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しばら
ふりがな文庫
“
暫
(
しばら
)” の例文
(坊ちゃんが二、三人あったように記憶していたので)
暫
(
しばら
)
くして、私たちの国語の教師には早大出の大井三郎と云うひとがきまった。
私の先生
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その栄町と大津町との交叉点に立つて、
暫
(
しばら
)
くの間、眼を四方に配るならば、モダーン名古屋の特徴がしみ/″\感ぜられるであらう。
名古屋スケッチ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
暫
(
しばら
)
くすると、彼の手がおじおじと、今抛り出したばかりの写真の方へ伸びて行った。
併
(
しか
)
し広げて
一寸
(
ちょっと
)
見ると、又ポイと抛り出すのだ。
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
走行中に不意に背後から、今何
粁
(
キロ
)
か、と
訊
(
たず
)
ねても容易に答えられない。
暫
(
しばら
)
くは線路の砂利の色や、遠景の動くさまに見入ってしまう。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
暫
(
しばら
)
くするとドカドカと二、三人の人が、入りのすくない
土間
(
どま
)
の、私のすぐ後へ来た様子だったが、その折は貞奴の
出場
(
でば
)
になっていた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
借金取がひきあげ、戸が閉じ、跫音が去る。はりつめた力がぬけて板の間へヘタヘタ倒れ、
暫
(
しばら
)
くはまったく意識がなくなってしまう。
青い絨毯
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
手品師はそれを受取ると五尺ほどの足のついた台上に置いて、自らは
蝋燭
(
らふそく
)
を
点
(
とも
)
し、箱の上下左右を照して、
暫
(
しばら
)
くはぢつと目を
瞑
(
つぶ
)
つた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
そして、身体を
顫
(
ふる
)
わしながら、堤の上へ
這上
(
はいあが
)
って、又、
暫
(
しばら
)
く、四辺を、警戒していたが、静かに、指を口へ入れて、ぴーっと吹いた。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「ねえ、」とお
母
(
かあ
)
さんが
言
(
い
)
った。「あの
子
(
こ
)
は
田舎
(
いなか
)
へ
行
(
ゆ
)
きましたの、ミュッテンの
大伯父
(
おおおじ
)
さんのとこへ、
暫
(
しばら
)
く
泊
(
とま
)
って
来
(
く
)
るんですって。」
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
その
美
(
うつく
)
しい
空
(
そら
)
に
奪
(
うば
)
はれてゐた
眼
(
め
)
を、ふと一
本
(
ぽん
)
の
小松
(
こまつ
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
すと、
私
(
わたし
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
なものでも
見付
(
みつ
)
けたやうに、
暫
(
しばら
)
くそれに
目
(
め
)
を
凝
(
こ
)
らした。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
清二はゲートルをとりはずし、
暫
(
しばら
)
くぼんやりしていた。そのうちに上田や三浦が帰って来ると、事務室は建物疎開の話で持ちきった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
通りかかるホーカイ
節
(
ぶし
)
の男女が二人、「まア御覧よ。お月様。」といって
暫
(
しばら
)
く立止った
後
(
のち
)
、山谷堀の
岸辺
(
きしべ
)
に曲るが否や
当付
(
あてつけ
)
がましく
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
孝之助は喪中だったから、藩主が帰国しても、なお
暫
(
しばら
)
くは登城しなかった。そのあいだに、思いがけないとり沙汰をいろいろ聞いた。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暫
(
しばら
)
くそうして馬鹿のような顔をして、バットと私とを見比べた後、彼は黙って、私が与えたバットの箱をそのまま私に返そうとした。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その顔は輝くばかりに美しかった、と書いて、おごそかに眼をつぶり
暫
(
しばら
)
く考えてから、こんどは、ゆっくり次のように書きつづけた。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この時崩れかかる人浪は
忽
(
たちま
)
ち二人の間を
遮
(
さえぎ
)
って、鉢金を
蔽
(
おお
)
う白毛の靡きさえ、
暫
(
しばら
)
くの間に、
旋
(
めぐ
)
る渦の中に捲き込まれて見えなくなる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その鞭にあきたらずして塾の外に
飛出
(
とびだ
)
した者はその行動の自由であることを喜ぶであろうが、その喜びは
暫
(
しばら
)
くのことであろうと思う。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
暫
(
しばら
)
くの
間
(
あひだ
)
全
(
まつた
)
く
法廷
(
ほふてい
)
は
上
(
うへ
)
を
下
(
