無邪気むじゃき)” の例文
旧字:無邪氣
二人の刑事の顔、壮平爺さんの嬉しそうな顔、そしておさ馴染なじみの清子の無邪気むじゃきな顔、——それが見る見るあでやかな本牧の女の顔に変る。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二郎じろうちゃんのおかあさんは、そのときの無邪気むじゃきなみいちゃんのようすをおもして、ひとりほほえみながら、あるいていられました。
小さな妹をつれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは言葉少なに応答しながら、細かな点はどしどしはぶいて、全体として大いに無邪気むじゃきな感じをあたえるようにつとめた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
無邪気むじゃきな農民から、糟谷さん糟谷さんともてはやされるのが、単調子たんちょうしひとよしの糟谷にはうれしかったからである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
どうせ見透みすかされつくすのですから、なまじい夫に対する心のつくりかざりをせず、正直に無邪気むじゃきにともにくらすべし。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
自分のいいだした言葉、しようとしていることを、まったく知らない無邪気むじゃきさかとみえるほど平気なものだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
が、わたくしとしては天狗てんぐさんの力量りきりょうおどろくよりも、しろそのくまで天真爛漫てんしんらんまん無邪気むじゃきさに感服かんぷくしてしまいました。
私は、女が、淡い、無邪気むじゃきな恋をしたこともあったかと思ったが、私は、それをねたましいとは想えなかった。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
只今ただいまのようなわけで、至って無邪気むじゃきなので、決して悪気があって笑ったりしたのではないようでございますから、どうかおゆるしをねがいとう存じます。」
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
Kはむしろ平気でした。お嬢さんの態度になると、知ってわざとやるのか、知らないで無邪気むじゃきにやるのか、そこの区別がちょっと判然はんぜんしない点がありました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんとなく袖子そでこにむかってすねているような無邪気むじゃきさは、一層いっそうその子供こどもらしい様子ようすあいらしくせた。こんないじらしさは、あの生命せいめいのない人形にんぎょうにはなかったものだ。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
虎は案外造作ぞうさなく熊の皮がめくれて行くので、無邪気むじゃきに面白がって、グングンあとじさりをつづけた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ぼくには、大きな体の丹智さんが、呆気あっけにとられ、すわりもならず、立っているのが、その時には、ほんとうにお気の毒でした。いつもなら、無邪気むじゃきに笑えたでしょう。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
あるとき、清造は、りそこなったうちわの裏に、あしのれた沼のおもてに、大きなあわのかんだ絵をかいてみました。それはまったく、子どものかいた無邪気むじゃきな絵でした。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
しかしてヒヤシンスのように青いこの子の目で見やられると、母の美しい顔は、子どもと同じな心置きのない無邪気むじゃきさに返って、まるで太陽の下に置かれた幼児ようじのように見えました。
そこで、大きい人やつよい人には大変たいへん災難さいなんが降りかかってるということを、無邪気むじゃきな頭の中でいろいろとかんがえてみます。ゲートルをはかされた四人のほうは、しおしおとひっかえします。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
『家のパパとママとは、だれにも解らない不思議な言葉で、だれにも解らない神秘なことを話している』と子供が無邪気むじゃきに言った言葉は、実際にもっと神秘な意味をもっていたのである。
六蔵のほうは子供だけに無邪気むじゃきなところがありますから、私は一倍哀れに感じ、人の力でできることならば、どうにかして少しでもその知能の働きを増してやりたいと思うようになりました。
春の鳥 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と唄い出したが、この声は前のように無邪気むじゃきに美しいのでは無かった。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蜥蜴のカタミは何も無い。日は相変らず昭々しょうしょうと照らして居る。地球は平気ではしって居る。木の葉一つソヨがぬ。トラは蜥蜴を食ってしまって、世にも無邪気むじゃきな顔をして、眼を閉じて眠って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
無邪気むじゃきなコロボックンクルはとうとう怒ってしまったのです。
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
兄は無邪気むじゃきなる妹の心中さこそあるべしとうなず
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼女は無邪気むじゃきに云うのであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うつくしい、無邪気むじゃきなものでも、冷酷れいこく運命うんめいにもてあそばれることがたびたびあります。それはどうすることもできなかったのでありました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまさら子供の可愛さ、無邪気むじゃきさというものをひしひしと感じ、平和な生活へのあこがれを、日一日と強くするのであった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日きょうそちみぎ妖精達ようせいたちわせてやるから、るべく無邪気むじゃき気持きもちで、彼等かれらってもらいたい。
けれどもいかにも無邪気むじゃきな子供らしい声が、呼んだり答えたり、勝手にひとりさけんだり、わあと笑ったり、その間には太い底力のある大人の声もまじって聞えて来たのです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
