トップ
>
礑
>
はた
ふりがな文庫
“
礑
(
はた
)” の例文
さて、題だが……題は何としよう?
此奴
(
こいつ
)
には昔から
附倦
(
つけあぐ
)
んだものだッけ……と思案の末、
礑
(
はた
)
と膝を
拊
(
う
)
って、平凡! 平凡に、限る。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
然るに其の時間という生緩いものも無くなって、
礑
(
はた
)
と自然に魂が直面して打たれた場合である。前のは動的であるが、これは静的である。
穂高岳
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今も、健が聲高に忠一を叱つたので、宿直室の話聲が
礑
(
はた
)
と止んだ。孝子は耳敏くもそれを聞き附けて忠一が
後退
(
あとしざ
)
りに出て行くと
足跡
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
女ども聞て此丸龜にて江戸屋清兵衞と申は此方ばかり夫では
違
(
ちが
)
ひ御座りませんと云に長兵衞
礑
(
はた
)
と
膝
(
ひざ
)
を
拍
(
うち
)
オヽ
然樣
(
さう
)
だ餘り思ひ過しを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
下で見た時には左程にも思わなかった草丈が人の脊よりも高い。俯向きながら
無暗
(
むやみ
)
に掻き分けて行くと、
礑
(
はた
)
と岩に
撞
(
つ
)
き当って頭がズシンと響く。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
初冬
(
しよとう
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
慌
(
あわたゞ
)
しく
渡
(
わた
)
つてそれから
暫
(
しばら
)
く
騷
(
さわ
)
いだ
儘
(
まゝ
)
其
(
そ
)
の
後
(
のち
)
は
礑
(
はた
)
と
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
て
稀
(
まれ
)
に
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したやうに
枯木
(
かれき
)
の
枝
(
えだ
)
を
泣
(
な
)
かせた
西風
(
にしかぜ
)
が
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いい加減な時分を計つて、高木氏が一寸指先を唇に当てると、蓄音機は
礑
(
はた
)
と止つて、高木氏が一足前へ乗り出して来る。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
何に驚きてか、垣根の蟲、
礑
(
はた
)
と泣き止みて、空に
時雨
(
しぐ
)
るゝ落葉
散
(
ち
)
る響だにせず。
良
(
やゝ
)
ありて瀧口、顏色
和
(
やは
)
らぎて握りし拳も
自
(
おのづか
)
ら緩み、只〻
太息
(
といき
)
のみ深し。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは、
礑
(
はた
)
と
思
(
おも
)
ひ
當
(
あた
)
ることあるものゝ
如
(
ごと
)
く、『それで
此處
(
こゝ
)
に
此麽
(
こんな
)
に
澤山
(
たくさん
)
茶器
(
ちやき
)
があるのねえ?』と
訊
(
たづ
)
ねました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
兎
(
と
)
にかく手がかり足がかりの岩を辿って、下へ下へと
危
(
あやう
)
くも降りてゆくと、暗い中から
蝙蝠
(
かわほり
)
のようなものがひらりと飛んで来て、市郎の
横面
(
よこつら
)
を
礑
(
はた
)
と打った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分はそれを讀んだ時、
礑
(
はた
)
と自分の身の上に突き當つたやうな氣がして、暫く其のページを見詰めてゐた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
疾く走る
尻尾
(
しりお
)
を
攫
(
つか
)
みて根元よりスパと抜ける体なり、先なる馬がウィリアムの前にて
礑
(
はた
)
ととまる。とまる前足に力余りて堅き爪の半ばは、斜めに土に喰い入る。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日頃自分が勉強した書物の中の記述や面白いと思つた画などいかほど積み重ねてみても現実世界に於ては何等の根拠もなかつたことに気づいて
礑
(
はた
)
と愕いてしまつた。
吸血鬼
(新字旧仮名)
/
ジョン・ウィリアム・ポリドリ
(著)
痴情のやる方なく情死を致したのかも知れん、何か証拠が有ろうと云うので、
懐中
(
ふところ
)
から
守袋
(
まもりぶくろ
)
を取出して見ると、起請文が有りましたから、大藏は小膝を
礑
(
はた
)
と
打
(
うち
)
まして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
諸国和製砂糖殖え立、旧冬より
直段
(
ねだん
)
、
礑
(
はた
)
と下落致し、当分に至り、猶以て、
直下
(
ねさ
)
げの方に罷成り
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
と
其
(
そ
)
の
握拳
(
にぎりこぶし
)
で、
己
(
おの
)
が
膝
(
ひざ
)
を
礑
(
はた
)
と
打
(
う
)
つたが、
力
(
ちから
)
余
(
あま
)
つて
背後
(
うしろ
)
へ
蹌踉
(
よろ
)
ける、と
石垣
(
いしがき
)
も
天守
(
てんしゆ
)
も
霞
(
かすみ
)
に
揺
(
ゆ
)
れる。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
三藏はどうして飯を食ふ積りかといふ質問には
礑
(
はた
)
