奥深おくふか)” の例文
旧字:奧深
現界げんかい景色けしきくらべてべつ格段かくだん相違そういもありませぬが、ただこちらの景色けしきほうがどことなくきよらかで、そして奥深おくふかかんじがいたしました。
あちらには、獰猛どうもうけものの、おおきいのごとく、こうこうとした黄色きいろ燈火ともしびが、無気味ぶきみ一筋ひとすじせんよる奥深おくふかえがいているのです。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこにはながい年月かれが君臨くんりんした広々とした領地がある。かれの部下は王を失って、いまはその谷間の奥深おくふかげていったことであろう。
かわやぶしたながれ、そこにかかっている一つの水車すいしゃをゴトンゴトンとまわして、むら奥深おくふかくはいっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
せまく暗い路地裏ろぢうらのいやに奥深おくふか行先ゆくさき知れず曲込まがりこんでゐるのを不思議さうに覗込のぞきこむばかりであつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
非衛生的な奥深おくふかい部屋にめて育った娘たちのとおるような白さと青さと細さとはどれほどであったか田舎者の佐助少年の眼にそれがいかばかりあやしくえんに映ったか。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なるほどもり入口いりくちではなんこともなかつたのに、なかると此通このとほり、もつと奥深おくふかすゝんだら不残のこらず立樹たちきはうからちて山蛭やまびるになつてやう、たすかるまい、此処こゝ取殺とりころされる因縁いんねんらしい
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夢も通はぬとほつぐに、無言しじまつぼね奥深おくふか
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
白日ひるともる奥深おくふかさ、遠みかしこみ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
矢張やは歴史れきし名高なだか御方おかただけのことがある。』わたくしこころなかひとりそう感心かんしんしながら、さそわるるままに岩屋いわや奥深おくふかすすりました。
光治こうじは、そのからたちがって、もりなかをもっと奥深おくふかあるいてゆきますと、ふとあちらに、ちょうど自分じぶんおなとしごろの少年しょうねんがあちらきになって
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
みづうみ殿堂でんだうこゝろざす、曲折きよくせつかぞふるにいとまなき、このなが廊下らうかは、五ちやうみぎれ、十ちやうひだりまがり、二つにわかれ、三つにけて、次第々々しだい/\奥深おくふかく、はやきはとなり、しづかなるはふちとなり、はしるははやせとなり
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時分じぶん鎌倉かまくら武家ぶけ住居やしきならんだ、物静ものしずかな、そしてなにやら無骨ぶこつ市街まちで、商家しょうかっても、品物しなものみな奥深おくふか仕舞しまんでありました。
ちょうど、このとき、奥深おくふかてら境内けいだいから、とぼとぼとおじいさんがつえをついてあるいててきました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
らえられたら、ころされてしまいます。そして、晩方ばんがたは、はやく、おおきなはやし奥深おくふかくはいってねむるのです。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんな乞食こじき門番もんばん居眠いねむりをしていましたので、だれにもとがめられることがなく、草履ぞうりおともたてずに、若草わかくさうえんで、しだいしだいにおしろ奥深おくふかはいってきたのであります。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、毎日まいにち毎日まいにち晩方ばんがたになると、徳利とくりをさげて、さけいにゆきました。しかし、三ごく一の花嫁はなよめは、いえ奥深おくふかくはいっているとみえて、一も、そのかおることができなかった。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「たいへんに、さむくなりましたね。みねかぜるようです。しかし、このもりは、奥深おくふかいから、いつゆきになっても、わたしたちは、安心あんしんですが……。」と、とりたちは、はなしをしています。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはいっそ、二人ふたりで、やまのあちらへにげていこうとおもいましたが、くまや、おおかみのいるもりや、たに奥深おくふかくはいらなければなりませんので、ころされることなしに、ぶじいけるとおもいません。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよいよ自分じぶんが、日輪にちりんがけてそらうえんでゆくがきたとき、自分じぶんは、くらくなったら、太陽たいようがああして谷底たにそこしずんでしまって、よるになって、ほしひかりが、うすあお奥深おくふかそらかがやきはじめたとき
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、人間にんげんのちょっとゆけるような場所ばしょでありません。高山こうざんの、しかも奥深おくふか嶮岨けんそながけの岩角いわかどにはえて、はげしいあらしにかれていたです。このしみは、なだれにたれた傷痕きずあとでございます。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かすみの奥深おくふかってしまったのであります。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しろ奥深おくふかくおひめさまはんでいられました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)