声は笛みたいだけれど、そんなに邪慳じゃけんな性質とも見えぬ。むしろ子供らしい無邪気むじゃきなわがまま者らしく思われる。蘭子は、この様子なら当分ご奉公がつづけられそうに思った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あの光子みつこさんなぞがくろいふさふさしたかみって、さも無邪気むじゃきに、いえのまわりを𢌞まわっているのをると、袖子そでこは自分でも、もう一度いちどなにらずにねむってみたいとおもった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
無邪気むじゃきだったとも、言えますが、ぼくにしてみれば、彼が、あなた達、女子選手をいかにも、中性の化物らしく批評ひひょうし、「熊本や、内田の奴等やつらがなア」 と二言目には、あなた達が
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小供の時から、こんなに教育されるから、いやにひねっこびた、植木鉢うえきばちかえでみたような小人しょうじんが出来るんだ。無邪気むじゃきならいっしょに笑ってもいいが、こりゃなんだ。小供のくせおつに毒気を持ってる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
子供こどもは、やっと二つになったばかりの無邪気むじゃきな、かわいらしいさかりでありましたので、二人ふたりは、子供こどもかおると、なにもかもわすれてしまって
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
肩のところにかわいい羽根をかくしている天国の天使じゃないかとあやしまれるほどの純良じゅんりょう無邪気むじゃきな子供だったから、僕は知らないことを知らないとしてたずねるのに
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくし足元あしもときたり、その無邪気むじゃきな、ほがらかなかおみをたたえて、したからわたくし見上みあげるのでした。
「あの横にあるのは何」と糸子が無邪気むじゃきに聞く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふとだなあ。」といって、無邪気むじゃき子供こどもたちは、ちいさな両手りょうてひらいて、ふとみききついて、見上みあげるものもあれば
学校の桜の木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、このなかは、うつくしい、無邪気むじゃきなものが、つねに、かみあいされてわりなしにいるとばかりはまいりません。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうに、わたしはもう一子供こどもかえれるでしょうか? わたしなか苦労くろうをしました。わたしあたまからは、無邪気むじゃきということがなくなってしまいました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
チョコレートをべたために、がなくなってしまったしろくまのはなし新聞しんぶんると、いままでよりいっそうこの無邪気むじゃきなくまの人気にんきつのったのであります。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
ともだちは、無邪気むじゃきに、こういいましたが、彼女かのじょは、自由じゆうでない、自分じぶんからだかんがえずにいられませんでした。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
獲物えものつかりませんでしたか。」と、ききました。猟師りょうしは、つけたが、母子おやこぐまが、平和へいわ無邪気むじゃきに、あそんでいるので、かわいそうでてなかったとこたえました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とおわせるものは、だれでも、この無邪気むじゃき一人ひとり一人ひとりかおをのぞきむようにして、ほほえまぬものはなかったのでした。やがて、ゴー=ストップのところへました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あかぼうは、それをどんなによろこんでいたでしょう。母親ははおやが、いまどんなにつかれているか、また空腹くうふくなやんでいるか、そんなこともらずに、無邪気むじゃきにつるをってわらっていました。
千羽鶴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのことが、あたまにあるとみえて、いまおおきないぬいかけられたゆめてしくしくといていました。無邪気むじゃきなほおのうえなみだながれて、うすぐら燈火ともしびひかりが、それをらしています。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無邪気むじゃきな、なかのいろいろなことはなにもらない、ただ、なにもかもがうつくしく、そして、みんなわらっているようにしかえない子供こども心持こころもちを、ほんとうにあわれにかんじていました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、わらがおをして、子供こどもたちが無邪気むじゃきあそんでいるのをながめていましたが、やがて、あちらへあるいてゆきました。むらはなれると、まつ並木なみきのつづく街道かいどうたのであります。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
よく、自分じぶんは、せがれのいて、夕暮ゆうぐがたまちからかえったものだ。あの時分じぶんのせがれは、どんなに無邪気むじゃきで、かわいらしかったか。あのせがれがいまでは、りっぱな人間にんげんになったのだ。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つつましやかなる自然しぜんは、正吉しょうきちにふたたび、子供こども時分じぶんのまじりない無邪気むじゃきさと、勇気ゆうきびもどしたのでした。それは、ただしくきようとねが人間にんげんのもつ、りっぱな精神せいしんでありました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねえさんには、その無邪気むじゃきなのが、なんとなくいじらしかったのです。
小さな弟、良ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうそは、無邪気むじゃきなものであっても、それをほんとうにしたひとは、あとでうそということがわかると、ばかにされたとおもった。そして、だんだんみんなは、この少年しょうねん信用しんようしなくなったのでした。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)