塗附けて出来るだけ自然に近い状態に腐蝕させ、その板を自由自在に取外せるようにした。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そうして横手のくぐから坂の方へパタパタと逃げ出した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「こンれ! にしア、江戸もんけ? は広かべアなあ」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
露凍つゆしみの忍び、それもほとほとと
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ぐらすの緑のあなた
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かど床屋とこやのガラス
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
くぐが開いた。
「今の話は奥でしました。私は別にお送りもしませんでしたが、園長は確かにこのくぐをぬけて此の室へ入られたようです」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼が赴任して行って見たころの神社の内部は、そこのすだれのかげにも、ここのはらにも、仏教経巻などの置かれた跡でないものはなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その店頭みせさきのガラスにも、つきひかりはさしています。また、みなとにとまっているふねはたれている、ほばしらのうえにもつきひかりたっています。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここには長さ七尺、幅三尺五寸の扉が二枚あって、右の方の扉には長さ二尺四寸、幅一尺八寸のくぐがついている。門の表はすべて鉄で張ってある。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼の門はいつもの通りまっていた。彼はくぐへ手をかけた。ところが今夜はその潜り戸もまたかなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがてHさんと千恵は、石段をのぼりきつたすぐ横手にある小さなくぐから、本堂へはいりました。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
とびらのまんなかには、小さなよろいがあって、そのよろいから、へやのなかがみえました。
一寸法師はそこで一寸うしろを振返って、だれもいないのを確めると、ギイとくぐを開けて、門の中に姿を消した。紋三は隠れ場所から出て、大急ぎで門の前まで来た。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ジーナが来ている……私にいたくて、泣いている! テラスを飛び降りて、奥庭の柴折しおを突っ切って、どこをどうして門の砂利道まで躍り出たか覚えがありません。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
立派りつぱもん不思議ふしぎはないが、くゞりあふつたまゝ、とびら夥多おびたゞしくけてる。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
俊秀と五郎は、あきらめきれぬように中へはいって、茅屋根かややねの下のを覗きまわった。——と、思わぬものがそこにひかえていた。一匹のがまだった。逃げもするふうではないのである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露に湿しめりて心細き夢おぼつかなくも馴れし都の空をめぐるに無残や郭公ほととぎすまちもせぬ耳に眠りを切って罅隙すきまに、我はがおの明星光りきらめくうら悲しさ、あるは柳散りきりおちて無常身にしみる野寺の鐘
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(見よ、くるるのしろがねを。)
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
けれどそのときは、内部ないぶはしんとして人影ひとかげがなかった。ちょうどそこへ、五、六にん子供こどもらがやってきて、ガラス内側うちがわをのぞいていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お種は表庭から門のところへ出て、押せばくぐの開くようにして置いた。きびしい表庭の戸締も掛金だけ掛けずに置いたは、可愛い子の為であった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だから机博士は、かえって危険を抜けることができ、うれしさに胸をおどらせながら、下り口のところにはまっているをひきあけることができた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
浪切不動の丘の上に立つ高燈籠の下まで来た盲法師は、金剛杖を高燈籠の腰板へ立てかけて、左の手首にかけた合鍵を深ると、くぐがガラガラとあきました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下女を起してまで責任者を調べる必要を認めなかった津田は、くぐの事をそのままにして寝た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
面倒になったとみえ、の腰を膝で蹴った。小屋の戸はすぐはずれる。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(ああ、くるるるるおと。)
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
よっちゃんもみいちゃんも、なんだろうとおもって、びっくりしました。そのうちに、ガラスが、ガタ、ガタ、り、障子しょうじがはずれかかりました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
もっとも自宅へ医師を呼び寄せたい時はそのむねを伺い出よ、居宅は人見ひとみをおろし大戸をしめくぐから出入りせよ、職業ならびに商法とも相成らない
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)