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幻
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まぼろし
ふりがな文庫
“
幻
(
まぼろし
)” の例文
とにかく彼はえたいの知れない
幻
(
まぼろし
)
の中を
彷徨
(
ほうこう
)
した
後
(
のち
)
やっと
正気
(
しょうき
)
を恢復した時には××
胡同
(
ことう
)
の社宅に
据
(
す
)
えた
寝棺
(
ねがん
)
の中に横たわっていた。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
周は驚き
懼
(
おそ
)
れて気絶しそうにしたが、やがて、それは成の法術で
幻
(
まぼろし
)
を見せたではあるまいかと疑いだした。成は周の意を知ったので
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
私の
眩惑
(
げんわく
)
された眼は、われ知らず、姿見の深みを探つた。その
幻
(
まぼろし
)
の虚影のなかでは、何もかもが、現實より一層冷たく陰鬱に思はれた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
なるほど、今のは夢か、それとも
幻
(
まぼろし
)
だったのかもしれません。いくら見まわしても、黒装束の男など、どこにもいやしないのです。
怪人二十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
年忌の
法会
(
ほうえ
)
などならばその人を思ひ出すとか、今に
幻
(
まぼろし
)
に見ゆるとか、年月の立つのは早いものとか、彼人が
死
(
しん
)
でから外に友がないとか
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
今僕と並んでいる君は、
本体
(
ほんたい
)
のない
幻
(
まぼろし
)
にすぎないのだ。本体の君は、連続的成長を続けて、やっと青年になりかけのところにいるんだ。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昔自分が酌をして、この四疊半で樂しい晩餐を取つたことが、
幻
(
まぼろし
)
のやうに京子の頭に浮かんでゐるらしかつた。其の頃は京子も若かつた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「どこで、このおじいさんを
見
(
み
)
たろう。」と、
佐吉
(
さきち
)
は
考
(
かんが
)
えながら、
星
(
ほし
)
を
見上
(
みあ
)
げていますと、さまざまの
幻
(
まぼろし
)
が
目
(
め
)
に
映
(
うつ
)
ってくるのでありました。
酔っぱらい星
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
眠
(
ねむ
)
くはないので、ぱちくり/\
目
(
め
)
を
睜
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
ても、
物
(
もの
)
は
幻
(
まぼろし
)
に
見
(
み
)
える
樣
(
やう
)
になつて、
天井
(
てんじやう
)
も
壁
(
かべ
)
も
卓子
(
テエブル
)
の
脚
(
あし
)
も
段々
(
だん/\
)
消
(
き
)
えて
行
(
ゆ
)
く
心細
(
こゝろぼそ
)
さ。
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
父親の歸りを心配して、小用場の窓から、
幻
(
まぼろし
)
とも
現
(
うつゝ
)
ともなく、此晩の樣子を見て、そのまゝ氣を喪つてしまつたといふことだ。
銭形平次捕物控:284 白梅の精
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
女王は、その庭に見入っているの。そこには、
木立
(
こだち
)
のそばに
噴水
(
ふんすい
)
があって、
闇
(
やみ
)
の中でも
白々
(
しらじら
)
と、長く長く、まるで
幻
(
まぼろし
)
のように見えています。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
「目には見れども」は、眼前にあらわれて来ることで、写象として、
幻
(
まぼろし
)
として、夢等にしていずれでもよいが、此処は写象としてであろうか。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ゆえにこの間に結ばるる夢は
徒
(
いたず
)
らに
疲労
(
ひろう
)
せる身体の
幻
(
まぼろし
)
すなわち
諺
(
ことわざ
)
にいう五
臓
(
ぞう
)
の
煩
(
わずら
)
いでなく、精神的営養物となるものと思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
鏡子は我子の言葉から、春の
末
(
すゑ
)
の薄寒い日の夕暮に日本の北の港を
露西亜船
(
ろしやぶね
)
に乗つて離れた影の寂しい女を
幻
(
まぼろし
)
に見て居た。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
あらたなる
幻
(
まぼろし
)
はわが心をこれにかたむかせ、我この思ひを棄つるをえざれば、かく疑ひをいだきてゆくなり。 五五—五七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
が目ざめてのち、ぼくはあのひとの
幻
(
まぼろし
)
だけとともに、まわりはつめたい鉄の
壁
(
かべ
)
にとりかこまれ
漸
(
ようや
)
く生きている気がする。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
幻
(
まぼろし
)
の如く、消えては現われ、現われては消え、からみつき、ほぐれ出し、物に触れて駕籠が烈しく揺れるたびに、いったん途切れてまた現われる。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すなわち一年の境に、遠い国から村を訪れてはるばる神のくることを、確信せしめんがための計画ある
幻
(
まぼろし
)
であった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二個の世界は絶えざるがごとく、続かざるがごとく、夢のごとく
幻
(
まぼろし
)
のごとく、二百里の長き車のうちに喰い違った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今昔
(
こんじゃく
)
の感
坐
(
そぞ
)
ろに
湧
(
わ
)
きて、幼児の時や、友達の事など夢の如く
幻
(
まぼろし
)
の如く、はては
走馬燈
(
まわりあんどん
)
の如くにぞ胸に
往
(
ゆ
)
き
来
(
こ
)
う。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
たしかに、
竹童
(
ちくどう
)
の
愛鷲
(
あいしゅう
)
クロのようだったが——見ちがいであったかしら?
