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撫肩
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なでがた
ふりがな文庫
“
撫肩
(
なでがた
)” の例文
亞麻色
(
あまいろ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、
華車
(
きやしや
)
な
撫肩
(
なでがた
)
にひつかけた
格魯謨色
(
クロオムいろ
)
の輕い
塵除
(
ちりよけ
)
のやうな
亞麻色
(
あまいろ
)
の
牡
(
を
)
よりも強い
牝
(
め
)
と見える、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
……
婦
(
をんな
)
は、
薄色縮緬
(
うすいろちりめん
)
の
紋着
(
もんつき
)
の
單羽織
(
ひとへばおり
)
を、
細
(
ほつそ
)
り、
痩
(
やせ
)
ぎすな
撫肩
(
なでがた
)
にすらりと
着
(
き
)
た、
肱
(
ひぢ
)
に
掛
(
か
)
けて、
濃
(
こ
)
い
桔梗色
(
ききやういろ
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
を
一
(
ひと
)
ツ
持
(
も
)
つた。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それにまた
撫肩
(
なでがた
)
で頸が長いのを人一倍衣紋をつくった着物のきこなしで、いかにもしなやかに、
繊細
(
かぼそ
)
く見える
身体
(
からだ
)
つき。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
背筋の両側には細々とした
撫肩
(
なでがた
)
が、地へ
曳
(
ひ
)
く衣と共にすんなりとしている。左右へ開いた編笠の
庇
(
ひさし
)
よりも狭いくらいに、その肩幅は細いのである。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
宝丹
(
ほうたん
)
の
角
(
かど
)
を曲るとまた一人芸者が来た。これは
背
(
せい
)
のすらりとした
撫肩
(
なでがた
)
の
恰好
(
かっこう
)
よく出来上った女で、着ている薄紫の
衣服
(
きもの
)
も素直に着こなされて上品に見えた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
しんなりした
撫肩
(
なでがた
)
の、小柄なきゃしゃな身体を斜にひねるようにして、舞踊か何かででも鍛えあげたようなキリリとした
恰好
(
かっこう
)
して、だんだん強く強く揺り動かして行った。
遊動円木
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
さう云ひながら父は、彼の痩せた
胸懐
(
むなぶところ
)
に顔を埋めてゐる娘の美しい
撫肩
(
なでがた
)
を、軽く二三度叩いた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
そして頑丈男がポケットから、警察手帳みたいなものを出して見せたものですから、野呂の無理していからせた肩は見る見る低くなって、すっかり
撫肩
(
なでがた
)
になってしまいました。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
若い画家というのはひどい
撫肩
(
なでがた
)
で、明色の尖ったひげをはやした人だが、これは手品師を戯演することになったし、またヒルデブラント氏は、有名な人々を演じて見せる積りだった。
ルイスヒェン
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そして別の場所を探すよう、やや
撫肩
(
なでがた
)
ながら厚味のあるむす子の肩の肉を押した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
色の白い、
撫肩
(
なでがた
)
の、背の高い男で、純然たる東京詞を遣うのである。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その飼主らしい
撫肩
(
なでがた
)
の若侍とを斬りまくってゆくくらいのことは、さして難事でもないように感じられたが、そのまに、片うでを
空
(
くう
)
にうちふりつつ見る見る森の下を駈けぬけてゆく左膳のすがたが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
胸を反らして空模様を仰ぐ、豆売りのお
婆
(
ばあ
)
の前を、
内端
(
うちば
)
な足取り、
裳
(
もすそ
)
を細く、
蛇目傘
(
じゃのめ
)
をやや前下りに、すらすらと
撫肩
(
なでがた
)
の細いは……
確
(
たしか
)
に。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そう云いながら父は、彼の
痩
(
や
)
せた
胸懐
(
むなぶところ
)
に顔を
埋
(
うず
)
めている娘の美しい
撫肩
(
なでがた
)
を、軽く二三度
叩
(
たた
)
いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
背
(
せ
)
のずんぐりした、色黒の、
髯
(
ひげ
)
づらと、くっきり
締
(
しま
)
った
細面
(
ほそおもて
)
に、
襟
(
えり
)
の長い、
撫肩
(
なでがた
)
の、
華奢
