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負
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おぶ
ふりがな文庫
“
負
(
おぶ
)” の例文
電車通りの方へ足を向けて、其処の交叉点に出ると、夕刊売りの何時もの女が背中に子供を
負
(
おぶ
)
って鈴も鳴らさずぼんやり立っていた。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
真暗いのに
負
(
おぶ
)
つて裏の方へつれて出て、人の寝入つてる夜中にそこらを負り歩いてすかしながら、お可哀さに私までおろ/\泣いて
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
米友が幸内を
負
(
おぶ
)
って来た帯は、神社の
鰐口
(
わにぐち
)
の綱をお借り申して来たものであります。米友はその綱を探って背負い直そうとした時に
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私がお牧の背中に
負
(
おぶ
)
さつて、暗い夜道を通り、寺の境内まで村芝居を見に行つたことは、彼女の記憶から離せないものの一つです。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
私がどこへ行こうと、あなたたちはいつも私といっしょにいる。私を
負
(
おぶ
)
ってくれたお
母
(
かあ
)
さん、私は今あなたを自分のうちに
担
(
にな
)
っている。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
さあ
負
(
おぶ
)
され、と蟹の甲を押向けると、いや、それには及ばぬ、と云った仁右衛門が、僧の
裾
(
すそ
)
を
啣
(
くわ
)
えた
体
(
てい
)
に、膝で
摺
(
ず
)
って縁側へ
這上
(
はいあが
)
った。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こういって
地蔵行者
(
じぞうぎょうじゃ
)
は、小さい手に取りまかれながら、背なかあわせに
負
(
おぶ
)
っている
地蔵菩薩
(
じぞうぼさつ
)
とそっくりのような人のよい
笑顔
(
えがお
)
をつくった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
背には
乳飲児
(
ちのみご
)
を
負
(
おぶ
)
って、なるたけ
此方
(
こっち
)
の顔を見ないように急いで、通り違ってしまった。きっと、森の中の家に来ているのだろうといった。
凍える女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
逸子は、握り箸の篤を、そのまま斜に背中へ
抛
(
ほう
)
り上げて
負
(
おぶ
)
うと、霰の溝板を下駄で踏み鳴らして東仲通りの酒屋までビールを
誂
(
あつら
)
えに行った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
上框
(
あがりがまち
)
には妻の敏子が、垢着いた木綿物の上に
女児
(
こども
)
を
負
(
おぶ
)
つて、顔にかゝるほつれ毛を気にしながら、ランプの
火屋
(
ほや
)
を
研
(
みが
)
いてゐた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
京は會津東山の人淺井善藏に嫁した。善藏の女おせいさんが
婿
(
むこ
)
平八郎を迎へた。おせいさんは即ち子を
負
(
おぶ
)
つて門に立つてゐたお上さんである。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「えゝ、わしやはあ、どうしてえゝもんだか
分
(
わか
)
んねえから
畑
(
はたけ
)
耕
(
うな
)
つてた
儘
(
まゝ
)
衣物
(
きもの
)
も
着
(
き
)
ねえで
斯
(
か
)
うして
負
(
おぶ
)
つて
來
(
き
)
たんだが」と
百姓
(
ひやくしやう
)
はいつて、それから
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「済まないなあ、僕が、おれいにおごるつもりだったのに」とボーイ長は、藤原に
負
(
おぶ
)
さりながら、真から恐縮して言った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
今日は斗満の上流ニオトマムに
林学士
(
りんがくし
)
の
天幕
(
てんと
)
を
訪
(
と
)
う日である。朝の七時関翁、余等夫妻、草鞋ばきで出掛ける。鶴子は新之助君が
負
(
おぶ
)
ってくれる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
夏になるとその子を
負
(
おぶ
)
って、野川の
縁
(
ふち
)
にある
茱萸
(
ぐみ
)
の実などを摘んで食べていたりした自分の姿も
憶
(
おも
)
い出せるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
うっかりすると
膝
(
ひざ
)
へ
這
(
は
)
いあがろうとするので、おせんは食事が終るとそうそう、
厭
(
いや
)
がるのを
負
(
おぶ
)
ってあと片付けをした。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
新「我慢してお出でよ、私が
負
(
おぶ
)
い
度
(
た
)
いが、包を
脊負
(
しょ
)
ってるから
負
(
おぶ
)
う事が出来ないが、私の肩へ
確
(
しっか
)
り
攫
(
つか
)
まってお出でな」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「見せるったら、見ねえのか。屋根へ上ればよく見えるんだ。おれが
負
(
おぶ
)
ってやるっていうのに、さ、負さりなよ、ぐずぐずして居ないで負さりなよ。」
