二個ふたつ)” の例文
骸骨コツを渋紙でり固めてワニスで塗り上げたような黒光りする凸額おでこの奥に、硝子玉ガラスだまじみたギラギラする眼球めだま二個ふたつコビリ付いている。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同じ戸棚が左右に二個ふたつ、別に真中まんなかにずっと高いのを挟んで、それには真白まっしろきれかかっていた、と寝乱れた浴衣の、胸越に伺う……と白い。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを研究するのが哲学の蘊奥うんおうだとやら申されますそうでございます、そうして見ると離魂病と申し人間の身体が二個ふたつになって
灰色の毛皮の敷物のはしを車の後に垂れて、横縞よこじま華麗はなやかなる浮波織ふはおり蔽膝ひざかけして、提灯ちようちん徽章しるしはTの花文字を二個ふたつ組合せたるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それを二個ふたつばかり買って帰って参りまして何心なく現任大臣に見せますと、此品これにおいもよし、非常に立派だから私にこれを分けてくれまいか。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
中庭を隔てた対向むこうの三ツ目の室には、まだ次の間で酒を飲んでいるのか、障子に男女なんにょ二個ふたつの影法師が映ッて、聞き取れないほどの話し声も聞える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
お少しでも女主人の危きを見れば余等二人に飛附ん心と見え暗がりにて見張れるまなこあたか二個ふたつの星の如くに光れり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
誰が見ても、一見それとうなずかれる。二個ふたつの死骸のどちらのも、ほとんど半分が食い散らかされている。で、山間の人は直ちに狼か山犬だと判断する。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
へっついの前に坐った婆さんが、六七寸ばかりある木の人形を二個ふたつ前に置いて、それに向って両手の指を胸の処で組み合せてまじないでもするようにしていた。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一個ひとつから二個ふたつ、三個という順序に、矢つぎ早に打つのが得意でそれが敵をして一番恐怖こわがらせるのであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
だから窓の外から見れば、二個ふたつの首級が、噛み合い食い合いしているように見えるのであった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは彼女の指を飾る美くしい二個ふたつの宝石であった。もしそれが彼女の結婚を永久に記念するならば、そのぎらぎらした小さい光ほど、津田と彼女の間を鋭どくさえぎるものはなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして土竈どがまは大きなのを二個ふたつ上に出して符号を附けて置いたらそれも無いのです
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あやまり⁈ これしからん、わたくしにはちやんと二個ふたつがありますぞ。』
男はへやの隅から鉄砲を持ちだすが早いか、銃身をはねかえして薬莢たま二個ふたつ挿しこんで、それから、射撃するために窓を開けようとしたが、ふと、子供が銃声におびえてはいけないと気づいたので
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
かれ不順序ふじゆんじよたいしては、さのみめた樣子やうすはなく、たゞ看護婦かんごふなどの病室びやうしつることをきんじ、機械きかいれる戸棚とだな二個ふたつ備付そなへつけたばかりで、代診だいしんも、會計くわいけいも、洗濯婦せんたくをんなも、もとまゝいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
急いで窓を閉めて座に就くと、小林は旅行鞄の中から二個ふたつの小冊子を出して、その一部を黙って私に渡した。スカレット色の燃えるような表紙に黒い「総同盟罷工ゼネラルストライキ」という文字が鮮やかに読まれた。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
石灰を被た女の屍骸の中で、二個ふたつはこの時の犠牲者だった。
斧を持った夫人の像 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「然し、然し、あれでも子を産んだからな、しかも二個ふたつ!」
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
有らざるなかに同町三丁目に數代すだいつゞく小西長左衞門といふ藥種屋やくしゆやあり間口凡そ二十間あまりにして小賣店こうりみせ問屋店とひやみせ二個ふたつに分ち袖藏そでぐらあり奧藏あり男女夥多あまたの召仕ありて何萬兩といふ身代しんだいなればなにくらからず送りゆく主個あるじ長左衞門は今茲ことし(享保二年)五十の坂を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
往来より突抜けて物置のうしろ園生そのうまで、土間の通庭とおりにわになりおりて、その半ばに飲井戸あり。井戸に推並おしならびて勝手あり、横に二個ふたつかまどを並べつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番新「おやお目が覚めましたね、厭ですよオホヽヽヽヽ、額に碁石が二個ふたつくッついてますよ」
腰を真二つに折りかがめていたが、右手に支えた塗盆ぬりぼんの上にすすけた土瓶と粗末な茶碗二個ふたつとを載せて、左手にはカステラを山盛りにした菓子器を捧げながら、ヨチヨチと大卓子テーブルに近づいて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
兵馬が見ると、月を背にして歩んで来る二個ふたつの人影があります。前のは背の低い網代笠あじろがさをいただいた小坊主と覚しく、後ろのは天蓋てんがいをかぶって、着物は普通の俗体をしている男のようです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兼ねて此部屋には戸棚というものが無いからお秀は其衣類を柳行李二個ふたつに納めてへやの片隅においていたのが今は一個ひとつも見えない、そして身には浴衣の洗曝を着たままで、別に着更えもない様な様である。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かれはこの不順序ふじゅんじょたいしては、さのみめた様子ようすはなく、ただ看護婦かんごふなどの病室びょうしつることをきんじ、機械きかいれる戸棚とだな二個ふたつ備付そなえつけたばかりで、代診だいしんも、会計かいけいも、洗濯婦せんたくおんなも、もとのままにしていた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
