孔子こうし)” の例文
そして町中の孔子こうしさまのやしろまで来ると、汚い細路次の蔭から、一見居職いじょくとわかる猫背の男がヒョコヒョコ出て来て、出会いがしらに
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼も孔子こうしならって、述べて作らぬ方針をとったが、しかし、孔子のそれとはたぶんに内容をことにした述而不作のべてつくらずである、司馬遷にとって
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
画家さん、壺の右の端にね、孔子こうし様が立つてゐるんですよ。支那しな山東省さんとうしやう鄒邑すういふといふ所で産れた孔子様、この人は偉い人だよ。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
聖人になりたい、君子になりたい、慈悲の本尊になりたい、基督クリスト釈迦しゃか孔子こうしのような人になりたい、真実ほんとにそうなりたい。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
皆是れ御最期までもが君の、世を思い、家を思い、臣下を思いたまいて、孔子こうしの国を去りかね玉いたる優しき御心ぞ。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
芸妓、紳士、通人つうじんから耶蘇ヤソ孔子こうし釈迦しゃかを見れば全然たる狂人である。耶蘇、孔子、釈迦から芸妓、紳士、通人を見れば依然として拘泥こうでいしている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
孔子こうしは「足、足、使ヲシテ一レ矣〈食を足し、兵を足し、民をしてこれを信ぜしむ〉」
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
象牙色ぞうげいろの磁器にもられた液体琥珀こはくの中に、その道の心得ある人は、孔子こうしの心よき沈黙、老子ろうしの奇警、釈迦牟尼しゃかむにの天上の香にさえ触れることができる。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
孔子こうしの教えのごときは、よほど俗界にゆかりの近いものであるが、なお恭謙譲の三者をもって最高の徳として考えている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
散歩かた/″\門外から遙かに孔子こうしの像を拜んで涙を流して歸つて來るといつた、世にも氣の毒な純情青年でした。
孔子こうしも東洋人だ。そして、あの大提督トーゴーだって、みんな東洋人だ。東洋人を軽蔑するのは、いけないことだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
一体口の先は調法なもので、口の先では豪傑にも聖人にも孔子こうしにも釈迦しゃかにもなれる。これは今の人間の智恵が、昔の人間の智恵よりよほど進んだのである。
はるばるこの国へ渡って来たのは、泥烏須デウスばかりではありません。孔子こうし孟子もうし荘子そうし、——そのほか支那からは哲人たちが、何人もこの国へ渡って来ました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
老子らうし苦縣こけん厲郷らいきやう曲仁里きよくじんりひとなりせい李氏りしあざな伯陽はくやうおくりなたんふ。しう(一)守藏室しゆざうしつなり孔子こうししうき、まされい老子らうしはんとす。
唯我独尊を称したる釈迦如来しゃかにょらいは、絶対に自らを尊べり、絶対他力を唱えたる親鸞しんらんは絶対に他をたっとんで自個をむなしゅうせり、孔子こうし耶蘇ヤソとは他を尊んでまた自個を尊べり
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
大河君は、普通ふつうの塾生とはちがって京大を出た人だよ。専門は哲学てつがくだ。しかし概念がいねんの哲学者じゃない。孔子こうしとかソクラテスとかいった型の、いわゆる哲人だね。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
キリストもシャカも老子ろうし孔子こうし空海くうかい日蓮にちれん道元どうげん親鸞しんらんもガンジイも歩いた。ダヴィンチも杜甫とほ芭蕉ばしょうも歩いた。科学者たちや医者たちも皆よく歩いています。
歩くこと (新字新仮名) / 三好十郎(著)
孔子こうし釈迦しゃか耶蘇やそもいろいろなちがった言葉で手首を柔らかく保つことを説いているような気がする。
「手首」の問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
桜さく三味線の国は同じ専制国でありながら支那や土耳古トルコのように金と力がない故万代不易ばんだいふえきの宏大なる建築も出来ず、荒凉たる沙漠や原野がないために、孔子こうし釈迦しゃか
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
例えば耶蘇ヤソやマホメットのような宗教家、コロンブスやマルコ・ポーロのような旅行家、ソクラテスやブルノーのような情熱哲学者、孔子こうしや老子のような人間思想家
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
古来英雄と称するものは大抵たいてい奸雄かんゆう梟雄きょうゆう、悪雄の類である、ぼくはこれらの英雄を憎む、それと同時に鎌足かまたりのごとき、楠公なんこうのごとき、孔子こうしのごとき、キリストのごとき
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
孔子こうし様は、君子は乱神怪力を語らずといわれた。さすがに深い深い実感から生れた話だと思う。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
主人のチャン老人は、孔子こうしのように長い口ひげあごひげをはやして、トマトのように色つやのよい老人であった。老人は、姉川が持ってきたメダルを二万円で買うといった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
孔子こうししゅんの韻学の中に、七種の音を発する木柱のあるのを知って茫然となったと云う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だまつて人のふことを聞け、醋吸すすひの三せい結構けつこうでございます、なれども御祝儀ごしゆうぎの席には向きませんかとぞんじます、孔子こうし老子らうし釈迦しやかぶつだからおいはひの席にはけられませんと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
くて支那しなにはむかしから化物思想ばけものしさう非常ひぜう發達はつたつなかにはきはめて雄大ゆうだいなものがある。もつと儒教じゆけうはうでは孔子こうし怪力亂神くわいりきらんしんかたらず、鬼神妖怪きじんえうくわいかないが道教だうけうはうではさかんこれ唱道しやうだうするのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