と當惑した。實はどうして飯を食ふかといふ事を考へて退校したのではなかつた。只せつぱ詰まつて退校したのであつた。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
又は一点の機微に転身をやしたりけむ、
忽然
(
こつぜん
)
衝天
(
しょうてん
)
の勇を
奮
(
ふる
)
ひ起して大刀を上段
真向
(
まっこう
)
に振り
冠
(
かむ
)
り、精鋭
一呵
(
いっか
)
、電光の如く斬り込み来るを
飜
(
ひら
)
りと避けつゝ
礑
(
はた
)
と打つ。竹杖の
冴
(
さ
)
え
過
(
あや
)
またず。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
猿は
礑
(
はた
)
と地に
平伏
(
ひれふ
)
して、
熟柿
(
じゅくし
)
臭き息を
吻
(
つ
)
き、「こは
何処
(
いずく
)
の犬殿にて渡らせ給ふぞ。
僕
(
やつがれ
)
はこの
辺
(
あたり
)
に
棲
(
す
)
む
賤
(
いや
)
しき山猿にて候。今
宣
(
のたも
)
ふ黒衣とは、僕が無二の友ならねば、元より僕が事にも候はず」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「無礼者!」と柳眉を逆立て、乃信姫は
礑
(
はた
)
と睨んだが、そんなことには驚かず、二人がお菊を引っ担げば、後の三人の無頼漢は、乃信姫を手取り足取りして、宙に持ち上げて駆け出そうとする。
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その喇叭の音は、二十年來
礑
(
はた
)
と聞こえずなつた。隣村に停車場が出來てから通りが絶えて、電信柱さへ何日しか取除かれたので。
赤痢
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
礑
(
はた
)
と
白眼
(
にらみ
)
し其
形容
(
ありさま
)
に居並び居たる
面々
(
めん/\
)
何れも身の毛も
彌立
(
よだつ
)
ばかりに思ひ
斯
(
かゝ
)
る惡人なれば如何成事をや言出すらんと
皆々
(
みな/\
)
手に
汗
(
あせ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
こうした妙な心持になって、
心当
(
こころあて
)
に我家の方角を見ていると、忽ち
礑
(
はた
)
と物に眼界を
鎖
(
とざ
)
された。見ると、汽車は
截割
(
たちわ
)
ったように急な土手下を行くのだ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一
日
(
にち
)
吹
(
ふ
)
いた
疾風
(
しつぷう
)
が
礑
(
はた
)
と
其
(
そ
)
の
力
(
ちから
)
を
落
(
おと
)
したら、
日
(
ひ
)
が
西
(
にし
)
の
空
(
そら
)
の
土手
(
どて
)
のやうな
雲
(
くも
)
の
端
(
はし
)
に
近
(
ちか
)
く
据
(
すわ
)
つて
漸次
(
だん/\
)
に
沒却
(
ぼつきやく
)
しつゝ
瞬
(
またゝ
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
南の三窓の頭はオベリスク状の峰尖をいら立たせた一列の竪壁を
礑
(
はた
)
と胸先に突き上げているのが目に入る許りで、最高点は何処に在るのか見えよう筈がない。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
浜口君の郷里といふのは、紀州の湯浅なので、
愈々
(
いよ/\
)
呼び寄せようといふ段になつて
礑
(
はた
)
と困つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
壇のまん中に坐っていた泰親は忽ち
起
(
た
)
ち上がって、ひたいにかざしていた白い幣を高くささげながら、塚を目がけて
礑
(
はた
)
と投げつけると、大きい塚はひと揺れ烈しくゆれて
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鋭き言葉に言い
懲
(
こら
)
されて、餘儀なく立ち
上
(
あが
)
る冷泉を、引き立てん計りに送り出だし、
本意
(
ほい
)
なげに見返るを
見向
(
みむき
)
もやらず、其儘障子を
礑
(
はた
)
と
締
(
し
)
めて、仆るゝが如く座に就ける横笛。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
小走
(
こばし
)
りに駆けて来ると、道のほど一
町
(
ちょう
)
足
(
た
)
らず、
屋
(
や
)
ならび三十ばかり、
其
(
そ
)
の
山手
(
やまて
)
の方に一軒の
古家
(
ふるいえ
)
がある、
丁
(
ちょう
)
ど
其処
(
そこ
)
で、
兎
(
うさぎ
)
のやうに
刎
(
は
)
ねたはずみに、
礫
(
こいし
)
に
躓
(
つまず
)
いて
礑
(
はた
)
と倒れたのである。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
主水は
礑
(
はた
)
と馬を止めた。
稚子法師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
忽ち
小膝
(
こひざ
)
を
礑
(
はた
)
と
撲
(
う
)
ち
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
その喇叭の音は、二十年来
礑
(
はた
)
と聞こえずなつた。隣村に停車場が出来てから
通行
(
とほり
)
が絶えて、電信柱さへ何日しか
取除
(
とりのぞ
)
かれたので。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ぞ
呑居
(
のみゐ
)
けるに老女は膳を片寄ながら
礑
(
はた
)
と手を
拍
(
うち
)
私しは隣村迄今宵の中に是非行ねば成ぬ用有しを事に
取紛
(
とりまぎ
)
れて打忘れたり折角の御客に留守を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
