トップ
>
凄
>
すさま
ふりがな文庫
“
凄
(
すさま
)” の例文
岸を噛む怒濤が悪魔の
咆
(
ほえ
)
叫
(
さけ
)
ぶように、深夜の空に
凄
(
すさま
)
じく轟いているほかは、ひっそりと
寝鎮
(
ねしずま
)
った建物の中に、何の物音もしていない。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ただ
一呑
(
ひとのみ
)
と
屏風倒
(
びょうぶだおし
)
に
頽
(
くず
)
れんずる
凄
(
すさま
)
じさに、
剛気
(
ごうき
)
の
船子
(
ふなこ
)
も
啊呀
(
あなや
)
と驚き、
腕
(
かいな
)
の力を失う
隙
(
ひま
)
に、
艫
(
へさき
)
はくるりと波に
曳
(
ひか
)
れて、船は
危
(
あやう
)
く
傾
(
かたぶ
)
きぬ。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かうしてゐる中にも、時は
経
(
た
)
つて行つた。ある夜は
凄
(
すさま
)
じい風雨がやつて来た。本堂ばかりではない、自分の居間にも雨が
盛
(
さかん
)
に
洩
(
も
)
つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
一つは平岡と自分を是非とも一所に
捲
(
ま
)
き込むべき
凄
(
すさま
)
じいものであった。代助はこの間三千代に逢ったなりで、
片片
(
かたかた
)
の方は捨ててある。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この渦が雷雨の一つの型であって、こうして出来た上昇気流が、電気の分離を生じ、あの
凄
(
すさま
)
じい電光になり、また
雹
(
ひょう
)
を降らすのである。
「茶碗の湯」のことなど
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
小唄の師匠のお組と掴み合いの喧嘩をした後の
凄
(
すさま
)
じい発作は、恐らく因業で聞えた母親さえも、
三舎
(
さんしゃ
)
を避ける外は無かったのでしょう。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし
生
(
は
)
え
際
(
ぎわ
)
と云っても額の真中か耳のうしろかどこかにちょっぴり
痕
(
あと
)
が附いたぐらいを根に持って一生
相好
(
そうごう
)
が変るほどの
凄
(
すさま
)
じい危害を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
途端
(
とたん
)
にガチャーンといって
硝子
(
ガラス
)
の
破
(
わ
)
れるような
凄
(
すさま
)
じい音がして、これにはクラブ
館
(
ハウス
)
の誰もがハッキリと
変事
(
へんじ
)
に気がついたのだった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「どうして、やつは
大魔霊
(
デモーネン・ガイスト
)
さ」と法水は意外な
言
(
ことば
)
を吐いた。「あの弱音器記号には、中世迷信の形相
凄
(
すさま
)
じい力が
籠
(
こも
)
っているのだよ」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
重役でありながらこのようなことを云う友人の顔を見ながら、梶は日本の変化の
凄
(
すさま
)
じさを今さら見事だとまたここでも感服するのだった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
彼の
唇
(
くちびる
)
の辺には、
凄
(
すさま
)
じい程の冷たい表情が浮んでいた。が、それにも
拘
(
かかわ
)
らず、声と動作とは、恋に狂うた男に
適
(
ふさわ
)
しい熱情を、持っている。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
まなこをこらしてその
凄
(
すさま
)
じき柱を見れば、はたせるかな、竜の尾頭その中に歴々たりとものの本にござった、また別の一書には、或る人
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
会津山
颪
(
おろし
)
肌に
凄
(
すさま
)
じく、白雪紛々と降りかかったが、人の用い
憚
(
はば
)
かりし荒気大将佐々成政の
菅笠
(
すげがさ
)
三蓋
(
さんがい
)
の
馬幟
(
うまじるし
)
を立て、是は近き頃下野の住人
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
凄
(
すさま
)
じい音を立てたのが、この世の別れであったかなかったか、弁信はついに井戸の底へ、生きながら投げ込まれてしまいました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
生々
(
せいせい
)
又生々。
営々
(
えいえい
)
且
(
かつ
)
営々。
何処
(
どこ
)
を向いても
凄
(
すさま
)
じい自然の
活気
(
かっき
)
に
威圧
(
いあつ
)
される。
田圃
(
たんぼ
)
には
泥声
(
だみごえ
)
あげて
蛙
(
かわず
)
が「
生
(
う
)
めよ
殖
(
ふ
)
えん」とわめく。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すると間もなく
凄
(
すさま
)
じい音をはためかせて、汽車が隧道へなだれこむと同時に、小娘の開けようとした硝子戸は、とうとうばたりと下へ落ちた。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
双方ともにその燃ゆる眼や
凄
(
すさま
)
じい姿勢の前には、ただ主君の安危如何があるだけで、それ以外の何ものもなかったのである。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大弥太はもちろん竹原兄弟も、幽鬼じみた相手の
