一種いつしゆ)” の例文
けれども其の埒外らちぐわいゐつすることの出來ないのが運命うんめいなのだから爲方しかたがない、性格悲劇せいかくひげきといふ戯曲ぎきよく一種いつしゆがあるが、僕等が丁度てうど其だ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
だから突然とつぜんこの小舅こじうと自分じぶんあひだ御櫃おはちいて、たがひかほ見合みあはせながら、くちうごかすのが、御米およねつては一種いつしゆ經驗けいけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
有力いうりよくなる軍器ぐんきへば、非常ひじやうなる爆發力ばくはつりよくいうする彈丸だんぐわん種類しゆるいかしら、それとも、一種いつしゆ魔力まりよくいうする大砲たいほう發明はつめいであらうか。
うた表面ひようめん一種いつしゆたとへで、なにべつのことがいつてあるのだらうといふ心持こゝろもちが、おこりませんか。きっとおこるとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかし、世界中せかいじゆうどこにもあるこのまるつかほかに、日本につぽんでは他國たこくることの出來できない一種いつしゆかたつかつくられたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
このくすぐつたさを處女しよぢよだとすると、つら/\おもんみるに、媒灼人なかうどをいれた新枕にひまくらが、一種いつしゆの……などは、だれもかないであらうか、なあ、みゝづく。……
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
土偶どぐう頭部たうぶ或は手足部しゆそくぶ欠損けつそんせる事常なること、恐くは一種いつしゆ妄信もうしんの爲、故意に破壞はくわいせるに由るならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
たゞくちびるがあまり厚過あつすぎるので、其所そこ幾分いくぶんゆるみがえた。そのかはかれには、普通ふつう人間にんげん到底たうているべからざる一種いつしゆ精彩せいさいひらめいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これが伏見天皇ふしみてんのうのおうたです。後鳥羽上皇ごとばじようこうから、もひとすゝんで、さらにその一種いつしゆくせいた素直すなほなおうたになつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
猛虎まうこほふるといふ投鎗なげやりかたち髣髴ほうふつとして、その兩端りようたん一種いつしゆ奇妙きめう鋭角えいかくをなしてる、この鋭角えいかくが、てい速力そくりよくくわんして、きわめて緊要きんえうなる特色とくしよくさうである。
ことあつてのちにして、前兆ぜんてうかたるのは、六日むいか菖蒲あやめだけれども、そこに、あきらめがあり、一種いつしゆのなつかしみがあり、深切しんせつがある。あはれさ、はかなさのじやうふくむ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
第一だいゝち建築けんちくは、古墳こふん石室せきしつなども一種いつしゆ建築けんちくではありますが、人間にんげんなどのるいはどういふふうなものであつたかといふと、まへにもまをしたとほり、屋根やね草葺くさぶき、茅葺かやぶきあるひはまた板葺いたぶ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
今夜こんや御誘おさそまをしますから、これから夕方ゆふがたまでしつかり御坐おすわりなさいまし」と眞面目まじめすゝめたとき、宗助そうすけまた一種いつしゆ責任せきにんかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
最早もはや煩縟くた/″\しくいふにおよばぬ、この不思議ふしぎなる海底戰鬪艇かいていせんとうていは、今日こんにち世界せかい萬國ばんこく海軍社會かいぐんしやくわいおいて、たがひその改良かいりよう進歩しんぽとをきそひつゝある海底潜行艇かいていせんかうてい一種いつしゆである。
が、こゝを中心ちゆうしんとしてると、どうしても良經よしつねうたから、暗示あんじつくつたにちがひありません。そして良經よしつねうた氣分きぶんをすっかりつて、一種いつしゆうたまとめてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
これ大弓場だいきうば爺樣ぢいさんなり。ひとへば顏相がんさうをくづし、一種いつしゆ特有とくいうこゑはつして、「えひゝゝ。」と愛想あいさうわらひをなす、其顏そのかほては泣出なきださぬ嬰兒こどもを——、「あいつあ不思議ふしぎだよ。」とお花主とくい可愛かはいがる。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同時どうじ眼前がんぜんながめて一種いつしゆかんたれるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
代助は其わらひなか一種いつしゆさみしさを認めて、たゞして、三千代のかほじつと見た。三千代は急に団扇うちはを取つてそでしたあほいだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さればこゝむべくおそるべきを(おう)にたとへて、かりに(おう)といへる一種いつしゆ異樣いやう乞食こつじきありて、がう屋敷田畝やしきたんぼ徘徊はいくわいす。驚破すはおうきたれりとさけときは、幼童えうどう婦女子ふぢよし遁隱にげかくれ、孩兒がいじおそれて夜泣よなきとゞむ。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一種いつしゆ蜃氣樓しんきろうごと作用さよう此處こゝうつつたのかもわかりません。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)