(
きゃしゃ
)
姿。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それに加えて
肉付
(
にくづき
)
のしまった
小
(
こ
)
づくりの身体は
背後
(
うしろ
)
から見ると、
撫肩
(
なでがた
)
のしなやかに
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
C——橋の
袂
(
たもと
)
へ来ると池上は俯向いて待っていました。こう改まって、外でこの若旦那に会うと、まるで別の人のような感じが致します。少し
撫肩
(
なでがた
)
で、大柄の身体に
瀟洒
(
さっぱり
)
とした背広をつけている。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
櫛巻
(
くしまき
)
に結って、黒縮緬の
紋着
(
もんつき
)
の羽織を
撫肩
(
なでがた
)
にぞろりと着て、
痩
(
や
)
せた片手を、力のない襟に挿して、そうやって、引上げた
褄
(
つま
)
を
圧
(
おさ
)
えるように
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
愛妻の白い美しい
襟足
(
えりあし
)
から、そのほっそりとした
撫肩
(
なでがた
)
を伝うて、
膝
(
ひざ
)
の上に、
慎
(
つつま
)
しやかに置かれた手や、その手を載せているふくよかな、両膝を、
貪
(
むさぼ
)
るように見詰めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この外には色の白いのと、
撫肩
(
なでがた
)
のすらりとした後姿が美点の中の第一であろう。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どうでしょう、
傘
(
からかさ
)
まで天井に干した、その下で、
熟
(
じっ
)
と、
此方
(
こっち
)
を、私を見たと思うと、
撫肩
(
なでがた
)
をくねって、
媚
(
なまめ
)
かしく、小菊の枝で一寸あやしながら
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まだ左の
袂
(
たもと
)
の下に包んだままで、
撫肩
(
なでがた
)
の
裄
(
ゆき
)
をなぞえに、浴衣の筋も水に濡れたかと、ひたひたとしおれて、片袖しるく、
悚然
(
ぞっ
)
としたのがそのままである。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
撫肩
(
なでがた
)
に重荷に背負って加賀笠を片手に、うなだれて行く
細
(
ほっそ
)
り白い
頸脚
(
えりあし
)
も、
歴然
(
ありあり
)
目に見えて、
可傷
(
いた
)
々々しい。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、さし
俯向
(
うつむ
)
いて、畳んだ
扇子
(
おうぎ
)
で胸を
圧
(
おさ
)
えた。
撫肩
(
なでがた
)
がすらすらと、
薄
(
すすき
)
のように、尾上の風に
靡
(
なび
)
いたのである。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
膚
(
はだ
)
は
蔽
(
おお
)
うたよりふっくりと肉を置いて、
脊筋
(
せすじ
)
をすんなりと、
撫肩
(
なでがた
)
して、白い脇を
乳
(
ちち
)
が
覗
(
のぞ
)
いた。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その両方の
間
(
あわい
)
の、もの蔭に小隠れて、意気
人品
(
ひとがら
)
な黒
縮緬
(
ちりめん
)
、三ツ紋の羽織を
撫肩
(
なでがた
)
に、
縞
(
しま
)
大島の二枚小袖、
襲
(
かさ
)
ねて着てもすらりとした、
痩
(
や
)
せぎすで
脊
(
せい
)
の高い。油気の無い洗髪。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蔦
(
つた
)
の葉の浴衣に、
薄藍
(
うすあい
)
と
鶯茶
(
うぐいすちゃ
)
の、たて
縞
(
じま
)
お召の
袷羽織
(
あわせばおり
)
が、しっとりと身たけに添って、紐はつつましく結んでいながら、
撫肩
(
なでがた
)
を弱く
辷
(
すべ
)
った藤色の裏に、上品な気が見えて
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人を別けた傘を斜めに、
撫肩
(
なでがた
)
で、
櫛巻
(
くしまき
)
の
凜
(
りん
)
とした
細面
(
ほそおもて
)
の見えたのは、紅屋の内儀で。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さも
旅疲
(
たびづかれ
)
の
状
(
さま
)
見えて、
鼠地
(
ねずみじ
)
の縮緬に、麻の葉
鹿
(
か
)
の子の下着の端、
媚
(
なまめ
)
かしきまで
膝
(
ひざ
)
を
斜
(
ななめ
)
に、
三枚襲
(
さんまいがさね
)
で
着痩
(
きや
)
せのした、
撫肩
(
なでがた
)
の右を落して、前なる
桐火桶
(
きりひおけ
)
の縁に、
引
(
ひき
)
つけた
火箸
(
ひばし
)
に手をかけ
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寝床を
辷
(
すべ
)
って、窓下の
紫檀
(
したん
)
の机に、うしろ向きで、紺地に茶の
縞
(
しま
)
お召の
袷羽織
(