凄
(
すさま
)
じい様子に、身の毛のよだつ思いしいしい、一歩一歩あとじさりしたが
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
信吾の乗つて来た列車と川口駅で
擦違
(
すりちが
)
つて来た、上りの貨物列車が、
凄
(
すさま
)
じい音を立てて、二人の間を飛ぶが如くに通つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
雨戸を開けて見ると、燃え上る
河岸
(
かし
)
の土蔵の火は姉弟の眼に
凄
(
すさま
)
じく映った。どうやら、一軒で済むらしい。見ているうちに、すこし下火に成る。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あな
凄
(
すさま
)
じ、と貫一は
身毛
(
みのけ
)
も
弥竪
(
よだ
)
ちて、
縋
(
すが
)
れる枝を放ちかねつつ、看れば、
叢
(
くさむら
)
の底に
秋蛇
(
しゆうだ
)
の行くに似たる
径
(
こみち
)
有りて、ほとほと
逆落
(
さかおとし
)
に
懸崖
(
けんがい
)
を
下
(
くだ
)
るべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
凩が
凄
(
すさま
)
じく吼え狂うと、
洋燈
(
ランプ
)
の光が明るくなって、
卓
(
テーブル
)
の上の
林檎
(
りんご
)
はいよいよ
紅
(
あか
)
く暖炉の火はだんだん
暖
(
あたたか
)
くなった。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
咽喉
(
のど
)
をつんざくかと聞ゆる慎九郎の声に、門前で押し合っていた才蔵は、老僕を突き退けて飛んできた。焔は
凄
(
すさま
)
じく大小無数の毒舌をいよいよ吐いていた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
そして松林の中の粉つぽい白い砂土の
小径
(
こみち
)
を駅の方へとぼ/\歩いた。地上はそれ程でもないのに空では
凄
(
すさま
)
じい春風が
笞
(
むち
)
のやうにピユーピユー鳴つてゐる。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
電光が幌を破るようにして
隙間
(
すきま
)
から射し込んで来る。おりおり
神解
(
かみと
)
けがするもようである。
凄
(
すさま
)
じいその音響に湿気を帯びた重い空気がびりびりと震動する。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
何でも八景投票の恵那峡の騒ぎというものは
凄
(
すさま
)
じかったらしい。うっかり悪口でもいおうものなら殺される。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
ところで郊外の我々がこんな呑気な時間を送っていた間に、東京市中ではもう
凄
(
すさま
)
じい火災が始まっていた。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
彼はその
凄
(
すさま
)
じい噴煙を見上げながら、丁度今の自分と同じようにそれを見上げていた去年の夏のまだいかにも健康そうだった自分の姿をひょっくり思い浮べた。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
此の白洲の入口の戸を締切る音ががら/\ピシャーリッと
凄
(
すさま
)
じく脳天に響けますので、大抵の者は仰天して怖くなりますから、嘘を
吐
(
つ
)
くことが出来なくなって
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
乾坤一擲
(
けんこんいってき
)
ともいうべき途方もない壮大な計画を実現された情熱には、凡情のとうていうかがい知れぬ激しさがある。同時に、天平の深淵の
凄
(
すさま
)
じさも推察される。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
三たび目の
野草
(
やそう
)
の花が咲いた。彼は
某日
(
あるひ
)
水を飲むために谷川の岸に出た。狭い流れではあるが滝のように流れ落ちる水が岩にぶっ
衝
(
つか
)
って
凄
(
すさま
)
じい光景を呈していた。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
大変な雷が鳴り出して暴雪暴風という
凄
(
すさま
)
じい光景ですから、着物なり荷物なりはまた濡れてしまい折角乾かしたものをすっかりとまた濡らしてしまいましたから
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
取な
早々
(
はや/″\
)
用意を致せと
云
(
いふ
)
言葉
(
ことば
)
に隨て然ば御先へと又
短刀
(
たんたう
)
を
持直
(
もちなほ
)
しあはや只今
突立
(
つきたて
)
んとする時亦々
廊下
(
らうか
)
に
物音
(
ものおと
)
凄
(
すさま
)
じく聞えければ越前守何事やらん
今暫
(
いましばら
)
くと忠右衞門を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
その音もなく形もない
凄
(
すさま
)
じい戦いを極度に澄明な、静寂な、胸に充満しながらどこまでもひろがってゆくような感慨をもって凝然と、また
茫然
(
ぼうぜん
)
と眺めつくしている。
母の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
浅草橋も
後
(
あと
)
になし
須田町
(
すだちょう
)
に来掛る程に雷光
凄
(
すさま
)
じく街上に閃きて雷鳴止まず雨には風も
加
(
くわわ
)
りて
乾坤
(
けんこん
)
いよいよ暗澹たりしが九段を上り半蔵門に至るに及んで空初めて晴る。