土橋の上に、ふと二個ふたつ向合った白いものが見えました。や、女だ! これは。……いくら田舎娘だって、まだ泳ぐには。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重「かこいゆえ味はわるうございましょうが、素性すじいのでございますから、小僧さんお前さんは重うございましょうが、持って往って下さいまし、お前さんにも二個ふたつ上げますから」
それは二個ふたつの丸いくしが、私の頭の上に並んで、息もかれぬ程メチャクチャに駈けまわり初めたからであった……が……その気持ちのよかったこと……自分がキチガイだか、誰がキチガイだか
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右の無名指に二個ふたつめたる宝石入の指環ゆびわみて、あっと口をおおえるとたん、指よりれて鮮血なまちたらたら、舌を切りぬ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うもわたくしはらつて歩かれませぬ、其上そのうへ塩梅あんばいわるうございまして。とふから仕方しかたなしに握飯むすび二個ふたつぜにの百か二百ると当人たうにんは喜んで其場そのば立退たちのくといふ。これ商売しやうばいになつてました。
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
侍女三人、燈籠二個ふたつずつ二人、一つを一人、五個いつつを提げて附添い出で、一人々々、廻廊のひさしけ、そのまま引返す。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ばんちやうにて倒候たふれさふらふせつは、六しやくぼうにて追払おひはらはれ、握飯むすび二個ふたつ番茶ばんちやぱい
行倒の商売 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ああ目覚めざましいと思う目に、ちらりと見たのみ、呉織くれはとり文織あやはとりは、あたかも一枚の白紙しらかみに、朦朧もうろうえがいた二個ふたつのその姿を残して余白を真黄色に塗ったよう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と開けて見ると二朱金で二個ふたつ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
狭いが、群集ぐんじゅおびただしい町筋を、斜めにやっこを連れて帰る——二個ふたつ前後あとさきにすっと並んだ薄色の洋傘こうもりは、大輪の芙蓉ふよう太陽を浴びて、冷たく輝くがごとくに見えた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……華奢きゃしゃな女のてのひらにも入りそうな鶏が二羽、……その白い饅頭が、向い合いもせず、前向に揃うともなしに、横に二個ふたつ、ひったりと翼を並べたように置いてある。
片手を添えて、捧げたのは、錦手にしきでの中皿の、半月なりれたのに、小さな口紅三つばかり、うち紫の壺二個ふたつ。……その欠皿も、白魚しらおの指に、紅猪口べにちょくのごとく蒼く輝く。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またその前途ゆくてに、道の両側にしゃがんで待ったらしいのが、ぽんと二個ふたつ立つと、六個むたりも揃って一列になりました。逆に川下へ飛ぶ、ぴかりぴかりと一つおおおな蛍の灯に、みんな脊が低い。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
綾のとばりにもおおわれず、指貫さしぬきやなど、烏帽子のひもも解かないで、屏風びょうぶの外に、美津は多一の膝にし、多一は美津のせなに額を附けて、五人囃子のひな二個ふたつ、袖を合せたようであった。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目の光る……年配は四十あまりで、稼盛かせぎざかりの屈竟くっきょう山賊面さんぞくづら……腰にぼッ込んだ山刀の無いばかり、あの皿はんだ、へッへッ、生首二個ふたつ受取ろうか、と言いそうな、が、そぐわないのは
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その茶の間の一方に長火鉢を据えて、うしろに竹細工の茶棚を控え、九谷焼、赤絵の茶碗、吸子きゅうすなど、体裁よく置きならべつ。うつむけにしたる二個ふたつ湯呑ゆのみは、夫婦めおと別々の好みにて、対にあらず。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二個ふたつかしら獅子頭ししがしら、高いのと低いのと、あとになり先になり、もつれる、狂う、花すれ、葉ずれ、菜種に、と見るとやがて、足許あしもとからそなたへ続く青麦のはたけの端、玉脇の門の前へ、出て来た連獅子れんじし
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、なくつても、はないでも、わすれもせねば思出おもひだすまでもなく、何時いついてると同樣どうやうに、二個ふたつ二人ふたり姿すがたまた、十ねんなからうが、はなからうが、そんなにあひだへだてたとはかんがへない。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おや。二個ふたつもらッたのか。だから近来ちかごろはどこでも切符を出すのだ。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、見なくっても、逢わないでも、忘れもせねば思出おもいだすまでもなく、何時いつも身に着いていると同様に、二個ふたつ、二人の姿もまた、十年見なかろうが、逢わなかろうが、そんなにあいだを隔てたとは考えない。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの内裏様のだって、別に二個ふたつ蒔絵の蝶足のそうですな!……
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
姥 二個ふたつの川の御支配遊ばす。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)