“被:かぶ” の例文
“被:かぶ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花84
夏目漱石31
中里介山29
海野十三26
野村胡堂20
“被:かぶ”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)3.2%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆1.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
道の傍らには小さなあざがあって、そこから射して来る光が、道の上に押しかぶさった竹藪たけやぶを白く光らせている。
闇の絵巻 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
真紅しんくの厚い織物を脳天から肩先までかぶって、余る背中に筋違すじかいささの葉の模様を背負しょっている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余は再び唯々として、木瓜の中に退しりぞいて、帽子をかぶり、絵の道具をまとめて、那美さんといっしょにあるき出す。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
浅い鍋底なべぞこのような形をしたフェルトをすぽりと坊主頭へ頭巾ずきんのようにかぶるのが、彼に大した満足を与えた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう言っているところへ、赤と金との筋の入った帽子をかぶった助役じょやくが、真蒼まっさおになって、とびこんできた。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
婦人たちのためには、セロファンで作った透明な袋があって、これを頭からかぶってやれば、髪は湯にれずにんだ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「だって叔父さんが一人で引きかぶるわけのものでもあるまいがね。」と、母親も台所の隅に突っ立って溜息をいていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
遠くの公園の入口のところに、鳥打帽をかぶった二人の日本人が立ち話をしていたが、急にわたしたちのいるほうに進んできた。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
ちとやそっとの、ぶんぶんなら、夜具の襟をかぶっても、成るべくは、蛍、萱草かやくさ、行抜けに見たい了簡りょうけん
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへ五十すぎくらいの洋服の人が出て来ました。主人でしょう。黒いきれかぶって、何かと手間取てまどります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その奥の暗い葉蔭に、何やら笠をかぶった黒いものが立っていて、ひょろひょろと動くのが、ふと目に着いてから気にかかった。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仙台から古川ふるかわあたりにかけて、お百姓がかぶっている笠を見ますと、他の国のと形や編み方が違うのが気附かれます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
シューベルトは生粋きっすいのウィーン児で、金持や貴族に自分を買いかぶらせて生活を安易にするすべは知らなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「怒るな、八、ちよいと仕掛けを試しただけだ。お雪さんがお前ほど不用心だと、間違ひもなく頭から煮え湯をかぶるところよ」
阿能十は、頬被ほおかぶりをいて、ぽんと払って、顔にかぶり直しながら、長い刀にりを打たせて立ち上がった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして、それから受ける打撃の反動として、思い切って三千代の上に、かぶさる様にはげしく働き掛けたかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこに干し忘れてある友禅ゆうぜんの小袖を見出すと、女は、それを取って黒髪の上から被衣かつぎのようにかぶりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、次郎はその手ぬぐいかぶりの女が、あの隠居藤屋の奥にいた、丹頂のおくめであるとはちッとも気がついていない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お島は朝から碌々ろくろく物も食べずに、不思議に今まで助かっていた鶴さん以来の蒲団ふとんかぶってふせっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は、いま、自分の頭にびたなべでもかぶっているような、とっても重くるしい、やり切れないものを感じて居ります。
千代女 (新字新仮名) / 太宰治(著)
まして己以外の人間の、利害のちまたに、損失の塵除ちりよけかぶる、つらの厚さは、容易にははかられぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大抵は頭に護謨製ゴムせい頭巾ずきんかぶって、海老茶えびちゃこんあいの色を波間に浮かしていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとその山がどれもこれも、黒ずんで、すごいほど木をかぶっている上に、雲がかかって見るに、遠くなってしまう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
――手拭てぬぐいかぶって、わらを腰に当てて、筒服つつっぽうを着た男が二三人、向うの石垣の下にあらわれた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
――いいかね東風君、二三歩出たがまた引き返して、国を出るとき三円二十銭で買った赤毛布あかげっとを頭からかぶってね
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青き頭巾ずきん眉深まぶかかぶり空色の絹の下にくさ帷子かたびらをつけた立派な男はワイアットであろう。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこの釣堀に、四人づれ、皆洋服で、まだ酔のめねえ顔も見えて、帽子はかぶっても大童おおわらわと云う体だ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その時お前はもうお前自身ではなくなって、即ち一個の人間ではなくなって、人間の皮をかぶった専門家になってしまうのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこでこの雲水は気焔と独り笑いとをやめて、蒲団を頭からかぶっているうちに、昼の疲れでグッスリと寝込んでしまいます。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おつぎは往來わうらいくとては手拭てぬぐひかぶりやうにもこゝろくばたゞをんなである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三千代は手拭をねえさんかぶりにして、友禅の長繻絆をさらりと出して、たすきがけで荷物の世話をいてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして、それから受ける打撃の反動として、思ひ切つて三千代の上に、かぶさる様に烈しくはたらき掛けたかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところがみちの一とこに崖からからだをつき出すようにしたならかばの木が路にかぶさったとこがありました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ワシリは全身に泡をかぶつた馬に乗つて、帰つて来る途中で、己の側へ来た。負けた騎者はまだずつと跡になつて付いて来る。