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それが
漸次
(
しだい
)
に
近
(
ちかづ
)
くと、女の背に
負
(
おぶ
)
はれた
三歳
(
みっつ
)
ばかりの小供が、竹の
柄
(
え
)
を付けた
白張
(
しらはり
)
のぶら
提灯
(
ぢょうちん
)
を持つてゐるのだ。
雨夜の怪談
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
数寄屋
(
すきや
)
橋で
乗
(
の
)
り
易
(
か
)
え様と思つて、
黒
(
くろ
)
い
路
(
みち
)
の
中
(
なか
)
に、待ち
合
(
あ
)
はしてゐると、小供を
負
(
おぶ
)
つた
神
(
かみ
)
さんが、
退儀
(
たいぎ
)
さうに
向
(
むかふ
)
から近
寄
(
よ
)
つて
来
(
き
)
た。電車は
向
(
むか
)
ふ
側
(
がは
)
を二三度
通
(
とほ
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
人をくったような
年増女
(
としまおんな
)
の顔、すました女学生の顔、子供を
負
(
おぶ
)
ったどっかにきかぬ気の見えるお
媽
(
かみ
)
さんのような顔ばかりで、彼の望んでいる顔は見当らなかった。
女の首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
麹町の三丁目で、ぶら
提灯
(
ぢょうちん
)
と大きな
白木綿
(
しろもめん
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
を持ち、ねんねこ
半纏
(
ばんてん
)
で
赤児
(
あかご
)
を
負
(
おぶ
)
った四十ばかりの醜い女房と、ベエスボオルの道具を携えた少年が二人乗った。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二三度
喚
(
よ
)
んで見たが、阿母さんは
桃枝
(
もヽえ
)
を
負
(
おぶ
)
つて大原へ出掛けて居無かつた。貢さんは火鉢の
火種
(
ひだね
)
を
昆炉
(
しちりん
)
に移し
消炭
(
けしずみ
)
を
熾
(
おこ
)
して
番茶
(
ばんちや
)
の
土瓶
(
どびん
)
を
沸
(
わか
)
し、
鮭
(
しやけ
)
を焼いて
冷飯
(
ひやめし
)
を食つた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
それが黒死館の悪霊、テレーズの人形でした……背後から
負
(
おぶ
)
さったような形で死体の下になり、短剣を握った算哲様の右手の上に両掌を重ねていたので……それで、衣服を
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
先奥様
(
せんおくさま
)
がお
亡
(
な
)
くなり遊ばした時、ばあやに
負
(
おぶ
)
されて、
母
(
かあ
)
様母様ッてお泣き遊ばしたのは
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
然
(
しか
)
し兵さんは、
一旦
(
いったん
)
、弟を
負
(
おぶ
)
って村の方へ遊びに出ると、そんな事は
何時
(
いつ
)
も忘れていた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
長い
踏板
(
ふみいた
)
が
船縁
(
ふなべり
)
から岸に渡された。一番先に小さい
弟
(
おとと
)
が元気よくそれを渡つて、深い船の中に飛んで
下
(
お
)
りた。
其処
(
そこ
)
まで送つて来た婿の
機屋
(
はたや
)
が
盲目
(
めくら
)
のお婆さんを
負
(
おぶ
)
つて続いて渡つた。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そこで提灯の明りと子供の声をたよりにのぞいてみると、すぐ足の下に
蜘蛛
(
くも
)
の巣を被って、若い髪の乱れた女がねんねこに子供を
負
(
おぶ
)
って打伏していた。
流石
(
さすが
)
におまき婆も顔色を変えて
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
夜
(
よ
)
に入つてから、ト或る山の下へ来た。山の上は町で、家が家に
負
(
おぶ
)
さつたやうに
累
(
かさ
)
なり合つてゐて、
燈火
(
あかり
)
が星のやうに見える。もう
夜更
(
よふけ
)
だのに、何処でか奏楽の
音
(
ね
)
がして、人通りが絶えない。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
樹なんぞ
揺
(
ゆす
)
ぶると、樹がガタガタ震えるのだ。ふしぎに子供を
負
(
おぶ
)
さすと何時の間にか窒息してしまうのだそうだ。だから
彼
(
あ
)
の女はできるだけ電燈のそばに坐ったり歩いたりなぞしないそうだ。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼女は二十年の生涯を、記憶に残る時代を廓で成長して来た女だった。誰かに険しい山路を
負
(
おぶ
)
ってもらって来たような憶えがあるきりだと彼女は言った。十三、四迄は使い歩きにこきつかわれた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
「どうする。清だけ
負
(
おぶ
)
ってもらわないか」と定雄はまた云った。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
負
(
おぶ
)
さりていや暑からしのぼりける
眼
(
まな
)
ざしたゆく今は
下
(
くだ
)
りに
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「オ爺チャン、階段ハ僕ガ
負
(
おぶ
)
ッテアゲマスヨ」
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
