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寧
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むし
ふりがな文庫
“
寧
(
むし
)” の例文
それより
寧
(
むし
)
ろ、頭のどこかに俳画と云ふものと、値段の安いと云ふ事とを結びつけるものが、
予
(
あらかじ
)
め存在したと云つた方が適当である。
俳画展覧会を観て
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手取早く形容すれば、映画のリチャード・バーセルメスをやや日本化した様な顔つきの、
利巧相
(
りこうそう
)
ではあるが、
寧
(
むし
)
ろあどけない青年だ。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
寧
(
むし
)
ろ宗教者の負け惜みとさえ受取れた。そして、これほど世間に評判の悟者でさえ、自然や運命に対する自由さはこの程度のものだ。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
夫の病弱と妻の年齢とは、しかし、二人を、やがて、夫婦というよりも
寧
(
むし
)
ろ、芸術家と其のマネージャアの如きものに変えて了った。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
寧
(
むし
)
ろ、すこし前に進み出て右手を心持前にし、静かに退いて、もとの姿勢に
復
(
かえ
)
る方が「自分は鬼」という心持の表現に合致している。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
源氏の縁坐で
斯様
(
かやう
)
の事も出来たのであるから、
無暗
(
むやみ
)
に将門を
悪
(
にく
)
むべくも無い、一族の事であるから
寧
(
むし
)
ろ
和睦
(
わぼく
)
しよう、といふのである。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、同じ光景を、感激的にロマンチックに、——いや
寧
(
むし
)
ろミスチックに、眺めたとしたら同じ光景が、凄く見えるに相違ありません。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
失礼ですが、そいつは偏見というものですよ、私にいわせると、
寧
(
むし
)
ろ、
煙管
(
パイプ
)
たばこは
嗅
(
かぎ
)
煙草などよりずっと身体に良いくらいですよ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
丁度
(
ちようど
)
普通
(
ふつう
)
の
小
(
ちひ
)
さな
波
(
なみ
)
について
濱
(
はま
)
に
於
(
おい
)
て
經驗
(
けいけん
)
する
通
(
とほ
)
りであるから、
此状態
(
このじようたい
)
になつてからは、
浪
(
なみ
)
といふよりも
寧
(
むし
)
ろ
流
(
なが
)
れといふべきである。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
それから
數日間
(
すうじつかん
)
は
主人
(
しゆじん
)
の
家
(
うち
)
に
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せなかつた。
内儀
(
かみ
)
さんは
傭人
(
やとひにん
)
の
惡戯
(
いたづら
)
を
聞
(
き
)
いて
寧
(
むし
)
ろ
憐
(
あはれ
)
になつて
又
(
また
)
こちらから
仕事
(
しごと
)
を
吩咐
(
いひつ
)
けてやつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
其
(
その
)
理由は接吻に不便だと云ふのが
主
(
しゆ
)
で、装飾としても野蛮時代の遺風であり、又
寧
(
むし
)
ろ
之
(
これ
)
あるが為に男を醜くして居ると云ふのである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
親さえなかったら、僕は国へ帰りたくは有りません。国の方の消息を聞くことは苦痛です。
寧
(
むし
)
ろ僕は長く巴里に留りたいと思います。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
寧
(
むし
)
ろ気分が落ち着いて来ると、今度は前よりも一層
明瞭
(
めいりょう
)
に、一層
執拗
(
しつよう
)
に、ナオミの肉体の
細々
(
こまごま
)
した部分がじーッと思い出されました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
乍併
(
しかしながら
)
、此の家庭問題を、色々と討究して、八釜しくいうて居る現象は、決して悪い事でない、
寧
(
むし
)
ろ悦ぶべき状態に相違ないのであろう。
家庭小言
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
若
(
も
)
しも読者にして、ゆっくり
味読
(
みどく
)
さるるならば、
其
(
そ
)
の分量の少なきを憂えず、得るところ
寧
(
むし
)
ろ
甚
(
はなは
)
だ多かるべきを信ずるものである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
飯を弁当箱につめ込んで、然るのちこれを取出しても、あとに飯粒が弁当箱の底や周壁に附着(
寧
(
むし
)
ろ固着)することのない弁当箱。
科学時潮
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
