“眼:まなこ” の例文
“眼:まなこ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花61
吉川英治39
野村胡堂16
牧野信一14
夏目漱石12
“眼:まなこ”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 詩25.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語7.9%
文学 > 日本文学 > 戯曲5.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
目から、そうして乳房を通って、道弥のふたつのまなこは怪しくおののき輝き乍ら、乳房の下のほのかなふくらみにそそがれた。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
こゝにはまなこゆるやかにして重く、姿に大いなる權威をあらはし、云ふことまれに聲うるはしき民ありき 一一二—一一四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
三十余りの人々長方形の卓を囲みて居並びしがみなまなこを二郎の方にのみ注げば、わが入り来たれるに心づきしは少なかりき。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ロミオ 信仰しんかうかたこのまなこに、かりにも其樣そのやう不信心ふしんじんおこるならば
——見ると、彼等は五百羅漢のやうにたゝずむだまゝいつまでも洞ろに光つたまなこをあちこちの空に挙げてゐるのみであつた。
酒盗人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
これをもって教育の本旨とするは当らざるに似たれども、人生発達の点にまなこちゃくすれば、この疑を解くに足るべし。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
北の海辺の荒れたる丘で、血薔薇の花をお前にくれた、一人の男はこの俺だ、俺のまなこを見ろ! 魔法の光に輝いている——。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また或日の夕方には、大声に泣きながら歩く女の列を先駆にした葬式の行列に出遇って、その奇異なる風俗にまなこを見張った。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
色は黒くまなこはきらきらとして、肩には麻かと思わるる古き浅葱色あさぎいろ風呂敷ふろしきにて小さき包を負いたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ところが今、彼のねぼけまなこは、その部屋がこの世ならぬ浄化と光燿こうようのうちに、すぐ前に横たわっているのを見た。
満枝は彼の枕をとらへてふるひしが、貫一の寂然せきぜんとしてまなこを閉ぢたるにますますいらだちて、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
半滴はんてきのひろがりに、一瞬の短かきをぬすんで、疾風のすは、春にいて春を制する深きまなこである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こゝに於て予は猛然と心覚めて、寝返りしつゝまなこみひらき、不図ふと一見いつけんしてあをくなりぬ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふとまなこつたのは、いまこのふね責任せきにん双肩さうけんになへる船長せんちやう
それにも関わらず掘出し物根性の者が多く、蚤取のみとまなこ熊鷹目くまたかめで、内心大掘出しをしたがっている。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼はふくろふの如き鋭きまなこを放つて会衆を一睨いちげいせり、満場の視線は期せずして彼の赤黒き面上に集まりぬ、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ああ、わが川上機関大尉も遂に悲壮な最期をとげられたか、——車は、観念のまなこをとじた杉田をのせていよいよ現場についた。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まなこするどはなうへしわ惡相あくさうきざそろへる水々みづ/\しきが
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お銀様はこの時、下唇をうんと喰い締めました。そうして見る見るうちにその面が土色になって、まなこが釣り上るのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
阿諛おもねりまなこをチェーザレの家より放ちしことなく、おしなべての死、宮の罪惡なる遊女あそびめは 六四—六六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
マーキュ ためまなこぢゃ、るがえいわ。ひと如何どうおもはうと介意かまふものかえ。
獅子鼻で、ドングリまなこで、醜男そのものだけれども、私はしかし、どういうせいか、それが初めから気にかからなかった。
青鬼の褌を洗う女 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
中に一人、女教師の下宿してる家の栄さんといふのが、大きいまなこをパチ/\とさせて、一種の暗号祝電を自分に送つて呉れた。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
若き乞食はその鈍き目を顔とともにあげて、石なんどを見るように源叔父がまなこを見たり。二人はしばし目と目見あわして立ちぬ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
たべおわりなば火にあたれといいて、うまかりしかと問う紀州は眠気なるまなこにて翁が顔を見てかすかにうなずきしのみ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つくづくと見入るまなこを放つと共に、老女は皺手しわでに顔をおほひて潜々さめざめ泣出なきいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
見ると片手にはランプをげ、片手にはステッキを持って、寝ぼけまなこよりは身分相応の炯々けいけいたる光を放っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近所近辺の人々は寝ぼけまなこをこすりながら、われ先にと羅生門横町へ駈けつけると、彼等をおどろかす種がまた殖えた。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ビールだるのやうなはらてゝ、物凄ものすごまなこ水夫すゐふどもにらけると
人生に目的ありと見、なしと見る、共に理智の作用のみ。理智のまなこ抉出けっしゅつして目的を見ざる処に、至味しみ存す。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
川地のまなこはキラリ輝けり「ぢや、吾妻、今日こんにちまで報告した彼奴きやつの秘密は、虚事うそだと云ふのか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かれは炫いといって小間使に謝したけれども、今瞳を据えた、パナマの夏帽の陰なる一双のまなこは、極めて冷静なものである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その手のいたくふるえるさまわが目にも知れければ、かの君顧みたまいて始めて怪しと思う色をまなこの中に示したまえり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
にわかおもて替りまなこは皿のごとくにて額につのつき、顔は朱のごとく、かしらの髪は針のごとく、口
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも、あゝ! あまりに無感覚な、男性的の興奮を知らぬ、燐のやうに冷い、薄暮の空のやうに深いまなこを有つた敵ではないか!