早速、先生の許へ持つて行くと、篤と目を通して居られたが、忽ち
礑
(
はた
)
と膝を打つて、これでいゝ、その儘でいゝ、生じつか直したりなんぞせぬ方がいゝ、とかう
仰有
(
おつしや
)
る。
余が言文一致の由来
(旧字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
鄂は弓矢をとって待ちかまえていて、黒い鳥がともしびに近く舞って来るところを
礑
(
はた
)
と射ると、鳥は怪しい声を立てて飛び去ったが、そのあとには血のしずくが流れていた。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
泥除
(
どろよけ
)
に
噛
(
かじ
)
りつくまでもなく、
與曾平
(
よそべい
)
は
腰
(
こし
)
を
折
(
を
)
つて、
礑
(
はた
)
と
倒
(
たふ
)
れて、
顏
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
も
次第
(
しだい
)
に
變
(
かは
)
り、
之
(
これ
)
では
却
(
かへ
)
つて
足手絡
(
あしてまと
)
ひ、
一式
(
いつしき
)
の
御恩
(
ごおん
)
報
(
はう
)
じ、
此
(
こ
)
のお
供
(
とも
)
をと
想
(
おも
)
ひましたに、
最
(
も
)
う
叶
(
かな
)
はぬ、
皆
(
みんな
)
で
首
(
くび
)
を
縊
(
し
)
めてくれ
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
礑
(
はた
)
と当惑するが、『書紀』の撰者達が嶺を峰や岳と同一視する程、漢字の知識に欠けていたとは信じられないから、それは寧ろ嶺の字に下す
可
(
べ
)
き適切な和訓がなかった為の窮余の策としてタケと訓じ
峠
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
小文さんは
礑
(
はた
)
と手を打つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今も、健が声高に忠一を叱つたので、宿直室の話声が
礑
(
はた
)
と止んだ。孝子は耳敏くもそれを聞付けて忠一が
後退
(
あとしざ
)
りに出て行くと
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
取あえず鉄砲を持ってその場へ引返して来る、この時早し彼時遅し、
忽
(
たちま
)
ちに
一個
(
ひとつ
)
の切石が風を剪って飛んで来て、今や鉄砲を空に向けんとする井神の真向に
礑
(
はた
)
と
中
(
あた
)
ったから堪らない
池袋の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一しきりして
礑
(
はた
)
と其が止むと、跡は
寂然
(
しん
)
となる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
この声とともに、
船子
(
ふなこ
)
は
礑
(
はた
)
と
僵
(
たお
)
れぬ。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、
礑
(
はた
)
と足を留めて後ろを振返つた。清子と靜子は肩を並べて、二人とも俯向いて、十間も彼方から來る。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何処
(
どこ
)
やらで滝の音が聞えて、
石燕
(
いわつばめ
)
が窟の前を掠めて飛んだ。男は
燃未了
(
もえさし
)
の
薪
(
たきぎ
)
を
把
(
と
)
って、鳥を目がけて
礑
(
はた
)
と打つと、実に眼にも
止
(
とま
)
らぬ早業で、一羽の石燕は打つに
随
(
したが
)
って
其手下
(
そのてもと
)
に落ちた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それが精確に十二の数を撞き終ると、今迄あるかなきかに聞えて居た市民三万の活動の響が、
礑
(
はた
)
と許り止んだ。『盛岡』が
今
(
いま
)
今日の昼飯を喰ふところである。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ゆく手を照らすように、弥兵衛がたいまつ代わりの枯枝を高くあげると、一つの礫が大きい灯取り虫のように空を飛んで来て、その火を
礑
(
はた
)
と叩き落としたので、弥兵衛もぎょっとした。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の目と女教師の目と
礑
(
はた
)
と空中で行き合つた。その目には非常な感激が溢れて居る。無論自分に不利益な感激でない事は、其光り樣で解る。——
恰
(
あたか
)
も此時
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それにしても
生憎
(
あやにく
)
に雪が酷い。
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も一時を
凌
(
しの
)
ぐ為に、
彼女
(
かれ
)
は
此
(
こ
)
の
空屋
(
あきや
)
の戸を明けようとすると、
半
(
なかば
)
朽
(
く
)
ちたる雨戸は
折柄
(
おりから
)
の風に煽られて
礑
(
はた
)
と倒れた。お葉は転げるように内へ入った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の目と女教師の目と
礑
(
はた
)
と空中で行き合つた。その目には非常な感激が溢れて居る。無論自分に不利益な感激でない事は、其光り様で解る。——
恰
(
あたか
)
も此時
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
二三十分も続いた『パペ、サタン、アレツペ』といふ苦しげなる声は、三四分前に至つて、足音に驚いて
卒
(
には
)
かに啼き止む小田の蛙の歌の如く、
礑
(
はた
)
と許り止んだ。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
礑
漢検1級
部首:⽯
18画