人は総て死を期していない、
寧
(
むし
)
ろ生きんがために
焦
(
あせ
)
っているのである。随って動揺また動揺、何ら冷静の気を見出すことは能ない。
一日一筆
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
で今更虎の役を振られたとて、それが何の不思議であらう。
寧
(
むし
)
ろ彼にその役が廻らなかつたら、それこそ一つの不可思議事なのである。
虎
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
蓋
(
けだ
)
し透谷の感情は頗る激烈にして、彼れは之れが為に
終
(
つひ
)
に不幸なる運命に陥りし程の
漢子
(
をとこ
)
なりしと雖も、平時は
寧
(
むし
)
ろ温和なる方なりき。
透谷全集を読む
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
が、藤十郎は芸能と云う点からだけでは、自分が七三郎に
微塵
(
みじん
)
も劣らないばかりでなく、
寧
(
むし
)
ろ
右際勝
(
みぎわまさ
)
りであることを十分に信じた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
之
(
これ
)
は
政府
(
せいふ
)
の
指導
(
しだう
)
又
(
また
)
は
消費節約
(
せうひせつやく
)
の
奬勵
(
しやうれい
)
の
行
(
ゆ
)
き
渡
(
わた
)
つたと
云
(
い
)
ふよりも、
寧
(
むし
)
ろ
國民自體
(
こくみんじたい
)
が
此
(
こ
)
の
事柄
(
ことがら
)
の
必要
(
ひつえう
)
を
感
(
かん
)
じて
居
(
を
)
つたからだと
思
(
おも
)
ふのである。
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
何ぞ
寧
(
むし
)
ろ其の語を直接にして、作家の主観を拡大せよと言はざる。其の同情を国家大にせよと言はざる。実生活に接近せよと言はざる。
国民性と文学
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
寧
(
むし
)
ろ周圍の人々との關係に醉つてしまひながら、有樂座の下の眞ン中ごろで、通り道に接する椅子を、自分と並んで占領してゐる女が
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
源吉は、熱っぽい頬を、夜風に
曝
(
さら
)
しながら、一つ一つが、余りに順序よく、破綻を起さなかったのが、
寧
(
むし
)
ろ、あっ気なくさえ思われた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
それにもかかわらず和尚は、兵馬の苦心や覚悟に少しの同情の色をも表わすことをしませんで、
寧
(
むし
)
ろ冷笑のような語気であります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
心の許さぬ、望みのない思ひをいさぎよく
棄
(
す
)
てるに最も安全な
途
(
みち
)
は
寧
(
むし
)
ろ其の相手の欠陥に幻滅を起すことより他になかつたからである。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
僕は山口で
直
(
す
)
ぐ死んで了おうかと思いました。
彼
(
あ
)
の時、実に彼の時、僕が思い
切
(
きっ
)
て自殺して了ったら、
寧
(
むし
)
ろ僕は
幸
(
さいわい
)
であったのです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
宮は
危
(
あやぶ
)
みつつ彼の顔色を
候
(
うかが
)
ひぬ。常の如く戯るるなるべし。その
面
(
おもて
)
は
和
(
やはら
)
ぎて一点の怒気だにあらず、
寧
(
むし
)
ろ
唇頭
(
くちもと
)
には笑を包めるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
寧
(
むし
)
ろ、二人ともO村へ早く帰れるようになったので、何かほっとして、いそいそとしているような安心な様子さえしていたではないか。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
何処
(
どこ
)
まで
弾
(
はず
)
むか知れないような体を、ここでまた荒い仕事に働かせることのできるのが、
寧
(
むし
)
ろその日その日の幸福であるらしく見えた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
大体
(
だいたい
)
に
於
(
おい
)
て
申
(
もう
)
しますと、
天狗
(
てんぐ
)
の
正体
(
しょうたい
)
は
人間
(
にんげん
)
よりは
少
(
すこ
)
し
大
(
おお
)
きく、そして
人間
(
にんげん
)
よりは
寧
(
むし
)
ろ
獣
(
けもの
)
に
似
(
に
)
て
居
(
お
)
り、
普通
(
ふつう
)
全身
(
ぜんしん
)
が
毛
(
け
)
だらけでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
三千代の兄と云うのは
寧
(
むし
)
ろ
豁達
(
かったつ
)
な気性で、懸隔てのない
交際振
(
つきあいぶり
)
から、友達には
甚
(
ひど
)
く愛されていた。ことに代助はその親友であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寧
(
むし
)
ろ
甥
(
おい
)
の性格のなかに自分と同位元素のあることを認め、これを
撓
(
た
)