した
)
への
大騷
(
おほさわ
)
ぎでした。
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
逐
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
ひ、
皆
(
みん
)
なが
再
(
ふたゝ
)
び
落着
(
おちつ
)
いた
時
(
とき
)
迄
(
まで
)
に、
料理人
(
クツク
)
は
行方
(
ゆきがた
)
知
(
し
)
れずなりました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
凡
(
およ
)
そそう云う趣意を以て二人を説き付けて、
暫
(
しばら
)
く妙子を世間の眼から遠ざけ、妊娠の事実をなるたけ誰にも知られないようにしよう。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
急に
室
(
へや
)
の中が暗く陰気となった。
暫
(
しばら
)
くして、また窓を開けて見ると、まだ烏が青桐に止っていた。……とうとう日が暮れてしまう。
抜髪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
爺さんは
暫
(
しばら
)
く口の中で、何かぶつぶつ言ってるようでしたが、やがて何か考えが浮んだように、
俄
(
にわか
)
にニコニコとして、こう申しました。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
「ふん、
坊主
(
ばうず
)
か」と
云
(
い
)
つて
閭
(
りよ
)
は
暫
(
しばら
)
く
考
(
かんが
)
へたが、「
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
逢
(
あ
)
つて
見
(
み
)
るから、こゝへ
通
(
とほ
)
せ」と
言
(
い
)
ひ
附
(
つ
)
けた。そして
女房
(
にようばう
)
を
奧
(
おく
)
へ
引
(
ひ
)
つ
込
(
こ
)
ませた。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
私は
暫
(
しばら
)
く待たされた後、調室に呼ばれた。頭髪を短く刈った、肩の角張ったいかにも警察官らしい人が、粗末な机の向うに座っていた。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
暫
(
しばら
)
くの間お幸は前よりも早足ですた/\と道を歩いて居ましたがまた何時の間にか足先に力の入らぬ歩きやうをするやうになりました。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
恭三の
素気
(
そっけ
)
ない返事がひどく父の感情を害したらしい。それに今晩は酒が手伝って居る。それでも
暫
(
しばら
)
くの間は何とも言わなかった。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
女は
上唇
(
うわくちびる
)
と
下唇
(
したくちびる
)
とを堅く結んで、
暫
(
しばら
)
く男の様子を見ていたが、その額を押さえている手を引き
退
(
の
)
けて、隠していた顔を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
アーストロフ (ドアの向うで)ただいま! (やや
暫
(
しばら
)
くして登場。ちゃんとチョッキとネクタイをつけている)何かご用ですか。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
あけて出かかりしが、
俄
(
にわか
)
にぞっとしたように、
框
(
かまち
)
に腰をおろしたまま
暫
(
しばら
)
く無言。重兵衛は再びランプを
点
(
とも
)
せば、土間は明るくなる。
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だがその行先は
暫
(
しばら
)
く
秘中
(
ひちゅう
)
の秘として
預
(
あずか
)
ることとし、その
夜更
(
よふけ
)
、大学の法医学教室に起った怪事件について述べるのが順序であろう。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
船頭
(
せんどう
)
は
闇
(
くら
)
い
小屋
(
こや
)
の
戸
(
と
)
をがらつと
開
(
あ
)
けて
又
(
また
)
がらつと
閉
(
と
)
ぢた。おつぎは
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
てそれからそく/\と
船
(
ふね
)
を
繋
(
つな
)
いだあたりへ
下
(
お
)
りた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と止せば
宜
(
い
)
いのに早四郎はお竹の寝床の中で息を
屏
(
こら
)
して居りました。
暫
(
しばら
)
く
経
(
た
)
つと
密
(
そっ
)
と
抜足
(
ぬきあし
)
をして廊下をみしり/\と来る者があります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
暫
(
しばら
)
く溜めて日に干しておくとカラカラになりますから
擂鉢
(
すりばち
)
かあるいは
石臼
(
いしうす
)
で
搗
(
つ
)
き砕いて
篩
(
ふるい
)
で
幾度
(
いくど
)
も篩いますと立派なパン粉が出来ます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それから、また
暫
(
しばら
)
くの後、或る日私が仕事場で仕事をしていると、一人の百姓のような
風体
(
ふうてい
)
をした老人が
格子戸
(
こうしど
)
を
開
(
あ
)
けて
訪
(
たず
)
ねて来ました。
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼は池のほとりに
据
