“暫:しばら” の例文
“暫:しばら”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂27
森鴎外27
海野十三22
芥川竜之介20
江戸川乱歩18
“暫:しばら”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸25.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語9.6%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行5.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
来た時とは全く別の方向を取って、水の多い谷底の方へしばらく降って行きますと、さらに草や木の多い普通の山路に出ました。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
某局長の目金めがねで任用せられたとか云うので、木村より跡から出て、しばらくの間に一給俸までぎ附けたのである。
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
西行さいぎょう法師がやってきて、しばらく麓の天間あままという村にいた頃に、この山を眺めて一首の歌を詠みました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
尤も曲者はこの時早くも外へ飛出して、町の闇の中に姿を隱し、しばらく經つて八五郎が飛出したときは、影も形もありません。
と云う房次郎夫人の質問から、烏賊をトマトで煮て少量の大蒜にんにくで風味を添える仏蘭西料理の説明がしばらくつづいた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
シュシュニック墺首相の辞職、ヒットラー総統の維納ウィーン入り等がしばらく話題に上ったが、蒔岡側は時々口を挟む程度で
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その先生はしばらくたつてから、わたしの学校の先生がわたしを受けとりにやつて来た時、何度もかう言つてあやまつてゐました。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
裏の方にすすぎものをしているおゆうにせて、そこでしばらく立話をしているに、鶴さんも例の折鞄を持って
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
僕はいくらそんな所を探したって僕はいるものかと思いながら、しばらくは見つけられないのをいい事にして黙って見ていました。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
譲吉は悔みの挨拶をしようとしたが急に発作的に起った嗚咽おえつの為に彼は、しばらくは何うしても、言葉が出なかった。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その時表を専領せんりょうしているK氏は目下蘇格蘭スコットランド巡遊中でしばらくは帰らないのだと主婦の説明があった。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しばらく語を交えている間に、主人は次第に饒舌じょうぜつになって、光〓万丈こうえんばんじょう当るべからざるに至った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「僕はね、先生。」とまたしばらくして、栖方は梶に擦りよって来て云った。「いま僕は一つ、悩んでいることがあるんですよ。」
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
と云うたびに冷たい汗を流し、やっとの思いで云いきりますと、両人は顔を見合せて、しばらく首を垂れて考えて居ましたが。
く服をいじりて窓の処までしばらく外を見て、急に向き返り、部屋の内を、何か探すように、歩きまわる。
運動場の隅の機械体操の砂場に取組み合って倒れたまましばらみ合っている中に、苦もなく私は彼を組敷くことが出来た。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
Nはしばらく趙を憎さげに見下していたが、私達の方に一瞥いちべつをくれると、そのままぐるりと後を向いて立去って了った。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
父親は池の端に越して来てから、しばらく立つうちに貸本を読むことを始めて、昼間はいつも眼鏡を掛けて貸本を読んでいる。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
ゆき子は所在なく寝床へ横になつて、しばらんやりしてゐたが、気が滅入めいつて、くさくさして仕方がなかつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
あの伯父おじと兄はまだしばらく帰らないであろうから、父親さえ早く寝てくれるなら話はできると云う考えが浮んで来た。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
学校に行く人たちがいそがしくなって、しばらくかまわずに置くうちに、もう覚えていて話してくれる人がいなくなりました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
静かに訪れたのは、しばらく拝借することになったモデル――三人侍女の一人、一番年嵩で、一番美しいといわれた多与里でした。
それからしばらく経って、鈴木君は大正日日に走り、東京毎日に転じ、そして革命後のソ連に入国し、その旅行記を書いたりした。
宇治は何故ともなく身ぶるいしながらその想像を断ち切った。しばらくして隊長は、苦しそうにうめくような声で訊ねた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しばらくして胃の部分が熱くなり、そしてその熱感はすぐ消え、やがて身体の内側から皮膚にほのぼのとある感覚が拡がって来た。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
で、いきなりピシャリと横面よこつらを張られたような気がして、さすがにそのあとしばらくは寄り着こうともしなかった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうかしばらく、痴人ちじんのくりごとでも聞くおつもりで、私のつまらぬ身の上話をお許しが願いたいのであります。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しばらくすると、果して石田治部少輔三成ぢぶせういうみつなりが佐和山城から出て來て、身方の諸大名を大阪へ集めた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから都の大通りを驀然まっしぐらに南に走りますと、しばらくして向うから美留藻のがらのお婆さんの着物を着て
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
しばらくして、彼方かなた波上はじやうから、ひと呼聲よびごゑと、オールとがちかづいて
こういう風の一家の事情ゆえ、そのしばらく前から奉公に出ていた袋物屋を暇取って兼松はうちへ帰って来ました。
と、少し、蒼白くなった額をして、中へ入った。人々は半兵衛を見上げて、しばらく黙ったが、一人が半兵衛が坐ると同時に
寛永武道鑑 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
