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世の伝うるところの賽児の事既にはなはだ奇、修飾をらずして、一部稗史はいしたり。女仙外史の作者のりてもって筆墨をするもまたむべなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
越後の上杉家とは、それから間もなく、上野国こうずけのくにの国境で、小競こぜりあいがあり、甲州の武田信玄たけだしんげんは、久しくなりをひそめていたを鳴らして
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただちに特別捜査隊を編成して、それに秘策ひさくさずけて出発させた。そして彼はゆうして、単身、青竜王の探偵事務所を訪ねた。——
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は今も相手の投げた巌石を危くかわしながら、とうとうしまいには勇をして、これも水際みぎわよこたわっている牛ほどの岩を引起しにかかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
前年神戸病院を退きて故郷に保養しつつありし際衰弱甚だしかりしがある日勇をして郊外半里ばかりの石手寺いしでじを見まひぬ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
すなわち万民安堵あんど、腹をしてるを知ることなれども、その足るを知るとは、なし、足らざるを知らざりしのみ。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と勇をす。不図ふと半座はんざを分けた風呂敷包が目をいた。チョコレートだ。アメリカでは娘をチョコレートで釣る。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
追手おっての人々もおなじ村境むらざかいまで走って来たが、折柄おりからの烈しい吹雪ふぶきへだてられて、たがいに離れ離れになってしまった。其中そのなかでも忠一は勇気をして直驀地まっしぐらに駈けた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
空を踏むがごとく、雲を行くがごとく、水中にけいを打つがごとく、洞裏とうりしつするがごとく、醍醐だいごの妙味をめて言詮ごんせんのほかに冷暖れいだん自知じちするがごとし。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そちにとってはふたの姉、君尾の身の上心もとない。駕籠は危険、矢弾やだまのマト。杉窪まではわずか半里。そちも紀州頼宣の娘、勇をして徒歩で行け!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
忠直卿は、右近め、昨夜あのように、思いきった言葉を吐いた男であるから、必死の手向いをするに相違ないと、消えかかろうとする勇気をして立ち向かった。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
つひ隊長たいちやうにんりてもつとなへ、其次そのつぎもつ隊長たいちやうす。ここおいこれす。婦人ふじん(九)左右前後跪起さいうぜんごききみな(一〇)規矩繩墨きくじようぼくあたり、あへこゑいだすものし。
私は勇をして何度も立ち上ったが、改札口の処まで行くと、恐ろしい運命に呪われた如く足がすくんで、動悸が激しくなって、又よろよろと元のベンチへ戻って来た。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その事あって二三日してから、私は勇気をして知合の医者の所へ出掛けて相談して見ました。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僕はすこぶる勇気をし殊に平気な風を装うて門を這入った。家の人達は今夕飯最中で盛んに話が湧いているらしい。庭場の雨戸は未だ開いたなりに月が軒口までさし込んでいる。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
加ふるに石南しやくなん蟠屈ばんくつ黄楊つけ繁茂はんもとを以てし、難いよ/\難を増す、俯視ふしして水をもとめんとすれば、両側断崖絶壁だんがいぜつぺき、水流ははるかに数百尺のふもとるのみ、いうしてはやく山頂にいたらんか
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
でも、私は勇をして参ります。喜んであなたの腕に抱かれに行きます。そのことを思うと手が震えてなりません。どうか私の心を御察し下さい。両親よりよろしく申上げました。
秘密の相似 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
なおも勇をして通話を伸ばして貰いながら、いろいろと久美子夫人に問いただしてみると案の定……今日まで姫草ユリ子が言い立てて来た事は、一から十までと言っていいくらい
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
強いてみ込めば渡ることが出来そうだから勇をして踏み込むことに成った。この後とても無論困難はあったけれどそれにもくじけず幾多の時を費やしてとうとう広い空気の所へ出た。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
鬻子いくし』にの天下を治むるや五声を以て聴く。門に鐘鼓鐸磬たくけいを懸け、以て四方の士を待つ。銘に曰く、寡人に教うるに事を以てする者は鐸を振え、云々。道を以てする者はを撃てと。
部屋じゅうはゆうべ僕が目をさました時と同じように、よどんだ海水の臭いで息が詰まりそうであった。僕は勇気をして内へはいると、手探りで旅行鞄のなかから蝋燭の箱を取り出した。
勇をして上に登れば登るほど空気が稀薄になりますので動悸どうきはげしく打ち出し呼吸は迫って気管が変な気合になり、その上頭脳の半面は発火したかのごとく感じてどうにもして見ようがない困った
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
さて、一方、ことごとく漢陣の旌旗せいきを倒しこれをって地中に埋めたのち、武器兵車等の敵に利用されうるおそれのあるものも皆打毀うちこわした。夜半、して兵を起こした。軍鼓ぐんこの音もさんとして響かぬ。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