美しき敵 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
色の黒いところに疱瘡ほうそうあとがあって、かなつぼまなこ鼻大はなでかという不縹緻者ぶきりょうものであった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孤堂先生のくぼんだまなこは一度に鋭どくなった。やがて鋭どいものが一面に広がって顔中苦々にがにがしくなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
閉ずるまなこのなかから見る世の中だからしかとは解らぬが、色の白い、髪の濃い、襟足えりあしの長い女である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
シーワルドばかりは額の奥にめ込まれたる如き双のまなこを放って高く天主を見詰めたるまま一こともいわぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「身長を?」真斎はさすがに驚いてまなこみはったが、ここで三人は、かつて覚えたことのない亢奮にせり上げられてしまった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
寝間着ねまきの若い衆、寝ぼけまなこのおかみさん、おどろいた犬、猫まで飛び出して、長屋はにわかに非常時風景だ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
眞「いや此の間わしが一両貸しゃさませと云うたら何に入るてえ怖ろしいまなこしてねらんだよ、貸しはせんぞ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
顔の色はあおざめて、乱髮みだれがみ振りかかれるなかに輝きたるまなこの光のすさまじさ、みまもり得べきにあらず。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心持がうございますぜ、とさかを立ってずっとして、まなこをくるりと遣りますとね、私とでも取組とっくみそうでさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつか四谷よつやだうとびらをのぞいて、眞暗まつくらなか閻王えんわうまなこかゞやくとともに
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と黒装束の槍さきが、ズバリと駕の中へ入った刹那に、千段を掴んだ作左衛門が、まなこをいからせてそこへ突ッ立った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうす暗いなかに更にうす暗い二つの影が、まぼろしのように浮き出しているのを見つけた時に、紋作は急に寝ぼけまなこをこすった。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、何分にも大きな声を出すことを許されぬ場合のこととて、たがいに敵視しながらも一言も云わず、必死とまなこを光らし合った。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見れば耳長く毛は真白ましろに、まなこくれないに光ありて、一目みるから尋常よのつねの兎とも覚えぬに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ベアトリーチェかく、また我は、そのすゝめに心すべて傾きゐたれば、再び身を弱きまなこいくさゆだねき 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
巡査の護衛せるを見て、乗客はきもをつぶしたらんが如く、まなこつぶらにして、ことに女の身のしょうる。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
坊主ばうずは、時々とき/″\まなこひらいて、聞澄きゝすま美女たをやめ横顔よこがほうかゞる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私は、時々カーテンの合せ目を細く開いて感慨深気なまなこを傾げて、ひとり悦に入つてゐるかのやうな有様であつた。
R漁場と都の酒場で (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
正則はかう言つてけもののやうなまなこをして家康の顔を見た。家康はその折もいつものやうにわざとらしくにこにこしてゐる。
ややありて戸を開き差出さしいだしたる得三の顔は、まなこ据って唇わななき、四辺あたりきっと見廻して、
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武蔵は黙って、三名のこわばっている体つきにまなこを遊ばせていた。「笑而不答わらってこたえず」で済ましているのであった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と叫んで、天満てんまの万吉、土橋の欄干を飛び離れたが、その一方には、まなこらんとかがやかして身を屈している者がある。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「果しまなこになるから、お前といふ人間は厄介だよ。兎も角も、疑へるのは疑ひ、調べるところは調べて見なきやア」
とお染。おぼんのやうな顏を緊張さして、果しまなこで詰め寄るのを見ると、義理にも幽靈がないなどとは言はれさうもありません。
とお染、お盆のような顔を緊張させて、はたまなこで詰め寄るのを見ると、義理にも幽霊がないなどとは言われそうもありません。
その伊丹城は、完全に孤立化したが、まだ陥落はしていない。しかし信長のまなこにはもう陥ちているも同様であった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度ひとたび合理のまなこを以てその外皮がいひ看破かんぱせば武断政治の精神はごうも百年以前とことなることなし。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と声ふるえて、後ろの巡査に聞こえやせんと、心を置きて振り返れる、まなこに映ずるその人は、……夜目にもいかで見紛みまがうべき。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うるしなかまなこかゞやく、顏面がんめんすべひげなるが、兩腿りやうもゝしたむくぢやら
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おの夙昔しゆくせきの不平は転じて限りなき満足となり、此満足したるまなこて蛙飛ぶ古池をながむる身となりしこそ
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
優しい暖かさが、身にみて、心から、草臥くたびれた肌を包むやうな、掻巻かいまきなさけなかまなこを閉ぢた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大暖簾おおのれんのあいだから首を入れ、家の中をキョロキョロのぞいている二つのまなこに驚いたのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと彼のまなこに床に掛けたかの露月が筆になったおのが絵姿に注がれたのであるが、その瞬間、呉羽之介は思わずアッと驚きの声を揚げて