(
す
)
えられた粗末なベンチに腰を下ろして、
暫
(
しばら
)
く静かな景色に見とれていたが、雑木林の中を歩きながら考えた。
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
暫
(
しばら
)
くして自分は千枝ちやんが
可哀
(
かはい
)
さうになつたから、奥さんに「もうあつちへ行つて、母とでも話してお出でなさい」と云つた。
東京小品
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
卒業後ビクターの宣伝部とかに
暫
(
しばら
)
く勤めていたが、郷里に帰って女学校に奉職し、今の夫君のところに来られたのだそうである。
I駅の一夜
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
暫
(
しばら
)
くすると
川向
(
かわむこう
)
の堤の上を二三人話しながら通るものがある、川柳の
蔭
(
かげ
)
で姿は
能
(
よ
)
く見えぬが、帽子と
洋傘
(
こうもり
)
とが折り折り
木間
(
このま
)
から隠見する。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
此
(
これ
)
を取り彼をひろげて
暫
(
しばら
)
くは見くらべ読みこころみなどするに贈りし人の趣味は
自
(
おのずか
)
らこの取り合せの中にあらはれて
興
(
きょう
)
尽くる事を知らず。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
その上相手を
嘗
(
な
)
め切った小僧は、双手を懐中へ入れたままで、
暫
(
しばら
)
くは庭草の上に摺りつけられた自分の頬を挙げる余力も無かったのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
高岡軍曹
(
たかをかぐんそう
)
は
暫
(
しばら
)
くみんなの
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
てゐたが、やがて
何時
(
いつ
)
ものやうに
胸
(
むね
)
を
張
(
は
)
つて、
上官
(
じやうくわん
)
らしい
威嚴
(
いげん
)
を
見
(
み
)
せるやうに
一聲
(
ひとこゑ
)
高
(
たか
)
く
咳
(
せき
)
をした。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
しかし日本は地方の事情は
区々
(
まちまち
)
で、或る土地で
夙
(
つと
)
に改めてしまったものを、まだ他の土地では
暫
(
しばら
)
く残していたという例が幸いにして多い。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
さてわれわれ男たちは何事を
喋
(
しゃべ
)
ってよろしきか、女給は何を語るべきか、細君は如何なる態度を示すべきかについては
暫
(
しばら
)
くの間
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
一目惚れというかなんて早いやつだと、
暫
(
しばら
)
く二人を見くらべながら
呻
(
うな
)
っていたのだ。しかし、その翌日すべてが明らかになった。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
四人はこうして
暫
(
しばら
)
く
睨
(
にら
)
み合いの姿で黙っていたが、赤鸚鵡はこの様子を見て奇妙な声を出して、ケラケラと笑いながら云った——
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
やはり、手探りしながら、歩く暗さで、
暫
(
しばら
)
くゆくと、
突然
(
とつぜん
)
、足下の
床
(
ゆか
)
が左右に
揺
(
ゆ
)
れだし、しっかり
踏
(
ふ
)
みしめて歩かぬと、転げそうでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「山田さま、
暫
(
しばら
)
くでございました、もう十五六年にもなりますから、お忘れになってらっしゃると思いますが、私は森山節でございます」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
貸
(
かす
)
人
(
ひと
)
の有べきやはて不思議なる事もあるものだ
何
(
どう
)
した譯の金なるやと
良
(
やゝ
)
暫
(
しばら
)
く考へしが
而
(
し
)
て見れば一文貰ひの
苦紛
(
くるしまぎ
)
れに
奴
(
きやつ
)
切取
(
きりとり
)
強盜
(
がうたう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
私は、友がかく有名になった以前の、その奇怪な哀れな物語に引き込まれて、
暫
(
しばら
)
くは、私自身の現在をも忘れていた程だった。
自殺を買う話
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
こんな子供の玩具にも、時節の変遷が
映
(
うつ
)
っているのですからな。僕の子供の頃の浅草の奥山の有様を考えると、
暫
(
しばら
)
くの間に変ったものです。
諸国の玩具:――浅草奥山の草分――
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
眠っていればそうっと帰ってくるし、醒めていればはいって
暫
(
しばら
)
く顔を眺めたり、枕もとに坐ったり、短い言葉をかけたりする。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
“暫”の解説
『暫』(しばらく)は、歌舞伎の演目で歌舞伎十八番の一つ。時代物。荒事の代表的な演目である。
(出典:Wikipedia)
暫
常用漢字
中学
部首:⽇
15画
“暫”を含む語句
暫時
暫々
天路行人喜暫留
暫定的
若暫時
人我暫時情
若暫持
翠暫
猶暫
暫留
暫有
暫時間
暫時前
暫定
女暫
伊達姿女暫
今暫