――梶は自分の心中に起って来たこの二つの真実のどちらに自分の本心があるものか、しばらくじっと自分を見るのだった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
しばらく待つて居ると、髪もひげも灰色をした、細面ほそおもてな、血色けつしよくの好いレニエ氏が入つて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なおしばらく弁信の為さんように任せて待っていると、やがて、中から戸を押す物音があって、紙燭しそくを手にかざして
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ポオル叔父さんは、自分の兄弟にいろいろ頼んでようやしばらくの間其の子供達を叔父さんの家に暮らさせるようにしました。
しばらくして家の中の人の心がちぐはぐになって阿繊をうたがいだした。阿繊はかすかにそれを察して、夜、三郎に話した。
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
自分の部屋へ這入はいって、しばらくぼんやりしていると、今まで誰もいないと思っていた隣の部屋でマッチをる音がする。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
それからしばらくすると、今度は御学問所の欄間で蝙蝠こうもりを彫工会の方へ御命じになって、大勢で一つずつ彫れという命令。
其中そのうちをんなくにかへつて、しばらくしてから手紙てがみをよこしたんだ、さうだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
私はそれから東京の下宿に帰り、漱石氏は熊本の高等学校に教鞭をとって、互にしばらく無沙汰をして居ったものであろう。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
雪嶺せつれい翁が校正の時に文章を非常に直すので活版屋が小言をいふ事、外に、嶺雲れいうんその他の消息などしばらく話して
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
少しは声をくもらしたもののその調子は長吉の満足するほどの悲愁を帯びてはいなかった。長吉はしばらくしてからまた突然に、
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
富岡は四囲の人達に挨拶して、ゆき子の枕もとに坐り、ランプの光の中に、むくんだやうなゆき子の死顔を、しばらくみつめてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「やあ、しばらく、君は、油井伯の歿くなった時に聞くと、歿くなったと云うことだが、無事だったね、お変りもないかね」
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
卒業後ビクターの宣伝部とかにしばらく勤めていたが、郷里に帰って女学校に奉職し、今の夫君のところに来られたのだそうである。
I駅の一夜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
爺やも、綾子も泣いておりました。しばらくは白髪頭と断髪と、テラスの葡萄ぶどうの葉蔭に、頷き合うように揺れていたのです。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しばらく心にもない世間話を続けている内に、もう我慢が出来なくなって、北川氏はこう戦闘開始の火蓋を切ったのだった。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ところで、長者丸の一件だが、そいつは思いの外に深い因縁があるかも知れないよ、しばらくは眼を離さずに居るがいい」
「やあ、しばらく! 大へん御無沙汰ぶさたしちまって、―――どうです河合さん、近頃さっぱりダンスにお見えになりませんね」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
徳二郎は急に眞面目な顏をしてこの有樣を見て居たが、忽ち顏を背向そむけ山の方を見て默つて居る、僕はしばらくして
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「おお、早くお通し申して。さうしてな、唯今起きましたところで御座いますから、しばらく失礼致しますとさう申して」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それからしばらくして、食事を告げに来た女は、アンではなかった。それっきり、アンの姿は、仏の目にとまらなかった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兄は医者に厚く礼を云って、まだ起きてはいけないかとたずねました。医者はもうしばらく様子を見てからにしようと云いました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天地も崩れるような物音とはあのときのことでしょう。私の耳はガーンといったまま、しばらくはなにも聞こえなくなってしまいました
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しばらく、今の拍子を打ちなされ……古市から尾上町まで声が聞えようか、と言いなされる、御大言、年のおわかさ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
結び慣れてゐた洋髪から島田まげに結ひ直すために、かの女はしばらく髪癖を直す手当てをしなければならなかつた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
しばらく行くと、路上に立はだかって、「家が焼ける、家が焼ける」と子供のように泣喚いている老女と出逢であった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そうしてそういう爺やの何処かさびしそうな姿を見ていたそのときの三枝さんのように向いの若葉のなかの家をしばらく見やっていた。
朴の咲く頃 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
わたしけるまでることが出来できない、あはれとおもつてしばらくつきあつて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その薄暗い中で、おつやは障子をあけて出かかりしが、にわかにぞっとしたように、かまちに腰をおろしたまましばらく無言。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三人でしばらく何か言って居たが、やがて年ちャんという子の声で「高ちャん高ちャんそんなに打つと化けるよ」と心配そうに言った。
飯待つ間 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
アーストロフ (ドアの向うで)ただいま! (ややしばらくして登場。ちゃんとチョッキとネクタイをつけている)何かご用ですか。
ここしばらくは死んだ気イになってすッ込んでよ、水仕事でも掃除そうじでも何でも構わんと精一杯働いてよと
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宗像博士は、唇をんでしばらく黙っていたが、突然、白紙の束を紙屑籠かみくずかごに投げ入れると、決定的な口調で云った。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その顔は輝くばかりに美しかった、と書いて、おごそかに眼をつぶりしばらく考えてから、こんどは、ゆっくり次のように書きつづけた。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