幻
(
まぼろし
)
であったかしら? ——と
咲耶子
(
さくやこ
)
はあとのしずかななかで
錯覚
(
さっかく
)
にとらわれた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四
大
(
だい
)
の
身
(
み
)
を
惱
(
なや
)
ます
病
(
やまひ
)
は
幻
(
まぼろし
)
でございます。
只
(
たゞ
)
清淨
(
しやうじやう
)
な
水
(
みづ
)
が
此
(
この
)
受糧器
(
じゆりやうき
)
に一ぱいあれば
宜
(
よろ
)
しい。
呪
(
まじなひ
)
で
直
(
なほ
)
して
進
(
しん
)
ぜます。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「これは夢にちがいない。寝ても覚めても京の都のことばかり思いつめていたための
幻
(
まぼろし
)
の声だ。悪魔がおれの心を惑わそうというのか。とても現実とは思えん」
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
夕になれば、燭に火を點ずるほどに、其光は腸づめの肉と「プレシチウツトオ」(らかん)との間に燃ゆる、聖母像前の紅玻璃燈と共に、この
幻
(
まぼろし
)
の境を照せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
余は今しがた眼の前を過ぎた二つの
幻
(
まぼろし
)
の意味を思いつゝ、山を見ることを忘れて田圃の方へ下りて往った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
住むべき家の
痕跡
(
あとかた
)
も無く焼失せたりと
謂
(
い
)
ふだに、見果てぬ夢の如し、まして
併
(
あは
)
せて頼めし
主
(
あるじ
)
夫婦を
喪
(
うしな
)
へるをや、
音容
(
おんよう
)
幻
(
まぼろし
)
を去らずして、ほとほと幽明の
界
(
さかひ
)
を弁ぜず
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼女は膝の上から反絵と反耶の頭を降ろして、
静
(
しずか
)
に彼女の部屋へ帰って来た。しかし、彼女はひとりになると、またも毎夜のように、
幻
(
まぼろし
)
の中で
卑狗
(
ひこ
)
の
大兄
(
おおえ
)
の匂を
嗅
(
か
)
いだ。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
自己だと? 世界だと? 自己を
外
(
ほか
)
にして客観世界など、在ると思うのか。世界とはな、自己が時間と空間との間に投射した
幻
(
まぼろし
)
じゃ。自己が死ねば世界は消滅しますわい。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
母の生い育ったのはただ色町と云うばかりで、いずこの土地とも分らないのが恨みであったが、それでも彼は母の
幻
(
まぼろし
)
に会うために
花柳界
(
かりゅうかい
)
の女に近づき、茶屋酒に親しんだ。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
陸上の生活力を一度死に
晒
(
さら
)
し、実際の
影響力
(
えいきょうりょく
)
を
鞣
(
なめ
)
してしまい、
幻
(
まぼろし
)
に溶かしている世界だった。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
げにや榮華は夢か
幻
(
まぼろし
)
か、
高厦
(
かうか
)
十年にして立てども一朝の煙にだも堪へず、朝夕
玉趾
(
ぎよくし
)
珠冠
(
しゆくわん
)
に
容儀
(
ようぎ
)
正
(
たゞ
)
し、
參仕
(
さんし
)
拜趨
(
はいすう
)
の人に
册
(
かしづ
)
かれし人、今は
長汀
(
ちやうてい
)
の波に
漂
(
たゞよ
)
ひ、
旅泊
(
りよはく
)
の月に
跉跰
(
さすら
)
ひて
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
抜けるように白いお艶の顔と、山吹いろの小判とがかわるがわる
幻
(
まぼろし
)
のように眼前にちらつく。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
九蔵の宗吾と光然、
訥子
(
とっし
)
の甚兵衛と
幻
(
まぼろし
)
長吉、みんな好うござんしたよ。
芝鶴
(
しかく
)
が
加役
(
かやく
)
で宗吾の女房を勤めていましたが、これも案外の出来で、なるほど達者な役者だと思いました。
半七捕物帳:60 青山の仇討
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「しかし能く来てくれたね。まさか君が今頃来ようとは思はないもんだから、ふつと顔を見たときには、君の幽霊か、僕の目のせゐで
幻
(
まぼろし
)
が映つたのかと思つて、
慄然
(
ぞつ
)
