前日ぜんじつ)” の例文
前日ぜんじつくちあさみぎはるゝ飴色あめいろ小蝦こえびしたを、ちよろ/\とはしつた——真黒まつくろ蠑螈ゐもりふたつながら、こゝにたけぢやうあまんぬる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゆびくつしてると、當日たうじつ吾等われら海岸かいがんいへつてから、丁度ちやうど九日目こゝぬかめで、かね海底戰鬪艇かいていせんとうてい試運轉式しうんてんしきさだめられたる紀元節きげんせつ前日ぜんじつである。
その前日ぜんじつのこと、むすめは、つぎには、いつくるかわからない、このなつかしいまちさまをよくておこうと、こうしてあるいていたのであります。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はゝは年に一二度づつは上京して、子供の家に五六日寐起ねおきする例になつてゐたんだが、其時は帰る前日ぜんじつからねつだして、全くうごけなくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこで勇少年は、前日ぜんじつ黄昏たそがれの日比谷公園でみた惨劇さんげきについて知っていることをすべて語った。青龍王はまがったパイプできざ煙草たばこをうまそうに吸いながらじっとそれに耳を傾けていた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
りよ前日ぜんじつ下役したやくのものにつていて、今朝けさはやきて、天台縣てんだいけん國清寺こくせいじをさして出掛でかけることにした。これは長安ちやうあんにゐたときから、台州たいしういたら早速さつそくかうとめてゐたのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
島本医師しまもといし意見いけんでも、またあとできた市警しけい医師いし意見いけんでもんだのは前日ぜんじつ夕方ゆうがたからかけて九時頃じごろまでのあいだらしい。大輪たいりんはなをつけたぼたんのはちが、金魚鉢きんぎょばちにほどちか庭石にわいしうえにのせてあつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それはたしか去年きよねん春頃はるごろ池谷いけのやしんらううちでのことで、前日ぜんじつ晝頃ひるごろはじめて翌日よくじつ夕方過ゆふがたすぎまで八圈戰けんせんを五くわいぐらゐかへしたやうにおもふが、をはりにはあたま朦朧もうろうとしてからだはぐたぐたになつてしまつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
明日あしたはいよいよ御岳みたけ大講会だいこうえ、その前日ぜんじつにはつきみやの森で、みなさまが落ち合うことになっているおやくそくだったそうですから、それで待ちどおしくッて、さっきからここに立っていたんです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前日ぜんじつ風雪中ふうせつのうち、 故人こじん従此去これよりさる
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三千代は此暑このあつさおかして前日ぜんじつやくんだ。代助は女のこえを聞き付けた時、自分で玄関迄飛びした。三千代はかさをつぼめて、風呂敷づゝみを抱へて、格子のそとつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うみうえおだやかで、やがてひかりたかのぼるとなみは、いっそううつくしくきらめいて、前日ぜんじつまでのものすごさはどこへかえてしまい、帆船ほぶねや、小船こぶねや、汽船きせんうみうえかんで
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……その前日ぜんじつ、おなじやま温泉おんせん背戸せどに、物干棹ものほしざをけた浴衣ゆかたの、日盛ひざかりにひつそりとしてれたのが、しみせみこゑばかり、微風かぜもないのに、すそひるがへして、上下うへしたにスツ/\とあふつたのを
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
菖蒲あやめ杜若かきつばた此處こゝばかりではない、前日ぜんじつ——前々日ぜん/\じつ一見いつけんした、平泉ひらいづみにも、松島まつしまにも、村里むらざと小川をがは家々いへ/\の、背戸せど井戸端ゐどばた野中のなかいけみづあるところには、大方おほかたのゆかりの姿すがたのないのはなかつた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれは又三千代をたづねた。三千代は前日ぜんじつの如くしづかいてゐた。微笑ほゝえみ光輝かゞやきとにちてゐた。春風はるかぜはゆたかに彼女かのをんなまゆを吹いた。代助は三千代がおのれを挙げて自分に信頼してゐる事を知つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのばんは、前日ぜんじつよりもさらにつめたかったのであります。
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
前日ぜんじつみそか、阿波あは徳島とくしまから出京しゆつきやうした、濱野英二はまのえいじさんがけつけた。英語えいご教鞭けうべんる、神田かんだ三崎町みさきちやう第五中學だいごちうがく開校式かいかうしきのぞんだが、小使こづかひ一人ひとりはりひしがれたのとちがひに逃出にげだしたとふのである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あつさはうです。……まだみん/\ぜみきませんね、とふうちに、今年ことし土用どようあけの前日ぜんじつからとほくにこえた。カナ/\は土用どようあけて二日ふつかの——大雨おほあめがあつた——あのまへからした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)