目立めだ)” の例文
母親ははおやなげいたのも、無理むりはありませんでした。この三びきの子供こどもが、川中かわなかでいちばん目立めだってうつくしくえたからであります。
赤い魚と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
安井やすゐくろかみあぶらつて、目立めだほど奇麗きれいあたまけてゐた。さうしていま床屋とこやつてところだと言譯いひわけらしいことつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
與力よりきなかでも、盜賊方たうぞくがた地方ぢかたとは、實入みいりがおほいといふことを、公然こうぜん祕密ひみつにしてゐるだけあつて、よそほひでもまた一際ひときは目立めだつて美々びゝしかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そして何處でもようござんす、目立めだたない片端かたはしに席をおとんなさい。ゐたくなければ、殿方とのがたが這入つていらしてから、長くゐる必要はありません。
母親はゝおやは五十ばかり、黒地くろぢのコートに目立めだたない襟卷えりまきして、質素じみ服姿みなりだけれど、ゆつたりとしてしか氣輕きがるさうな風采とりなり
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうちでもつめほうは、三日みっかなけりゃ目立めだってびる代物しろものだ。——ゆびかずで三百ぽん糠袋ぬかぶくろれてざっと半分はんぶんよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其處そこで「アウト」「ストライキ」のこゑ夕暮ゆふぐれそらひゞいて、審判者アンパイヤー上衣うはぎ一人ひとりくろいのも目立めだつてえる。
かういふ場所ばしよでは、しろ貝殼かひがら一番いちばんよく目立めだつので、われ/\はこれを貝塚かひづかんでをるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それはホンの三じゃくほうくらいちいさいやしろなのですが、見渡みわたかぎりただみどり一色ひといろしかないなかに、そのお宮丈みやだけがくッきりとあかえているのでたいへんに目立めだつのでございます。
このたいには偃松はひまつのかはりに、いはやなぎ、しゃくなげ、なゝかまど、やまはんのき、べにばないちごなど生育せいいくし、とくにしゃくなげはつや/\したあつこはえだうつくしいはな目立めだつので
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
冬の晩いちばん光つて目立めだつやつです
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そのなかにもいちばん目立めだってうつくしいのは玉虫たまむしのおばさんでありました。紫色むらさきいろ羽織はおりをきたおばさんは、ふねろうとして
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
就中なかんづくばん目立めだつのは肉体にくたいほか霊魂たましい——つまりあなたがたっしゃる幽体ゆうたいえますことで……。
同情のあらはし方が目立めだたないからと言つて、慰めやはげましにならぬといふことはないのです。
宗助そうすけ叔母をば仕打しうちに、これ目立めだつた阿漕あこぎところえないので、こゝろうちではすくなからずこまつたが、小六ころく將來しやうらいいて一口ひとくち掛合かけあひもせずにかへるのは如何いかにも馬鹿々々ばか/\しいがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
んでもねえ。駕籠かごひとかつぐひとさきァおきゃくのままだが、かついでるうちァ、こっちのままでげすぜ。——それたけ、なるたけ往来おうらい人達ひとたち目立めだつように、こしをひねってあるきねえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
海賊船かいぞくせん此時このとき砲戰ほうせんもどかしとやおもひけん、なかにも目立めだ三隻さんせき四隻しせき一度いちど船首せんしゆそろへて、疾風しつぷう迅雷じんらい突喚とつくわんきたる、劍戟けんげきひかりきらめその甲板かんぱんには、衝突しやうとつとも本艦ほんかん乘移のりうつらんず海賊かいぞくども身構みがまへ
いま鍛冶屋かぢやのきならべて、なかに、やなぎとともに目立めだつのは旅館りよくわんであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もとよりなにひとつめぼしいものがなかったうちに、バイオリンが目立めだちましたのですから、この松蔵まつぞうにとってはなによりも大事だいじ楽器がっきうばられてしまいました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで、本当ほんとうふかふか統一状態とういつじょうたいはいったとなりますと、わたくしどもの姿すがたはただひとつのたまになります。ここが現世げんせ修行しゅぎょう幽界ゆうかい修行しゅぎょうとの一ばん目立めだった相違点そういてんかもれませぬ。
けれどもなかにはべつこれつて目立めだほど立派りつぱなものも這入はいつてゐない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのはずで、あかいえりきが、たくさん汽車きしゃからりたひとたちのあいだでも、目立めだったからでした。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
せて二足許ふたあしばかり三四郎に近付いた時、突然くびを少しうしろに引いて、まともに男を見た。二重瞼ふたへまぶちきれ長の落付いた恰好である。目立めだつて黒い眉毛まゆげしたきてゐる。同時に奇麗な歯があらはれた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ははねこは、こうねこにさとしたのでした。たかいえにはさまれて、目立めだたない平家ひらやは、比較的ひかくてきかぜもあたらなければ、すと、ブリキ屋根やねから陽炎かげろうちそうなもありました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
一つのおもしろい時計どけい目立めだっていました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)