其処そこにはナポレオン帽をかぶつてカアキイ色の服を着けた英国の陸兵が五六人望遠鏡を手にして立番たちばんをして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そうして置いて警視の一行は、苅谷夫人繭子の頭から毛布をかぶせ、玄関先に待たせておいた自動車ではこび去ったのである。
この話で見ると、某大国はキューピーの面をかぶりながら、その面の下でもって恐ろしい牙を鳴らしているとしか思われない。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女はと見れば、またしても、だらしのない寝像、せっかくかぶせてやった衣類を、意地のようにふんばいで、二目とは見られない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
宮城の品井沼の岸では、稲がもう四日も泥水をかぶってゐる、どうしても今年はあの辺は半作だらうと又誰か言ってゐました。
化物丁場 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その東北の方からけた銅の汁をからだ中にかぶったやうに朝日をいっぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
お銀様の歯の根が合いませんでした。そこに頭巾ずきんかぶってはかま穿いて立っているのは武士の姿であります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「私は、ここで遠いもの。顔なんてどうして?……お前さんは見たんじゃない? もっとも笠をかぶっていなすったけれどもさ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小夜着こよぎかぶせて私をかばって、びくともしなかった姉さんが、義理にかれて逢うことさえ出来ない辛さに
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると、文字や符号などの浮彫りの活字はインキを塗りかぶせられて了ふが、残りの活字は表面が低いからインキを被らない。
銀座へ来たのは、一時半を過ぎていた。店には、もう前川が、会社のひまを盗んで来たらしく、帽子もかぶらず、やって来ていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
頭巾ずきんかぶつたままで頬杖ほおづえを突いて目をふさいで居るのは何となく按摩のために心持の善ささうな処が見える。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
道具屋は画かきの前で手拭てぬぐひかぶつて猫の真似をしたり、四つひになつて甲虫かぶとむしの真似をしたりした。
男――帽子はかぶつたまゝ、部屋へはひりました。それに、月が出てゐて、真暗まつくらといふほどでもありませんでした。
クロニック・モノロゲ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
彼自身は然し、始終何者かに追かけられる気持だった。鳥打帽子を眉までかぶって、かがみ加減にどんどん歩いて行った。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
裾短すそみじかに靴を穿はいて、何を見得にしたか帽子をかぶらず、だぶだぶになった茶色の中折、至極大ものを膝の上。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっきの文金で襟なしの小袖でさえ見違えたのに、栗鼠のコオトに藍鼠のその頭巾。しかもこの時はかぶっていました。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誰か? ――と振向いてみると、それも浪人仲間らしいが、編笠をかぶっていて、眼の前に来るまで、誰とも判断がつかなかった。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舌打ちして、男は崖の途中で坐ってしまった。かぶっている黒布を解いて汗をふき、それでまた、おもてをつつみ直した。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅中端午の節句に逢って家郷を想うに当り、たちまち例の転化を試みて、現在自分がかぶっている笠を持出したのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
いま一人ひとりかはんだばうかぶつて、あしには木履ぽくり穿いてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
焼け爛れるような痛みと悩みとをその心臓に感じながら、紀久子はじっと部屋の中を見回して、それから静かに夜具を引きかぶった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
彼らの右手には高い土手があって、その土手の上には蓊欝こんもりした竹藪たけやぶが一面にかぶさっていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところへ寒月君が、どう云う了見りょうけんかこの暑いのに御苦労にも冬帽をかぶって両足をほこりだらけにしてやってくる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
パナマの帽子をかぶって、夕方になると水菓子屋みずがしやの店先へ腰をかけて、往来おうらいの女の顔を眺めている。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「こうですか。」白地をかぶって俯向うつむけば、黒髪こそは隠れたれ、包むに余るびんの、雪に梅花を伏せたよう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この新開町の入口の寺のあとだというところに、田舎の街道にでもありそうな松が、ほこりかぶって立っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
笹村は仲たがいしていた間のことが、一時にかぶさって来たようであったが、これをはっきりやめさすことも出来なかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「わ、こりゃなんとしたことじゃい。皆の衆、出て見やれ。三国ヶ嶽のお月さんが、円ういつづら笠をおかぶりじゃぞえ。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……だが、正三はやはり頭上にかぶさる見えないものの羽挙はばたきを、すぐ身近にきくようなおもいがするのであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
年紀としは五十の前後ならむ、その顔に眼鏡を懸け、黒の高帽子をかぶりたるは、これぞ(ちょいとこさ)という動物にて
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かぶった帽も振落したか、駆附けの呼吸いきもまだはずむ、おやかたの馬丁義作、大童おおわらわで汗をき、