宮は今外出せんとする夫の寒凌さむさしのぎに葡萄酒ぶどうしゆ飲むしばら長火鉢ながひばちの前にかしづくなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は池のほとりにえられた粗末なベンチに腰を下ろして、しばらく静かな景色に見とれていたが、雑木林の中を歩きながら考えた。
首を失った蜻蛉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ところが、その予想ががらっと外れ、意外や、題を聴けば「水棲人」。私も、ちょっとしばらくは聴きちがいではないかと思ったほどだ。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし航海中、用も多いからしばらの首を当人に預けて置くといって、大に船中を笑わした事がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
音楽のはやしを耳にしながら何方どちらかうかとしばら良人をつとと自分は広場の端を迷つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しばらってやっと気がついてみると、壁も天井もどこかへ吹きとんでしまって、頭上には高い空が見えていた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は日本婦人の現在の知識及び勇気の程度に考えてまだしばらく団体運動の成立つ時機ではなかろうと思っております。
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
瑠璃子には、青年の憤怒などは、眼中にないようだった。それでも、しばらくしてから、青年をなだめるように云った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
僕はしばらく下界に住んで来て、さてこの山嶽をば通りしなに既にセガンチニの画境の種々相を感得することが出来た。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しばらしづか聽耳きゝみゝててゐたぼくはさうつて、友人いうじんはうかへつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「君、身体からだがわるさうだから、しばらく休み給へ。毎日、聖書でも読んで寝てゐれば直るよ。」と申しました。
こほろぎの死 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
その栄町と大津町との交叉点に立つて、しばらくの間、眼を四方に配るならば、モダーン名古屋の特徴がしみ/″\感ぜられるであらう。
名古屋スケッチ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
アントオニオ じゃ、僕たち、しばらく石段の上で横になっていよう。また容体がお変りになるまで、そうしていよう。
彼等は互に眼を見合わせ、しばらくじっと黙っていたが、突然「ワッ」と叫声をあげると人家のある方へ足を空にして一散に逃げ出した。
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(坊ちゃんが二、三人あったように記憶していたので)しばらくして、私たちの国語の教師には早大出の大井三郎と云うひとがきまった。
私の先生 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
先生は大方御食事中でもあったのか、私は取次の人に案内されたまましばらくの間唯一人この観潮楼の上に取残された。
四方あたりを見廻しましたが、人の気配もありません。馴れた箱根道ですが、狐につままれたような心持で、しばらくは立ち尽します。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私は珍らしさに、しばらくその双眼鏡をひねくりまわしていたが、やがて、それを覗く為に、両手で眼の前に持って行った時である。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「折角友だちになったのんに名残なごり惜しいですなあ」と、わたし何や、ほんまにそんな気イしましてしばらくもじもじしてました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私はひそかに、彼女の眠りを覚まさないようにまくらもとへ据わったまま、しばらくじっと息を殺してその寝姿を見守りました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どうしようと云う話もきまらずに、そこに二人はしばらく立話をしていたが、するうちときが段々移っていった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と繰返し云って、袖にすがられた時に、無口なお松は自分を抱きしめて、しばらくは顔を上げ得なかったそうである。
守の家 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
僕はわきを向いて聞かない振をしていた。誰を仲間に入れるとか入れないとか云って、しばらく相談していたが、程なく皆出て行った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
幻の清浄を体得するよりも、むし如幻にょげんの境にしばらく倦怠と懶惰の「」を寄せたいのである。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼はしばらくプログラムの表面を見ていたが、今の「木製の人形」に出ている十人のレビュー・ガールの名前を胸のうちにそらんじた。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
追い迫ってくるロケットは、ちょっとだけ横になっただけで、しばらくすると、また元のように丸い黒円にかえった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
出産の当時、この家の門をたたく者があったが、家内の者は混雑にまぎれて知らなかった。しばらくして家の奥から答える者があった。
どぜうのこそつぱいざるなかしばらうごかしては落付おちつく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
メダカ女史しらべて来ると云って引っこんでいったけれど、しばらくして黙って、「勉強家ね」と云って持って来る。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
いつも妹はその子供が路上で遊んでいるのを見ると、自分の息子もしばらくでいいから呼戻したいと思うのであった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
されどかかる野暮やぼ評はしばらく棚に上げてずつと推察した処で、池を見て亡き乳母をおもふといふある少女の懐旧の歌ならんか。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
彼女かのぢよふたやうに、またつかれたやうに、しばらくは自分じぶん空想くうさうなかにさまよはしてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
と叫んで、あの酒注女さけつぎおんなが駆け出して来て僕の行手をふさいだ。そしてややしばらく僕の姿を不思議そうに眺めた後に、
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
しばらくの間お幸は前よりも早足ですた/\と道を歩いて居ましたがまた何時の間にか足先に力の入らぬ歩きやうをするやうになりました。
月夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)