夕立
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
美術家だつたら、雲を見ようと、動物園を見ようと、動物園よりはもつと
凄
(
すさま
)
じい駅長の
女房
(
かない
)
の寝顔を見ようと、一向掛け構ひはないといつたやうな物の言ひ方だつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
童子はと見ますと、その姿はなく、蠅の飛びかう羽音のみが、あたりに
凄
(
すさま
)
じく致して居るのです。
あじゃり
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
北風に
煽
(
あふ
)
られて避病院のあたりは
凄
(
すさま
)
じい焔が燃え上つてゐた。……次から次へ觸れ廻つて村中の者は皆濱の方へ飛び出して若い者達は爭つて漁船に乘つて島の方へ漕いだ。
避病院
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「私ゃ私の行きどころへ行くんですもの。誰が何と言うもんですか。」と
凄
(
すさま
)
じい鼻息であった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この句は卯の花の
凄
(
すさま
)
じいというか、無気味というか、そういう方の感じを発揮したものである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そのとたんに村はずれの墓場の中から、形相
凄
(
すさま
)
じき一人の男が猛烈な勢いでとびかかってきた。あたかも知らぬ村に旅人が足を入れた時、犬が飛び出してきて吠えつくように。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
白んだ戸の隙間から吹き込む風で蚊帳が
凄
(
すさま
)
じい程
煽
(
あふ
)
られて居る。次の室から起きて来た二人の女の児が戸の間から庭を覗いてコスモスもダアリヤも折れて仕舞つたと言つて居る。
台風
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
さうして
其
(
そ
)
の
焔
(
ほのほ
)
は
近
(
ちか
)
く
聳
(
そび
)
えた
杉
(
すぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
から
枝
(
えだ
)
へ
掛
(
か
)
けて
爪先
(
つまさき
)
で
引
(
ひ
)
つ
掻
(
か
)
いた。
其
(
そ
)
の
度
(
たび
)
に
杉
(
すぎ
)
は
針葉樹
(
しんえふじゆ
)
の
特色
(
とくしよく
)
を
現
(
あらは
)
して
樹脂
(
やに
)
多
(
おほ
)
い
葉
(
は
)
がばり/\と
凄
(
すさま
)
じく
鳴
(
な
)
つて
燒
(
や
)
けた。
屋根裏
(
やねうら
)
の
竹
(
たけ
)
が
爆破
(
ばくは
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
わしの様に烈しく恋をした者は此世に一人もゐない程、恋をした——
愚
(
おろか
)
な、
凄
(
すさま
)
じい熱情を以て——わしは寧ろその熱情がわしの心臓をずたずたに裂かなかつたのを怪しむ位である。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
三日目に老母さんから聴いたと思われて、柳町から新吉が
凄
(
すさま
)
じい権幕でやって来た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
光の穂は風に吹かれて消えさうになびいたが、彼の妻の
袖屏風
(
そでびやうぶ
)
の陰で、ゆらゆらと大きく揺れた。風は何時の間にかおだやかになつて居たが、雲は
凄
(
すさま
)
じい勢で南の方へ
押奔
(
おしはし
)
つて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
と、突然、後部の
巻揚機
(
ウインチ
)
ががら/\と
凄
(
すさま
)
じい響を出して、その五六本の
鋼条
(
ワイヤー
)
の先に
吊
(
つ
)
るした
鈎
(
かぎ
)
づきの滑車が弾薬庫にする/\と滑りこんだ。それを真つ先に見つけたのは
掌砲長
(
しやうはうちやう
)
だつた。
怪艦ウルフ号
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
唇
(
くちびる
)
をキッと
噛
(
か
)
みしめて、絶えず部屋の中を行きつ
戻
(
もど
)
りつしながら、熱しきったナイフをポケットのなかで握りしめ、何かしら
凄
(
すさま
)
じい出来事にたいする心構えを、あらかじめ整えていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
杜鵑
(
とけん
)
亭(レスタウラン・ド・クツクウ)は
巴里
(
パリイ
)
にある一つの
伊太利亜
(
イタリア
)
料理店である。モンマルトルの高い所に白い
凄
(
すさま
)
じい大きい姿を見せて居るサクレエ・クウル
寺
(
じ
)
の近くにあるのである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
深沢が見咎めて
糺
(
ただ
)
せば
詞
(
ことば
)
窮して担いかけし障子
襖
(
ふすま
)
を
其所
(
そこ
)
へ捨て逃げ去りしなりというに、東京という所の
凄
(
すさま
)
じさ、白昼といい人家稠密といい、人々見合う中にて人の物を掠め去らんとする者あり。
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
凄
常用漢字
中学
部首:⼎
10画
“凄”を含む語句
物凄
凄然
凄惨
凄愴
凄気
凄婉
凄寥
凄々
凄味
凄艶
凄腕
凄文句
凄涼
凄壮
幽凄
凄絶
凄烈
凄慘
凄風
凄美
...