め直すこと己れの為すが如くせよとさえ思ったくらいである。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大不都合を見るよりも
寧
(
むし
)
ろ小頑小癖小不調子小不都合の眼を具するを尚び、偏曲
輭弱
(
なんじやく
)
なる意気より朴直なる野暮の中に隠れたる美を嘲り
「伽羅枕」及び「新葉末集」
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
そんな兵隊の並んだやうな町は美しくは無い、
強
(
し
)
ひて西洋風にしたいなら、
寧
(
むし
)
ろ反対に軒の高さどころか、あらゆる建築の様式を
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
同
(
おな
)
じ
不正
(
ふせい
)
を
企
(
くわだて
)
るのならば、百三十六
個
(
こ
)
の
麻雀牌
(
マアジヤンパイ
)
の
背中
(
せなか
)
の
竹
(
たけ
)
の
木目
(
もくめ
)
を
暗記
(
あんき
)
するなどは、その
努力感
(
どりよくかん
)
だけでも
僕
(
ぼく
)
には
寧
(
むし
)
ろ
氣持
(
きもち
)
がいい。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
何れも
大作
(
たいさく
)
だ。雖然何を見たからと謂つて、些とも
興
(
きよう
)
が
乘
(
の
)
らぬばかりか、其の名畫が眼に映つると、
寧
(
むし
)
ろ
忌々
(
いま/\
)
しいといふ氣が亢じて來る。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「私の東京に参りましたのは、そういうことには
寧
(
むし
)
ろ関係しない
積
(
つもり
)
でおます。別段こちらに居りましても、二人の間にはどうという……」
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私どもの座右銘は「おたがひに許しあへ。」と云ふのではなく、
寧
(
むし
)
ろ「おたがひに理解せよ。」と云ふのでなければならない。
婦人解放の悲劇
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
それこそかえって神の意志に背くものであるという強固な信条のもとに、
寧
(
むし
)
ろコペルニクスの説を肯定しようとしたのでした。
ガリレオ・ガリレイ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
松岡は襖をあけて出る女の姿を見ないようにしたが、女が階段を下りると足音をぎしぎしと
寧
(
むし
)
ろ静かすぎる程度で聞き澄した。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
寧
(
むし
)
ろ彼らの眼をはばかるやうにこそこそと逃出したから、自分は
不甲斐
(
ふがひ
)
ない人間だ。散々そこいらを飲んですつかり更けて家の戸を叩いた。
現代詩
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
彼れは向象賢よりもヨリ大なる時勢の解釈者でありました。彼れは時勢の
謳歌
(
おうか
)
者ではなくて、
寧
(
むし
)
ろ時勢の作為者でありました。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
日頃は
寧
(
むし
)
ろ弱気で好人物の早坂勇ですが、仕事の事となると、俄然性根に筋金が入って、
梃
(
てこ
)
でも動かない闘士になるのでした。
笑う悪魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「アノーなんですッて、そんなに親しくする位なら
寧
(
むし
)
ろ貴君と……(すこしもじもじして言かねて)結婚してしまえッて……」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それはロシアのマルキシズムか支那自身の軍国か、いや
寧
(
むし
)
ろ印度の阿片かペルシャの阿片か、そのどちらかにちがいないのだ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
これは
寧
(
むし
)
ろ、「ササの葉はミヤマもサヤにミダレども」のようにサ音とミ音と両方で調子を取っているのだと解釈する方が
精
(
くわ
)
しいのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
若
(
も
)
しそこに越えることの出来ない
溝渠
(
こうきょ
)
があるというならば、私は
寧
(
むし
)
ろ社会生活を破壊して、かの
孤棲
(
こせい
)
生活を営む
獅子
(
しし
)
や
禿鷹
(
はげたか
)
の習性に依ろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
否
(
いや
)
、公平な判定さ。個人としては誠実で申分ありませんが、一般とすると未だ封建思想が抜け切っていませんから、
寧
(
むし
)
ろ
憐憫
(
れんびん
)
に
値
(
あたい
)
しますよ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
しかし彼らは
寧
(
むし
)
ろそれを強味とするかの如く、橋上を突破して、ついに敵のまっただ中へ躍り込み、行くところを血にそめた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寧
常用漢字
中学
部首:⼧
14画
“寧”を含む語句
寧波
安寧
康寧
常寧殿
悪丁寧
寧王
済寧
丁寧
叮寧
鄭寧
寧日
寧子
寧楽
御丁寧
寧馨児
甘寧
建寧
咸寧
土方寧
寧楽朝
...