今度はあの女ばかしではなかつたけれど、私は勇をして要求した。
むらがり続く丘丘に、 の数のしどろなる。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
けれど勇気をして家の中に這入った。
も吹かず、も鳴らさず、山巒さんらんの間を縫って、極めて粛々しゅくしゅくと来るのであったが、五千余騎の兵馬の歩みは、いかに静かにと努めても
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
純友は部下の藤原恒利といふ頼み切つた奴に裏斬りをされて大敗した後ですら、余勇をして一挙して太宰府だざいふおとしいれた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
目黒の茶屋に俳句会を催して栗飯の腹をする楽、道灌山どうかんやまに武蔵野の広きを眺めて崖端がけはなの茶店に柿をかじる楽。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
何分にも暗いので始末が悪い。巡査は危険をおかして、穴の奥へもぐり込んだ。の者共も勇をしてあとに続いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここおい(七)これみぎす。婦人ふじんおほいわらふ。孫子そんしいはく、『約束やくそくあきらかならず、(八)申令しんれいじゆくせざるは、しやう罪也つみなり』と。た三れいしんしてこれひだりす。婦人ふじんおほいわらふ。
然れども軽忽けいこつに発狂したる罪はを鳴らして責めざるべからず。否、忍野氏の罪のみならんや。発狂禁止令を等閑とうかんに附せる歴代れきだい政府の失政をも天にかわって責めざるべからず。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆうして、そこを下れば、地底の闇に、魑魅魍魎ちみもうりょううごめく地獄巡り、水族館。不気味さに、岐道えだみちを取ってけわしい坂を山越しすれば、その山の頂上から、魂も消しとぶ逆落さかおとしの下り道。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
勇気をして食卓に着いて見たが、朝食あさめしは少しもうまくなかった。いつもは規定として三膳食べるところを、その日は一膳で済ましたあと、梅干を熱い茶の中に入れてふうふう吹いてんだ。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
編輯へんしゅうの方について申せば、私の持論に、執筆者は勇をして自由自在に書くべし、他人の事を論じ他人の身を評するには、自分とその人と両々相対あいたいして直接に語られるような事に限りて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それから勇をしてテントのある所へ指して二里ばかり進んで行った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そこで葉之助は勇をし、それを上へのぼることにした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「しかし今更仕方がないから、勇気をします」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ある時、子路が一室でしつしていた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「将軍。たいへんです。なにか、えたいの知れない大人数が、を鳴らして、街道の遠くを迂回うかいし、こっちへ向って来る様子です」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道衍曰く、両日は昌なり、東昌の事おわる、これより全勝ならんのみと。益々ますます士を募りいきおいす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
市郎は勇をして登った。が、彼は所謂いわゆる虎ヶ窟なるものの在所ありかくわしくは知らなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さう云ふ迷惑をかける男は当然を鳴らして責むべき者だ。君はさう考へないかね?
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
髪の色も眼鼻立めはなだちも甲板に立っている人は御互にあざやかな顔を見合せるほど船は近くなった。その時は全く美しかった。と思うと、船は今までよりも倍以上の速力をして刹那せつなに近寄り始めた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これを望み見るや、城外の闇の遠くにあって、鳴りをひそめていた梁山泊軍は一せいに、を打ち、声を合せて、野をけ出した。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我等皆心織筆耕しんしきひつかうの徒、市に良驥りやうきの長鳴を聞いて知己を誇るものに非ずといへども、野に白鶴の廻飛くわいひを望んで壮志をせること幾回なるを知らず。一朝天風妖氛えうふんを払ひ海内の文章先生に落つ。
「鏡花全集」目録開口 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
燕王覬覦きゆじょう無きあたわざりしといえども、道衍のせんして火をあおるにあらざれば、燕王いまだ必ずしも毒烟どくえん猛燄もうえんを揚げざるなり。道衍そも又何の求むるあって、燕王をして決然として立たしめしや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それはかれが昨日まで天下にむかって極悪ごくあく兇首きょうしゅ、忘恩の人非人と、を鳴らして、家康とともに、その罪をかぞえた敵である。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると不意に西方の山からが鳴った。愕然がくぜんと、闇をすかして望み見ると、星あかりの下を、一ぴょうの軍馬が風の如く馳けてきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たいへんです。郭汜かくしの軍勢が城門に押しよせ、帝の玉体を渡せと、ときのこえをあげ、を鳴らして、ひしめいておりまする」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)