いい加減な時分を計つて、高木氏が一寸指先を唇に当てると、蓄音機は礑と止つて、高木氏が一足前へ乗り出して来る。
茶話:03 大正六(一九一七)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
日頃自分が勉強した書物の中の記述や面白いと思つた画などいかほど積み重ねてみても現実世界に於ては何等の根拠もなかつたことに気づいて礑と愕いてしまつた。
吸血鬼 (新字旧仮名) / ジョン・ウィリアム・ポリドリ(著)
「無礼者!」と柳眉を逆立て、乃信姫は礑と睨んだが、そんなことには驚かず、二人がお菊を引っ担げば、後の三人の無頼漢は、乃信姫を手取り足取りして、宙に持ち上げて駆け出そうとする。
茶話:03 大正六(一九一七)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
鄂は弓矢をとって待ちかまえていて、黒い鳥がともしびに近く舞って来るところを礑と射ると、鳥は怪しい声を立てて飛び去ったが、そのあとには血のしずくが流れていた。
中国怪奇小説集:16 子不語(清) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小文さんは礑と手を打つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ゆく手を照らすように、弥兵衛がたいまつ代わりの枯枝を高くあげると、一つの礫が大きい灯取り虫のように空を飛んで来て、その火を礑と叩き落としたので、弥兵衛もぎょっとした。