あわせばおり
)
を、
撫肩
(
なでがた
)
にぞろりと掛けて、道中の髪を
解放
(
ときはな
)
し、あすあたりは
髪結
(
かみゆい
)
が来ようという
櫛巻
(
くしまき
)
が、
房
(
ふっさ
)
りしながら
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青
(
あを
)
いのが
葉
(
は
)
に
見
(
み
)
えて、
先刻
(
さつき
)
の
白
(
しろ
)
い
花
(
はな
)
が
俤立
(
おもかげだ
)
つ……
撫肩
(
なでがた
)
をたゆげに
落
(
おと
)
して、すらりと
長
(
なが
)
く
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
へ、
和々
(
やは/\
)
と
重量
(
おもみ
)
を
持
(
も
)
たして、
二
(
に
)
の
腕
(
うで
)
を
撓
(
しな
)
やかに
抱
(
だ
)
いたのが、
其
(
それ
)
が
嬰兒
(
あかんぼ
)
で、
仰向
(
あをむ
)
けに
寢
(
ね
)
た
顏
(
かほ
)
へ
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
明治十二三年頃
(
めいぢじふにさんねんごろ
)
の
出版
(
しゆつぱん
)
だと
思
(
おも
)
ふ——
澤村田之助曙双紙
(
さはむらたのすけあけぼのさうし
)
と
云
(
い
)
ふ
合卷
(
がふくわん
)
ものの、
淡彩
(
たんさい
)
の
口繪
(
くちゑ
)
に、
黒縮緬
(
くろちりめん
)
の
羽織
(
はおり
)
を
撫肩
(
なでがた
)
に
引
(
ひ
)
つ
掛
(
か
)
けて、
出
(
で
)
の
衣裝
(
いしやう
)
の
褄
(
つま
)
を
取
(
と
)
つた、
座敷
(
ざしき
)
がへりらしい、
微醉
(
ほろよひ
)
の
婀娜
(
あだ
)
なのが
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
橋の
中央
(
なかば
)
に、漆の色の新しい、黒塗の
艶
(
つや
)
やかな、
吾妻下駄
(
あずまげた
)
を
軽
(
かろ
)
く留めて、今は散った、青柳の糸をそのまま、すらりと
撫肩
(
なでがた
)
に、葉に綿入れた一枚小袖、帯に
背負揚
(
しょいあげ
)
の
紅
(
くれない
)
は
繻珍
(
しゅちん
)
を彩る花ならん
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
房々とある
艶
(
つや
)
やかな黒髪を、
耳許
(
みみもと
)
白く
梳
(
くしけず
)
って、
櫛巻
(
くしまき
)
にすなおに結んだ、顔を
俯向
(
うつむ
)
けに、
撫肩
(
なでがた
)
の、細く袖を引合わせて、胸を抱いたが、
衣紋
(
えもん
)
白く、空色の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
に、
朱鷺色
(
ときいろ
)
の無地の
羅
(
うすもの
)
を
襲
(
かさ
)
ねて
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撫肩
(
なでがた
)
の懐手、すらりと襟を
辷
(
すべ
)
らした、
紅
(
くれない
)
の
襦袢
(
じゅばん
)
の袖に片手を包んだ
頤
(
おとがい
)
深く、清らか
耳許
(
みみもと
)
すっきりと、湯上りの
紅絹
(
もみ
)
の
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
を
皚歯
(
しらは
)
に
噛
(
か
)
んだ趣して、頬も白々と
差俯向
(
さしうつむ
)
いた、
黒繻子
(
くろじゅす
)
冷たき雪なす
頸
(
うなじ
)
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と云って
莞爾
(
にっこり
)
した。が、撥を挙げて
靨
(
えくぼ
)
を隠すと、向うむきに格子を離れ、
細
(
ほっそ
)
りした襟の白さ、
撫肩
(
なでがた
)
の
媚
(
なまめ
)
かしさ。浴衣の千鳥が宙に浮いて、ふっと消える、とカチリと鳴る……何処かに撥を置いた音。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
襟
(
えり
)
をあとへ、
常夏
(
とこなつ
)
を
指
(
ゆび
)
で
少
(
すこ
)
し
引
(
ひ
)
いて、きやしやな
撫肩
(
なでがた
)
をやゝ
斜
(
なゝめ
)
に
成
(
な
)
つたと
思
(
おも
)
ふと、
衣絵
(
きぬゑ
)
さんの
顔
(
かほ
)
は、
睫
(
まつげ
)
を
濃
(
こ
)
く、
凝然
(
じつ
)
と
視
(
み
)
ながら
片手
(
かたて
)
を
頬
(
ほゝ
)
に
打招
(
うちまね
)
く。……
撓
(
しな
)
ふ、
白
(
しろ
)
き
指先
(
ゆびさき
)
から、
月
(
つき
)
のやうな
影
(
かげ
)
が
流
(
なが
)
れた。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
水の
装上
(
もりあが
)
った水盤に映ったのは、
撫肩
(
なでがた
)
の
靡
(
なび
)
いた浴衣の薄い模様です。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撫
漢検準1級
部首:⼿
15画
肩
常用漢字
中学
部首:⾁
8画
“撫”で始まる語句
撫
撫子
撫育
撫下
撫養
撫付
撫民
撫斬
撫然
撫順