としたよ。」
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
言
(
い
)
いも
終
(
おわ
)
らずこの
白衣
(
びゃくい
)
の
老人
(
ろうじん
)
の
姿
(
すがた
)
はスーッと
湖水
(
こすい
)
の
底
(
そこ
)
に
幻
(
まぼろし
)
のように
消
(
き
)
えて
行
(
ゆ
)
きました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その唯一人きりの若様へあの不思議の物語、アラビヤあたりの童話にでもありそうな、
幻
(
まぼろし
)
じみたお話を致すのは心苦しいことでござりますが、(間)思い切ってお話し致しましょう。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さりとては
怪
(
け
)
しからず
麗
(
うるわ
)
しき
幻
(
まぼろし
)
の花輪の中に
愛嬌
(
あいきょう
)
を
湛
(
たた
)
えたるお辰、気高き
計
(
ばか
)
りか後光
朦朧
(
もうろう
)
とさして
白衣
(
びゃくえ
)
の観音、古人にも
是
(
これ
)
程の
彫
(
ほり
)
なしと
好
(
すき
)
な道に
慌惚
(
うっとり
)
となる時、物の
響
(
ひびき
)
は
冴
(
さ
)
ゆる冬の夜
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
耳の無いあの
妓
(
おんな
)
がこう聞いた時、その声は泣いているようでもあったし、また発作的な笑いを押えているような声でもあった。酔いの耳鳴りの底で、私は再び鮮かにその
幻
(
まぼろし
)
の声を聞いた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それでも、最後の芝鶴の人形振は、専門家から見ればどれほどのものか知りませんが、少くとも、私の眼には、美しい、懐しい、
幻
(
まぼろし
)
の世界でした。これなら、これだけでもいゝと思ひました。
懐かし味気なし:五年振で見る故国の芝居
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
一〇〇
巫山
(
ふざん
)
の雲、
一〇一
漢宮
(
かんきゆう
)
の
幻
(
まぼろし
)
にもあらざるやとくりごとはてしぞなき。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
其の時、周三の頭に、
幻
(
まぼろし
)
の
如
(
ごと
)
く映ツたのは、都會生活の
慘憺
(
さんたん
)
たる
状態
(
じやうたい
)
だ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
朽
(
く
)
ちはてし
熔岩
(
ラヴア
)
に
埋
(
うも
)
るるポンペイを、わが
幻
(
まぼろし
)
を。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「それ達人は大観す……栄枯は夢か
幻
(
まぼろし
)
か……」
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
胸に籠めたる
幻
(
まぼろし
)
を雲に痛みて、地のほめき——
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ああこの
幻
(
まぼろし
)
の寢臺はどこにあるか。
蝶を夢む
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
恋人の 白い
横顔
(
プロフアイル
)
—キーツの
幻
(
まぼろし
)
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
幻
(
まぼろし
)
なりき、
事映
(
ことばえ
)
の
消
(
き
)
えゆくにこそ
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
こがね
幻
(
まぼろし
)
通ふらむ。またある時は
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
気味わるく
幻
(
まぼろし
)
に映つた。
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
なぐさめもなき
幻
(
まぼろし
)
の
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
“幻”の意味
《名詞》
(まぼろし)実体がないのに実在するように見えること。
(まぼろし)すぐ消える儚いもの。
(まぼろし)実在するかどうか確認されていないもの。
(出典:Wiktionary)
幻
常用漢字
中学
部首:⼳
4画
“幻”を含む語句
幻想
幻影
幻像
幻覚
夢幻
幻燈
幻象
幻想的
幻滅
幻術
幻術師
幻想曲
幻視
幻景
幻化
幻暈
幻想家
幻術者
幻翳
幻覺
...