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
従って、自分と平岡の隔離は、今の自分のまなこに訴えてみて、尋常一般の経路を、ある点まで進行した結果に過ぎないと見傚みなした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして左ので傷口を押さえ、鬼丸包光を右の片手使いに持って、まなこ爛々らんらん、ジリ、ジリ、と片足さがりになって行く。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まのあたりに見奉れる者、更にまなこあてず、遥に伝聞つたへきく人は、肝魂きもたましひを失へり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
こっちでいくら思っても、向うが内心ほかの人に愛のまなこそそいでいるならば、私はそんな女といっしょになるのは厭なのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いかんとなれば背後はすでにいったんわがまなこに検察して、異状なしと認めてこれを放免したるものなればなり。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
従つて、自分と平岡の隔離は、いまの自分のまなこに訴へて見て、尋常一般の径路を、ある点迄進行した結果にすぎないと見傚した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
寝ぼけまなこをこすっているおやじには別にくわしい話もしないで、かれはお鉄をうながして橋番小屋を出た。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
病者は自ら胸をいだきて、まなこねむること良久ひさしかりし、一際ひときわ声のからびつつ、
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
床にありていずこともなく凝視みつめしまなこよりは冷ややかなるなみだ、両のほおをつたいて落ちぬ。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と東助がさし出す気付を口に入れて、吸筒すいとうの水を呑ませると、今迄息も絶え絶えに唸いていた博士は、ようようにまなこを開けた。
月世界競争探検 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
もう長い間の旅である——と、またもふと彼女は思う、四十年の過去をふり返って見ると茫としてまなこがかすむ。
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
何といふすばらしい日だ! 広大な公園は、愛神アムールの支配の下にある若者のやうに、太陽のぎら/\したまなこの下に悶絶してゐる。
三輪の萬七は、苦々しくそれを迎へましたが、後に續く平次の顏を見ると、默つて三角まなこを光らせて居ります。
「果しまなこになると、お前でも少しは怖いよ。次第によつては、達引たてひいてやらないものでもないが、一體いくらぐらゐ欲しいんだ」
小幡民部こばたみんぶがののしると、呂宋兵衛るそんべえはかッとまなこをいからせて、わざとせせら笑った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ねぼけまなこではねおきた竹童ちくどうは、むちゃくちゃに腹が立ったと見えて、いつにないおこりようだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたがた、かれのまなこは、越後の北端から、上杉家の充実している内容にも、おろそかな見方はしていなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時にかの黒衣長身の人物は、ハタと煙管きせるを取落しつ、其方そなたを見向ける頭巾のうちに一双のまなこ爛々らんらんたりき。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さう云へば、耳のやうに兩方へつき出た羽毛と云ひ、琥珀のやうな色をした、大きな圓いまなこと云ひ、見た所も何となく猫に似て居りました。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まなこいたずらにくうを眺めて動かざるはむつかしき問題ありてを解かんめ苦めるにや
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
一双虎いっそうとらのごときまなこの光、なかだか爛々らんらんたる、一体の般若はんにゃかずきの外へ躍出おどりいでて
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たとえばおのが目はいたるに、少年のまなこは秋の水のごとく、清く澄んで星のごとく輝くのである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等はいづれもまなこ窪みて光なく、顏あをざめ、そのかは骨の形をあらはすほどに痩せゐたり 二二—二四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一人になると専斎はまたゾクゾク恐ろしくなったが、度胸を定めて四辺あたりの様子を盗みまなこで見廻した。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中には髯だらけの顔の中に光ってる双のまなこに涙をたたえ、夫れが葉末の露と髯に伝わる、という光景もある。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
ふと行燈に蟷螂かまきりでも留ったとする……まなこをぎょろりと、頬被ほおかぶりで、血染のおのを。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一度ひとたび合理のまなこもってその外皮がいひ看破かんぱせば武断政治の精神はごうも百年以前とことなることなし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われ、世に在りて何かさむ、一帶の砂上に立ちて、まなこ常に、あのうちかさなれる晶光七天しやうくわうしちてんを眺むるのみ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
どつと尻火を切つた中に、觀念くわんねんまなこを閉ぢたお六の姿、八五郎はさすがにその手を取つて引つかつぐ氣力もありませんでした。
葡萄ぶどうみたいな丸こいまなこをして、髪の毛など、いくら叱られても叱られても鳥の巣みたいにしている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人情の向背こうはいも、世故せこの転変も、つぶさに味って来た彼のまなこから見れば、彼等の変心の多くは、自然すぎるほど自然であった。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その前に、やはりコンクリートの塊に腰を下ろしている四名の人物も、この前とはちがって、別人のように、顔色もわるく、まなこばかり大きい。
第五氷河期 (新字新仮名) / 海野十三(著)