晃 お百合
行
(
ゆ
)
こう。——(そのいそいそ見繕いするを見て)支度が要るか、
跣足
(
はだし
)
で来い。
茨
(
いばら
)
の路は
負
(
おぶ
)
って通る。(と手を引く。)
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
父
(
とう
)
さんの
幼少
(
ちひさ
)
な
時分
(
じぶん
)
にはお
家
(
うち
)
にお
雛
(
ひな
)
といふ
女
(
をんな
)
が
奉公
(
ほうこう
)
して
居
(
ゐ
)
まして、
半分
(
はんぶん
)
乳母
(
うば
)
のやうに
父
(
とう
)
さんを
負
(
おぶ
)
つたり
抱
(
だ
)
いたりして
呉
(
く
)
れたことを
覺
(
おぼ
)
えて
居
(
ゐ
)
ます。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
小父
(
おじ
)
さんが、ああして、
薬
(
くすり
)
の
箱
(
はこ
)
を
負
(
おぶ
)
って、
諸国
(
しょこく
)
を
歩
(
ある
)
いていた
時分
(
じぶん
)
に、もっと
南
(
みなみ
)
の
船着
(
ふなつ
)
き
場
(
ば
)
で、
外国
(
がいこく
)
から
渡
(
わた
)
ってきた、
草
(
くさ
)
の
種子
(
たね
)
を
手
(
て
)
にいれました。
二番めの娘
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
口惜しかったから、背中の上で飛びはねてやった。するとすぐに縁側に下された。今度は私が
負
(
おん
)
ぶしてみようと云って、叔母さんが
負
(
おぶ
)
ってくれた。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その危うい野火の中から、十八公麿を救って、ここまで
負
(
おぶ
)
ってきてくれた男が、以前、成田兵衛の郎党だった庄司七郎であったと話すと、範綱は
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社殿の縁には、ねんねこ
絆纏
(
ばんてん
)
の中へ赤ん坊を
負
(
おぶ
)
って、
手拭
(
てぬぐい
)
の鉢巻をした小娘が腰を掛けて、寒そうに体を
竦
(
すく
)
めている。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
細君は顔の丸い、目元や口元の愛くるしい子供を、手かけで
負
(
おぶ
)
いなどしていた。お増は急いで、その前を通り過ぎた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
黒い空に消えたり
点
(
とも
)
つたりした記憶なぞを、かうした留守居の心に懐しいもののやうに思ひ浮べながら、坊ちやんを
負
(
おぶ
)
つてゐる片手で門口の戸を閉めた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
私共が粕谷へ引越しの前日、東京からバケツと
草箒
(
くさぼうき
)
持参で掃除に来た時、村の
四辻
(
よつつじ
)
で女の子を
負
(
おぶ
)
った色の黒い
矮
(
ちいさ
)
い六十爺さんに道を教えてもらいました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
女「どうせ
熊谷
(
くまがい
)
へ泊るつもりで、松坂屋というのが宜しゅうございますから、そこへ泊りましょう、貴方はお
草臥
(
くたびれ
)
でしょうから、私が
負
(
おぶ
)
って上げましょう」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
数寄屋橋
(
すきやばし
)
で乗り
易
(
か
)
え様と思って、黒い
路
(
みち
)
の中に、待ち合わしていると、小供を
負
(
おぶ
)
った神さんが、退儀そうに向うから近寄って来た。電車は向う側を二三度通った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「それでも親方さん、危ない、どうしましょうねえ、力持のおせいさん、お前は力持だからわたしを
負
(
おぶ
)
って逃げて下さいな、わたしはお前さんの蔭に隠れているわ」
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
波田は、ボーイ長を背中に
負
(
おぶ
)
った。水夫たちは、ボーイ長を彼の背中に、そうっと乗せるようにした。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
お金が真直に
負
(
おぶ
)
われていたら、おふくろと一緒に射徹されてしまったかも知れなかったのですが、子供のことですから半分眠っていて、首を少しく一方へかしげていた為に
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「いざとなったらお祖父さんはうちが
負
(
おぶ
)
ってゆかあね、それは心配はいらないからね」
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
車夫
(
くるまや
)
に鶴子を
負
(
おぶ
)
つてもらひ、余等は滑る足元に氣をつけ/\鐵道線路を踏切つて、山田の
畔
(
くろ
)
を關跡の方へと上る。道も
狹
(
せ
)
に散るの歌に
因
(
ちな
)
むで、芳野櫻を澤山植ゑてある。若木ばかりだ。
熊の足跡
(旧字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
“負”の意味
《名詞》
(フ)実数で零(無)より小さい数。
(フ)悪い状態。否定的な状態。厭わしい状態。
(出典:Wiktionary)
負
常用漢字
小3
部首:⾙
9画
“負”を含む語句
背負
脊負
負傷
勝負
負惜
手負
負債
負傷者
請負
気負
引背負
背負梯子
贔負
負目
背負上
背負籠
背負子
御負
背負投
負嫌
...