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
菅笠すげがさ目深まぶかかぶって、しぶきに濡れまいと思って向風むかいかぜ俯向うつむいてるから顔も見えない
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「オーライ」作業服を着た男たちは、声とともに、寄ってたかって僕をとらえ、用意の麻袋を頭からすっぽりかぶせてしまった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
全体に白毛はくもうかぶっていて白く見え、他の草とはその外観が異っているので、おもしろくつ珍しく感ずる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
一座は騷然として立ち上がりました。頭からかぶつた風呂敷でもかなぐり捨てたやうに、亂醉が一遍にさめて了つたのです。
『師匠っ、はやく、この合羽をかぶって、草鞋を穿いて――。あ、あたしの田舎へ、逃げましょう。お次さんも連れて』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二三日、うちで調物をして庭先よりほかに眺めなかった代助は、冬帽をかぶって表へ出てみて、急に暑さを感じた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まあ帰ってからゆっくりと思って、今日見つけた家の少し混み入った条件を行一が話しためらっていると、姑はおっかぶせるように
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
寝る時には、厚衾あつぶすまに、このくまの皮が上へかぶさって、そでを包み、おおい、すそを包んだのも面白い。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前の日留吉とめきちに借りた妙ないでたちの上に、白いエプロンをぶら下げ、白いキッチン・キャップをかぶっていた。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
がっしりした三脚さんきゃくの上にささえられ、それからややへだったところには、巨大な高射砲が金網かなあみかぶ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お国が千葉のお茶屋へ行って、今夜のように酒など引っかぶって、棄て鉢を言っている様子が、ありあり目に浮んで来た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かぶって来た笠の上へ濡れた手紙を置いて、封じ目もなにも離れてしまったから、爪の先で拡げて火の傍へ持って来ます。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは頭のてっぺんから足の下まで、黒い布で作った袋のようにものをかぶっている人間だったことが、始めて知られた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いも助は鳥の尻尾しっぽを立てたるかごの如き形のかさかぶり、大きな拍子木ひょうしぎを携帯していた。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
編笠、ひたりと折合わせて、ひもを深くかぶったなりで、がっくりと俯向うつむいたは、どうやら坐眠いねむりをしていそう。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから頭とかおとはこれも対の紫縮緬むらさきぢりめん女頭巾おんなずきんを、スッポリとかぶっています。
おそらくそれはその普請場を早朝から巡視に来た役人であったろうけれど、笠を深くかぶっていたから、誰とも知ることができません。
ネネムはまっ白なちぢれ毛のかつらをかぶって黒い長い服を着て裁判室に出て行きました。部下がもう三十人ばかり席についています。
平手ひらてで板を叩くようなつづみの音をさせて、鳥打帽子をかぶった万歳まんざい幾人いくにんも来ます。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きいろな頭巾ずきんかぶって、よろいを着、にしき直衣なおしを着けて、手に手に長いほこを持っていた。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「番頭の文次が危なくなると、又ぢつとしては居られなかつた――お前は自分の罪を人にかぶせることの出來ない人間だ」
花は二三日でしおれた。鉢の上には袂屑たもとくずのような室内のちりが一面にかぶさった。私は久しく目にも留めずにいた。
サフラン (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は今更いまさら気がついたように、頭の上にかぶさる黒い空を仰いで、苦々にがにがしく舌打したうちをした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女が手拭てぬぐいかぶって洗濯をしている後姿を見て、一段落置いた昔のお貞さんを思いだしたのは、帰って二日目の朝であった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はまた洋筆ペンを放り出した。赤い印気インキが血のように半紙の上ににじんだ。彼は帽子をかぶって寒い往来へ飛び出した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そういう声の下に、頭の上からズッシリ重いものがかぶせられた。そして耳のうしろで、紐がギュッと頭を縛めつけた。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それに対する人物は、卓子をへだてて立っていたが、その人物は頭の上から黒いきれをスッポリかぶっていた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手拭てぬぐひかぶつてあつには小麥こむぎたゝいてるのを其處そこ此處ここることがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
彼は敏捷びんしょうに身をかわしたので、ちょうど床から立ち上がった友人が伊東の代わりにすっかりビールをかぶってしまった。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
その翌朝、彦太はもうじっとしていられなくて、先のとがった雪帽を肩のところまでかぶり、かんじきの紐をしめると、家をとびだした。
雪魔 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
それは竹の笠をかぶった小柄な男でありましたが、首っ玉へ風呂敷包を結び、素足に草鞋わらじをはいて、手に杖を持っておりました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
――帽子もかぶつたまま、オーバコートも着たままの、役所へ行きがけらしい兄の姿をもう一度よく視守つて、何か云はうとしてゐると、
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
お角が現われると、美人連も急に引締まって、どてらをかぶって寝ていた力持のお勢でさえも、起きて迎えに出ました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
笠を深くかぶってはいたけれど、お豊はその旅の武士の一隊の中に、竜之助のあることをたしかに認めたのであります。