宗教でも、もうだいぶ古くシュライエルマッヘルが神を父であるかのように考えると云っている。孔子こうしもずっと古く祭るにいますが如くすと云っている。先祖の霊があるかのように祭るのだ。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
日本の明治以来の自由思想も、はじめは幕府に反抗し、それから藩閥を糾弾し、次に官僚を攻撃している。君子は豹変ひょうへんするという孔子こうしの言葉も、こんなところを言っているのではないかと思う。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
早い話が、理屈で世間がどうか、なるならもう、とうに人間はみんな幸福しあわせになっているだろうと思われるんだ。日本にゃあ、神の道があるし、唐天竺からてんじくにゃあ孔子こうし孟子もうし、お釈迦しゃかさんもおいでなのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
きくわれなほ人の如くかならずうつたへなからしむとかや今いふ公事訴訟くじそしようねがひ事になりたとへば孔子こうし聖人せいじんには公事訟訴くじそしよう出來たる時はことわざにちゑなきとの事われ猶人の如くと也さりながら孔子聖人奉行ぶぎやうとなつて其訴そのうつた自然しぜんと世の中にたえるやう天下を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
孔子こうしとき麒麟きりんづるにおな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
と父からたまには戒告をうけるが、いまの世情を見ても、家庭をながめても、ばかばかしくて、孔子こうしの書物などはにうけられなかった。
釈迦しゃか孔子こうしはこの点において解脱を心得ている。物質界におもきを置かぬものは物質界に拘泥する必要がないからである。……
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
檀弓だんぐうに見えて居る通り、子上しじょうの母死してそうせずの条によれば、孔子こうしの御孫の子思子しししが妻を去られたことは分明である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかるに少し油断し、修養をおこたると悪夢を結ぶか、よしそれまでに至らぬとしても吉夢を見ないようになる。孔子こうし
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
臣を使うに礼をもってし臣、君につかうるに忠をもってす、これが孔子こうしの言葉だ、これこそ日のもとの国体にかなう教えだ、サアこれでも貴様は孟子が好きか。
初恋 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
男女両性の問題については古来幾多いくたの思想家も、宗教家も、はた立法家も、皆迷うた。釈迦しゃかも迷えば、孔子こうしも迷う、ソロモンも迷えば、マホメットも皆迷った。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
我ら会員は相次いでナポレオン、孔子こうし、ドストエフスキイ、ダアウィン、クレオパトラ、釈迦しゃか、デモステネス、ダンテ、せん利休りきゅう等の心霊の消息を質問したり。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆゑ其傳そのでん(六六)ついづ。其書そのしよいたつてはおほこれり。ここもつろんぜず、その(六七)軼事いつじろんず。管仲くわんちう所謂いはゆる賢臣けんしんなり。しかれども(六八)孔子こうしこれせうとす。
それは東京の中学校を落第して仕方なしに浦和へきた怠惰生たいだせいからの感染かんせんであった。孔子こうし一人いちにん貪婪どんらんなれば一国いっこくらんをなすといった、ひとりの不良があると、全級がくさりはじめる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
親のいうことにゃ、どこまでも逆らってならぬとは、孔子こうしさまでもいっていないようだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
科学は孔子こうしのいわゆる「格物」の学であって「致知」の一部に過ぎない。しかるに現在の科学の国土はまだウパニシャドや老子ろうしやソクラテスの世界との通路を一筋でももっていない。
科学者とあたま (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
随分ずゐぶんちやをとこだな……草履下駄ざうりげたかたちんばにいてやつがあるか、いぬがくはへてつた、ほかに無いか、それではそれでけ、醋吸すすひの三せい孔子こうし老子らうし釈迦しやかだよ、天地てんち唐物緞子からものどんす
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そんな事なら驚きゃしませんがね。町内の評判息子で、孔子こうし様の申し子のような若旦那が死んだ後へ、言い交したという、若い女が乗込んで来たとしたら、どんなもんです。え? 親分」
孔子こうし堯舜ぎょうしゅん三代の道を述べて、その流義を立てたまへり。堯舜より以下を取れるは、其事のあきらかに伝はれる所なればなり。されども春秋のころにいたりて、世変り時うつりて、其道一向に用ゐられず。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
だから耶蘇教徒は父のために存在している。儒者じゅしゃ孔子こうしのために生きている。孔子もいにしえの人である。だから儒者は父のために生きている。……
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかし陽貨ようか孔子こうしをうらんで害を加えんとしたり、臧倉ぞうそうなどというやからが孟子に向ってつばを吐いたしぐさにも似ておる。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暴虎馮河ぼうこひょうがには孔子こうしくみせずといったが、世俗はいまだ彼らに敬服けいふくする。昔時せきじ、ローマ時代には徳という字と勇気という字とは二つ別々に存在しなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「もし堯舜もゐなかつたとすれば、孔子こうしうそをつかれたことになる。聖人の譃をつかれるはずはない。」
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
孔子こうしいにしへ仁聖じんせい賢人けんじん(一七)序列じよれつする、太伯たいはく伯夷はくいともがらごときもつまびらかなり。ところもつてすれば、(一八)由光いうくわういたつてたかし。(一九)其文辭そのぶんじすこしも概見がいけんせざるはなん